隊列は先頭を紅葉、その後ろにライムとシアンが付き、そして最後に昴が後方を守る、という形となった。
ベースキャンプから出れば、そこはエリア2となっている。そこではアプトノスだけでなくケルビと呼ばれる鹿のモンスターがいた。夕食なのだろうか。気ままに草を食んでいる。
そのまま横を素通りして進んでいくと、視界が一気に広がった。日は既に暮れており、空には星がぽつぽつと見えている。前方には小型の肉食竜が数匹辺りを警戒していた。
青い体をしたランポス、橙色と緑色のまだらになった体色をしたゲネポス、赤い体に黒い斑点を持つイーオスと呼ばれるモンスターだ。 ゲネポスは他のランポス種と違って2本の伸びた牙を持っている。それには麻痺毒が染み出ており、噛み付くことで相手にその毒を注入して体の自由を奪ってしまう。そしてイーオスは喉元に持つ毒袋から毒液を吐き出す能力を持っている。
種族が違う彼らが一つの場所に集まるのは沼地ではそうそう珍しいことじゃない。
「ギャオ?」
「ギギ」
「ギャルル……」
警戒していた1匹がこちらに気づくと、続々とこっちを見て威嚇をし始める。
「……ま、やってもいいかな。ライムもその武器強化していかないとね」
肩越しにライムを見ると不敵に笑う。そのままクックジョーを構えると、とんとん、と地面を踏みしめはじめる。
「剥ぎ取り、忘れないように……ねっ!」
ぬかるんだ足元から空気が破裂するような音がし、紅葉の体が少しだけ浮かび上がって前へと飛び出した。そのまま構えたクックジョーを勢いよく振り下ろすと、1匹のイーオスの頭をそのまま潰した。だがそれは敵の中心部に自ら飛び込んだようなものだった。
すかさずライムとシアンも武器を抜いて走り出すが、泥によって足場が悪く思うように速く走れない。
一方紅葉は噛み付こうとしてくるゲネポスの攻撃を半歩引いて回避し、クックジョーを軽く突き上げる。クックジョーには火属性が付いており、攻撃が当たると軽く炎が噴出す。それで怯んだところを上から叩き潰す。それでゲネポスは絶命した。
「ギャルル……」
「ギャオ! ギャオ!」
残るはランポス2匹、ゲネポスとイーオスが1匹ずつ。イーオスは警戒するように隙を窺い、ランポスはどちらも怒ったように声を上げて噛み付き、引っかいてくるが、足場の悪いのにもかかわらず慣れたように回避していく。
だが自然はそうは甘くない。横へとずらした足が泥によって更にずれていく。
「っ、と……」
すかさず体勢を立て直すように身を低くしたが、それは隙を生み出したと同義。ランポスが大きく口を開けて噛み付いてきた。
「紅葉さん!」
だが紅葉は右手に持ったクックジョーを離し、そのまま棍を勢いをつけて叩く。反動で跳ね上がるくちばしの部分が向かってきたランポスの体を打ち上げる。そのまま立ち上がってクックジョーを持ち直し、背後から迫るゲネポスの腹に棍を打ち付けて、振り向きざまにその頭を横から殴りつける。
「ギャオ!」
残ったランポスとイーオスは目の前の紅葉では無理だと思ったのか、向かってくるライムとシアンに標的を変えたようだ。
「わたしがイーオスを狙うから、ランポスをよろしく!」
「オーケー!」
チーフシックルを構えてイーオスへと向かっていると、イーオスが突然飛び掛ってきた。
「っと」
左に避けて右手の剣を首元へと斬りつけるが、小さく弾かれた。
「おぉ、さすがランポスたちの中で一番って事だけはあるね」
イーオスは他のランポス種に比べて比較的体力も多く、そして体が硬い。生半可な武器ではなかなか倒せないモンスターで知られる。だが、それがどうしたとシアンが不敵な笑みを浮かべる。
「一発が駄目なら何度でもってね!」
右の剣を振り下ろすと右へと回避されるが、左の剣を突き出す。そのままイーオスの腹に突き刺さるが、それは浅い攻撃だった。
「ぐぷ……」
ふと喉元がぬめった音を立てる。毒液がくると判断して左へと転がった。泥が顔につくのも構わずに転がり、起き上がる。
「シアン、大丈夫!?」
すでにランポスを始末していたライムが声をかけるが、それに笑顔で応えた。
「ガルル……!」
