深い木々の間を二つの人影が走り抜ける。気温は高く、頬には数滴の汗が流れていた。生い茂る木は見上げても頂が見えず、日光を所々遮っている。しかしまったく光が差さないわけではない。木々の間から太陽の光が照らされ、明るさ的には問題ない。
問題なのは奥まで続く道に、ほぼびっしりと木々が生えているため、真っ直ぐに走れないことだ。蛇行しながら人影が目標を追い続けている。
「あーっ! もう! 待てー!」
ちょっとだけイライラしたような少女の声が響く。だが目標は少女の声を無視して逃げ続ける。ブーン……と羽音が響き、木々の間を思うがままにすり抜けながら飛行していた。
「あまり深追いしないように! 周りにも気をつけなさい!」
少女を嗜めるようにもう一人の少女が言う。
その時前を行く少女の右からもう1匹の目標が迫っていく。近づいてくる羽音に気づいてそちらを見たとき、肩を掠めてそれが通過した。
「うわっ!?」
驚いてバランスを崩したところで追いかけてきたものが、後進から前進へと切り替わる。少女の顔目掛けて迫っていき、少女は両腕を交差させて顔面を守る。その腕を羽によって切り裂かれ、少女はうめく。
それは少女の近くで旋回し、再び切り裂こうと迫っていくが、背後から棍によって体を打ち付けられた。再度打ち付けられてそのまま地面に落下する。もう1匹が仲間を殺した者を見つめると、棍が下から振り上げられ、そのまま体をバラバラにされる。
「あ、力強すぎたか。ホント虫って柔だよね。力加減が難しいね」
頭をかきながら地面に座り込んでいる少女に近づいていく。
「さて、大丈夫? シアン」
「はい~……すみません」
「いいって。虫とはいえあれの羽は普通に剣のようなものだからね。深追い厳禁。落ち着いて対処する。オーケー?」
忠告するように優しく言うと少女シアンはこくりとうなずいた。それにうなずくともう一人、紅葉がクックジョーを背中に戻して地面に落下しているものに目を向ける。
「さ、剥ぎ取っちゃいなさい」
「はい!」
元気よく返事をしたシアンが剥ぎ取りに取り掛かった。
今回のクエストは『ランゴスタ駆除』。ココット村から西に数時間に位置するノルン密林に大量発生したランゴスタを駆除するクエストである。虫とはいえ充分に殺傷能力がある羽はそのまま武器の素材になりえるものであり、注意が必要だ。また尾に付いている針には麻痺毒があり、刺されれば麻痺してしまう可能性がある。
そして今回の相手は虫ということもあり、昴たちは二手に分かれて行動することとなった。昴とライム、紅葉とシアンという男女別々のチームである。
ノルン密林はベースキャンプから二つの道に分かれている。男チームはエリア2から、女チームはエリア1から移動することになった。その先ではエリア3に合流することになるが、女チームはそちらに行かず、洞窟になっているエリア4に向かうことになる。そして飛竜の巣にもなるエリア6に出て、ツタを使って降りながらエリア7で合流することになった。
「ん、もうここにはいないようね。じゃあエリア4に行こうか」
洞窟前に向かってホットドリンクを飲み干す。洞窟の中では冷たい地下水が流れており、加えて外の空気があまり流れ込まない。冷気は洞窟の中にこもってしまうために洞窟の中はかなり気温が低くなっている。
ホットドリンクを飲むとすぐに効果が表れ始め、体の中から暖かくなってくる。しかし密林の中に立っていると気温の高さもあいまって無駄に熱くなってくる。
「じゃ、行くよ」
「はい!」
うなずいたシアンに微笑みかけ、二人は洞窟内へと足を踏み入れた。
エリア2を南下しつつ昴とライムが歩いていた。時折ランゴスタが襲い掛かってくるが、それはあるものによって地面に落下していく。
「それっ」
自分から少し離れた場所にライムがそれを叩きつける。すると紫色の煙を噴出し、2匹のランゴスタを包み込んだ。
「キ、キー……」
弱々しい悲鳴を上げながらランゴスタは、ぽとりと地面に落下した。
