呪われし血統と黒き竜   作:流星彗

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81話

 

 

 ココット村のとある広場で二人の人物が相対していた。それぞれ赤と藍色の和服を纏い、自然体のままで身構えている。距離はおよそ十メートルから十五メートルほどか。じっとお互いを見据えたまま動かず、しかしそれぞれ仕掛けるべきタイミングを窺っている。

 そんな二人を眺めているのが黒い和服を着た青年一人。いや彼だけではない。彼の周りには村人たちが大勢詰め寄り、その中にはアイルーなども何匹か混ざっている。

 

「さあ、今日も始まるにゃ! これで通算三十一回になる模擬戦! これまでの戦績は十四対十六となってるにゃ!」

「なるほど、優羅姉さんの方が二戦勝ち越しているって事になるんだにゃ?」

「そうだにゃ! ここで紅葉姉さんが勝ち星を取って少しでも追いつきたいところだにゃ。さあさあ今よりチケット販売を開始するにゃ! はりきって賭けていってほしいにゃ!」

 

 その中で二匹のアイルーがそうやりとりしながらギャラリーへと呼びかけている。一匹は腰元にチケットらしきものを溜めた箱をぶら下げ、もう一匹は背中にボードを背負いこんでいる。そこには『紅葉VS優羅』とでかく書かれた文字が目立ち、二人の名前の下に現在の戦績などがつらつらと書かれている。

 そんな二匹へと村人たちは並び、それぞれチケットを買っていく。もちろんそのチケットは紅葉か優羅の名前が書かれており……そう、これはどう見てもどっちが勝つかを予想して賭ける、トトカルチョだろう。

 時刻はもうすぐ昼食になるだろうという頃合い。ココット村南西に広がるココット農場近くにある広場では、毎日のようにこのイベントが行われているのだった。

 がやがやとした雰囲気を背にしながら、手ごろな岩に腰かける昴は少し呆れたような表情を浮かべ、もう何度したかもわからないため息をつく。

 

(まったく……どうしてこうなったのやら)

 

 それは冬が近づいてきた一か月半ほど前まで遡る。

 

 

 ミナガルデで優羅に戦闘技術を伝授してもらい、更に修行してそれを己のものとする日々を過ごした三人はココット村へと拠点を移した。ミナガルデに比べれば情報の量は少ないだろうが、ココット村の村長は裏で広い情報網を築いているという噂がある。

 長きにわたってこの世に生き、また月との間でもパイプを繋いでいたこともあり、彼の協力を得ようと考えたのだ。

 結果は交換条件によって了承を得た。三人の実力が村長のメガネにかなうならば、情報関連の顧客の一人として認められることになった。

 そして条件は一つ。「HR51以上になれ。公式クエストは現在無理だが、それに見合った功績を挙げたならば認めよう」と。

 昴と紅葉のHRはようやく48を超えた所、優羅に至ってはもうとっくに50になっていた。彼女はもうリーチがかかっているが、昴と紅葉はまだまだHRを稼がなくてはならない。

 ドンドルマの一件やミナガルデでの修業でポイントを稼いだが、それでもまだ足りなかった。

 とはいえ状況が状況だけに最初は少しの情報ならば提供するが、秘密裏に繋がっている者からの情報は提供できないというルールを設けた。緊急時だとしても、自分の持っている情報網は安易に知られてはならない。例え知り合いだったとしてもその線引きは必要だった。

 そのため三人はココット村に滞在し、時折クエストを受けてHRを高めていく日々を送っていた。もちろんただ狩りに行くだけではなく、優羅から教わった技術を鍛錬によって磨き上げる事も忘れない。

 場所はココット農場の近くにある広場で行っている。

 ココット農場とはギルド支部が管理する場所であり、ハンターが利用する場所だ。ここではフィールドで採れるような素材が育まれる場所であり、植物、虫、鉱石、魚に関連する物が得られる。

 もちろんタダではない。クエストなどで得られる売却専用の素材を得た際についてくるココットポイントを、ココット農場で使えるチケットを交換する事で使用権を得られるのだ。

 そしてチケットに応じてどれだけのレベルの素材を、いくつまで素材を得られるかが決まっており、一度利用したらそれなりの日数を置かないと再利用できないという制約もある。

 これは農場と言えども素材が無限にあるわけではないという現実があるからだ。自然の恵みはそうほいほい与えられるはずもなし。だから日を置かないと恵みは姿を見せてはくれない。

 そんなココット農場は開拓によって少しずつ広げられており、三人が利用しているのはその開拓によって生まれた一角の広場だ。村長に許可を得てここを鍛錬の場として利用させてもらっている。

 そんなある日、いつものように鍛錬をしていた紅葉と優羅は模擬戦をしていた。自己鍛錬だけでなく組手や模擬戦を行う事で実戦でも問題なく使えるようにするためのものだ。

 そしていつものように始めようとした時、紅葉がふとこう言ったのだ。

 

「んー……ただ鍛錬するというのも面白くなくなってきたわね」

「……突然なにを言っている?」

「ま、ちょっとしたお楽しみってやつよ。例えばそうね……今日の昼ごはんのおかずを一品奢るとかどう?」

「…………なるほど」

 

 ちょっとした賭けをするという事か、と優羅は納得した。そういうオプションがあるというだけでも面白い。

 そんな所に反応したのは優羅だけではなかった。ココット農場で働いている一匹のアイルーがそれを聞きつけ、トコトコと昴へと近づいてきたのだ。

 

「昴兄さん、あの二人賭けをするにゃ?」

「そのようだな。まあ昼飯一品奢りという軽いものだから問題はないだろう」

「なるほど……じゃあ僕らも賭けてみるにゃ?」

「…………何やら不安なんだが、何を賭けるんだ?」

 

 ジト目でアイルーへと視線を向ければ、そのアイルーはどこかにやりとしたような笑みを浮かべて指……いや爪を一本立てていた。

 

「もちろん、紅葉姉さんか優羅姉さん。どっちが勝つかを賭けるにゃ」

 

 ああ、それしかないよな……と昴はため息をついた。しかも聞こえていたのかあの二人がちらりとこちら側に視線を向けているのは見間違いじゃないだろう。

 

「やめておこう。俺がそれを賭けるとまずい事になりそうだ」

「にゃ? どういうことにゃ?」

「…………言いたくない」

 

 思い浮かぶのは本気になった二人が壮絶な戦いを繰り広げる事だろう。紅葉に賭けても優羅に賭けても二人は燃え上がり、少しだけ手を抜くという事を忘れて殺りあいそうだ。これは誤字ではないだろう……たぶん。

 あくまでこれは鍛錬であり、模擬戦。本気になったらあの二人は簡単に相手をダウンさせるだけには留めない傷を負わせるだろう。それだけは避けたい。

 だが昴は乗らなくても、他に乗ってきた人がいた。

 

「なにやらおもしろいことをやってるな。俺も混ぜてくれよ」

「儂も混ぜてもらおうかのう」

「あ、私も私も!」

 

 近くで観戦しようとしていた村人達だ。仕事もひと段落した人達は暇が出来ればこうして鍛錬を見に来ている。今日も数人ばかり見に来ていた人がいたのだが、アイルーの話を聞きつけてやってきた。

