呪われし血統と黒き竜   作:流星彗

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38話

 

 

 クシャルダオラの風ブレスから逃れるため、昴は鬼斬破を抜いて自ら崖へと飛び込んだ。背後でブレスが着弾し、更に勢いを増して落下していく。

 その際に昴は優羅を守るように胸元に抱えてやる。

 

「……く、昴……!」

「大、丈夫だ……」

 

 吹雪によって下が見えづらいが、まだ地面は遠い。だがすぐそこは岩肌になっており、所々こちら側へと隆起している場所がある。

 下から吹き上げてくる冷気が体中を襲い、二人はまだまだ落下していく。

 大丈夫とはいっているが、この勢いのまま落下を続けていれば間違い無く死ぬ。

 その時、昴の目に岩肌が落下地点にある事に気づいた。

 

「くっ……!」

 

 咄嗟に優羅を今まで以上に胸元を抱えて頭をかばってやる。そのまま目を閉じて襲いかかる衝撃に備える。

 

「ガッ……!?」

 

 岩肌に強く頭を打ち付けてしまった。自分の落下速度や岩肌の硬さによって頭に強い痛みが走り、昴は意識を手放す。

 突然の出来事に昴の胸に顔をうずめていた優羅が顔を上げた。

 

「……す、昴っ!?」

 

 呼びかけるが反応がない。しかしその手はまだ優羅をつかんでおり、手放すことはなかった。意識を失ってもなお、彼は優羅を守ろうとしているのである。

 そこで優羅は気づいた。

 白い世界の中に赤が混じっていることを。

 見上げれば彼の額から血を流していた。先ほどの衝撃で彼は意識を失ってしまったことに気づき、優羅は歯噛みする。

 

「……く、どうすれば……」

 

 下から吹き上げてくる風の力は少し弱まっている。肩越しに下を見れば、地面が見えてきている。だが時間にして数秒で地面に激突するだろう。

 一瞬の判断がカギだ。

 

「……っ!」

 

 助かる方法はおそらく一つ。優羅は下を見たまま意識を集中させる。イメージを固めて粒子を集めていき、それを地面から少し上の場所でその力を解放させた。

 それは大きな爆発。

 自分の扱う火系統の爆発の力を、持ちうる力を使って爆発させたのだ。爆風が吹きあがり、優羅たちを浮き上がらせる。落下速度がそれによって弱まり、そして優羅たちは今までよりもマシな速さで地面に落下する。

 

「……ぐ、はっ」

 

 背中に少し強めの衝撃が襲いかかり、肺の空気を吐き出してしまう。

 下には雪が積もっていたはずだが、爆発で少し吹き飛んでしまっている。どうやら目測を誤ったようだ。予定では地上から少し上の方で爆発させ、雪をクッションにして落ちるはずだった。でも地面近くに爆発を起こしてしまったのでクッションの役割をする雪を吹き飛ばしてしまった。

 優羅は薄れゆく意識の中で昴を見つめる。二人の近くに彼の手から離れた鬼斬破が音をたてて落下し、折れてしまった。

 

「……昴」

 

 弱々しく呼びかけながら彼の頬に手を添える。しかし彼は意識を手放したまま優羅の呼びかけに応えない。呼吸をしているところから死んではいないようだ。

 このまま二人で眠ってしまえば間違いなく凍死してしまうだろう。ホットドリンクの効果が切れれば、待ち受けるのはその結末だ。

 転落死から凍死に切り替わるだけ。自分たちはまだ死から逃れられていない。

 だが体は起き上がることができない。魔法を使ったせいで体の力が弱まっている。

 

「……ああ、あなたの胸の中で死ぬ、というのも悪くはないかな……」

 

 今までずっと一人だった。一人寂しく死んでいく、というのが自分の人生の終末だと思ったことがある。

 でも彼らに再会してしまった。

 

 昴にもう一度会ってしまった。

 

 寂しいという感情を思い出してしまった。

 そしてドンドルマでまた会ってからは、心の片隅で彼と一緒にいたい、という願望が少しずつ表れてきた。

 

