草むらに息を潜めた優羅は、手にしたジェイドストームを構える。視線の先には辺りを警戒しているランポスが三匹。装填したのは貫通弾Lv1。銃口をランポスの一匹に向け、その頭を狙う。
照準を合わせて引き金を引くと、狙い通りに貫通弾が頭を貫き、そのランポスが絶命する。
突然仲間が死んだ事に二匹のランポスがそれまで以上に辺りを見回し、敵を探している。動き続ける頭を狙い、優羅はまた引き金を引く。それは惜しくも頬を掠めるだけだった。
「……ちっ」
思わず舌打ちが出てしまった。
狙いとしては合っていたが、ランポスが動いたことであのような形になってしまった。
やはりこういう事は経験の積み重ねが必要だ。気を取り直して新しい貫通弾Lv1を装填し、もう一度狙いを定める。引き金を引き、射出される貫通弾。今度は狙い通りにランポスの頭を貫き、これで残りはあと一匹。
すぐに狙いを定めると、ランポスがこっちに気づいて振り返る。
「…………」
だがその時にはもう引き金は引かれている。真正面から頭を撃ち抜かれ、そのランポスも絶命した。
「……ふぅ」
一息ついて優羅は立ち上がり、ジェイドストームを腰に戻す。そのままランポスの死体に近づき、剥ぎ取りナイフを取り出して剥ぎ取りに取り掛かる。
その後ろから獅鬼が近づき、優羅を見下ろして頷いた。
「少しずつ良くなっているな。ならば次は実際に前に出て撃ってみるか?」
「…………ん」
今回は密林に大量に見かけられるようになったランポスたちの討伐クエストを行っていた。ランポス相手ならば動く敵に狙って撃つ、という鍛練になるだろうということになり、
こうしてジェイドストームを持ち出してクエストに望んでいる。
現在優羅が装備しているのは、何やら普通の洋服のような装備だった。白いブラウスに黒いベストのようなものとスカート。パッと見て知らぬ人が見れば本当に私服に見えてしまうものだ。
しかしこれはれっきとしたハンター、ガンナー装備なのだ。
胸、腰、足に装備されているものはブナハシリーズと呼ばれる虫の素材を使用した装備だ。先日行ったブナハブラと呼ばれる昆虫のモンスターの討伐クエストに赴き、その素材を用いて作り上げたもの。
そして頭と腕はこれまたアロイ装備だった。どうやら獅鬼はガンナー装備もまたアロイシリーズで作り上げたらしい。
それを聞いた際、優羅はガンナー装備も自分で入手した素材で作る、と決心し、何かいいものはないかと探した。
そこで目に付いたのがブナハシリーズ。虫素材ということで比較的入手が楽ということで作り上げたのだが、なんと頭と腕が存在しないという。
やむを得ず頭と腕はアロイ装備のままでいくことになった。だがアロイ装備はブナハシリーズとは対を成すように鎧のようなもの。
今もブナハシリーズと共に腕に装着されているが、私服のようなものに手甲が装着されているというミスマッチを起こしている。しかし金などの問題により、今更変更するのもめんどう、ということでこのまま進める事になった。
そして獅鬼は罠師珠と呼ばれる装飾品を三つ手渡し、それらをそのアロイ装備に装着させた。これによって発動したスキルは、状態異常攻撃強化、装填速度+1、罠師、毒倍加となった。
毒倍加が発動しているが、優羅にとっては何の意味も成さない。
これに関してはブナハブラ討伐クエストの際、その針に刺されてしまい、麻痺毒を注入させられた時に判明した。確かに注入されたはずだというのに、一向に麻痺しないことを訝しがんだ獅鬼が、試しに優羅の血を採り、それに毒を混ぜてみた。
すると毒がその血に反応して無害なものになったのを見て、獅鬼は優羅には毒が通用しない事を悟ったのだ。
シュヴァルツにはそんな力はないため、恐らく他の魔族の血と混ざったか、また独自の進化をしたのだと判断した。
この事はシュヴァルツに関しては秘匿しつつ、優羅には特別な力があるという方向で説明した。シュヴァルツの事を知るにはまだ早い。いずれ知るべき時に知るべきだろう。
これが原因で闇に堕ちでもすれば、それこそ取り返しがつかない。
