呪われし血統と黒き竜   作:流星彗

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みなさん初めまして、流星彗と申します。

にじファンで投稿していた作品を長い時を経て移転します。
長い物語になりますが、お付き合いいただければ幸いです。

なお、これは一度完結まで再投稿されたものなのですが、
操作ミスにより一度全部消えてしまいました。
それにより、再投稿の再投稿という謎の哀愁漂う現象になっています。



東方から来た吹雪
プロローグ


 ――――話をしましょうか。

 

 これはある狩猟世界での物語。

 長い歴史の中で生まれ落ちた世界に望まれなかった一つの血統。

 でも、世界に望まれなくとも、一時はヒトにとって尊敬の対象とされた血統。

 

 彼らは歴史の中で繁栄し、しかし大いなる罪を背負い――表舞台から消え去った。

 

 これはその血統にまつわる物語。

 ヒトと、竜。

 様々な願望が飛び交い、世界を侵食してまで繰り広げられるその戦い。

 

 さあ、ページをめくりましょう。

 時を遡りましょう。

 

 始まりは、東方のとある山。

 小さな村に訪れた一つの事件――

 

 

 

それは突然の出来事。

 辺境に住むものならば、いずれ訪れることだとわかっていたこと。それに立ち向かう者も存在していたはずなのに、ソレに対してはあまりにも無力だった。

 そしてその結末は残酷。

 全ては灰燼へと帰し、何もかもが失われていく。

 家々はもちろん、人もまた紅蓮の炎に包まれていく。それでも村に住む人たちを逃がす時間を稼ごうと、彼らは戦い続ける。

 だがソレは無慈悲であり、現実は無情。逃げ惑う人々も歯向かう存在もまとめて炎による殺戮を行う。そうしてまた一つ燃え盛る肉塊が転がるのだ。

 

「うおおぉぉぉぉ!!!」

 

 それでも彼らは止まらない。

 手にした武器を振るい、勇敢に立ち向かっていく。ソレは翼を振るい、彼らを振り払いつつ炎で反撃する。高温の炎に炙られながらもまだ止まらない。その命が消えるまで、彼らは時間を稼ぎ続ける。

 それによって何とか助かろうとする命があった。

 小さな子供が三人。少年と少女が二人である。

 少年が二人の手を繋ぎ、村の出口に向かって出来うる限り息を潜めながら目指していた。周りの大人たちは既に事切れており、肉が焼ける臭いが鼻につくが、それでも止まるわけにはいかなかった。

 自分たちを逃がそうとしてくれた両親。今なお戦い続けている彼らのためにも、その足を止められなかった。

 周りは炎に包まれており、家は崩れ落ちそうなほどもろい。もし崩れ落ちてくるようなことがあれば、自分たちの体ではとうてい耐えられるものじゃない。高温の木によって炙られて苦しみながら死ぬだろう。

 だから二人を引っ張りながら走る少年は周りに気を配りながら、着実に出口を目指していた。

 その時、背後で悲鳴が聞こえてきた。

 何だと思って振り返ってみれば、数個の火球が飛来してくるのが見えた。

 

「ふ、伏せろっ!」

 

 そう叫んで屈みこむと同時に火球は頭上を通り過ぎ、数歩先で着弾した。次いで聞こえる爆発音。熱風と爆発による衝撃が体へと打ち付けてくる。更に追い討ちをかけるように背後に更に火球が着弾し、子供たちは爆風によってその体を浮き上がらせてしまった。

 その時、繋いだ手の一つが解けそうになる。

 

「あっ!」

「く、そ……!」

 

 少年は何とかその手を手繰り寄せようとするが、疲れ果てていたその体に力は入らず、どんどん手が離れていく。

 そして近くで燃え盛る炎から舞い上がった火の粉がその手に付着し、その熱さによって思わず手を離してしまった。

 

「ゆ、優羅ああぁぁぁ!!」

「優羅ぁっ!」

 

 少年ともう一人の少女の叫びもむなしく、少女は二人から離れてしまう。そしてその間に火球が着弾し、新たな爆風で再び体が吹き飛んでしまう。

 せめて少年はもう一人の少女だけは守ろうと何とかその体を抱き寄せた。

 そして吹き飛ばされながらもその目にあの存在の姿を認識させる。

 体は空を舞いながら村の外へと放り出され、数度地面を打ちつけながら坂を転がり落ちていく。何度も何度も体に衝撃が加わるが、抱き寄せた少女だけはとその胸に抱え込む。

 最後は近くを流れる川まで転がり落ち、体にかかる衝撃がやんだ。だが少年の体はボロボロであり、気づいた少女が起き上がって少年の体を揺さぶる。

 

「い、いやだよ……。起きて、ねえ起きてよ!」

「…………」

 

 だが少年は目を覚まさない。頭からは血が流れ、体は至るところに傷がある。少女も所々切り傷はあるが、少年に比べれば随分とマシな方だ。

 

「あたしを、あたしを一人にしないでよ……!」

 

 涙を流しながら少年に呼びかけ続ける。

 そんな心細く辛い現実の中で、少女は少年の胸元に顔をうずめて泣き続ける。

 

ふと、足音が聞こえた。

 

 少女にとっては長い時間だったかもしれない。だが、それは数分のことだった。

 顔を上げれば、そこには誰かがいた。全身を赤いローブで纏われた誰か。涙でくしゃくしゃになった顔をその誰かに向けると、その人物は少女を見つめる。続けて倒れている少年に視線を移すと、近づいて屈みこんだ。

 しばらく少年の体を診ていたが、懐に手を入れて何かを取り出した。

 薬なのだろうか。それと水筒らしいものを用意し、薬と水を飲ませる。少女は少年とその人物を交互に見つめる。

 

「……秘薬を飲ませた。体は打ち身と切り傷だけだ。とはいえ、所々骨がいかれてる可能性はある。これで自己治癒力を高めておけば、死ぬことはないだろう」

 

 それは男の声だった。秘薬の袋と水筒をしまうと少女の頭を撫でながら言った。

 

「……ホント?」

「ああ。本当だ。……これで、あの村での生き残りはお前たち二人だけだろうな」

 

 二人。

 この男はそう言った。

でもそんなはずはない。

 あと一人いるはずだ。

 

「優羅は? 優羅はどこにいるの?」

「優羅?」

「あたしたちと同じくらいの女の子。村の出口辺りではぐれてしまったんだけど……」

 

 男は顔を上げて辺りを見渡した。少し間を置いて少女を見下ろして首を振る。

 

「いいや、他に気配を感じない。あるのは村で食事をしているらしい奴の大きな気配だ。生き残りはここら一帯には存在しない」

「そ、そんな……」

 

 力なく座り込む少女を見下ろし、男は少女を背負った。そして少年の体を抱き上げると背中で呆然としている少女に呼びかける。

 

「おい、聞こえているか? ここは危険だから離れる。一番近い街まで連れていってやる。いいな?」

「…………」

 少女からの返事はないが、微かにうなずいたような気配があった。

 男は走り出し、その場を後にした。

 

 この日、一つの村が滅びた。

 後になって調査の手が入ったが、かの存在を示すものが何一つなかった。二人の子供からの証言があったが、到底信じられるものではなく、このことはただの飛竜の襲来ということで幕を閉じる。

 しかし二人は確かに見た。

 村を襲った存在は黒い竜であったことを。

 

 それが始まり。

 彼らの物語始まりにして、後に着々と発見される世界の異常の微かなるカケラの一片。

 

 物語の歯車は今宵、廻り始める。

 

 

 

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