「……もう少し一緒にいたかったな……」

 

 久しく忘れていた子供のころの願い。

 三人で一緒に過ごすこと。

 ドンドルマではいつものように振舞ってしまっていたが、本当は普通に接していたかった。周りにライムたちがいたから、いつも通りの対応をしてしまっていた。

 いや、それを抜きにして恐らく三人でいても、優羅の態度はいつも通りだっただろう。それほどまでに優羅はこのスタイルが完全に定着してしまっていた。

 意地を張っていたとかそういうのではない。

 この10年間で形成された人格は、たった数日で元通りになるほど容易ではなかった。

 それに、今は落ち着いたとはいえ再会した当時は自分の中にいたモノの件もあった。だからこそああいう振る舞いしかできなかった。

 

「……未練がましい。やはりアタシは、あなたを……」

 

 意識が落ちる前にその紅い目から雫が流れ落ちる。

 頬に当てられた手が落ち、優羅もまた意識を手放した。

 

 

 ○

 

 

 話し終えた優羅は目の前にいる男に視線を向ける。とはいえ、地面に落下してからの話は間違っても口にはしていないが。

 男は腕を組んでうなずき、にっと笑って優羅、そしてベッドのふちに背を預けている昴を見つめた。

 

「で、その数分後に俺たちが通りかかって二人を回収したわけだ」

「……たち?」

「ああ。俺はもう一人で組んでクエストをしてるんだよ。吹雪がひどくなってきたからな。さっさと終わらせて帰るところだったんだ」

 

 そこで頭を掻きながら苦笑を洩らす。

 

「よもやその途中で人が倒れているなんて思いもしなかったけどな。しかもそれがあの黒崎ときたもんだ。それはもう衝撃ってもんさ」

「……ふん」

 

 そこで優羅は鼻を鳴らしてそっぽ向く。

 彼女からすればある意味屈辱だろう。ずっと一人で生きてきたのに、男に助けられるなんて思いもしなかったようだ。しかしそうでもしなければ自分はともかく昴が死ぬことになった。

 その点に関しては感謝するべきだろう。

 だが、その昴は……。

 

「俺は、ハンターなのか?」

「……ええ、そうです。アタシたちと同じ、ハンターをしていました」

 

 記憶喪失。

 自分のことがわからない状態だった。また、彼の過去も失われている。

 だが世の中の常識などは覚えているようであり、つまりは自分に関する記憶が思い出せない状態らしい。

 医師の診断によれば、全生活史健忘。崖から落下する際に強く頭を打った時のショックで記憶喪失になったと思われる。また狂フルフルの高電圧を受けた時のダメージも多少は関わっているらしい。

 

「……あなたの名前は白銀昴。年は19歳。東方出身のハンターです。そしてアタシは黒崎優羅。18歳で、東方出身のハンターです。またあなたが暮らしていた村で共に育った幼馴染、と言える間柄です」

「そう、なのか」

「……はい。……とはいえ、つい最近まではずっと会っていませんでしたが」

 

 そこで視線をそらし、少しだけ影がかかった顔を見せた。やはり優羅としては10年も疎遠になっていたことに関しては言いづらいのだろう。昴がどうしたのか、と首をかしげるが優羅は首を振った。

 

「……いえ、なんでもありません。とりあえず、あなたはハンターとしてクエストを行っていたのですが、トラブルが発生してアタシと一緒に崖から落ちたのです」

「……そうか」

 

 その説明に昴が小さくうなずくと、男へと視線を移す。

 その視線を受けて男は胸を一回叩いて気さくな笑みを浮かべる。

 

「で、先ほども言ったように俺たちが通りかかって救出したというわけだな」

「感謝する。……ええと?」

「ああ、まだ名乗ってなかったな。俺は天草翡翠(あまくさひすい)。……偽名だけどな」

「偽名?」

 

 わざわざ偽名を名乗るとは訳ありなのだろう。バツが悪そうな笑みを浮かべて頭をかく彼の様子は、どこか困ったような雰囲気を持っていた。

 

