幕間 英霊の少年と恐竜の少女
――夢を見ていた。
――街が硝煙と炎に包まれていた。
――多くの人が黒焦げになって、倒れていた。
――故郷を失った……。
「やぁ、気分はどうかね」
少年は目を開けて、上体だけ起こす。
紳士の出で立ちをしていた人物―――Mr.Eが椅子に座っていた。
隣のベッドには少女が眠っていた。
「君たち二人は――――転生者同士の争いに巻き込まれて、街が破壊された。
そう……君たちが生まれた街、友達、家族も焼き尽くされた」
Mr.Eの言葉に少年は絶望した顔となり、首を横に振るう。
「隣に寝ている少女は力が欲しいと願い与え終わった。
君は、そうだな。魔力、霊力が備わっている。
そして……幾多の英霊をその身に降ろし、力を振るうことができる。
選択せよ。平穏を望むか、力を得て争いに投じるか」
選択、いや……答えは決まっている。
"お前たちが奪ってきたのなら"
"今度は……僕が……
"――――――――奪う側になる"
◆◆◆◆
二人が力を得た、その翌日―――。
大規模なはぐれ悪魔狩りをする作戦に二人だけで実行された。
子供二人だけで行かせるのは、酷すぎると他の処刑人たちが言うがMr.Eはこう告げた。
「あの二人は特殊な波長が合って、相性がいい。だから……二人に実戦投入させたのです」
その言葉通り、はぐれ悪魔は次々と数を減らしていたのだった。
≪アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!≫
少年――ゼオンは何処までも黒い鎧を身に着け、雄たけびを上げた。
降ろした英霊は、円卓の騎士に属し、アーサー王に叛いた―――"湖の騎士ランスロット"。
叛いて発狂したバーサーカークラスと円卓の騎士時代のセイバークラス。
その両方を降し、バーサーカーとセイバーの特性を同時に使うことが許されている。
―――それがゼオンが持つ"英霊降し"と呼ばれる異能である。
其処に落ちていた、鉄の棒を拾い、黒く浸蝕していく。
"騎士は徒手にて死せず"
手にした武器を支配し、自らの宝具としての属性を与える。
生前、ランスロットの逸話に関するもの。
そこら辺の木の棒を手にすれば即席の宝具となるのだ。
≪オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!≫
フルスイングをして、はぐれ悪魔たちを次々と粉々にする。
【ひ、怯むな!!相手はたった一人だ!!】
そういうが、その一人に半数近くも減らされたのだ。
その恐怖もあってか逃げ出したいが、人間に背を向けるのはプライドが許さないのだ。
そのプライドを捨てて逃げれば、生き延びれたというのに。
ゼオンが取り出したのは―――聖剣アロンダイトだ。
ランスロットが所持している聖剣エクスカリバーと並ぶ剣。
バーサーカーとして召喚されてたら、闇に染まっていたが、本来の通り光り輝く剣となっている。
≪縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!!≫
聖剣アロンダイトを大きく掲げて――。
――――ザッバァァァァァァァァァァァァァァァッン!!!!
大きく振り下ろし、裂け目が出るほどの必殺斬撃を放ち愚者たちを斬り捨て、その余波で大地までも、叩き斬ったのだ。
次なる獲物を見つけて、英霊降しの少年は、ゆっくりと歩き、鎧の目から赤く輝く。
逃げようとする者たちもいたが、無意味、無駄だ。
"黒き騎士はどこまでも、追い続け、刈るのだ。"
≪アアアアアアアアアアアアアアアッ!!≫
◆◆◆◆
桃色の髪の少女――ルルははぐれ悪魔たちをジッと見据えていた。
彼女の心の中には憎悪の炎が燃えたぎっており、うずくまる。
「ああ……あああっ……」
彼女の体が徐々に大きくなり、体格も骨格も変形していく。
両手足は鋭い爪、鋭い牙が並び、爬虫類の尾が生え、髪が真っ白に染まっていく。
両膝をついた少女、尾がユラユラと動き、ゆっくりと立ち上がる。
目は赤く染まり、口が開かれると唾液がしたたり落ちる。
瞳は垂直のスリット型瞳孔となっており、獲物を睨む。
「……腹……減った……】
その姿は―――人の形をしていた恐竜。
―とある世界にて様々な恐竜の遺伝子が組み合わさって誕生した合成恐竜(キメラ・ダイナソー)がいる。
―"獰猛"、"制御不能"と名付けられた怪物。
―怪物の名前は……インドミナス・レックス。
―――ガァァァァァアアアアアオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!
天に向けて雄たけびを上げ、大気が震えた。
グッと大地を強く蹴って、走り出す。
今のルルは太古の時代を支配していた恐竜そのもの。
身体は人間の時よりも爆発的に上がっており、例え束で攻められても……。
―――ザシュ!!ザシュ!!ザシュ!!
無双である。
鋭利な爪で、引き裂き、返り血を浴びてペロリッと舐める。
【アハ、アハハハハッ。アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!】
本来なら、生物としての本能として喰らうが、彼女の場合はただ殺戮をする一点だ。
嗜虐性もあるのか、両足を斬りおとし逃がさない様する。
鋭い爪で体を何度も突き刺す、地面を何度も叩き付ける、鋭い歯でジワジワと噛む、尾で骨を砕くほどの一撃を与える。
子供だからか、そういう残酷な事も躊躇なく実行できるようだ。
◆◆◆◆
全てが片付いて、二人は全身が返り血塗れ。
お風呂に入っている間、Mr.Eと六聖魔人たちはゼオンとルルについて会議をしていた。
「彼女……ルルの能力は対軍にも優れているが、連携が取れるのかという点になると問題が多い」
「それにゼオンも、降ろした英霊にもよるが、下手をしたら都市を一瞬で破壊してしまうな英霊もいるな」
「その点には関しては、解決しますよ。二人に必要なのは能力を使い、どうコントロールするかですよ。
完全に扱うことができれば、戦力も跳ね上がりますよ。
……問題があるとすれば、燃費の悪さですかね。
食事の量がとんでもなく、エンゲル係数が跳ね上がりますね」
食費に関してはどうしても、避けれそうにもないようだ。
最年少ながら、新たな処刑人となったゼオンとルル。
二人に狙われた者は、明日……生きてはいないだろう。