呪われし血統と黒き竜   作:流星彗

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14話

 

 

 ドスガレオスの一件から1ヶ月。

 酒場では昴たちがいつものように一つの席に集まっていた。これからクエストに行くのだろうとライムとシアンは思っていた。今日は一体何をするのだろうか。ワクワクとしながらその時を待っている。

 1ヶ月の時間は二人に飛躍的な成長を与えた。

 まずはライム。腰に挿している武器はヴァイパーバイトからデスパライズへと強化されていた。ヴァイパーバイトの最終形態であり、純粋な攻撃力や麻痺毒の強さも強化されている。

 シアンの武器はインセクトオーダーのままだ。だがその装備が変化している。それはライムも同じだった。

 二人の装備はクックシリーズと呼ばれるものへと進化している。イャンクックの素材を使用することによって、防御力は格段に上昇することとなった。

 スキルも体力上昇、攻撃力上昇(小)が付いている。二人は体力がまだまだ少ない方だったので、これはありがたいスキルだった。加えて装備には穴が埋められるように何か石のようなものが嵌っている。

 これは装飾品と呼ばれるものである。武器や防具にはそれぞれスロットと呼ばれる穴が空いていることがある。これは装飾品を埋めるための穴であり、装飾品は攻撃珠や防御珠などと呼ばれている珠のことだ。

 これらはピッケルで掘り出した際に見つかる源珠から作り出される。水光源珠や陽翔源珠などが主である。これらに他の素材を加えて加工することにより、装飾品が作られるのだ。

 装飾品そのものに力が宿っており、防具に込められているスキルポイントを加算する力がある。つまり、スキルポイントが足りなくて発現することがなかった力が装飾品の後押しによって発現することが出来る。もちろん元々発現していた力を増幅させルことも可能だ。

 それにより二人のスキルは体力更に上昇し、攻撃力上昇(中)へと昇華されている。

 もちろん装備品だけが成長しているわけじゃない。クエストも多く受けることにより、イャンクックやドスゲネポス、ドスガレオスとも戦闘経験を積んできた。

 奇襲にもある程度慣れ、彼らを前にしてもそんなに怯えるようなことはなくなっている。昴と紅葉も二人の成長を感じており、そろそろ次のステップに入ってもいい頃合だと思っている。

 そしてライムとシアンもまた昴の様子に何となく気づいており、そろそろ次のランクのクエストを受けられるんじゃないかという期待があった。

 だからこんなにもワクワクしているのである。

 

「……さて」

 

 昴が腕を組みながら発言する。いよいよだと、知らず背筋が伸びる。

 

「二人もなかなか成長しているようだし、俺たちはそれを嬉しく思う」

「はい」

「わたしたちもお二人のおかげでここまでこれたことがうれしいですよ!」

「おうおう、言ってくれるね~」

 

 紅葉がご機嫌な様子でシアンの頭を撫でる。それに対してシアンはとろけたような表情をし始める。これはもういつものことになっているので、昴とライムはスルーすることにした。

 

「そこで俺たちは決めた」

 

 来る、とライムが身構えた。

 

「『吹雪』は2週間の休みをとることにした」

「「…………はい?」」

 

 その言葉に二人の呆けたような声がハモってしまう。

 

「ちょ、ちょちょ、どういうことですかぁ!?」

「どうもこうもない。2週間の休みを取る」

 

 思わず身を乗り出したシアンに、ビールを飲みながら昴が同じ事を繰り返す。

 

「休みって、いきなりどうして……」

「狩り続きなのも疲れるでしょ? 確かにあたしたちはハンターだから狩りを続ける毎日なのが日常。でも、それだけ体を酷使し続けるのもだめなのよね。だから時折体を休めるのよ。あとは、チームとしてずっと行動するだけじゃなくて、プライベートな時間もとる、という意味もある」

 

 黙ってしまった昴に変わって紅葉がそう説明した。

 

「あんたたちだって、たまには一人になりたい時もあるじゃん? まあ久々に二人で過ごす、ってのもいいけど」

 