そんなことを考えていると、剥ぎ取りを終えた優羅が立ち上がった。そのまま歩き出し、隣のエリアであるエリア3へと向かっていく。その後姿を見ながら小さく息をつき、獅鬼もついていく。
エリア3は砂浜がある。その奥には道があり、エリア10に数えられる孤島がある。
そして木々が生える所にはランポスたちがたむろしている。今度は実際に相対して射撃することになっているため、弾を装填してジェイドストームを構える。
そこに集まっている数は四匹。
「…………」
木に身を潜めて呼吸を整え、意を決してランポスたちの前に出る。
「ギャル?」
当然ながら優羅に気づいて振り返ってきた。その内の一匹の頭を狙い、引き金を引いて貫通弾を射出する。狙い通りに頭を撃ち抜かれ、そのランポスは絶命する。
「ギャルァ、ギャルァ!」
突然の奇襲にランポスたちが一斉に叫びだした。そのまま身構えて戦闘体勢に入る。その間に優羅は再び引き金を引いている。しかしそれは横にステップすることで回避された。
すかさず次の貫通弾を装填するが、その間は無防備になる。それは同時にランポスたちに接近させる事を許すということでもある。
「……っ」
当然ガンナー装備をしている優羅は接近などされれば困るもの。必然的に距離を取るために後ろに下がっていく。装填を終えるとすかさず狙いをつけ、ランポスの頭を狙い撃つ。
だがまた回避されてしまった。それも想定し、回避した場所へともう一度撃つことで二匹目を仕留める。
しかしこれによってジェイドストームに装填されている貫通弾を消費することになる。ジェイドストームは貫通弾Lv1を二発しか装填出来ない。この手で仕留めるとなると、必然的にまた装填をしなければならなくなる。
狙いは悪くない。その狙いは回避されなければ中っている。
……そう、回避されなければ、だ。
やはり動く的、モンスターを相手にするのとは訳が違う。
優羅の目は驚異的な視力を持っている。だからこそスコープを一々覗く必要がなくても、狙い通りに対象を撃ち抜ける。そして比較的小さいランポスの頭を貫通弾で撃ち抜けるほどの命中力を持っている。
だがモンスターであるが故に、自身に迫る危険を察知して回避されてしまう。ガンナーはその回避も頭に入れて狙いをつけて撃たなければいけない。
これが巨大な的、すなわち飛竜であればまだなんとかなるだろう。しかし小型モンスターとなれば、こんな風に苦戦してしまう。こういう相手は散弾で一掃するのが普通だろうが、これは鍛練の一種であるためにそれは獅鬼から却下されている。
「ギャゥアッ!」
「……っ!?」
そこで装填しようと貫通弾を取り出したところでランポスが跳躍して飛び掛ってきた。咄嗟に横に跳んで回避するが、その際に取り出した貫通弾を落としてしまう。
「……ちっ」
思わず舌打ちしてしまった。こういうこともガンナーならばよくある話。一々取りに行くような愚考はしない。すぐに起き上がってランポスを見据える。
肩から下げているベルトに手を伸ばし、貫通弾を取り出して口に咥える。さらにポーチから投げナイフを取り出して左手で構える。右手はジェイドストームを腰に当てながら持ち、体を少しだけ低くしつつランポスたちの出方を窺うことにしたようだ。
「……ほう?」
思わず獅鬼の口から感嘆の声が漏れる。
ジェイドストームもそれなりに重量がある。子供にとっては少し重いだろう。しかしオデッセイブレイドを振るうことが出来る程に右腕は鍛えられている。それに加えて腰も使って構えることで何とか持っている状態らしい。
そして投げナイフは今回優羅が手段の一つとして自腹で購入してきた。もしものことを想定したとの事なので、その点まで考慮したことは評価できる、と獅鬼は考える。
ランポスは優羅から見て前と左に位置取っている。威嚇をしながらじりじりと距離を詰めており、優羅はその動きを観察しつつ、投げナイフを投げるタイミングを窺っている。
少しだけ緊迫した時間が流れると、優羅の左にいたランポスが一気に駆け出した。
「……っ!」
