削板とランサーの戦闘、その発端は少し時間を遡る。
お互いの自己紹介が済んだ後、凛はとりあえず戦場となるこの街を削板に案内しておこうと思い外に出たのだが……
「ちょっと! どこ行くのよ!」
「すまんっ! すぐ戻る!」
初めのうちはおとなしく案内されていた削板だったが、人通りの多いところに出た途端に飛び出していってしまった。凛も必死に追いかけてゆくが英霊の脚力に敵う筈もなくあっさり見失ってしまった。
「……あのバカ鉢巻! 今がどんな状況か分かってるの!」
今は聖杯戦争の真っ最中であり、どこに敵が潜んでいるか分からない。さすがに人通りの多い街中で突然襲ってくるようなマスターはいないだろうと考えていたが、万が一の事もある。
ひとまずラインを辿り削板を探し出す。そして向かった先には何故か幼い女の子を背負った削板がいた。
「急に飛び出さないでよ! というか何よその子?」
「迷子だ」
「迷子って・・・」
「さっきそこで泣いてた、親とはぐれみたいからちょっと探してくる」
「今はそんな場合じゃないのよ、適当に交番にでも……」
「よしっ! とりあえずあっちの方から探してくる」
そう言うとすぐに削板は走り出してしまった。
「っ! 人の話を聞きなさいよ!」
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「おにいちゃんばいばーい」
「おう!」
凛が削板を見つけたのは、迷子が無事親と合流できて削板と別れようとしているところだった。凛は削板の肩をがしりと指が食い込まんばかりの勢いで摑んだ。
「ん? どうしたんだ凛、そんなに慌てて?」
「どうしたんだじゃないわよ! あんたのせいでしょうが! マスターをほっぽりだして迷子の世話をする英霊なんて聞いたことないわよ! 私が殺されちゃってもいいっていうの!? 少しは状況を考えなさいよ!」
思いっきり肩を摑んでいるにも関わらずけろっとした削板の顔はますます凛をいらだたせた。そしてそんな涼しい顔をしている削板は目の前の凛の方は見ずに、別の場所を見ていた。
「だいたいあなた本当に分かってるの……」
「すまん凛すぐ戻る!」
削板は凛のお説教を無理矢理中断させ、先ほど見ていた場所に一目散に駆け出していった。その目線の先には敵が・・・なんてことは無く、信号の無い横断歩道の前でうろたえている老女の姿があった。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
そして凛も必死にそれを追いかけていったのだが、その後も削板は青年に絡んでいた不良にお説教(拳)を行ったり、木の上に登って降りられなくなった子猫を助けたり、その他いろいろな人助けをしているうちにすっかりあたりは暗くなり街を案内している時間は無くなってしまった。
聖杯戦争のマスターの手の甲には三度だけ英霊を強制的に使役することが出来る令呪が備わっている。凛が三度ほどこれを使ってしまおうかと考えたが、あまりにもばからしくなって止めたのは余談である。
不定期亀更新で申し訳ありません。
結構間があいてしまって後書きが逆に思いつきませんね。
というわけ書くこともないので次回もお楽しみに!