 その言葉にライムとシアンが顔を見合わせる。紅葉の言葉には一理ある。人は誰だってそんな時もあるものだ。

 

「だから2週間のチームとして行動する時間の休みをとる。その間は好きにしていいよ。体を休めるもよし。街まで行って買い物するもよし。久々に一人でなんかクエストに行くもよし。あとは、二人でデートするもよしってね。……ふふふ」

 

 最後のほうは何故か目を細めてニヤリと笑みを浮かべてそう言った。

 

「ちょ、で、デートって、そんな、紅葉さんっ!?」

 

 案の定純情なライムが反応してわたわたと慌てだす。そんなライムを見てより一層おもしろそうなものを見る目でニヤニヤと笑い出す。

 一方シアンは口元に手を当てて何かを考えているようだった。そしてポン、と手を叩いてうなずく。

 

「それもいいかもね。ライム、久々に二人で出かけよっか」

「へ?」

「お?」

 

 そんな言葉に気の抜けた返事をするライムと、状況が意外といい方向にいっていることを感じた紅葉の声が重なった。

一方昴は関わるのをやめたのか、一人の時間を作り出してビールを飲み続けている。

 

「うん! そうしよう! 明日でいいよねっ!?」

「え? あ、えと、……うん」

「よし! 決まり!」

 

 もう決めたとばかりに日程まで言われると、その雰囲気に押されてライムは思わずうなずいてしまった。シアンはもううきうき気分であり、机の下で足をぶらぶらさせながら明日の予定を考え始めている。

 そんなシアンを見てライムは少しだけ顔を赤らめながら挙動不審になっている。ふと事の発端となった紅葉を見ると、視線に気づいてぐっと親指を立ててウインクしてくる始末。

 

(いや、ぐっ、じゃないですからっ!! 絶対面白がってるでしょ!?)

 

 そんな風に心の叫びをしていると、彼女の表情が変わる。半目になり、なにかを伝えるかのように手を動かし始める。ちなみに彼女が言っているのはこんな感じだった。

 

(はぁ? そんなの、当たり前でしょうがッ! これを楽しまずに何を楽しめと?)

 

 なぜか彼女の言葉がありのままに伝わってきたような気がする。大きく溜息をついて隣にいる昴に助けを求めるように見上げた。

 

「…………」

 

 しかしビールを飲み、肉を食べるだけで何も言わない。

 

(紅葉さんを止めてくださいよぉ……)

 

 そんな風に肘で突いてみる。すると微かに視線を向け、そして紅葉に視線を向ける。

 

(止めるな。あたしの楽しみが減る!)

 

 ギロリと一瞬だけ睨みつけられた。

 

「…………」

 

 再びライムに視線を向けて小さく首を振った。

 

「無理だな。というか、ああなったら止まらん」

 

 微かな声で終了のお知らせを告げる。やっぱりそうなのか、と大きく溜息をついた。

 

 

 さて次の日。村の商店街入り口でライムはシアンを待っていた。

 服装は白のシャツに青いジャケットを着ており、下は紺のズボンである。首元にチェーンのネックレスが付けられている。いつもは下ろされている長髪が今日はゴムで纏められてポニーテールのようになっている。

 一緒に暮らしているのに何でこんな所で待っているのかというと、前日に紅葉がライムにそうしろと言っておいたからである。

 

『デートっていったら、まずは待ち合わせからでしょうよ。自宅で一緒に暮らしてる? そんなの関係ないでしょうよ。いいから、待ち合わせしときなさい』

 

 なんともおせっかいな人だった。

 そして待つこと数分、待ち合わせの相手がやってきた。

 

「ライムーー!」

 

 大きく手を振って駆け寄ってくるシアン。そちらに目を向けると呆然としてしまった。

 彼女は淡いグリーン下地に、スカートの部分が花柄のワンピースを着ている。走るたびにスカートが舞い上がって白い足がチラチラと見えている。

 そしてワンピースを着ているからだろうか。小柄ながらも意外と大きめな胸が誇張されている。少しだけ揺れている胸に思わず視線が向けられてしまうのは男の性なのだろう。

 いつもはツインテールにされている水色の髪は下ろされており、日の光と舞い散る汗でキラキラと光っているようなきがした。

 