すぐに反応して投げナイフを投擲。それは真っ直ぐにランポスの胸に吸い込まれるように飛んでいく。当然ながらランポスもそれが来る事はわかっていたため、跳躍してそれを飛び越えると同時に優羅へと攻撃を仕掛ける。
「……っ」
だがそれすらも優羅の予定通り。その場から駆け出し、跳んでいるランポスの横を通り過ぎて後ろに回りこむ。瞬発的な加速度が高いことと、小柄なのが幸いした。爪に掠ることもなく後ろに回る事ができた。
すぐに口に咥えていた貫通弾を装填し、着地するランポスの背後から頭を撃ち抜く。これで残り一匹。
ベルトに手を伸ばし、貫通弾を二発取り出して装填。その間にランポスが接近してきており、一矢報いようと牙を向いて噛み付いてきた。それを横に転がってかわし、すぐに起き上がってジェイドストームを構える。
だがランポスもまたすぐに後ろへとステップを踏み、ギロリと黄色い目を動かして優羅を見据える。その場で飛び跳ねて体の向きを変え、また噛み付いてくるが今度は横に滑る様に移動する。
移動しつつジェイドストームの銃口を向け、ぐっと引き金を引く。貫通弾が銃口から射出され、ランポスの体を貫いた。
「ギャルァッ!?」
頭でないだけに即死に追い込めなかったが、怯んだのはもうけものだ。すぐに頭へと照準を合わせ、至近距離から貫通弾を撃ち込む。これでランポスを仕留め、四匹のランポスを倒す事に成功した。
「……ふぅ」
一息ついてジェイドストームを腰に戻し、剥ぎ取りナイフを取り出して剥ぎ取りにかかる。鱗や皮、そして主に牙を剥ぎ取っていく。これは貫通弾Lv1の素材にもなるため、弾の補填にもなるからだ。
そして頭を一発撃ち抜いて仕留めているため、体の鱗や皮があまり傷ついていないのもいいことだ。普通の剣士タイプならば仕留めるときにどうしても体中を傷つけてしまう。これによって使える素材が少し減ってしまうのが難点である。
武器や防具に使用する素材は綺麗なままが好ましいため、これによって剥ぎ取れる範囲が狭まってしまうのだ。しかし頭を一発撃ち抜いて即死に追い込んだため、その難点が解消される。
この技術が向上すれば無駄に弾を浪費することなく仕留められる、そして一発即死の為にこちらがあまり傷つかなくて済む、などの利点が生まれるため、優羅はこの『急所への狙撃』の心構えを覚える事にした。
今の内にこの技術を会得していけば、この先ハンターとして活動する際に楽になるだろうと考えたのだ。もちろんこの技術は難しく、会得するまでは苦しいだろうが、これを乗り越えれば後々おつりがついてくるはずだ。
『恐れず行動しろ。出来ないことが恥じゃない。行動しないことが恥だ』
そうだ。
未来の為に行動していくのだ。幼いからこそ諦めるな。
生き続ける為に今の内に技術を習得していくのだ。
しばらくして剥ぎ取りを終えると、獅鬼が近づいてきて微かに笑みを浮かべた。
「悪くはないな。しかし至近距離での発砲とは、なかなか根性があるな」
「……あの時はああしたほうが良かったと思うけど?」
「確かにな。遠距離だけがガンナーの攻撃手段というわけでもない。……ふむ、お前ならばあるいは……」
何やらブツブツと呟き始める獅鬼。そんな彼の腰元には一つのヘビィボウガンがある。
カホウ【狼】。
上位のイャンガルルガの素材を使用したヘビィボウガンであり、通常弾以外はLv2を装填可能とするのが特徴だ。
最初は老山龍砲・皇だの、ガオレンスフィアだのと対飛竜戦に使用するかのようなヘビィボウガンを取り出したが、「……バカ?」という優羅の冷たい突っ込みに引き、カホウ【狼】を取り出す事になった。
たかがランポス相手にそんな得物を取り出したところでどうにもならないというのに、この男は遠慮というものを知らないのか、と優羅は嘆息したのだ。それと同時に、「変人」から「バカ変人」とランクアップしてしまった。
「……よし、丁度都合もいいことだ。お前に新たなるガンナーというものを見せてやろう」
「…………ん?」
新たなるガンナー、という点に気になっただけでなく、丁度都合がいい、というのはどういうことだ?