 

「紅葉姉さんが勝つか、優羅姉さんが勝つか。さあ、賭けてみるにゃ!」

 

 こうして第一回紅葉VS優羅のトトカルチョが始まったのだった。

 

 それからほぼ毎日二人の模擬戦になればトトカルチョが行われ、また村という事もあってこの話は一気に村人全員へと伝わっていき、トトカルチョの規模は大きくなってきたのだ。

 暗い雰囲気が少しずつ覆っていく中でこのイベントはそれを吹き飛ばす薬となり、一カ月経った今ではこの村での名物になりつつあった。村人だけでなくハンターなども見に来ているのも一つの変化と言えるだろう。

 中にはあの二人の戦いを見て刺激された者もいるようだ。特に女ハンターにとってあの二つの型はちょっとした参考資料になるらしい。あの動きを見て盗もうとしているのがわかった。

 そして男はと言うと「女ってこぇー……」と呟いている。中には昔紅葉にちょっとお世話になった者もいるらしく、「また強くなってないか?」と聞いてきた者もいるくらいだ。

 そんなイベントは今回で第三十一回。もちろん昴は今まで一度も賭けていない。こうして岩に腰かけて二人の戦いを眺めるだけだ。

 また二人自身の賭けも規模は少し大きくなっている。

 

「今日は勝ったら昼ごはん奢りね」

「……わかった」

 

 一品だけだったのが一食奢りになっている。時には夕食を作る権利を賭けたり、何でも一回命令できる権利だったり、一日昴独占権だったり……二人自身もこのイベントを楽しんでいるらしい。

 

「お二人さん、チケットは全員に行き渡ったにゃ! いつでも始めても構わないにゃ!」

 

 チケット販売していたアイルーがそう声を掛ければ二人を纏う空気が変化していくのが感じられる。まさに一触即発。気を抜けば一撃受けてしまいそうな雰囲気の中、二人はどこか笑みを浮かべて睨み合っている。

 紅葉は軽く身構えているが、相変わらず優羅は自然体のままだ。

 そんな二人を見守っている者らの数人はぐっと表情を引き締めている。二人の空気にあてられて緊張しているらしい。お祭り気分もこの雰囲気によって落ち着いてしまうようだ。

 もちろんそれに慣れている村人は楽しみにしているような表情で見守っている。

 

「っ!」

 

 最初に飛び出したのは紅葉。一瞬で距離を詰めて下から穿つように右手を突き出すが、反応した優羅の左手で弾かれる。しかしそれで終わらず、連続して左、右、更にはローキックと攻める手を止めない。

 受けに回っている優羅は表情を変えずに最低限の動きで回避、捌き続けてダメージを受けない。速さと力が備わった紅葉の攻撃は鋭いが、見切れば問題ない。それにこうして模擬戦を続ける事で紅葉の攻撃にはほぼ適応している。

 思わぬ変化球が来ない内は一撃貰う事はない。

 

「……はっ!」

 

 でも大人しく受けに回り続ける程優羅は優しくない。突き出されたストレートを弾きつつ懐に入り、肩から紅葉へと当たりに行く。密着を嫌がった紅葉は自然と後ろへと下がるだろうが、体を軽く沈めながら和服の掛襟を掴んで引き寄せ、流れに従って肩越しに投げ飛ばす。

 

「ちっ……!」

 

 ここまで綺麗に決められては抜ける事は出来なかった。地面に叩きつけられる前に受け身を取って起き上るも、優羅はそのまま背後から接近しつつ体を捻って横っ腹を蹴り飛ばそうとしている。

 

「っ!!」

 

 避けられないと悟った紅葉は腕を曲げつつ気を込めて守りに入った。その華奢な腕へと容赦なく優羅は回し蹴りを入れるが、その硬さに目を細める。鍛えられた彼女の腕はオンオフを切り替えれば少女らしい柔らかさになるし、大木のような硬さにもなる。

 それに加えて気功術を行使すれば一部分に纏わせることで更に硬くすることが可能であり、逆に蹴り飛ばした優羅の足の方がダメージを負いかねない。

 修行によって会得した気の扱い方その一だ。

 

「……気の扱いには慣れてきたか」

「おかげさまでね。ふっ!」

 

 右手を開きつつ意識を込めれば紅葉の手から圧縮された力の気配を感じ取れる。

 気功弾。

 修行によって会得した気の扱い方その二だ。

 紅葉はハンマー使いのため、気の使い方は腕や足を強化させるために使うしかなかった。姿勢を崩さないために、ハンマーの重さに振り回されないために、インパクトの衝撃を上げるために。

 ただそれだけだった。

 しかし優羅に師事を受けた結果、紅葉の戦略の幅が広がったのは喜ばしい。風魔法とはまた違った形での遠距離攻撃の手段が気功弾。己の気を圧縮させた弾丸だ。

 その気になれば地面や壁に穴をあける事が出来るし、木を倒す事も出来るし、達人となれば飛竜の鱗すら吹き飛ばすという。魔法を使えず気を扱えるハンターは魔法を使える者よりも多いという話であり、噂によればG級ハンターのほとんどはこれが出来るという話もあるくらいだ。

 

「……さて、体も温まってきたしウォーミングアップはこれくらいでいいか」

 

 放たれた気功弾を回避しつつうっすらと笑みを浮かべれば、紅葉もまた応えるようににやりと笑う。

 今までのはただのご挨拶、ちょっとしたお遊び、そして何より戦いの狼煙にも近しい第一波。

 本番はまさにこれからだった。

 

『っ!!』

 

 再度同時に飛び出して今度は体を捻って回し蹴りを放った。しかもお互い気功術で足を強化しているものだから、ただ遠心力が乗っているだけの回し蹴りではなくなっている。

 体の弱いものが受けたら、間違いなく骨折ものだ。

 しかし二人はじろりと相手を睨みながら打ち合った足を戻していき、身構えながら次の攻撃へと移っていく。

 

「ふっ、はっ!」

「……しっ、ふっ!」

 

 拳と足を交えた連続攻撃。時折相手の腕を弾くような乾いた音を立てつつも一歩も引かない。当然気を込めて攻撃しているため普通の打撃以上に痛みもあるだろうが、その表情は実に生き生きとしている。

 素早く身を低くしながら足払いを掛けるが、優羅は跳び上がりつつ身を捻って踵落としを仕掛ける。が、紅葉は冷静に腕を交差させ、足の部分を受け止めて跳ね返してやる。

 

「……むっ」

「はあっ!」

 

 跳ね上げた事で優羅の体は軽く宙に舞う。受け身を取って空中でバック転するような形になっているが、それはある意味隙を晒している事になる。そこを逃さない紅葉ではなかった。

 ぐっと力を篭めて狙いを定め、全身をばねのようにして一気に立ち上がると同時に、優羅へとアッパーの要領で仕掛けていく。

 

「……チッ」

 

 優羅もまた腕を交差させて身を守るが、あの紅葉の怪力を受けるのだ。優羅も両腕に気を纏わせ、衝撃に備えて身構えた。

 インパクトの衝撃が体を走り抜けた瞬間、鈍い痛みがはしり抜けながら景色が後ろへと下がっていく。

 