「はぁ、ふぅ、おまたせ! 待った?」

「…………」

 

 少しだけ屈んで呼吸を整えると、そのまま見上げてくる。返事をしないといけないのにライムは何も言えなかった。

 上目使いになっているシアンの顔は薄く化粧をされていた。いつもと違う雰囲気を持つ幼馴染。見慣れないその様子に加え、屈んでいるせいで胸元の谷間がうっすらと見えてしまう。

 そんなダブルパンチを食らってしまい、純情なライムの口は何かを言おうと開かれるが、喉に詰まって声が出なかった。

 

「?」

 

 ライムの様子に首を傾げてくるシアン。それもまた男の心に突き刺さってしまうため、思わず視線を逸らしてしまった。

 

「どしたの? なにかあった?」

「あ、い、いや……その……」

 

 チラチラとシアンを見つめ、何とかその言葉を引き出した。

 

「……似合ってるよ。うん。驚いた……」

「……」

 

 正直に白状するとシアンが固まってじっとライムを見つめる。しばらくしてゆっくりとその表情に花が咲いたような笑顔が浮かんだ。

 

「えへへ、そう? ありがとっ!」

 

 そんな笑顔にはうっすらと赤が浮かんでいる。そんな顔を見て、またしても視線を逸らしてしまう。

 なんだこれは。こんなシアンを見るのは初めてだった。戸惑ってしまうが、それでも胸のどこかで温かいものを感じていた。

 これが、デート効果と呼ばれものなのか。

 そんな風に思っていると、その手がシアンにつかまれた。

 

「じゃ、いこっ。時間がもったいないよ」

「あ……」

 

 思わずその手を見つめてしまう。

 シアンに手をつかまれたり握られるのはなにもこれが初めてじゃない。幼い頃からどこへ行くにしても、その手に引っ張られてきたものだ。だから慣れているはずだというのに、なぜか戸惑いを感じてしまった。

 

「ん?」

「……いや、なんでもないよ。行こうか」

「うんっ!」

 

 首を振って横に並ぶと、シアンはまた笑顔を見せて歩き出す。

 二人の初デートがここ、ココット村商店街で始まった。

 

 

「ほうほう、いい感じじゃないの。見た見た? ライムのあの顔。いやぁー、純情君ってホントにからかいがいがあるわ、うん」

「…………」

 

 そして二人から数メートル離れた場所にある木に身を隠しながら見守る、いや、盗み見している影が二つ。

 もちろん一人は紅葉である。隣には腕を組みながら溜息をついている昴がいた。二人は初日に着ていた黒と赤の和服を着ている。周りと比べてみれば浮くような衣装だが、和服以外の私服は持っていないのでしょうがない。

 

「……本気でついていくつもりか?」

「もちろんでしょうよ。あの二人の初デートの様子を見守らないなんて、ありえんでしょ? それにおもしろそうだし」

「……後者が本命だろうに」

「あ? ばれた?」

 

 悪びれずに笑みを浮かべる紅葉にまた溜息をつく。

 昴としては今日一日寝ていようかと思っていたのだが、予想通りというべきか紅葉に叩き起こされてしまった。なんの用だと聞けば、二人のデートを観察する、と言われてしまった。

 自分は行かないと何度も行ったのだが、結局無理やり連れてこられてしまう。

 

「こういうのはそっとしておいてやるのがいいと思うんだがな……」

「あたしがそっとしておくと思ってるの?」

 

 意地の悪い笑みを浮かべながら肩越しに振り返る。

 

「思わんな」

「でしょう? ほら、行くよ」

 

何やらテンションが上がっている様子に、頭を掻きながら溜息をつく。こうなったら放置しておけば何をするかわからない。自分は様子を見るのではなく、紅葉が必要以上にかき乱さないように監視しておこう、と腹を括ることにする。

 