彼が使用したのは毒けむり玉と呼ばれるものだ。素材玉に毒テングダケを混ぜ合わせたもので、地面に叩きつけることで微弱な毒の成分が含まれた煙を噴出するものである。
これは今回のような害虫駆除で使用されており、民間の家庭でも普及されている。
巨大昆虫は外殻こそなかなかの固さを持つが、ハンターの武器ではバラバラになることが多い。そのためなかなかその素材を剥ぎ取ることが出来ないが、毒状態にさせて体力を奪い、毒殺することによって形を残したまま死亡する。これで彼らの素材が剥ぎ取ることが可能になるのだ。
「よい、しょっ」
剥ぎ取りを終えてナイフをしまうとゆっくりと立ち上がる。その間昴は辺りを警戒するように見渡していた。するとエリア3に繋がる道の方で微かな羽音が聞こえてきた。
「まだいるな。行くぞ」
「はい」
ポーチに手を入れて新しい毒けむり玉を取り出し、ライムが駆け出した。
「ふう、熱い……」
洞窟を出た紅葉が思わず呟いた。洞窟の中でこそホットドリンクは有効的だが、外に出れば太陽の光に当てられ、またじわりと汗がにじんでくる。
「あいつがいれば冷やしてくれるんだけどな……」
「そうなんですか?」
同じように汗を流しているシアンが紅葉を見上げた。
「ん。あいつが冷気を使って上がりすぎた体温を冷やしてくれるのよ。冷気が体の回りに纏われれば、操り続けなくてもそれなりに効果が持続してくれるから、一回使うだけの力で済むし」
「おぉ! だったら早いところ合流しましょう!」
それを聞いたシアンが喜びを溢れさせる。でも紅葉は苦笑してクックジョーに手をかける。
「でも、あれを何とかしないとね」
飛竜の巣にもなるエリア6。そこには10匹前後のランゴスタが群がっていた。それだけ大量にいると彼らの羽音が無駄な協奏曲を奏でており、聴くものを不快にさせるかのような音になっている。
「うわぁ……。多すぎでしょ」
「毒けむり玉、用意しときなさい。あれだけいれば、シアンの作ろうとしているものが完成するでしょ」
「わかってますよ! 有効利用させてもらいます!」
毒けむり玉をランゴスタたちの中心部へと投げると、地面に着弾して紫色の煙を噴出する。それに包まれた3匹のランゴスタが地面に落下する。
その瞬間、ランゴスタたちが散開してあちこちから二人に襲い掛かってくる。二人もまた左右に分かれ、ランゴスタたちの羽を回避する。
軽やかなステップを踏みながら紅葉は数匹の波状攻撃を回避し、時折棍を使って防ぐ。隙を見ては軽く棍でランゴスタの腹部を突き、気絶させて地面に落とす。
「あー、もう! 力加減がめんどくさいったらありゃしない!」
それなら毒けむり玉を使えばいい、という話なのだが、彼女はそれを作るための素材を持っていなかったというミスをしていた。最近はそんなに採取をしておらず、素材玉はあるが毒テングダケがなかったというオチだった。
ライムが毒テングダケをわけようか、と提案してきたのだが、それは彼女のプライドが許さなかったようで、ならばしょうがないと棍を使ってランゴスタを落としていくことを選んだ。
一方シアンは多くのランゴスタに囲まれていた。手にしている毒けむり玉を叩きつけるタイミングを窺っているものの、さっきからランゴスタたちが襲い掛かってきてなかなか投げられない。
「くっ、このっ」
腕を上げようにも目の前をランゴスタが通り過ぎて羽が掠め、それでよろめけば後ろから肩や頬を切りつける。うっすらと頬に赤い線が浮かび上がり、少しだけ体が震える。
「キキ!」
その時ランゴスタが振り上げた毒けむり玉を羽で切り裂いた。するとそこから紫色の煙が漏れ出てそのランゴスタを包み込む。
「キ? キ、キー……」
何が起こったのかとわからないままランゴスタが落下する。下にいたシアンはその煙を吸い込まないようそこから何とか離れていく。その際また目の前からランゴスタが襲い来るが、両腕で顔を庇いながら突っ切る。群がりから抜けるとすかさずポーチに手を入れて新しいものを取り出し、それを後ろに放り投げる。