「まあ……ギルドでは死亡扱いされている存在だからな。そのせいで実家に帰れねえのよ」

「死亡? それはまたどうして?」

「5年ほど前にな、あるクエストでマジで死にかけたんだよ。飛竜によるものだけじゃねえ。ある奴らに狙われたんだよ。で、そいつらから逃げるために名前を変えて、本名の方は死亡扱いにしてんだわ」

 

 少しだけ遠い目をしながら翡翠が語る。

 5年前、14歳だった彼は両親と共にベルト山脈付近でクエストを行っていた。故郷の村から出て一つのクエストを終えた際、ベルト山脈付近の村から救援要請を受けたそうだ。両親はその要請を見過ごすことはできず、翡翠と共にその村へと向かった。

 到着すると、そこには異質な飛竜がいた。

 黒く染まったリオレイアである。

 今まで見たことのない存在に圧されたものの、助けを求める村人のために三人は立ち向かっていった。

 父親が前線、母親が後衛を行い、翡翠が遊撃と村人の誘導を行うことでリオレイアは討伐されたが、問題が発生した。

 その場所に何者かが現れたのだ。

 村人の生き残りだけでなく、両親にまで攻撃を行ってきたのだ。

 

 ――曰く、目撃したものは全て殺す。

 

 両親は村人の生き残りである少女と翡翠に逃げるように言い、その何者かへと立ち向かっていった。しかし何者かは見逃してはくれなかった。

 少女をかばう際に背中に傷を負いながらも、翡翠と少女は何とかそこから逃げ出すことに成功し、ポッケ村へと流れついたそうだ。

 

「……でも、親父たちは死んでしまった。後で聞いた話だ」

 

 ため息をつきながら影が入った表情で呟いた。つまり翡翠の両親は我が子と生き残った村の少女のために、文字通り命を懸けて戦い抜いたということになる。

 

「で、ポッケ村に着いた後に、俺はあいつと共に身を隠すことを選んだ。村に帰れば弟や村人たちに迷惑がかかるからな。何せ俺たちは文字通り命を狙われてたんだ。だから名前を変えて、本名を殺した」

「……なるほど」

 

 その説明に昴は納得したようにうなずいた。

 一方優羅は相変わらずの無表情だったが、どこか厳しい目をして翡翠を見つめている。その視線に気づき、翡翠は少しだけ首をかしげる。

 

「どうした?」

「……黒く染まったリオレイア。そう言った?」

「ああ。そうだけど、それが?」

「……なるほど、お前もか」

 

 目を細めながら小さくうなずいた。

 黒く染まったリオレイア。それは間違いなく狂化したリオレイアだろう。そしてその何者か、というのは狂化竜を生み出している人物に間違いない。

 5年前ならば、まだ狂化竜の存在はまだ知られていない時期。つまり目撃者は皆殺し。村人だけでなく、狂化竜を倒せる実力を持つ彼の両親は何としても始末するべき対象に含まれる。

 よもや翡翠もまた狂化竜の事件に関わっているとは思いもしなかった。というより優羅自身が人と関わり合うことがないので、聞く気もしなかった、というのもあるだろう。

 

「お前もって、まさか黒崎は会ったことがあるのか?」

「……ある。というより、昴が狂化竜を追っている」

「俺?」

 

 自分を指さしながら少しだけ驚いた顔をしている。やはり記憶を失っているせいで狂化竜を追っている事さえも覚えていないようだ。

 

「……ええ。あなたは黒く染まった竜、狂化竜を追っているのです。そのため東方からこちら側へと旅を続けていました」

「それはなぜ?」

「……アタシたちの村が10年前に狂化リオレウスによって滅ぼされたためです。あなたはこれ以上狂化竜によって何かを失う人を出さないため、狂化竜を追っていたのです」

 