そんなことを考えながら優羅は獅鬼を見上げる。そこには先ほどよりも少しだけ笑みを深くした獅鬼がいる。
「そら、来たぞ」
「……ん?」
顎をしゃくって優羅の背後を示す。何事だ、と振り返ってみると、遠くの洞窟から青い陰が複数姿を現したではないか。
そして先頭を走るのは……。
「……は?」
赤いトサカをした一回り大きなランポス――ドスランポス。仲間であるランポスを引き連れて縄張りを見回っているのだろうか。立ち止まってキョロキョロと辺りを警戒している。
そんな様子を見ていた優羅は、ゆっくりと獅鬼に振り返る。
「……おい、コラ」
「ん?」
「……聞いてないんだけど」
「なに、問題ない。奴がランポスを呼び寄せる事で一気に数を満たせる。そしてドスランポスも倒した事で追加報酬をもらえる。いいこと尽くしではないか」
そりゃ獅鬼にとっては楽だろうからそういう感覚だろう。しかし優羅にとっては死活問題だ。目を細めて睨み上げるようにすると、獅鬼は苦笑しながら軽く優羅の頭をぽんぽんと叩いて前に出る。
「それに、オレのガンナーとしての立ち回りも見れるんだ。この技術を習得できたならば、お前は更に上に行ける。……ついてきてみろ」
肩越しに振り返った獅鬼は、仮面の奥でまるで優羅を試すかのような眼差しをしていた。そんな視線を感じて思わず言葉を失い、その眼差しを受け止めてしまう。
そんな優羅ににやりと笑みを浮かべ、カホウ【狼】を手に構える。貫通弾Lv2を三発装填し、悠然とした歩みでドスランポスたちへと歩きだしていく。
そう、歩いているのだ。
走るのではなく、ただただカホウ【狼】を構えて歩いている。
「グル……? ……ギョルァッ! ギャゥアッ!」
当然ながらドスランポスもそれに気づき、仲間を呼び寄せるように遠吠えをする。その声に反応し、洞窟の奥や海岸線からランポスたちがわらわらと集まってくる。
「……さて、行くとしようか。……小娘、よく見ていろ」
「…………!」
そう言い終えると、獅鬼が地を蹴って走り出す。
その速さは風の如く。
ヘビィボウガンの重量などものともせずに地を駆け抜けていく。この間のドスジャギィの時も思ったが、彼にとって重量のある武器、というのはただの武器のようだ。それだけ腕の筋肉が強い、ということなんだろう。たぶん大剣も片手で振り回してしまうんじゃないだろうか。
そう思えるほどの動きだった。
そして獅鬼はランポスたちに接近すると、右手でカホウ【狼】を構えて銃口を向け、引き金を引いた。射出された貫通弾Lv2は三匹のランポスの頭を貫き、一度に仕留めてしまう。
それを確認することなく跳躍し、ドスランポスの頭上を飛び越え、周りのランポスたちを見据えて二度引き金を引く。これでまた二匹を仕留めてしまった。
「…………は?」
思わずそんな声を漏らしてしまう。いや、そうせざるを得ないものを見てしまった。
しかしそんな優羅を置いてけぼりにし、着地した獅鬼は腕のベルトに嵌められているチップを叩いて弾を取り出し、素早く装填する。
接近してきたランポスを踏み台にしてまた跳ぶと銃口を下に向けて引き金を引く。すると、今度は散弾がばら撒かれて複数のランポスが蜂の巣になった。
「ギ……ギャルァ! ギャルァ!」
ドスランポスもこの異常事態に頭が追いついてきたようだ。すぐに指示を出すと同時に自分も行動を起こす。
獅鬼に追いついて爪を振り上げてその体を切り裂こうとするが、その時には獅鬼は横へと移動していた。振り返りざまにドスランポスとランポスたちの間に照準を合わせて引き金を引くと、散弾が射出されて一斉にダメージを与える。
また右手で構えているために左手が自由になっている。その手にはもう弾が握られており、新しい弾を装填した。どうやら獅鬼は両手の裏側にチップを嵌めているらしく、どっちでも装填出来るようにしているようだ。
「ギャルァ!」