「逃がさない!」

「……まだまだ」

 

 殴り飛ばした事で優羅の体は後ろへと飛ばされる。それを追うように紅葉が飛び出し、追撃を入れようと拳を構えている。追撃を受ければ一気に体力を削られるだろう。

 鍛錬は基本的に魔法禁止ルールでやっている。やるのはあくまでも格闘戦であり、補助として気を使う事を許されている。

 ハンターはあくまで己の体を駆使して戦う。三人にとって魔法は才能的な意味でもおまけでしかないのだ。

 

「……はぁっ!」

 

 何とか受け身を取りながら迫ってくる紅葉を見据えて身構える。例え構えていようともチャンスである事には変わりない。速さを乗せたストレートを読み、優羅は紙一重でその拳をよけつつ紅葉の体へと肘打ちをしようとした。

 が、紅葉は優羅の戦術を読んでいたらしく、撃ち出した拳を素早く戻しつつ左手で優羅へとフックを仕掛ける。

 

「っ、く」

「……ぬ」

 

 肘打ちは戻された右手によって止められ、フックもまた優羅の空いた手によって止められた。お互いの手や腕はお互い止めているため、縫い付けられたように二人はその場に留められる。

 しかし紅葉は怯まず目の前にある優羅へと膝蹴りを放っていく。優羅の腹を捉えたその一撃は一瞬だけ優羅の表情を歪ませたが、空いている足へと容赦なくローキックを仕掛けていく。

 一度捕まえていた手を離し、打ち出せば、お互いの手はまた打ち出した手同士で組み合ってしまう。時折空いた手も使って殴ろうとしているが、顔を逸らして回避していく。が、時折頬に打ち据えられ、少しずつ二人の顔に赤い化粧が施されていく。

 

「そろそろ離したら、どう、かしらっ!?」

「……それは、こっちの……セリフ、っく」

 

 至近距離で殴り合い、蹴り合う二人。これはもう見慣れた光景となっていた。昴も何も言わず、じっと戦いを見守っているが、どこかやれやれといった風な表情を浮かべている。

 戦いとはいえ女同士が顔へと殴り合うというのは心が進まないようだ。しかも二人とも幼馴染。それに趣向は違えども二人とも美少女にあたる。

 ギャラリーの中には戦う二人を見て盛り上がっている者もいるようだ。それぞれ紅葉や優羅へと応援の言葉を叫ぶ者も交じっている。

 それを聞きながら昴は二人の動きをじっと見守る。均衡状態にある流れは少しずつ変化していく。力で勝る紅葉ならば優羅の体力をじりじりと削っていくだろうが、優羅も紅葉の攻撃をある程度捌きつつ、しつこいように足を狙って何度も蹴り続けている。

 

「……ふっ!」

 

 そして頃合いを見計らって刈るようにしてその足へと足払いを仕掛ければ、まるで地面に引っ張られるように紅葉の体は崩れ落ちてしまった。

 

「っ、この……!」

 

 完全に倒れないように手をついて倒れた紅葉だが、優羅は容赦なく倒れた紅葉へと拳を入れていく。腹、肩、そして頬と何度も入れていく様は傍から見ればとんでもない事だろうが、紅葉はぐっと歯を食いしばりながら優羅から離脱しようとしている。

 勝負はまだついていないのだ。

 

「……はあっ!」

 

 打ち出される拳を掌で受け止め、上に乗っている優羅の腹へと今までの借りを返すかのように拳を振り上げるだけでなく、足を使って振り落とそうと動かしていく。

 

「こんの、うらぁっ!」

「……っ、な!?」

 

 受け止めた手を引っ張りつつ、足を振り上げて優羅の体を後ろへと放り投げてしまった。一見巴投げのようにも見えるが、これは紅葉の力技で行使した疑似巴投げだろう。こればかりは優羅も驚きを禁じ得ない。

 しかし驚いているだけではだめだ。すぐに受け身を取り、滑りながら紅葉へと振り返れば、彼女は起き上って優羅へと振り返っている。その頬は先ほどよりも濃い化粧が施されている。若干口の端から血が垂れているのは見間違いじゃないだろう。

 だが優羅も何度も腹などに紅葉の拳を受けている。気功術で体を硬くさせているとはいえ、ダメージが完全に殺しきれているわけじゃない。

 

「…………」

「…………」

 

 お互い無言で見つめ合い、隙を窺う。二人ともこれが最後のやりとりになるという予感があるようだ。

 一撃は拳で。

 そう考えれば自然とそれぞれの構えを取ってしまうのは道理だろう。

 そのまま動く事はなくなり、数秒、数分と時間が過ぎていく。見守っているギャラリーも自然と静かになっていき、二人の邪魔をしないようにしていた。

 

『――っ!』

 

 同時に飛び出した二人はそれぞれ一撃を相手へと入れる。紅葉は優羅の腹へと、優羅は紅葉の頬へと。

 高らかな打撃音を響かせたその一撃は恐らく今までよりも重い一撃だと知らせてくれるだろう。衝撃が着弾点から体中へと広がっていき、二人はそのまま固まったように動かなくなってしまった。

 恐らく決まった。あの一撃が勝負を決めた。

 一体どっちが倒れるのだろうか。

 固唾をのんで昴達は見守る。

 

「…………っ」

 

 倒れたのは――――二人。

 お互い同時に地面へと倒れてしまったのだ。

 

「…………引き分け、か」

 

 そう呟きながら昴は立ち上がって二人の下へと駆け寄っていく。それで呆然と見守っていたアイルーの一匹がはっと我に返り、ギャラリーらへと振り返って右手を勢いよく振り上げて叫ぶ。

 

「け、結果は引き分け! ドローにゃ! ドローに賭けた人はいるかにゃ!? 今回のトトカルチョはその人の勝ちにゃ!!」

「おう、儂じゃ!」

「わ、私も……です」

 

 どうやらドローに賭けている人はそれなりにいたようだ。倍率に従ってトトカルチョの商品が与えられていく。それを背に昴は二人を起き上がらせて怪我の調子を診ていく事にした。

 頬の調子、体の調子、手や足の調子……と順番にチェックしていく。あれだけやりあっているのだ。ちゃんと診ておかないと後々の戦いに支障が出る。

 とはいえ二人にはお互い壊すくらいの力を振るうな、と言い聞かせている。

 当然だ。

 これはあくまで鍛錬。相手を倒す事だとか、壊すほどの力でやってはいけないというのは理解している。でも熱が入り、本気になってくるとそういう事があり得てくるかもしれない。その心配が昴にはあった。

 

「……うむ、二人とも特に問題はないか。頬や足が少し不安だったが、やりすぎてはいないようだな」

 

 体勢を崩すためとはいえ何度もローキックを受け、顔を何度も殴られた紅葉。

 同じように頬を殴られ、肩や腹へと何度も内側へと衝撃を与えるようなパンチを受け続けた優羅。

 骨に異常がある域まで負傷してないだろうかと心配していたが大丈夫だったようだ。

 