着弾音がしたあとにランゴスタたちが悲鳴を上げて落下していく。
「キキー!」
残った1匹が怒りに任せてシアンに襲い掛かるが、咄嗟に右手で剣を抜いて貫いてしまった。
「あ」
気の抜けた声を漏らしながら剣を抜くと、腹に穴が開いたままそのランゴスタが落下する。これでこちら側は終わりだが、まだ紅葉の方が残っている。
そちらに目を向ければまだ彼女は群がられている。しかしその数は先ほどよりも少ない。
「あーっ!」
なにやら苛立っており、今にも手にしたクックジョーを振り回しそうだった。しかしそんなことをすれば問答無用でランゴスタたちがバラバラになってしまう。そうなる前に毒けむり玉を取り出して駆けつける。そして彼女の前に叩きつけると残ったランゴスタたちが弱々しく落下した。
「……ふぅ。お疲れ様です」
「ん、お疲れ。もう少し遅かったらもうこれをぶん回してたところよ。よかったわね」
やっぱり振り回そうとしていたのか、と冷や汗をかきながら苦笑する。
そして地面に転がっているランゴスタたちへと向かうと、羽を主に剥ぎ取り始める。
「これでもう作れるんじゃない?」
「はい! やっとまともな双剣が手に入りますよ!」
羽を手にしながらいい笑顔を見せてシアンが応える。そんな彼女の頭を撫でると、また気の抜けたような顔をしてそれに身を任せた。
「じゃ、そこから下りるわよ。もうそこにいると思うし」
親指でそちら側を示す。そこには崖があったが、ツタのつるが下へと延びており、そこから下りられるようになっている。ちょっとだけ気圧されたシアンだったが、紅葉が先に下りてその次にシアンが続く。何かあったときに下にいる紅葉が対処できるようにするためだ。
ゆっくりと下りていくと、離れた場所でライムが手を振っていた。
それから合流し、残りのランゴスタ駆除を終える。クエストは無事に達成されることとなった。
次の日四人は武器屋へと向かうこととなる。用事はもちろん二人の武器強化だった。待つこと数時間、ついに完成された。
ライムのサーペントバイトはヴァイパーバイトへと強化される。その間にサーペントバイト改があったが、すでにランポスの牙などが揃っていたため、一気に強化することが出来た。
ヴァイパーバイトはゲネポスの素材を使用した片手剣だ。周りをゲネポスの皮で包み、切り裂く役割を果たす部分にはゲネポスの牙が使用されている。これはもちろん麻痺毒が染み出ており、相手に麻痺を与える効果を持っている。
ゲネポスの麻痺牙は調合の素材として結構な数を持っていたが、ゲネポスの皮は持っていなかった。だがこの間のクリスタルハンティングの際にゲネポスの皮を入手できたため、こうして強化することが出来たのだ。
そしてシアンの武器はインセクトオーダー。これはツインダガー改と呼ばれる鉄の双剣から派生して強化された武器である。こちらも同じくツインダガー改は、クリスタルハンティングの際に入手した鉱石を使用して作り上げた。そして先日他の密林でカンタロスと呼ばれる巨大昆虫駆除のクエストを行い、カンタロスの甲殻とモンスターの体液を入手していた。あとはランゴスタの羽だったが、これも昨日のランゴスタ駆除によって入手できた。資金も溜まっており、こうしてインセクトオーダーを作り上げることが出来た。
チーフシックルは自宅に置いており、また別の機会に素材が集まれば強化することにしている。
何にせよ、これで二人の戦力が上昇したのは確かだ。そのことで二人は新しく出来上がった武器を見て喜びを隠せていない。紅葉はニコニコと二人を見つめており、昴は腕を組んで無表情ながらもどこか優しい眼差しで眺めていた。
酒場へと向かい、昼食を戴くと今日のクエストを探すことにした。二人もだいぶ戦いに慣れてきているのでそろそろワンランクアップしてもいいかもしれないんじゃないか、と紅葉は考えていたが、昴はまだ無理だと判断していた。
