「キングズ・クロス駅」にたどり着いた私は、一つ呼吸を置いてから前を見る。
始まる始まる始まる、これから私はすべて手に入れる。
あの汽車の中から。
あの汽車の向かう城で。
美しい城の学校で。
「ホグワーツ魔法魔術学校」で。
楽しみ、、、、
楽しもう、、、
楽しませろ、、、
誰もいないコンパートメントに入り、鞄を座席に向かって放り投げる。
重要な物は、胸元のボロ袋もとい無限小物入れに入っているので、鞄にはお茶、チョコレートの類の間食、後はなめると気絶する飴玉、その程度の物しか入っていない。
平時の私で在れば、こんな鞄を持つという行為は無駄だと判断するだろう。持つことなどありえない。
ゴミが入っている布袋を、大事に持っていることに等しいのだから。私で無くとも、大抵の者はそう判断するはずだ。
しかし、記念すべき出発の旅に、着の身着の儘というのも風情がない。
何事も形は重要なのだ。
こうして金色の髪を靡かせ、黒いローブを羽織り、旅行鞄を持てば、旅人といった雰囲気がにじみ出る。出発の前、部屋の大鏡で何度も確認したので間違いない!
時計を確認すると、発車5分前。
流石は魔法界の駅、魔女に魔法使いに動物に、人の様なモノ、動物の様なモノ、正体不明のモノがあり、見ていて飽きない。あっという間に時間は過ぎた。
なのだが、このコンパートメントは未だ私1人の貸切状態だ。
なぜ誰も入ってこない?!
寂しい、などということは断じてない。ありえないが、このまま1人列車の旅というのもつまらない。
どうするか?
扉の向こうの通路には多くの人間、ホグワーツの生徒であふれている。
このコンバートメントの中を、間抜け面で覗き込む者もいる。いや私が乗り込んでから今まで、それなりの頻度でいた。
ホームの様子を楽しんでいた際、不覚にも多少気が散ってしまったほどだ。
その時は、当然みな私の邪魔をしないように、楽しめるようにと配慮しているのだと思ったのだが、これほど時間が経っても誰も入ってこないというのは、何か別の理由があるのかもしれない?
そんなことを考えていると、コンバートメントの扉に手を掛けた者の存在を感じる。
扉が開かれ、壊れかけの眼鏡をかけた少年が現れる。
「あの、すみません。ここ、、良いですか?他に空いているところが無くて、、」
魔力を見るに純血、いや半純血の少年だ。
頭はまあまあ、機転がきく。魔力を扱う才能も十分にある。特に箒乗りとしては一級品。
総じて、まあまあか?
、、、いや、これは呪いか?
この様な歪な呪いに、すぐに気づく事が出来ないとは。
「ええ。どうぞ」
動揺を悟らせないよう、意識して応えた。
いや、不自然だったかもしれない。幼いころから演技には慣れている私が、動揺を隠しきれなかったかもしれない。
顔に出してしまったかもしれない。
この私が。
そうしていると、もう一人少年が、コンパートメントを訪れた。扉を開けられるまで気づかないとは、動揺しすぎだ。
私はそんなことを考えながら、呪い眼鏡少年は、入ってきた赤毛の少年の顔を見ながら、どうぞと応える。
さてどうするか?よく見れば呪いは、額に稲妻の形で憑けられている。
つまり、呪い眼鏡少年は、英雄と呼ばれる眼鏡なのであろう。
これは使える。いや
「君は、ハリー・ポッターなの?」
その言葉を聞いて私は、英雄眼鏡の顔を見る。
「貴方が生き残った、眼、、男の子。ハリー・ポッターなのですか?」
「うん、、そうだ、よ」
「君は、だれ?」
「女に名前を尋ねる時は、自分から名乗るものだけど、答えましょう」
「私はルナティア、ルナティア・カサーレ。よろしくね」