「というかだな、二人とも顔を何度も殴りすぎだろう……。見ている分には居心地が悪すぎる」

「何言ってるのよ。これは戦いよ? それに女同士なんだし、あたしたちからすればいつも通りってなもんよ」

「……そうですね。それに本気でやってませんからこれくらいすぐに治ります」

 

 本気……ねえ、と考えながら立ち上がる二人と一緒に昴も立ち上がる。手当ては帰ってからなので鍛錬の後はいつも通り泊まっている宿へと向かうだけだ。

 

「何度も言うようだが、頼むから本気は出すなよ? お前らが本気を出したらとんでもない事になるからな」

「わかってるって。そう心配しなくてもいいから」

「……紅葉。お前が本気を出せばハンター装備すら砕くってのはわかってるよな?」

「うん、わかってるって。優羅にそんなことするわけないじゃない。若干力落としてるから大丈夫だって、問題ないわよ」

 

 曇りのない笑顔でそう言う彼女。

 とはいえ傍から見ればかなりの威力があったように思える。優羅が気功術を使わなければ、もしかするとただ衝撃を与えるだけでなく骨も砕きかねなかったかもしれない。

 

「……それに優羅。お前も紅葉に及ばないとはいえ、力があるだろう? カウンターを得意としているし、急所狙いも得意だったよな?」

「……そうですね。でもご安心を。そうそう紅葉に急所を当てる気はないですし、今回はしませんでしたが、やるとすれば意識を刈るようなものだけですよ。急所狙いはあくまで敵に向けて。大丈夫です、問題ありません」

 

 優羅もまた薄く笑みを浮かべながらそう答える。

 そうだな、やるなら頬じゃなくて顎を狙って脳を揺さぶる一撃で意識を刈るよな、とか考えながら昴は半目になって優羅を、続けて紅葉を交互に見つめる。

 どうも二人は相性がいいのか悪いのか、いつもいつも盛り上がっては本気を出しかねない領域まで力を出してしまう。今だってお互いにやりと口元を歪めながら横目で睨み合っている。このまま第二回戦へともつれ込みそうな雰囲気だ。

 

「はいはい、落ち着けお前ら。早く帰って手当てするぞ」

 

 小さくため息をつきながら声をかけると、それぞれ「はーい」「……わかりました」と返事して歩き出す。その際売り子をしていたアイルー達に声を掛けていく事にした。

 片づけを始めたアイルー達も近づいてくる昴達に気づき、三人を見上げてお辞儀をしてきた。

 

「あ、お疲れ様ですにゃ。今日も盛り上がったようで何よりですにゃ」

「そ。少しでも楽しんでくれたのなら何よりよ」

 

 微笑しながらアイルーへと軽く労うように撫でてやる。頭、喉と撫でていけば猫のような獣人であるアイルーは自然と気持ちよさそうな表情を浮かべてしまう。

 獣人とはいえアイルーもある意味猫なのだからこの反応は無理もない。

 

「……っと、いつもの確認といきますにゃ。今日の戦いで戦績は十四対十六の一分けとなりましたにゃ」

「初めての引き分け、ね。この場合は……奢りなしって事よね?」

「……そうだな。今までなかったのが不思議なくらいだと思うけど」

 

 二人とも相手を容赦なく攻めるものだから勝つか負けるかぐらいしかなかった。ドローというベット枠があったとはいえ、二人も何かを賭けているから勝ちたいと思うのは当然の事。

 最初こそ教わった気の扱い方を試し、実戦でも問題ないようにするための鍛錬。気づけば実戦に近しい鍛錬となり、ほぼ本気で打ち合っているというのはいいだろう。

 そうして戦った結果が、現在優羅が勝ち越している状態だ。

 しかし昴が心配するように本当に本気になられては困るのも道理。お試しでやった結果、紅葉は岩だけでなく岩盤まで拳の一撃で打ち砕いてしまったのだ。ココット農場の鉱石を掘る所でまだ開拓していない場所でやった結果、新たな採掘場が見つかったのはいいのだが、あの轟音は見守りに来たアイルー達も呆然としていたものだ。

 人相手にやれば間違いなく腹に風穴が空くか、複雑骨折で植物人間になりかねない。あの威力は数秒くらいなら飛竜相手に立ち回れるだろう。

 「……教えておいてなんだけど……紅葉、人間じゃなくなってるだろう?」と呆れた表情で優羅が呟いたくらいだ。師匠である獅鬼は神倉の血統だと知ったからあの規格外さも納得したが、紅葉は人間やめてきているんじゃないかと陰で思っているのは秘密。

 そして手加減しているとはいえ気を纏った拳は優羅の体に鈍い痛みを残してしまう。勝ち越しているとはいえ、気を抜けば意識が飛びかねない程の衝撃を受けながら戦っているのだ。

 無表情に歩いているとはいえ、優羅は今回何度も腹パンチを受けている。気で守っても衝撃を完全に殺しきれないから多少の違和感をぬぐえない。

 

「大丈夫か?」

「……え?」

「腹にきているんじゃないか? 昼飯、食えるか?」

 

 彼女のポーカーフェイスは確かにすばらしいものだ。無表情に近しいその顔は感情を感じさせないが、この数か月の付き合いで昴と紅葉は何となくではあるものの読み取る事が出来るようになっている。

 隣を歩きながら少し様子を窺っていた昴は、優羅の表情から微量の痛みを感じさせるような苦い空気を読み取った。今回の戦いできつそうだと思ったのが体……特に腹がそうじゃないかと推測したが、どうやらアタリだったらしい。

 

「……大丈夫です。これくらい、どうという事はありません」

「そうか。ならいいんだがな」

「……ええ。それにアタシよりも紅葉はどうでしょうかね?」

「ん? あたし?」

 

 突然振られたことで紅葉がきょとんとしたような表情で振り返る。その頬はまだ赤く滲み、口元には拭っても僅かに残った血がある。

 

「……やっておいてなんだけど、口切っただろう? 飲み食い出来るの?」

「ああ、これくらいどうってことないわよ。あえて言えば、口よりも足の方が多少きつく感じるかな」

 

 そんな事を話しながら三人は宿へと入って泊まっている部屋へと向かい、昴が薬やテーピングを使って二人の手当てをしていく。最初こそ女同士でやれとかなんとか言いながら遠慮していたが、今ではもう慣れたものでてきぱきとこなしていくようになっている。

 二人も手当てを受けながら今回の戦いを振り返るように話をしており、時折それに第三者目線で見守っていた昴も混ざる。

 これが三人の新たな日常になっていた。

 

 手当てが終われば酒場へ向かって昼食をとる。扉を潜れば昼食時という事もあってハンター達がそれぞれのチームで集まって盛り上がっていた。中には先ほどの鍛錬を見に来ていた者らもいたらしく、「お、お疲れさん!」「今日もいい勝負だったな」「……おぉ、来たよ」などそれぞれ声を掛けてきたり、ぼそぼそと喋りながら臆したりしている。

 そんな彼らの脇を通り、一つの四人掛けの机の前に腰かける。昴が一人、その前に紅葉と優羅が座るというのがいつの間にか通例となっていた。

 