森丘、密林と往復しながらクエストを進めているだけではまだ足りない。そろそろ新しいフィールドを経験させるのも手だと考える。
そこで今日のクエストは砂漠が舞台のクエストを選ぶことになった。そして選ばれたのは……。
「『ドスゲネポス討伐』、ですか」
「そうだ。ドスランポスと同じと思ったら大間違いだぞ」
ドスゲネポスとはゲネポスを束ねるリーダーの呼称だ。ドスランポスと同じく群れを率いて行動しており、大きさも実力もゲネポスを上回っている。麻痺毒もまた通常のゲネポスよりも強く、噛まれればそれだけで麻痺になる可能性もあるので注意が必要だ。
「舞台は砂漠。ここから南にあるゴル砂漠ね。今から向かうとなると明日の夜になるか」
時間を確認しながら紅葉が言うとライムとシアンが顔を見合わせる。
「大丈夫なんでしょうか?」
ライムが少し自身なさそうに呟く。
無理もないだろう。ドスランポスはそれなりに戦ってきた。しかしドスゲネポスは初めてだ。ドスゲネポスがいるということは配下であるゲネポスもそれなりにいるということになる。そして全員が麻痺毒を持っている。噛み付かれて動きを奪われれば、囲まれて無抵抗のままに攻撃を受けてしまう。
武器こそ強化したが、防具はまだランポスシリーズのままだ。シアンも同様にバトルシリーズである。フルフルDシリーズやザザミシリーズを装備している二人とは防御力は大きく差があるだろう。
「何を言っている? 戦うのはお前たちだけじゃない。俺たちも付いている」
「そうそう。これはテストでも何でもない普通の狩り。だからあたしたちも戦う。でも経験を積ませる、という名目もあるから二人も頑張って付いてきなさい。そして傷つきながらも体に覚えさせていく。それが目的」
そう言いながら頬杖をついて口元に笑みを浮かべる。
「昴が言ったでしょ? 失敗しても構わないから成長しろ」
「あ……」
その言葉で思い出したようにライムは隣に座っている昴を見上げる。彼は無表情にビールを飲んでおり、ライムの視線に気づかないフリをしている。
「失敗したらあたしたちがカバーする。だから失敗を恐れずに立ち向かいなさい。……とはいえ、あまりはっちゃけすぎても困るけどね。必要以上にあたしたちから離れず戦うこと。それだけは覚えておいて」
「りょーかいしました!」
シアンが元気よく手を挙げて返事するが、紅葉がその頭を掴んでぐりぐりと撫で回す。
「シアン、あんたが一番その点で心配なのはわかってるわよね? 深追い厳禁。覚えてるわよね?」
「あ゙ー! わかってます! わかってますよ!! 気をつけますから!!」
撫で回す手は少しばかり力が込められており、時々頭を揉みあげている。いつもと違ってちょっとした痛みを感じるシアンは、両手を使って紅葉の手をタップする。
「ん~、もう少し続けるか」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あああぁぁぁ!!!」
「ほれほれ」
どこか楽しそうに紅葉がその手の動きを続ける。既に涙目になり始めたシアンを見てライムもおろおろとし始める。昴が止めてくれないかとその顔を見上げると、無表情ながらも口元が微かに笑っているように見えた。
「……ん?」
そこで昴が少しだけ視線を動かしてライムと視線を合わせる。止めないのか、とライムが無言で二人の方に視線を動かすと、昴は目を閉じてビールを飲み干した。
「……ま、ほっとけ。楽しそうだし」
「はぁ……」
楽しいのは紅葉だけじゃないのか、と思うのだが、昴が言うのなら大丈夫なのだろう。見方を変えれば姉妹のじゃれあいにみえなくもない、のだと思う。
そうやって時間を潰し、一行は酒場を出た。
準備を終えると早速ゴル砂漠へと向かうことになった。現地までは一日半かかってしまう。それだけ時間があれば色々と話すことは山ほどあった。もう恒例となりつつあるシアンと紅葉の会話をBGMに昴は手綱を操り、ライムは読書をしていた。
「砂漠の経験は?」