 以前に狂化ディアブロスと戦った後に聞かされた話を話す。記憶を失っている彼は覚えていないので、ここから説明しなければならなかった。

 また後ろで聞いていた翡翠が優羅の説明で少しだけ驚いた顔をしている。まさか優羅の故郷がすでにない、というのは思いもしなかったのだろう。彼と共に逃げ出した少女と同じ境遇とは、これも何かの運命なのだろうか。

 

「……となると。昴がこの状態だから、アタシたちもここに滞在した方がいいのか?」

「そうだなぁ。黒崎たちは他に仲間はいるのか?」

「……アタシは一人。しかし昴はあと三人いる」

 

 『吹雪(ブリザード)』の他のメンバーが今頃心配していることだろう。特に紅葉はトラウマが発動しているに違いない。早いところ昴を帰したいところなのだが、記憶を失っていると知った時の反応が怖い。

 それも自分の責任でこうなってしまっているのだ。そう考えると胸が痛む。

 だから帰るに帰れない。

 加えてここにも狂化竜を知っている人物がいるのに、この5年間今まで隠れていられる。ならば、ここに滞在して昴の記憶が戻るのを待った方がいいかもしれない、という考えが浮かんだのだ。

 そう説明すると、翡翠は腕を組んでうなずいた。

 

「うし、オババに掛け合ってみるわ。空き家があったし、滞在する分には問題ないと思うぜ」

「……そう」

「しかし俺のこともある。迷惑じゃないのか?」

 

 昴が少しだけ困った顔で言うと、翡翠は彼の肩を何度か叩いて笑いかける。

 

「いいや、んなことねえよ。この村の人たちは結構曲者ぞろいでな。俺たちの時だって喜んで引き受けてくれたよ。だから大丈夫さ」

「……そうか。申し訳ない。感謝する」

「おう。これからもよろしく頼むぜ」

 

 

 そして村長であるオババに翡翠が事情を説明すると、快く二人を迎え入れてくれることとなった。坂の上にある空き家を貸してくれることになり、家賃は優羅が全額支払うことになる。

 昴の記憶が戻る時期は不明だが、調子が戻ってくるまでいつまでもここに滞在していい、と言ってくれた。二人は空き家に同居することになり、家事は全て優羅が行ってくれることになる。彼女の家事スキルの高さがここで生きることになろうとは、彼女も思いもしなかっただろう。

 しかし彼女は何としてもこれは自分が全部やる、と譲らなかった。もし昴の記憶が残っていたら驚くことだろう。実際翡翠もその様子に驚きを隠せない。

 人との付き合いを避けていた彼女が、自ら率先して人の世話をしようというのだ。

 しかし彼女にも思うところはあった。自分のせいでこの状況に陥ったことで責任を感じているのだ。だから罪滅ぼしとして昴の世話は自分がやる、と譲らない。最初こそ昴は自分も何かやる、と言ったが、彼女の様子に圧されて最終的には頼むこととなった。

 そして彼女の家事スキルは目を見張るものがある。

 料理は絶品。

 掃除、洗濯は完璧。

 手際が良くてそつなくこなしていくその様はまさしく主婦。

 その才能は翡翠だけでなく、村人たちも唖然とするほどだった。『孤高の銃姫』の噂はポッケ村にも届いており、何より知り合いである翡翠からも色々と話が広まっていた。

 故に――

 

 ――あの(・・)『孤高の銃姫』の意外な一面に誰もが驚愕した。

 

 ちなみにそのことをツッコんだ猛者は、全員優羅によって診療所に送り込まれてしまったことをここに記す。

 

 

 さて、そんなポッケ村での暮らしだが、昴は考えていたことがあった。

 自分はハンターだったらしい。覚えてないのだが、優羅が言うのならば間違いないだろう。診療所に送り込まれた際に自分の装備がフルフルD装備をしていたし、折れてしまった鬼斬破も壁に立てかけられていた。

 加えてローブの中に他の太刀や道具もいろいろ入っていた。

 今現在優羅は昼食を作ってくれている。台所からは小刻みよく包丁の音が聞こえ、美味しそうな匂いが漂ってきている。

 

「……やはり、やったほうがいいか」

 