「いらっしゃいませ。今日もお疲れ様です」

 

 すぐにウェイトレスとして働いているエレナがやってきてメニューとお冷を置いてくれる。そんな彼女に気づいた三人は一瞬微妙な表情を浮かべたが、すぐにそれを消した。

 それぞれメニューを確認し、昼食を注文すると「では、ゆっくりしていってくださいね」と笑顔を見せて去っていく。そんな彼女の背中を見守った三人……いや昴と紅葉は小さくため息をつく。

 

「……今のところは何もなさそうね」

「そうだな。……確か仕事中もあれが出るんだったか?」

「……そう聞いてますね。アタシは実際に見た事はないですが」

 

 三人が話している事はエレナに関する事だ。優羅は見た事はないそうだが、昴と紅葉は一、二回それを見ている。それはあの日、エレナの双子の姉であるセレナが亡くなったという報せ。それと共に届けられた遺骨が納められた壺が、彼女の手に渡った後から見られたもの。

 その行動は誰もが驚き、そして誰もがどこか悲しげな表情でエレナを見つめてしまう。

 

「お待たせしました。……あ、いらっしゃいませ。こちらの席へどうぞ」

 

 あの仕事ぶりを見る限り特におかしいところはないように見える。セレナの死を悲しみはしたが、仕事がそれを押し流していくかのように彼女はまた笑顔を見せてくれた。

 しかし……同時に異変も付いてくることになってしまった。

 しばらくして料理が届けられ、「ではごゆっくり」と礼をして去っていったエレナは、ふと辺りを見回すようなそぶりを見せた。それに気づいた昴が「……来たか」と呟いた時、エレナはおもむろに右手を耳に当てる。

 

「……トゥートゥー、もしもし、姉さん? 今は仕事中ですよ?」

 

 突然何かの音らしきものを口ずさみ、誰かと会話するかのような言葉が飛び出した。それに気づいた客らは一度エレナの方を見たが、「ああ、またか……」と悲しげな表情を見せてエレナから視線をそらしてしまう。

 

「……あれが、そうですか?」

「ああ。亡くなったセレナと会話している、と本人は言っている」

 

 これが問題となっている行動だ。エレナはまるでセレナと会話しているかのように誰もいない虚空を見つめて楽しげに話している。

 だがセレナは死んだ。

 あのドンドルマの一件で死んだのだ。死体はギルドナイトが確認し、遺骨はエレナの下へと届けられている。

 しかしエレナはああして謎の行動をとってセレナと話しているという。あの最初の音は本人曰く姉と繋がるための音を模している、という事なのだが昴達には意味不明だ。

 

「……双子だったと言ってましたね」

「そうね。髪形と性格は違ってたけど、よく似ている双子だったわ」

「……双子は自分の半身のようだと聞きます。片割れが死んだことで……病んだ、のかもしれません」

「…………やはりそう考えるか」

 

 双子というものは普通の兄弟にはない何かがあると昔から言われている。どこか感覚が共有されていたり、まるでもう一人の自分のように感じたりと本人たちは言うが、その原理は今もなお解明されていない。

 突然失ったもう一人の自分があの世から会いに来た。あるいは自分の中に宿った。

 そんな風に考えればもしかすると納得するかもしれないが、そんな事が普通有り得るはずがない。死んだ者は蘇らないし、霊界から会いに来るなんてことはあるはずがない。……その一例がクロムらで起こっていたなど、昴達が知る由もないので完全にないとは言い難いのだが。

 

「ええ、じゃあまたお話ししましょう、姉さん」

 

 じゃあそこで楽しげに、そして自然に話していたエレナは何だ?

 そう訊かれれば姉の幻聴、姉の幻影と話している病んだ妹という事になってしまう。それは認めたくはないのだが、目の前に起こっている事はそれを認めざるを得ないだろう。

 

「……ふぅ。あ、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」

 

 会話が終われば何事もなかったかのようにエレナは仕事へと戻ってしまう。あの切り替えがまた混乱させてしまうのだ。だから誰もあれについて触れようとしない。触れてしまえば何かが変わってしまいそうだから。

 それは昴らも同じ。

 気にはなっているが、彼女のそれに触れる事はしない。様子を時折窺いながら三人は昼食を食べていく事にした。

 

 次の日の朝、三人は酒場へと訪れるとすぐにクエストボードへと向かった。今日は村から出て向かおうとしている場所があったのだ。三人が持っている素材をチェックし、少ないと思われるものを取りに行こうという事になったのだ。

 

「鉱石なら……ストロンボリ火山辺り?」

「奥へと入れば良質の鉱石が採れるという話だ。上位の素材採集ツアーでいいんじゃないか?」

 

 ドラグライト鉱石、カブレライト鉱石、ユニオン鉱石をはじめ、火山でしか採れない紅蓮石や獄炎石を集めておきたい。討伐を目的とせず素材採集を目的とした場合、飛竜などがあまり確認されないエリアへと向かえるクエストを受注できる。

 それは俗に素材採集ツアーと名付けられてクエストボードに張られるのだ。しかし下位以外……上位やG級ならばどこからかやってきた飛竜種と遭遇することもあり、元々確認されているエリアをあえて素材採集ツアーとして公開される事も珍しくない。

 出くわした飛竜を討伐すれば一応報酬は出るが、それは普通の討伐クエストに比べれば微妙なところだ。危険を冒してでも採集を進めたいならば素材採集ツアーを受注すればいいし、普通のクエストに並行して素材を集めたいのならばそちらでやればいい。

 だからこれは完全にハンターの好みによるクエストとなっている。

 

「ストロンボリ火山に向かわれるのですか?」

 

 クエストボードを見つめていた三人にそう声を掛けながらエレナが近づいてきた。昴と紅葉が彼女に振り返り、優羅は軽く一瞥してクエストボードをまたじっと眺める。あまり昴ら以外とは関わろうとしない彼女らしい行動だ。

 そしてエレナの顔を見る二人はどこか不安が拭えないような硬い表情を見せていた。だがエレナがいつも通りの仕事の顔になっている事を感じ、それを消す。

 

「もしかして何かあったりする?」

「ええ……これは数日前から感じられた話らしく、火山地帯へ向かうハンター達に呼びかけている事です」

 

 そう前置きし、エレナは昴達に話し始める。

 

「これはストロンボリ火山だけでなく、北エルデ地方のラティオ活火山などでも見られている現象でして、最近火山が活発になり始めているとの事です。また別の情報源によりますと、火山の奥地で強い力を発する何かが潜んでいるという話もあります」

「強い力? それって狂化竜?」

「わかりません。現在ドンドルマから派遣されているギルドナイト達が調査中です。ラティオ活火山はまだしも、ストロンボリ火山でも連鎖するようにして活発になっているのは何かがあるのではないかと推測されています。もし向かわれるのでしたら十分注意してください」

 

 もし噴火に巻き込まれでもすれば命の保証はない。普通ならば周囲一帯は封鎖されるだろうが、火山にも当然グラビモスをはじめとする飛竜達が生息している。もしその中に狂化竜が混ざっているとすれば、封鎖された火山の中で力を付けていく事になってしまう。