「ふっふっふ……おもしろくなってきたよ~奥さん。『姉は見たッ! 純情君の幼馴染との初デート』ってね!」

「……奥さんって誰だよ。というか、なんだそのタイトルは?」

「雰囲気よ雰囲気。盛り上げていかないとね、こういうのは」

 

 紅葉は気配を消しながら木から離れていく。その後ろを袖に手を入れながら続いていく。

 

「そういうのはいらんだろうに……」

「何言ってんのよ。こういう雰囲気があたしにとってのスパイスになるのよ。ほらほら、急がないと見失うわよ」

 

 手を動かしながら見失わないように足音を立てずに歩きつつ、一定の距離を取る。そんな様子に昴は目を閉じてうつむいた。ああなった紅葉は昴が何を言おうとも聞き入れないだろう。わかっていたことだが、やはり止められなかった。

 

「……ライム、すまん。俺には、無理だ……」

 

 聞こえていないだろうが、せめて謝罪だけはしておこうと呟くのだった。

 

 

「っ!?」

 

 その時、ライムの背筋に悪寒が走りぬけた。慌てて辺りを見回し、後ろにも視線を向ける。しかしおかしなことは何もなく、いつもの商店街の光景がそこにあった。

 少ないながらもそれなりに人でにぎわっており、露天の店主たちが呼び込みをしている。

 

「……気のせいかな?」

 

 首をかしげてそう呟いた。

 

「ん? ライム、どしたの?」

「あ、うん。なんか変な感覚が……。まあ、気のせいだよ。うん。ごめんね」

 

 手を繋いだまま苦笑すると、シアンもまた気にしないようにしたようだ。

 

「む、何で気づいたのかしら? あたし気配消してるのに、何か漏れてた?」

 

 露天の一部の壁に身を潜めながら紅葉が呟く。

 

(そのよからぬ空気だろ?)

 

 その後ろで腕を組みながら昴が心で突っ込む。

 

「……あ、おっちゃん。これ二つお願い」

「はいよっ!」

 

 そのまま紅葉が並んでいた食べ物を二つ頼んだ。

 

「ほい。行くよ」

「……」

 

 そのうちの一つを昴に渡して紅葉は再び追跡を開始する。

 

 露天を回りながら二人は色々な商品を見て回る。屋台でアプトノス肉のソーセージを使用したフランクフルトを買い、食べ歩きをする。

 

「あむ、んぐ……」

 

 シアンは先端から大きく口を開けてかぶりつく。フランクフルトにはシモフリトマトのケチャップをかけてあり、かぶりついているシアンの口元に少しケチャップがついていた。

 

「ほら、ケチャップついてるよ」

「んぐ?」

「ん、動かないで……」

 

 ポケットからハンカチを取り出して軽く拭いてやる。咀嚼しながらライムの手に身を任せていたシアンは、じっとそのライムの顔を見上げる。

 最近のライムは昔に比べると逞しくなっていく。昔も今日のように家から連れ出して遊びに出たことは何度もある。商店街を歩き、ライムの兄の奢りで色々食べ歩きもしたものだった。

 いつだってライムを引っ張ってきたのは自分だ。生まれはライムよりも遅いけど、自分はライムのお姉ちゃんのようなものだった。

 でもハンターになってからは何やらこうやってライムの世話になっていることがある気がする。最初のうちはそうでもなかったけど、この1ヶ月がライムに変化を与えたのだろう。少し余裕が持ててきたのか自分を気遣うようなそぶりを見せ始めた。

 今こうして近くにあるライムの顔は、どこか男らしさが見え隠れしている。元々中世的な顔つきをしており、長髪だったライムは幼い頃から女の子に見間違えられたことがある。

実際にシアンはライムに女装をさせたことは何度もある。……うん、何度もあるのだ。

そして旅人の前に出れば「可愛いお嬢ちゃんたちだね」とほぼ絶対に言われ続けた。そのたびにライムは涙目になっていて、それがまた可愛かったものだ。

見た目こそ変わってないが、雰囲気が変わっている。

そんな変化を間近で感じてしまい、なぜかシアンは胸元が熱くなってしまった。

 