 小さくうなずき、呟いた。昼食を食べ終えたら優羅に話そう、と決意を固める。

 やがて昼食が運ばれてきた。

 メニューは米虫や銀シャリ草に様々な野菜を使用したガッツチャーハンと、同じく野菜だけでなく、ポポのチャーシューなどをトッピングしたギンギラーメンだ。また付け合わせとして激辛ニンジンやシモフリトマトのスライスが添えられている。

 また優羅は黒い和服に黒い長髪を藍色のリボンで結んでポニーテールにしている。幼い頃も家事をする際はこうやってポニーテールにしていた。この暮らしが始まって初めてこの恰好をした時、昴がどこか呆然とした顔で優羅を見つめていた。

 幼い頃の記憶を思い出したのか、と優羅が期待したが、ただ見覚えのある光景だったと呟くだけに終わってしまった。

 

「……何か話があるのでしょうか?」

 

 昼食を食べている途中で優羅がそんなことを言ってきた。

 ガッツチャーハンを食べていた昴が固まってしまう。そのまま、なぜ気づいた、みたいな視線を向けると、無表情に優羅が答える。

 

「……いえ、何となくそんな風に感じただけです」

「そうか。……いや、いいか。昼食の後にしようと思ったけど、今話すことにするよ」

 

 レンゲを置いてじっと優羅を見つめて話し出す。

 

「俺はハンターとして行動しようと思う」

「……それはまた、なぜです?」

「記憶を失っているから普通に生活して記憶を取り戻す、というのもアリだと思う。でも、記憶を失う以前と変わらぬ生活をしていれば、もしかしたら記憶も早く取り戻せると思ったから」

 

 確かにその方法も悪くはない。

 だが、その方法には問題が二つあるのだ。

 一つは記憶を失っているからこそ、以前と同じ動きが出来るのかという問題。もし出来なかったら大怪我を負う危険性がある。そうなったら非常に困る。主に優羅と紅葉が困る。

 優羅は記憶だけでなく大怪我を負わせたことで責任をさらに感じてしまう。紅葉からすればいったい何をしているのか、とキレるか、またトラウマがひどくなるか、だ。

 そしてもう一つは“奴ら”に居場所を知られる可能性がある、ということだ。もし居場所を知られようものならばどうなることか。殺される可能性があるのに易々と許可できない。

 

「……ですから、アタシとしては心配です」

「そう、か。まあ、そうだよな。すまない、無理を言った」

「……あ、いえ。昴一人でしたら、そういう心配があるのですが……」

「ん?」

 

 そこで紅い目がじっと昴を見据える。そこには普段の彼女には見えない強い意志が現れていた。

 

「……アタシが守ります。どんな手を使ってでも、あなたを守ります。ですから、アタシと共に行動してください。それが絶対条件です」

 

 あの優羅が、自ら共に行動することを提案した。しかし彼女からすれば、そこは絶対に譲れない条件。

 

 昴を守り通す。

 

 これが今の彼女を動かす原動力になっていた。もちろん責任なども関係しているが、それを抜きにしても彼女は昴と共にいたい、という気持ちがあったのだ。

 彼が重傷を負っているにもかかわらず、自らの体をなげうって自分を救おうとしてくれた。その結果自分と共に崖から落ちてこの状態になってしまった。

 ならば、今度は自分が昴を守る番なのだ。それにそれを抜きにしても優羅自身が昴を死なせたくないと思っている。10年の疎遠があったとしても、彼は自分にとって大事な人なのだ。絶対に死なせるわけにはいかない。

 

「……わかった。よろしく頼むよ、優羅」

「……はい。よろしくお願いします」

 

 ここに再び二人は手を結ぶこととなった。

 昴にとっての第二のパートナー。

 そして優羅にとっては生涯でただ一人のパートナー。彼女にとって自分のパートナーとは、白銀昴以外には有り得ないこと。

 

 なぜなら黒崎優羅にとって白銀昴とは、ただの幼馴染ではなく――

 

 

 

 ――ただ一人の愛する(ひと)なのだから。

 

 

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