 その為条件付きで制限を掛ける事で一部封鎖されることになったのだ。

 実力がないハンター達は立ち入り禁止。例え実力があったとしても一定のエリア内の立ち入りも禁ずる。

 今はこの制限を掛けると同時にハンター達に注意を呼び掛けている。もしそれを破って狂化竜と出くわしたならばこれはもう自己責任。命を落としたとしてもギルドは責任を負わないとされた。

 しかし破ってもいないのに出くわし、負傷したならばそれはもう運がなかったと嘆くしかない。それにエレナが言ったように現在ギルドナイトなどが火山地帯を調査しているところだ。

 何か新たな情報があればすぐに届けられるように手配されている。

 

「狂化竜がいた場合俺達が討伐しても問題はないか?」

「ええ。昴さん達は既に戦闘経験が何度かありますから問題はありません。もしストロンボリ火山に向かい、狂化竜と邂逅したならば討伐していただいても構いません。ギルドからは相応の報酬を支払いましょう」

 

 ならば鉱石掘りをメインとしてストロンボリ火山に向かい、同時に火山の調査もしてみようか。昴は口元に指を当てて考え始める。

 そんな昴を見ていたエレナはふいに視線を逸らして酒場の一角にある窓へと向けた。少し外の光景を見ていた彼女は「少し失礼しますね」と昴らに声を掛けながら頭を下げると、裏口へと向かって歩き始めた。

 

「…………」

 

 その様子がまたあの行動を起こすのだろうかと紅葉は感じ取った。それは昴もまた一瞥した優羅も同じだったが、裏口へと向かっていったという新たな行動に紅葉はどこか不安を拭えなかった。

 

「……ちょっと様子見てくる」

「……放っておいた方がいいんじゃない?」

「そうなんだけど、なんか気になるのよね」

 

 扉を開けて外へと出ていったエレナの後ろ姿。いつもと同じような、でもどこか違うような雰囲気だった。それが気になったからこそ、紅葉は様子を見に行こうと考えた。

 

「じゃ行ってくる」

 

 そう言い残して紅葉はエレナの後を追って裏口から出ていった。それを見送った昴は小さく息をついて優羅へと視線を向ける。彼女は変わらず無表情でクエストボードを眺めているだけだ。

 

「……で、行きます?」

 

 呟きながらその手に「ストロンボリ火山 上位素材採集ツアー」と書かれた依頼書を掴む。

 

「……上位装備を整えるにしても、カブレライトや獄炎石は集めておいた方が得策というのは昨日相談したとおりです。しかし異変があるならばそれも気に掛けた方がいいでしょう。……判断は任せます」

「そうだな……」

 

 優羅の教えで実力は狂化したアクラ・ヴァシムと戦った時よりも上がっている実感はある。ただ鍛錬しただけでなく上位ディアブロスをはじめとする飛竜討伐クエスト、ソロでしか受けられないココット村を代表するクエスト、一角竜モノブロス討伐もこなしてきた。

 この数カ月で討伐した飛竜達を挙げていくと、リオ夫婦、フルフル、フルフル亜種、モノブロス、ディアブロス、ディアブロス亜種、ショウグンギザミ、ガノトトス、ドドブランゴだ。

 もちろん全て上位クエストで討伐したものであり、これによってある程度装備も新調できるようになっている。優羅も一回上位ショウグンギザミによるギザミSシリーズを検討したが、よく考えた後見送った。

 もっと別の何かが自分に合っているような気がしたとの事だ。今はまだガルルガシリーズで何とかやっていくらしい。

 その代わり新しいボウガンとしてメイルシュトローム改を作り上げた。ほぼ全ての弾を撃つ事が出来るガノトトス系統のライトボウガンの上位版であり、水冷弾を速射出来る機能が付いている。これにより、ローブの中に眠っているジェイドストームは完全にお役御免になってしまった。

 昴達の持っている武器の属性を改めてチェックしてみると、水属性が欠如している事に気づいたのだ。昴は氷、雷、火。紅葉は火と毒。優羅は色々使えるが速射対応として雷、カンタロスガンで龍属性が撃てる。

 ご丁寧に水属性を強く推す武器がないのだ。その為優羅が水冷弾を速射できるメイルシュトローム改を作り上げる事になった。

 また集まった素材で強化されたのが紅葉の堅骨鎚改だ。これは紅葉の予定通り順調に強化され、角竜鎚カオスレンダーへとその姿を変えた。会心率がダウンするというマイナス要素を含んでいるが、高い切れ味と威力を内包する無属性のハンマーである。

 また内包されている角竜の粒子が生きているのか、装備者へと多少の防御力を上げてくれる効果も含んでいる。

 これで紅葉の攻撃能力が上昇する事となった。

 昴も白猿薙【ドド】を白猿薙【ドドド】へと強化する事に成功。純粋な威力上昇だけでなく、氷魔法支援としても申し分ない属性内包を得る事となる。

 そして次は鬼斬破を強化させようと考えたが、ここで問題が発生する事になった。

 鉱石が足りないのだ。

 上位フルフルとフルフル亜種を討伐する事で電撃袋とアルビノの霜降りは揃っているが、カブレライト鉱石が足りなかった。

 この事もあって火山へ鉱石を掘りに行こうという話が持ち上がったのだ。

 

「…………そういえば火山の異変で思い出した事が」

「なんだ?」

「……数年前に鉱石を掘りにラティオ活火山に向かった際に、火口にある存在を見た事がありましたね。あの時も火山に異変があるんじゃないかと囁かれていた頃合いでした」

「ある存在? それは一体……」

 

 そう問いかける昴へと軽く視線を向けながら優羅はその名を告げる。

 

「……炎王龍テオ・テスカトル」

 

 それは古龍の一種。炎を纏う古龍であり、主に火山で目撃例がある存在だ。他の古龍らと同じく四足で一対の翼をもつ骨格をしており、外見は赤い毛に覆われた獅子といったところだろう。

 その凶暴さからドンドルマをはじめとする街に襲撃する事も珍しくなく、その度に多くのハンターを動員させて撃退、討伐するクエストが発行されたという。

 またテオ・テスカトルは雄の古龍であるとされ、雌は炎妃龍ナナ・テスカトリと呼称されている。こちらは蒼い毛に覆われた獅子のような姿とされており、テオ・テスカトルと違って街に襲撃してくるという報告は少ない。

 そんな古龍を優羅は目撃しているという。

 

「……もちろん戦闘はしていません。あの頃のアタシはまだまだ実力がなかった時代でしたからね。火口付近を飛行していたこともあってアタシに気づく事はなく奴は飛び去っていき、アタシはすぐに現場を離れて退避しました。……そして数日後、火山の異変は落ち着いていったと聞きます」

「では異変はテオ・テスカトルによってもたらされたものだという事か?」

「……確証はありませんが。あれから数年経っています。ラティオ活火山を離れたテオ・テスカトルが戻ってきたのかもしれませんし、もしかするとストロンボリ火山に移動してきたのかもしれません。……ここまで話しておいてなんですが、全てはアタシの推測です」

 

