ゆっくりと楽しんでいってくださいー。
月の眠り花 後半
「でけぇ……」
「でも、どうしてあんな風に変異をしたの?」
「彼女の"あやつり秘術"は能力を奪い、それを力に変える……。だから、アヤナが望む姿へと変異したんでしょう」
治療を終えたMr.Eは巨大な花となったアヤナを見て、答える。
変異したアヤナは歌声をあげて、冥界に響かせる。
すると、星の形をしたワームホールが幾つも開き、植物の蔓がそこへと伸ばす。
「何を始めるつもりなんだ!?」
「彼女は別世界へと侵攻し、能力者を喰らおうとしている……。
………こうなってしまった以上、彼女はもう何を言っても届かない……。
彼女に、……永久の眠りを……お願いします……」
あの時のアヤナは、死んだ。
眠りから妨げられて、世界を喰らおうとする歪んだ存在。
彼女に……永久なる眠りを!!
(BGM:狂花水月)
一誠たちはアヤナの方へと走りだす。
気配に気づいたのか、蔓を動かして、串刺しにしようと一斉に放つ。
地面が抉れるほどの威力だが、皆は避けて走りを止めない。
「道を開けてやる!!」
ジュノはクロス・ボマーを構えて、弾丸、マイクロミサイルと一斉砲撃する。
爆炎が巻き起こり、植物の蔓が焼け落ちていく。
花弁ビットはプロペラのように回転して一斉に襲い掛かるが幽斬とヴィルゴが飛び出す。
幽斬はハサミを、ヴィルゴは花弁を集め剣にして切り裂く。
【ギュルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】
魔法陣が描かれると、光線の雨を放つ。
自身からも巨大の光線を放ち、近づけさせないように撃つ。
幾つものの光線により、冥界の景色が破壊されていき地形が変わっていく。
「くそ……!!これでは近づくこともできんのか!!」
「急がないと、別の世界が壊されていく!!」
バイサーとアナに焦りが出始める。
このままだと、別の世界に到達してしまうのも時間の問題である。
「最後まで、諦めるな!!師匠だって、どんな時でも諦めることは無い!!」
「熱い事を言うわね。だったら……私も全力で行くわ!!」
アオイの周りに、雪と水が集まりだして――――力を解放する。
「アイスエイジ!!」
巨大氷河を巻き起こして、アヤナにぶつける。
バランスを崩して、体勢が崩れるが持ち直そうとするが、炎の閃光が奔る――――ホムラだ。
花弁ビットによる総攻撃を放つが、蹴り、手刀による体術で撃ち落とされていき、両手を頭に突き刺し――――。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
"三千大千世界・全焦土"を使い、巨大花が炎に包まれていく。
異空間に侵攻していた植物も枯れていき、異空間が閉じていく。
これで、終わったかと思いきや………。
―――ドォンッ!!!!
巨大花から何かが飛び出す。それは―――アヤナだ。
背には四枚の金色の蟲翅、青白いオーラを纏い、体全体を大きく広げて―――。
【キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!】
(BGM:この星をかけた魂の戦い【ソウル.ver】)
蒼い満月を背に狂った笑いを上げて超高速で飛びまわる。
両目から血の涙を流し、果てしない暴走をする。
「これは……!!」
「能力を喰らう事によって、ここまでの突然変異、あるいは進化を遂げたというのか……」
最早、世界を破壊の限りを尽くす怪物と化したのだ。
Mr.Eはヨロヨロと立ち上がり変わり果てた彼女を見て―――。
「貴女は一度は死に……。今度はこのような姿へと変わった……」
―――死から黄泉返り、永遠の苦痛が奔る……。
―――私が人間だった姿も……思い出も解らない……。
―――私を呼ぶ声もしたが もう聞こえない……。
―――ああ、月が沈み太陽が昇る前に……。
―――この悲しき骸に……永久なる、眠りを……。
アヤナは四枚のカッターを連続で飛ばし近づけないようにする。
奥へと行き、ドロドロした絵の具の塊となり赤と青の弾に変えて豪雨の如く降り注ぐ。
それぞれの得物や能力で何とか防ぐが辺りが地獄絵図だ。
アヤナが元の姿へと戻り、無数の魔法陣からビームを放つ。
(もしも、あんな事件が起きていなくアヤナさんが私たちと一緒に過ごしていたら、どれだけ楽しかったのだろう)
(死んだものを甦らせて、世界を破壊する道具にしたシュバルツバルトだけは絶対に許さない)
アオイとホムラは自分たちの先輩に当たるものに悲しみ、解放させようと立ち向かう。
今度は赤くなり燃え盛る球体となる。
縦横無尽にバウンドしながら、押し潰そうとかかったり、火力が上がり突進してくる。
無数に分断して流星群のように降り注ぎ爆発が休む事無く巻き起こり、地形が変わっていく。
「骸となっているのに、この破壊力。暴走して幾つものの力を奪ったからこそか……」
一誠はアヤナの強大な力に、驚愕する。
だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「もうひと踏ん張りと行こうじゃないか!!」
ジュノが気合を入れ直し、一斉砲撃をして全弾命中させてよろけさせる。
幽斬とヴィルゴは獲物でX状に切り裂く。
バイサーは強烈な一撃を与えて、アナは鎌を持ち構えて大回転斬りをする。
更にアオイが凍てつく吹雪を放ち、アヤナの動きを鈍らせつつダメージを与える。
「二人とも、行きなさい!!」
アオイの言葉に一誠とホムラは頷き、同時に駆け出す。
二人の拳が燃え盛り、彼女の心臓に目掛けて――――。
「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」
一誠とホムラの最大の一撃にアヤナを遂に、倒した。
Mr.Eは見届けて両目を瞑る。
(ああ……あの時と同じ光景……)
月が沈みかけ、太陽が昇る境界の中に、彼女の体から光が溢れ出し、
【アアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ………】
彼女の最期の声と共に無数の蒼い花びらとなり、消えた―――。
「異空間を繋げて侵攻するか。
なるほど、実に面白いもの発見だ。
今回の勝利はお前たちの物だ。次のショーまで待つがいい」
シュバルツバルトはそう言って、闇の中へと消え去り元の世界へと戻った
◆◆◆◆
冥界の被害が大きく、地形が変わるほどの大被害だが……死者が少なかったのが幸いだった。
しかし、シュバルツバルトは次なる手を使い襲ってくるだろう。
荒神零夜とMr.Eは互いに情報交換しつつ、転生派やシュバルツバルト、"災厄"に備えることに。
Mr.Eは零夜に頼み、神獄界でアヤナのお墓を立てた。
遺体は眠ってない墓石だが、無いよりはましだ。
ここならば、静かに眠れるということで、お願いをした。
参列者には零夜の眷属たち、Mr.Eの処刑人や六聖魔人がいた。
(……もう、貴女を起こすものはいません。ゆっくりと眠っていてください……)
風が吹くと同時に、青い花びらが舞い、その中に蒼い蝶が羽ばたいて、空へと消えていった。
(ED:月下に永遠なる眠り花)