ちょうどイーオスを中心として前後に挟んだ形になった。じりじりと距離を詰め、ライムが前に出る。振り返ったイーオスが牙を向けてきたが盾で防ぎ、空いた首元を斬り付ける。だがやはりサーベントバイトでは深手を負わせられなかった。しかしそうやって引きつけるのがライムの目的。盾でイーオスの攻撃を防いでいると、背後からシアンが斬りかかる。
「ガルッ!? ギャルル!」
振り返ろうとするのを見て、今まで防いでいた盾でイーオスの頭を殴りつける。
「ガッ!?」
怯んだ隙にシアンが双剣を振り下ろしてその首を刎ねた。
「……ふぅ」
「……」
呼吸を整えるように息をついたライムに、昴は軽く背中を叩いた。そのままあごをしゃくって死体を示す。剥ぎ取れ、ということだろう。うなずいた二人は屈みこみ、剥ぎ取り用のナイフを取り出して剥ぎ取りにかかった。その前にシアンは顔についた泥を腕で拭う。
それぞれ皮と鱗、牙を剥ぎ取ってポーチにしまう。再び隊列を組んで一行はエリア11へと向かっていった。
洞窟前に立つと一行はホットドリンクを飲む。事前にエリア10のモンスターたちは討伐しておいた。だがすぐにでもまたモンスターは沸いてくるだろう。その前に早いところ原石を掘り出さなければならない。
洞窟に入るとすぐに冷たい空気が頬を撫でていく。奥に進んでいくと微かに光る壁が見える。見れば水晶が壁一面を覆っていた。
「わぁ~……」
「すごい……」
初めて見る光景に二人は思わず息を漏らした。
二人の気持ちはわかる。
こんな光景なんてそうそう見れるものじゃない。昴や紅葉もまた初めてこの光景を見たときは見入ってしまったものだ。
だが、いつまでも見つめている時間はない。
「おい。ピッケルの用意を」
「……あ、は、はい!」
昴の言葉に正気を戻したライムが早速ポーチからピッケルを取り出した。シアンも一緒になって取り出し、二人は水晶の前に立つ。そして紅葉が壁の一点を手の甲で軽く叩く。
「ここらへんをどんどん掘っちゃって。色々と出てくるから、足元に気をつけてね」
「で、俺たちが原石を探す。鉄鉱石などはお前たちが持っていっていい」
「わかりました」
「りょーかいです!」
うなずいた二人がピッケルを構えて水晶へと打ちつけていく。
ガンッ! ガンッ! ……と音が響き、壁がどんどん削られていく。そのたびに色々なものが地面へと転がっていき、それを昴と紅葉が屈みこんで屑物と使えるものを分けていく作業をする。打ち付けるたびに振動が腕に伝わっていくが、手を休められない。足元にいる二人からはまだ声が上がらない。ということはまだ原石は出てきていないのだろう。ライムとシアンは一定のリズムを保ちつつピッケルを振り続ける。
「……お。出てきたよ」
壁の一点を見つめた紅葉がそんな声を上げた。二人の手が止まると、シアンからピッケルを受け取り、紅葉が周りを掘り始める。すると、両手に抱えられそうな大きさの塊が出てくる。
「これが原石ね」
「へぇ~……」
「これが……」
鈍い輝きを持った塊。これが灰水晶の原石だ。だが掘り出して終わりじゃない。これをベースキャンプまで持っていかなければならない。
原石は慎重に扱わなければならず、空間収容術や圧縮収容術は使えない。
その昔楽をしようとしたハンターがいたが結果は失敗。圧縮から解放された瞬間、原石は砕け散ったようだ。そのため原石運搬は昔と変わらずに手運びで行うこととなった。
「あと他にも色々と出てきたよ」
そう言いながら地面を示すと、使えるものに分けられた場所には色々な鉱石があった。鉄鉱石や大地の結晶が多く、続いてマカライト鉱石がちらほら見かけられた。二人は相談してそれぞれ必要な分だけポーチにしまう。
続いてどっちが原石を運ぶかと言う話になった。
「んー、じゃあわたしが運ぶよ」
「え? いや、悪いよ。僕が運ぶよ」
「いやいや、わたしが運ぶって。ライムはハンターになったとはいえ、昔から体を動かすのが苦手だったでしょ? ここからベースキャンプまで耐えられないと思うな?」
「う……」
それも気になっていたことのため、ライムは渋い顔をして言い返せなかった。そんなライムを見てにっと笑い、ぽんと可愛らしく胸を張って叩く。
「だから、わたしに任せなさい」
「……うん。頼むね、シアン」
「うん! 任された! だからわたしをちゃんと守ってね?」