「わたしは1度だけですね。ライムは今回が初めてだよね?」
「ええ、そうです」
本から顔を上げてライムがうなずいた。
「1度だけって事は、ゲネポス討伐でもやったの?」
「おぉ、正解です」
驚くシアンを見て微笑しながらその頭を撫でる。砂漠が初めてというハンターが最初にやるのは、大抵はゲネポス討伐が多い。だからそんなに驚くことはないのだが、どうもこのシアンは素直すぎる。だから可愛いのだ、と紅葉は優しく撫で続ける。
「紅葉さんは砂漠は?」
「結構経験あるよ、もちろん。……ってか昴が砂漠に用がありすぎてね」
苦笑しながら手綱を操る昴を横目で見る。それにシアンが首をかしげた。
「どういうことです?」
「あいつ、ディアが大好きでね、それでよく行くのよ」
その瞬間、シアンだけでなく本に視線を落としていたライムまでもが呆気にとられた顔をした。そして当の本人は無言である。
「ディアって、あのディアですか?」
震える声でライムが問いかけると、苦笑しながらも紅葉がうなずいた。
「そう。角竜ディアブロス。もうかれこれ15回ぐらいは行ったかなぁ。ま、昴が一人で行くこともよくあるから、昴はそれ以上だけど」
「……ふ」
そこで彼小さく笑ったような気がした。
だが新米ハンター二人は呆然としたままである。
それも当然だろう。角竜ディアブロスといえば危険度が高い飛竜として有名だ。額から生えるねじれた角が特徴的な大型の飛竜であり、砂漠に君臨する暴君として知られている。このディアブロスによって命を落としたハンターや、ハンター生命を絶たれた者も少なくはない。
だというのに、この二人はそれを多く相手にして生き延びている。しかも昴に至っては一人で相手にしたことも多いという。
改めて目の前にいる二人が凄腕のハンターだと知らされることになった。
翌日の夜、ゴル砂漠に到着した時はもうすでに夜も更けていた。これからクエストに向かうのは非常に危険のため、ベースキャンプで一泊することにした。
そして太陽が昇り始め、朝食をとると四人は行動を開始することにした。支給品ボックスから地図を取り出してこのゴル砂漠を確認する。
ゴル砂漠のエリアは全部で11。その内エリア2と7が砂漠地帯となっているようだ。そしてエリア5は地底湖となっているようだが、今回そこには用はない。そこに用があるとするならば、水竜ガノトトスと呼ばれる魚竜種の飛竜だろう。時折その地底湖に現れるらしく、討伐クエストが出されることがある。
「ドスゲネポスのルートはこんな感じだろうな。エリア10から4の岩山地帯に見かけられることが多い。たまにエリア7の砂漠地帯に逃げることもあるが、そうはさせない。だからこの10と4で決着をつけることにする」
その説明にライムとシアンがうなずいた。
「でもって気をつけるのがドスゲネポスじゃなくて周りのゲネポスたち。あいつらの群れは大抵20か30くらい集まってることが多いのよ」
「……へ?」
「普段はあちこちに散開してるけど、この砂漠じゃ結構道が繋がってるからさ。リーダーが一声かけてやれば、一気にわらわらと集まってくるわけ。そうやって獲物を確実に取り囲み、仕留めて餌にする。過酷な環境の中で身についた知恵ってやつよ」
20、30、という数字に二人の顔に冷や汗が浮かぶ。数の暴力だけでなく麻痺毒までもっている。改めてこのクエストの難しさが実感されることとなった。
「あー、怖がらなくていいからね。あたしたちがカバーするから。だからあんたたちは自分に出来ることをしなさい。自分に出来うることをやってチームの成功のために戦う。それが最善の手よ」
頼もしい笑顔でそう言われると、どこか気持ちが落ち着いていくのを感じた。そして昴もまた地図をしまいながらじっと二人を見つめる。
「恐れず行動しろ。出来ないことが恥じゃない。行動しないことが恥だ」
「「…………」」
「わかったか?」
「「はい!」」
元気よく返事をすると昴はうなずいて背を向ける。
紅葉たちも後に続き、クエストが開始された。