「…………」

「ん? どうかした?」

「あ、ううん、なんでもないよ」

 

 ふるふると首を振るとそのまま視線を逸らして再びフランクフルトにかぶりつく。

 これって、意識してるのだろうか。

 今やっているのは幼い頃にやったことと同じことだ。しかし今はライムの兄はいないし、昨日のうちにデートだと発言している。チラッと視線を向けてみれば、ライムもまたかぶりついて咀嚼している。

 

「ん?」

 

 そこで視線が合ってしまった。頬が赤く染まっていくのを感じると、ああ、やっぱり意識してるんだと感じてしまう。

 

「あ、あの、ね……」

「うん……」

 

 幼い頃から胸に潜んでいた感情も同時に感じ始める。あんなにライムを引っ張りまわしていたのはただ遊びたかったからじゃない。一緒にいたかったからだ。

 その根本にあったもの。それは……。

 

「わたし、ね……」

 

 その続きを言おうとした時……。

 

「おう、お二人さん! 今日も一緒か!」

 

 露天の店主が声をかけてきた。シアンの言葉が途切れてしまい、二人の視線が店主へと向けられる。

 

「ハンターになっても変わらないな、二人は。ははは」

「あ、うん。そうだね」

 

 どこかぎこちなく言うが、すぐにまたあの笑顔を見せる。

 

「あら~、シアンちゃんにライムじゃないか。今日も一緒かい?」

 

 どこかの主婦らしき女性がそんな風に声をかけてきた。

 

「こんにちは、おばさん!」

「こんにちは」

「相変わらず仲が良いねぇ~」

 

 にこやかに言うと、シアンがライムの腕に抱きついた。

 

「うんうん。わたしたちはいつだって仲良しさんだよ!」

「あ、う……」

 

 腕に抱きつかれたことで胸の感触が直に伝わってくる。ワンピースなせいで柔らかい感触が腕に伝わり、ライムはとたんに赤くなってしまう。

 

「いやぁ、見せてつけてくれるねぇ! ほらっ、これでも持っていきな!」

 

 新鮮な果物を手渡される。瑞々しく美味しそうに熟れたそれをサービスされればありがたいことこの上ない。それがちょっとしたからかいと祝福を含んでいたとしても。

 

「ありがとう! おじさん!」

「いいってことよ!」

 

 果物をライムと分けながら二人は手を振ってその場を離れる。

 それからは小物などを見回り時間を潰していくが、あれ以上の発展はなかった。だがそれでも二人にとっては久しぶりの時間であり、充実した一日となった。

 

 

「ん~、いいものを見たよ。うん。少し惜しいこともあったけど、ま、いいんじゃないかな」

 

 果物にかじりつきながら紅葉が呟く。その隣では、ホットドッグを咀嚼している昴がいる。なんだかんだで二人もまた商店街を堪能しているようだった。

 

「んぐ、んぐ……あの二人ならいいパートナーになれそうね。あんな風な純情カップルも悪くはないか。そう思わない?」

「……ケルビにでも蹴られてろ」

「なにをおっしゃるか。あたしはただ暖かく見守ってるだけだって」

 

 にっと笑って昴の腕を取る。近づいてきた昴の耳元に口を寄せると囁きかけるように呟く。

 

「それに、あたしたちもそれなりにいいデートが出来たじゃん?」

「……」

 

 その言葉に昴が固まる。それに吹き出した紅葉がバンバンと背中を叩いて身を翻した。

 

「さ、かえろっか。楽しい一日だったよ。またこうして一緒に出かけようじゃない」

「……ふん」

 

 鼻を鳴らすが昴の口元は小さな笑みが浮かんでいた。

 どうやら手玉に取られていたのはライムたちだけじゃなかったようだ。デートとはいいがたいことかもしれないが、彼女にとってはかろうじてデートだったのかもしれない。

 一緒に出かけることに関してはそんなに反対するようなことでもないので、小さくうなずいてやる。

 すると紅葉がいい笑顔を見せて軽やかな足取りで歩き始める。

 

 こうして二組の男女の休日が終わりゆく。

 

 

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