そして真っ直ぐライムを見上げてそんなことを言ってきたものだから、ライムは少しだけドキッとしてしまった。
まさに不意打ちだ。
そんなことを言われることになるとは思いもしなかった。だから返事をするのを忘れて呆然としてしまう。
「ん? ライム? どしたの?」
「……あ、いや、なんでもないよ。うん、ちゃんと守るから」
「うん! よろしくね!」
また明るく笑うと、ライムの顔が少しだけ赤く染まった。あちこちに視線を彷徨わせ、ふと昴と紅葉の方へと移してみる。昴は腕を組んで相変わらず無表情だったが、紅葉はどこかおもしろそうなものを見た、といった風に笑いを堪えていた。
「あ、こ、これは……」
「うんうん、いいから。何も言わなくて。初々しい、なんて思っちゃいないからね。……ぷくく」
手をパタパタと振りながら言ったものの、最後は吹き出しそうになっていた。それを見てまた赤くなっていく。
「いやー、あはは、いいものを見たよ。いいよねぇ、ああいうのって。どっかの誰かさんと違ってさ」
「…………」
うっすらと目を細めて昴を微かに見るが、当の本人は知らん顔をしている。
「じゃ、行くぞ。時間がもったいない」
そのまま話は終わりだといわんばりに急かし始めた。元気よく返事をして原石を持ち上げるシアンの前にライムが立つと、そのまま二人は出口へと歩き始めた。その後ろを無言で昴が後を追う。
そんな彼の後姿を見て苦笑しながらも、どこか寂しそうな顔で紅葉は見つめていた。
洞窟を出ると、右手にある岩肌方面にゲネポスが数匹たむろしていた。こちらには気づいていないようだが、シアンが原石を持ってゆっくりと歩いているため、エリア5に向かうまでの間に襲われる可能性がある。
「シアン、僕の左側に」
「オーケー」
そこでシアンが盾になるようにし、そのままシアンの歩く早さに合わせて進んでいくことにした。数歩離れて昴と紅葉が後を追う。二人は何も言わず、そして武器を手にかけず見守るだけ。
ゲネポスはキョロキョロと辺りを見回していたが、もう少しでエリア5に移動しようというときになって二人に気づいた。すかさずシアンを庇うように立ち、前に出た。
「シアン、そこで待ってて!」
「うん!」
1匹のゲネポスがライムへと向かい、2匹が後ろで見守っていた二人に向かっていく。無言で飛竜刀【紅葉】を抜いた昴がゆっくりとゲネポスへと近づいてく。1匹が飛び掛ってきたが、着地する前に切っ先を突き上げ串刺しにする。この太刀もまた炎属性を帯びており、刀身は燃えるように熱い。そのため切断の力と熱による溶解の力を持っている。ゲネポスの体は飛び掛る力も加わって簡単に体を貫かれてしまったのだ。
「ギャオ!?」
そして走ってきたゲネポス目掛けて袈裟斬りにすると、首を根元から刎ねられる。同時に串刺しにされていたゲネポスは、大量の血とはらわたを流しながら地面に転がされた。
数回太刀を振るって血を飛ばしつつライムの方へと視線を向けてみる。そこでは盾を巧みに使ってゲネポスの攻撃を受け止めつつ、生まれた隙を突きながら反撃していた。
「やあっ!」
「ギッ……」
そして何とかゲネポスを倒すと血を振り払って腰に戻した。様子を窺っていた紅葉が昴の隣に立ちながら呟いた。
「ライム、結構慣れてきているよ。ランポス種はほぼ大丈夫じゃない?」
「そうだな。最初のうちはモンスターの動きを観察し、動きを覚えていく方が自分の命を守ることに繋がる。傷つきながらも体に覚えさせるのがハンターというものだ」
太刀を背中に戻しながら言うと、二人に合流する。そしてエリア5へと戻ると、今度は中心部に先ほどと同じくランポス、ゲネポス、イーオスが集まっていた。エリア2に戻るにはあの中を通るしかない。護衛するライム一人では到底守りきれることじゃない。
「う……」
幸いまだ気づかれていないようだが、時間の問題だろう。どうしたらいいのかと昴に振り返る。
「…………」
だが彼は何も言わずにライムを見つめるだけだ。
手は貸さない。どうすればいいのか自分で考えろ。
そういうことなのだろう。だが言い換えれば、今のライム一人でも切り抜ける方法はあるということかもしれない、と考えた。
何が出来る? 今の自分に何が出来るんだ?