 今回の異変はテオ・テスカトルによるものか、あるいは火山に住まう飛竜が狂化した事で引き起こされたものか、はたまたただの自然現象か。確証がないため何も言えないが、これをはっきりさせるためにも調査は必要だろう。

 となれば予定通りストロンボリ火山へ向かうとしようか。紅葉が戻ってきたらその方向で話を進める事にしよう、と昴は考えるのだった。

 

 裏口から出たエレナはそのまま酒場の裏手に回り、建物の壁へともたれかかった。裏手とはいえここも使い終わった酒瓶や箱を置く場所であり、多少整地されている。少し先には村の奥へと続く林が広がっており、高い木が太陽の光を遮ってしまうため薄暗くなっている。

 そんな場所でエレナはおもむろに右手を耳に当てる。

 

「……トゥルルル、……はい、私です」

 

 またあの擬音を口ずさみ、誰かと話し始めるエレナ。やはり相手は死んでしまったセレナなのだろうか。

 そんな彼女へとどこからかやってきた白い鳥が近づいていき、その左肩へと静かに止まる。それを一瞥した彼女は薄く笑顔を見せながら他愛もない話を始めた。

 そんな彼女へと静かに近づくのが紅葉だ。裏口の扉から出た紅葉は気配を頼りにエレナへと近づいていくが、完全に接触はしない。少し距離を空け、角からそっと顔を出して様子を窺っていた。

 

「他には……狼と狐が睨み合っているところを目撃しましたよ。……ええ、あの狼と狐です。相変わらず獲物を取り合っていましたね。はい……はい、そうです」

 

 笑顔でセレナと話す彼女に特に異変は感じられない。話している事も昨日と同じく普通の話だ。昨日は仕事で話せなかったプライベートで起こったことを話しているのだろう。

 

「そういえば最近雨が降りませんね。晴れてばかりで強い風も吹かない。毎日いい月が見えますよ。強い雨も降らないものだから雷にも会えませんね。……ええ、そうです。あなたとはまた違った雷神ですよ。……そうですね、雷神は月に会えないでしょう。そのような運命の流れではありません」

(……?)

 

 何か妙な雰囲気を感じとり、紅葉は軽く目を細める。一体彼女は何を言っているのか。

 世間話のようでそうでないような感じだ。もったいぶった言い回しをしているように感じる。

 その違和感を覚えていると、不意に思い出した事があった。

 以前ドンドルマでレイン達に取り調べを受けている際、ココット村に預けていたディアブロスの角と尻尾が紛失したと月が報告しに来たことがあった。あの時は一体誰が持ち去ったのかと少し議論されていた。

 ギルド内部に敵の内通者がいるのではないかと推測され、それは最近になってゲイルだったと明かされたのだが、ゲイルは以前からずっとドンドルマにいた。ココット村にあるそれを回収する事は不可能。

 だからまた別の誰かが回収していったのだろうと落ち着いたのだが、まさか……エレナがそうなのだろうか。

 ああしてセレナと話しているように振る舞っているが、もしそうでないとしたら?

 あれは全てこうして裏で報告するためのブラフだとしたら?

 考えられない事はないだろう。

 

「……そういえば昔これで遊んだこともありましたね」

 

 ふと懐かしげに目を細めながらエレナはポケットから何かを取り出してみせる。それに目を凝らして見てみると、小さな珠のようだった。子供が遊んだり、集めたりするような色つきの珠だ。

 

「懐かしいですね、こうして眺めてみるのも。久しぶりに見つけ出してしまいました」

 

 白、紅、黒……三色の珠が彼女の白い指で弄ばれる。コリ、コロ……と珠どうしがぶつかり合って軽く音を立てる。淡い色合いをしたその珠は何か意味があるのだろうか。

 

「珠の色合いはこうして時間を掛ければ濁っていく。こうして磨いていけばまた輝きを取り戻し、上手くいけば以前よりも光を放つ。……ふふ、あなたも感じていますでしょう? 光は少しずつ大きくなっていますよ」

 

 穏やかに微笑みながらエレナはまたポケットに手を入れ、別の珠も取り出していく。淡い緑、水色、深い緑、橙色、深い赤に普通の赤、渦巻いた赤、金色……。耳に当てていた右手も使ってその珠を弄り始める。

 

「私達がそうであるように、珠にはそれぞれ違った雰囲気がありますし、好みの色もあるでしょう。取り合いをした事もありましたね。双子ですから好みの色が被ってしまうのもよくありましたし」

(内容は本当にセレナと話しているかのようだけど……本当に?)

 

 今までの流れからして彼女が本当にセレナと話をしているのかがわからない。セレナではない誰かと話している可能性がある。それが敵である可能性があり、それは同時にエレナがスパイである事が浮き彫りになるだろう。

 信じたくはないがそういう疑惑を持ちかねない事をエレナはしている。

 そんな紅葉の疑念を知ってか知らずか、エレナはまだ誰かと話を続けていく。

 

「……そういえば珍しい事もありましたね。……あの件ですよ。獅子と虎が取っ組み合いをし、漁夫の利を得ようとした狩人の一件です。まさかやるとは思いもしませんでしたが、どういう心境です?」

(何の話?)

 

 狩人というのはハンターの事だろうが、獅子と虎とはなんだ? 獅子は何となく思い浮かぶが、虎とは誰の事だろう。

 それにエレナと話している相手……その戦いの時に何かをやったのか?

 一体何をやった?

 ダメだ……言葉が、情報が少なくて全然その何かが見えてこない。これは一度退いて昴と優羅に話すべきだろう。そう判断して酒場へと戻ろうとした時、話し続けていたエレナの視線が紅葉がいる方へと向けられた。

 

「さて……そろそろ行きましょうか」

 

 ぽつり、と呟かれた言葉に続くように肩に止まっていた白い鳥がその赤い瞳を紅葉へと向ける。すると紅葉を貫くような強い威圧感が放出された。

 紅葉の背中に電流のような感覚がはしり抜け、踏み出した足が強制的に止められてしまう。

 頬に冷や汗が流れ、自然と体が恐怖に震え始めた。

 今まで感じた事のないくらいの規模での威圧。これをあのエレナが放っているというのか?

 人間じゃない。

 これだけの威圧を放つなんて絶対人間じゃない。

 まさにこれは――――古龍種が放つような威圧に近い。

 バカな、バカなバカなバカな!?

 古龍種だとか何を考えている!? エレナは人だ。人族だ。例え敵だったとしても彼女は人であることに間違いない。この威圧も彼女の中に秘められた力が――

 

(――今はただ忘れよ。小娘)

 

 そしてまた電流がはしり抜けるような感覚と共に、体中の力が抜けてしまった。気づけば膝から崩れ落ち、紅葉は地面に座り込んでしまっていた。

 

「…………え?」

 

 一体何故自分はここで座り込んでいるんだろう?

 一体何故自分はここにいるのだろう?

