ドラクエ探偵倶楽部   作:ドラ麦茶

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番外編その1・抑えられない衝動 解決編

「さて、みなさんに集まってもらったのは他でもありません。チュンくんを殺した犯人が判りました」

 

 2階の廊下にみんなを集め、美咲はいつものように宣言する。

 

「犯人って、まさかこの中にいるナメ? 信じられないナメ」

 

「ボクも容疑者だベか? 失礼だベ」

 

「そうだアメ。あんたみたいな素人探偵に、何が判るアメ」

 

 定番の文句を言うみんな。ひと通り聞き終えた美咲は、みんなを制し、「今回は非常にラッキーな事件でした。みんなが泊まっている部屋の並びが違っていたら、この事件は解決できなかったかもしれません」

 

「部屋の並びナメか?」

 

「それが何の関係があるだベ?」

 

「適当なこと言うなアメ」

 

「ポイントは、被害者の部屋とみんなの部屋の間にある階段です。被害者であるチュンくんを殺害する場合、犯人はどうしてもこの階段の前を通らなければいけません」

 

「だから、それがいったい何の関係があるナメ」

 

「もったいぶらずに、早く説明するだベ」

 

「そうアメ。こう見えても、ボクは忙しいアメ」

 

 うーむ。美咲の言い分じゃないけれど、確かにこれは、誰が喋っているのか判りやすい。まさに一目瞭然だ。

 

「説明するよりも、実際にやってみましょう」

 

 そう言うと、美咲は被害者の部屋・204号室の前に立った。あたしはすぐ横に控え、3匹は階段をはさんで向こう側だ。

 

「じゃあ、まずナメゴンから。あたしをチュンくんだと思って、こちらに来てください」

 

「一体何なんだナメ。わけ判らないナメ」

 

 文句を言いながら、201号室の前からこちらに向かって歩いてくるナメクジ。階段の前を通り。

 

 …………。

 

 そして、あたしたちの前に来た。

 

「ありがとうございます。では次。インベくん。同じように、あたしをチュンくんだと思って、こちらに来てください」

 

 美咲に言われ、タコも、文句を言いながらこちらに向かって来る。そして、階段の前を通り。

 

 …………。

 

 なんだ? あのタコ。こっちに来いって言ったのに、階段を上がって行ったぞ? 人の話を聞いてるのか?

 

「いいえ、あれは仕方ないんです。インベくんは、チュンくんと自分との間に上への階段があった場合、絶対に上がってしまうんです」美咲がそう説明した。

 

 ……どういうことだ? 意味が判らん。

 

「どういうこと、と言われても困ります。ゲーム上そういう設定だ、としか、答えようがありません」

 

 そう言われると、こちらも返す言葉が無い。

 

「では最後。アメちゃん。こちらに来てください」

 

 言われ、アメーバもこちらに向かって来る。そして、階段の前を通ると。

 

 …………。

 

 アメーバは、タコとは逆に、階段を下りて行った。

 

「そうです。アメちゃんは、インベくんとは逆。チュンくんと自分の間に下への階段があった場合、絶対に下りてしまうんです」

 

 だから、意味がわからんっての。いや、前回までのドラクエ推理も意味が判らなかったけど、今回のはさらに意味が判らない。

 

「ゲームを未プレイの人には理解しにくいかもしれませんが、ドアドアは、そういうゲームなんです。ちなみにオタピョンは、チュンくんがジャンプすると、自分もジャンプしてしまいます。そういった各敵キャラの性格を把握して、攻略する必要があるんです」

 

 まあ、ゲーム上そうなっているのなら、あたしがどうこう言うことはできないかな。

 

「つまり――」美咲は、ナメクジを睨みつけた。「この階段の前を、何事も無く素通りできるのは、ナメゴン、あなただけなんです!」ビシッ、と指差し、犯人宣言をした。

 

「何を言ってるナメ。確かに、ボクはチュンくんとの間に階段があっても素通りできるナメだけど、だからって、僕が犯人だとは限らないナメ。インベくんもアメちゃんも、1度別の階に行って、また2階に戻って来てから、チュンくんを殺したのかもしれないナメ」

 

「残念ながら、それは無いです」

 

「な……なんでナメか?」

 

「あの夜、3階の階段のそばで、あたしと若葉先輩はずっとケンカしてたんです。夜中の3時まで。チュンくんが殺されたのは、11時から1時の間。その間、3階には誰も上がって来ませんでした」

 

「――――! ナメ」

 

「同じく、1階には宿屋の主人であるオタピョンがいました。彼も、その時間誰も通らなかったと証言しています。つまり、チュンくんが殺された時間、誰にも姿を見られずに彼の部屋に行けるのは、ナメゴン、あなたしかいないんです!」

 

 美咲の最終宣告。この完璧な推理の前に、ナメゴンはガックリと膝(?)をつき、

 

「そうだナメ。ボクがチュンくんを殺したナメ。ゴメンだナメ――」

 

 罪を認めたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……てか、美咲」

 

「何ですか?」

 

「今までの話では、いろいろ推理ドラマのパロディ入れてたじゃない? 鍵を開ける仕草とか、方程式とか。あれ、今回は無いの?」

 

「……あ、忘れてました」

 

「やっぱりね」

 

「いやー。うちのかみさんがあなたの大ファンでしてね。今日のことを言ったら、うらやましがるだろうなぁ」

 

「もう遅い」

 

 

 

 

 

 

 こうして「抑えられない衝動」事件は解決した。

 

 ドラクエと違い、このドアドアの世界には教会が無い。死者を生き返らせることはできないので、殺人を犯したナメクジには、さぞかし重い罪が科せられるのだろう、と思ったけど、なんと、ナメクジは無罪。それどころか、逮捕すらされなかった。

 

「当然ですよ。彼ら敵キャラは、チュンくんをかじるのが仕事なんです。殺されたのは、逃げられなかったチュンくんの責任です。いちいち殺すたびに捕まってたら、敵キャラなんてやってられませんよ」

 

 じゃあ何のための推理だったんだ、と思ったけど、もはやこの物語にそういう理屈は通用しないのだということは判っているので、黙っておいた。

 

 

 

 

 

 

 その後、あたしたちは例の光に包まれ、元の世界に戻ることができた。そのまま帰れば良かったんだけど、ぐずぐずしているうちに、美咲は別のゲームを挿し込み、スイッチを入れた。その瞬間、また眩しい光に包まれ、気がつくと、またまたゲームの世界にいた。

 

 今度は何のゲームだ?

 

 

 

 

 

 

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