―――Mr.E。
サンジェルマン伯爵の様な紳士服、貴族服を纏った男。
人間と呼べるのか不明、その実力は未知数。
異能によって迫害された者たちを保護して、施設を経営している。
学校としての機能もあり、立派に成長した者は社会に出ている者もしる。
だが―――彼の役に立ちたい者もおり、処刑人となる者たちもいる。
悪意を持つ転生者、時には神ですらも刈る者たちもいる。
その中でも―――"キラーズ"と"聖魔人"と呼ばれる者たちがいる。
Mr.Eに絶対の忠誠を誓い、"冠位"になるには相当な実力者にならない限り、席に就くことはできない。
もしくは後任として指名されたものがこの席に就くことができるが、相当の覚悟も必要である。
これだけの戦力を持ち、世界の修正という使命を持ったMr.E。
彼は来たるべき"災厄"のためと言われているが……それが本当なのか不明である。
だが、彼には許されない大きな罪を背負っていた。
彼はココアを飲んで、伏せていた写真立てを持ち上げる。
――――写っていたのは朗らかで優しい笑顔をした黒髪の女性だ。
「その写真だけは捨てていなかったのですね」
不意に声が聞こえた。
Mr.Eは振り返らずに声の主が誰なのか解っている。
「久しぶりですね――――ダンテ」
赤と黒のドイツ軍服を身に纏い、真っ黒なコートを羽織っているは聖魔人が一人――ダンテ。
赤と炎を司り、六の聖魔人が一人。
「……まだ、あの時の事を赦していなかったのですね」
「……ええ、彼女をアヤナを死に追いやったのは、私ですから」
ギュッと拳を握るMr.E。
「しかし、あの事件は―――彼女でも貴方のせいでもない。
あれは悪意を持った転生者とその神せいだ。
我々が二度と、甦らぬよう細胞残さずに滅した」
「………仮にそうだったとしても、彼女を死に追いやった事に変わりない」
Mr.Eはあの時の事を思い返す。
◆
当時のMr.Eと聖魔人たちは罪を犯した転生者たちを更生させるだけの組織だった。
その中で出会った女性――アヤナは心に大きな傷を抱え込んでおり懸命にケアをした。
やっとの思いで彼女の心は癒えたのだが………悪意を持った転生者は彼女の能力に目を付けて憑依した。
だが、憑依した転生者は彼女能力がコントロールできず、精神は潰されて喰らった。
それだけでは留まらず……彼女は悲愴な骸へとなり果てた。
世界を正すために聖魔人たちは結界に閉じ込めてMr.Eが断罪しようとした。
両目を瞑ったMr.Eは彼女の最後の言葉が聞こえた。
"幾度となく、寄生して力を手に入れたが……昔の姿を、本当の姿を……思い出すことが出来ない"
"私を癒してくれた声もしたが……今はもう聞こえない。
"ああ……夜が明ける。その前に、私に永久なる……眠りを……"
Mr.Eは鎗を創り、彼女の心臓を突き刺した。
月が沈みかけ、太陽が昇る境界の中、彼女は無数の花びらとなり、消えた―――。
Mr.Eの掌に落ちた一枚の蒼い花弁がゆっくりと落ちたが、それも音も無く崩れた。
◆
「あの時……もっと他に。救える方法があったんじゃないかって……」
「……過去を変えることはできない。ああすることでしか彼女は眠りにつけなかったことでしょう」
ダンテの言葉を聞いたら、酷な事だと言われるが……彼の言葉もまた否定ではない。
Mr.Eが幾ら力を持つ者でも万能な存在ではない。
「あの悲劇を二度と起こさないように"刈る者"としての組織を創り上げた」
ダンテの言葉にMr.Eは夜空に輝く星を見上げる。
「いずれは来る"災厄"のために、その時が来たら……貴方達、聖魔人の力を借りるかもしれません」
「無論です。マスター」
ダンテは片膝を着いて、忠義を見せる。
(アヤナさん……。こんなに穢れた私を赦してくれないでしょう。
貴女が望んでいた平和な世界を築くために、どうか……安らかに……。)
今回はMr.Eの過去と罪、新たに六つの席に就ける聖魔人の存在とその一人ダンテ。
この六の聖魔人の元設定はディバインゲートから。
使命を全うするが、大きな悲しみを抱え込むMr.E。