 ここはどこだろうか。

 状況を把握しようと辺りを見回してみようとするが体が動かない。訳が分からない。自分は一体どうしてしまったのか。

 

「――どうかいたしましたか、紅葉さん?」

 

 そこで背後から聞こえてくるエレナの声。続いて紅葉の前に回り込んでそっと手を差し出してくれた。その手を取ろうとしたが、太陽の光を受けて影になっているその笑顔がどこか読めない。

 肩にいたはずの白い鳥もいつの間にかいなくなっている。が、先ほどの記憶が抜け落ちているためそれに気づかない。

 そんな紅葉の手を取って優しく立たせてくれたエレナは、軽く紅葉の体をぽんぽんと叩いて汚れをはたいてくれる。

 

「ふふ、こんな所でぼうっとしていてはいけませんよ? よからぬ事に巻き込まれてしまいます」

「……あ、え?」

「では私は仕事に戻りますね。紅葉さんも早く昴さん達の所に戻っては?」

「あ、そう……だね。うん、ありがとうエレナ」

「いえいえ。では失礼いたしますね」

 

 にこやかに言いつつ礼をすると、そのまま彼女は裏口へと向かっていった。……薄く笑みを浮かべながら。

 残された紅葉も軽く頭を押さえながら頭を振って一体何が起きたのかを思い出そうとする。そうして思い出せたのはあの奇妙な行動をとるエレナの様子を見に来たという事だけ。彼女が話していた内容はまったく思い出せない。

 

「…………何もなかった、という事でいい……の?」

 

 そんなわけがないと心のどこかで思ってはいるが、それを思い出す事を頭が拒否している。それが異常だとどこかで感じていても心がそれを許さない。

 仕方がないので紅葉はエレナに続くように裏口から酒場へと戻っていった。

 

 その様子を木の上で見ている視線がある事に気づかずに。

 

(最初に疑ったのはあの小娘、か。その行動は何かを知るためには必要な事。……しかし相手が悪かった。それが運の尽き、という事よ)

 

 あの白い鳥はじっと紅葉の様子を窺っていた。記憶を弄った事で紅葉の中で僅かな疑念だけが残ったようだが、あの会話の内容が完全に消えているのは良しとしよう。

 それにしても、と鳥は考える。

 ずっと彼女を使ってハンター達を眺め、報告を受ける事で情報を集めていたがこうまで変わらないとは……つまらない。そうしなければならないという意志に則って自体が動いているのは間違いないようだ。

 

(やはりどれだけ繰り返しても鍵は奴らという事か。……ならばよい。その成長具合はあの駒が見てくれよう。それにただ傍観するだけでなく今回の最後の詰めも果たしてもらわなくてはならぬ。……そうすればあのバグの始末に近づく事が出来よう)

 

 自分の目的を果たすためにはやはりこの流れに乗せるしかあるまい。直接的に手を下すのはルール違反。ルールに則るにはやはりこの流れに従わせなければならない。面倒だがそれが世界のルール。

 目障りだと感じていても消すためにはルールに従わなければ世界は更に狂うだろう。

 だからこそ利用する。

 小さな波はやがて大きな波となり、小さな波の軍勢を飲み込んでいく。ならばその小さな波に少し仕掛けを施せばいい。あの駒がそれを担ってくれるだろう。

 それが彼女がここにいる理由の一つ。

 わざとらしく異質に振る舞っているが、あれはまさに見えている撒き餌。今回は紅葉が釣れたようだが、本来ならば殺しても問題はない。しかし昴と優羅が紅葉がどこに行ったかを知っているため手を出さなかったにすぎないのだ。

 もし彼女が何も言わずについてきたならば……紅葉の命はここで消えていただろう。

 

(次に知ろうとするならばもう少し上手く動く事だな。あれはそう易々と尻尾は出さぬぞ? ふふふ……)

 

 尻尾は見せたがそれは小さなトカゲの尻尾。切り取られた尻尾を餌にしただけ。次に尻尾を出すのはいつになる事やら。

 何にせよ今回の事であの二人も彼女についての疑念を深めるならそれも良し。放置するのもまた良し。彼女はただ自分の役割を着実に遂行していくだけなのだから。

 表情が出る事がない鳥の笑みを浮かべたように目が細まり、そのまま光る粒子となって空へと消えていく。それと同時にこの周囲を覆っていた結界も消滅した。

 一体いつ張られたのかわからないその結界が、あの紅葉を貫いた威圧を外部に漏らす事を防いでいたのだ。

 

 だから紅葉が昴と優羅の下へと戻り、昴は「どうだった?」と何も知らずに問いかける事が出来る。あの威圧を彼だけでなくココット村の村長や受付嬢のベッキーも感じていないのだ。

 誰もが気付くであろう強い威圧を、誰にも気づかれずに結界を張る事で内部へと封じる。それだけでもあの白い鳥は普通じゃない事がよくわかる。

 あれは一体何なのか。それは誰にもわからなかった。

 

 そして紅葉は昴の問いかけにこう答える。

 

「うん……よくわからない。セレナと話しているように見えたけど……」

 

 よく覚えてないのに自然とそう口にしてしまっていた。紅葉自身どうしてこう口にしてしまったのかわからない。だがそれで昴も頷き、ちらりと仕事に戻っているエレナへと視線を向けた。

 彼女はまた笑顔を見せながら接客している。その様子はいつもと何ら変わりない。さっきまでの会話などなかったかと言わんばかりの変わりのなさだ。

 だがクエストボードを眺めていた優羅はその真紅の瞳を細めてエレナを窺い見る。無言でじっと見つめていた彼女の視線に気づいているのか気づいていないのか、エレナは酒場を動き回って注文を取ったり運んだりしている。

 

(……何かが違うように思えるのは気のせい?)

 

 裏口から出ていった際に視たものと、戻ってきてから視えるもの。それが僅かに違うように思えた。そう……何かがいたような、その名残が視える気がする。

 気のせいなら気のせいでいい。

 でも気のせいでないならば、どうして今まで誰も気づかなかった?

 

(……やはり油断ならない。一応あいつの事は頭に入れておくか)

 

 他人の事は覚えない優羅だが、最近は敵であるならば一応記憶をとどめておくようにしている。昔は敵ですらも忘れていった彼女ではあるが、昴と共に行動するようになってからその辺りの事は改善されている。

 気になった事、注意するべき事などは自分の感覚と視えているものを含めて覚えておき、何か変化があった際に気づけるようにしているのだ。これもシュヴァルツの血統による超感覚の片鱗によってもたらされたものだ。これがあるからこそ昴達では気づかない何かに気づく事が出来る。

 だから何かあれば教えてほしいと昴から頼まれているため、優羅はそこを改善する事になった。

 

 さて、紅葉も戻ってきた事なのでエレナの事は一度横に置いておくことにする。もし敵だったとしても今はもうボロを出す事はないだろう。ずっと彼女に張り付いていられる程自分達は余裕があるわけではない。

 ならば当初の予定を進めていく事にした。

 話し合いの結果、ストロンボリ火山へと素材採集ツアーに行く事にした。その際狂化竜と遭遇するようなことがあれば討伐する事を許可される。討伐に成功したならばその狂化竜の素材は浄化して昴達へと還元されることになった。

 もしその素材を使用して何かを作るならばそれも良しとする。

 以上の決まりの下、三人は準備を進めてストロンボリ火山へと向かって出発した。

 

 

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