左から接近してきたランポスに軽く視線を向け、装填を終えたカホウ【狼】を左手に持ち変える。そのまま下から突き上げるようにして顎を穿ち、引き金を引いて頭を撃ち抜いてしまった。
「……有り得ない」
今まで勉強したガンナーの立ち回り方が崩壊するかのような感覚。
確かにあれは新たなるガンナーの世界だ。あんな動き聞いた事もなければ、誰もやろうとしないだろう。ライトボウガンなら何とかなるかもしれないが、間違ってもヘビィボウガンでやる気は起きない。というより重さに負けて絶対に不可能だ。
まず立ち回りが有り得ない。あそこまで走り回って敵を討つ、なんてガンナーには必要のない事。あんな風に前に出るのはガンナーにとっては考えられない。その役目は剣士タイプなのだから。
そしてヘビィボウガンを片手で構えるなんて無理な話だ。ライトボウガンならば何とかなるかもしれないが、片手で構えるという愚策はしない。
ボウガンというのは両手で構える事で照準を確かなものにするのだ。でなければ反動で狙いがぶれてしまう可能性がある。それを防ぐために両手で構えてしっかりと狙いを定めるのである。
その二つを無視した獅鬼は文字通り規格外だ。
だというのに何故だろうか。
優羅はあの動きに目を奪われていた。
『この技術を習得できたならば、お前は更に上に行ける。……ついてきてみろ』
そう獅鬼は言った。
あの獅鬼がそう言うのならば、自分はこの技術を習得できるかもしれない、ということだ。でなければあんなものを見せる必要はないし、あんな眼差しを向けてくるはずもない。
優羅を試すような眼差しは……同時に優羅の成長を期待するかのような色合いも含まれている。
それにこれは元からガンナーとしての鍛練として行っている事。ならば、よく見ておこう。そして習得してやる。
ぐっと拳を握り締めて獅鬼の動きを、文字通り記憶に刻むようにしっかりと見据える。
「……ふ、それでいい」
自分を見据える優羅の視線を感じて獅鬼は笑みを浮かべる。周りのランポスたちを失い、ドスランポスは低く唸り声を上げている。自身も散弾を受けて傷を負っている。
だがまだ戦える。
この男の実力は計り知れないが、それでも引くわけにはいかなかった。
しかし本能は逃げろ、と叫んでいる。だが同時に逃げられない、と叫んでいる。
怒りと本能の叫びが混ざり合い、ドスランポスは動きを止めてしまっていた。
「さらばだ」
そんなドスランポスの胸を狙って引き金を引き、貫通弾が青い体を貫いていく。
「グ、ガ……」
そして頭も撃ち抜かれ、ドスランポスは絶命してしまった。そんなドスランポスを見下ろし、カホウ【狼】を腰に戻す。
「……さて、こんなところだ」
後ろから近づいてくる優羅の気配を感じ、獅鬼は彼女にそう告げる。横に並んだ優羅は辺りを見回して改めて有り得ない、と感じてしまう。
「お前はこの先、どうせ誰とも組む気はないんだろう?」
「…………ん」
獅鬼の言葉に優羅はそう頷いた。予想していたのだろう、獅鬼は嘆息して優羅を見下ろす。
「だからこそ、ガンナーとして一人でも行動できるようこの動きを見せた。後は頑張って体を鍛えて下地を作れ。でなければあの動きは出来んからな」
「…………わかった」
確かに体を作っていなければ話にならないだろう。特に手足を鍛えておかないと走り回ったり跳び回ったり出来ない。そしてすぐに照準を合わせて止める腕の力も要るだろう。もしかしたら片手で撃つ状況も出くわすかもしれない。
色々と課題はあるだろう。もしかしたら無理かもしれない。
しかし優羅は心に決めた。
自分の最終目標はこの動きをモノとしたガンナーである、と。
やってやろうじゃないか。
これを見せた事を後悔させるようなガンナーになってやる。
その日少女は生きる目標が一つ増えると同時に、至るべき領域を見据えた。
後に『孤高の銃姫』の名を持つガンナーが、ここに産声を上げるのだった。