ランポスたちを見つめながらライムは微かに歯噛みした。そんなライムをじっと見つめるシアン。シアンは信じてくれている。きっと方法を見つけ出してくれることを。同時に昴も期待してくれているのだろう。だから何も言わずにただ見守るだけだ。
「でもどうしたら……」
堂々巡りする思考の中で、ふと思い出されたことがあった。そういえばクエストに出る前に自分たちは持ってきたアイテムをチェックされた。昴と紅葉はライムが調合が得意だということはまだ話していない。調合で切り抜けるのではないとするならば、持ってきたアイテムで切り抜ける方法があるのだ。
早速ポーチの中を漁り、そのアイテムを取り出した。
閃光玉。
「……これだ」
思わず呟いた。これでランポスたちの動きを止めてシアンを先に行かせ、その後ろを守るようにして自分がついていく。正気に戻ったのならある程度相手をし、離脱してエリアを移動する。
こういうことなんじゃないだろうか。
そう思って再び昴に振り返った。そこには相変わらず無表情な顔があったが、どこか嬉しそうな雰囲気があった。つまり、正解ということなんだろう。
「よし! 行くよ、シアン!」
「うん!」
うなずいたシアンが原石を持ち直し、二人はエリア5へと進んでいく。
「ギャルル……!」
「ギャオ! ギャオ!」
さすがに中心部に集まっていただけあって数歩進んだだけで気づかれる。ランポスたちがこちらに向いた。手にした閃光玉のピンを抜き、彼らの視界に放り投げた。次いで聞こえる炸裂音。眩い光が辺りを包み込んだ。
「ギャギャ!?」
「ギャルッ!」
光が消えるとランポスたちが目を潰されてたたらを踏んでいる。
「よし!」
シアンを再び左側に立たせて少しだけ迂回するように通り過ぎていく。その後ろを昴と紅葉が続き、エリア5を無事に通過した。
最後のエリア2は相変わらずアプトノスやケルビが草を食んでいた。危険は全くない。安全に通過することが出来た。
そうしてやっとベースキャンプに到着し、昴が納品ボックスから布を取り出す。慎重に原石を優しく包み込んでボックスに納める。
こうして1つの灰水晶の原石を納品することに成功した。
「ふぅ~……、つかれたよ~」
両腕を振りながらシアンが思わず呟いた。更に腰をとんとんと叩く。運んでいる時はどうにもがに股のような歩き方になってしまったため、少し腰を痛めてしまったようだ。
「少しだけ休んで、またエリア11に行こうか」
「ありがとうございます……紅葉さん」
そこで20分の休憩を挟むことにした。持ってきたバックから水筒を取り出して喉を潤わせる。また紅葉が肉焼きセットを用意し、生肉をさっと焼いてこんがり肉を作ってくれた。油が滴りパリッと仕上がったその肉をシアンへと手渡す。
「ひとまずお疲れ様。これを食べて活力を取り戻して」
「はぁ~……ありがとうございますぅ」
なぜか涙目になりながらこんがり肉を受け取り、大きく口を開けてかぶりつく。
「お、おいしいですぅぅぅ!!!」
「どうもー。昔から焼くのはいつもあたしだったからね。それなりにおいしく焼き上げられる自信はあるよ」
続いてライム、昴の分を焼き上げ、そして自分の分も焼くと食べ始めた。
「あ、ホントにおいしいですね。こんなにおいしいこんがり肉は初めてかもしれません」
「どもどもー。いやぁ、うん、最近は昴もそういう風に褒めてくれなくてさ。ねえ?」
チラッと視線を向けると昴は肉にかぶりついたまま固まる。咀嚼しながら少し考え、飲み込んだあとうなずく。
「……美味いぞ」
「ありがと」
だがそれだけでも充分だったらしい。笑顔になって食事を進めた。
全員が食べ終えると骨は地面に埋めて匂いを消す。昴と紅葉はそれぞれ武器を背負い、再び一行はエリア11へと向かっていった。
再びエリア11へと戻ってくると、ライムとシアンがピッケルを構えて掘り始める。今度はそう時間が掛からずに原石を見つけ出すことが出来た。だが一端横に置いておき、更に掘り進める。そうしてもう一つの原石を掘り出すと、運ぶ人を決めることにした。一人は紅葉。今度は彼女も運搬に参加することにしたようだ。ならばもう一つは誰が運ぶのか。
「今度は僕が運ぶよ」
「いやいや、わたしが運ぶって」
「そうやって先延ばしにするわけにはいかないよ。僕も経験を積まないと」
そう言うライムの眼差しは強い意志が表れていた。どうやらここは譲れないことらしい。シアンは小さく笑ってうなずいた。
「うん。じゃあライムに頼むね」
「任せて」
微笑して原石を持ち上げる。
「……う」
だがライムが思った以上に重さがあったようだ。少しだけバランスが崩れるが、何とか持ち直す。
「……大丈夫? 今なら代われるよ?」
「だいじょうぶ。やってみせるから」
「んー、男の意地ってやつかしらね?」
後ろで余裕の表情で原石を抱えている紅葉が呟いた。彼女ほどの怪力となればこのくらいの重量はどうということはないだろうが、だからといって力を入れすぎれば原石が砕け散る。原石とはそれだけデリケートものなのだ。
今度はシアンが先頭に出、その後ろにライムと紅葉が並び、後ろに昴が付く。洞窟を出ればそこには誰もいない。先ほど戻ってくる際にまたランポスたちがたむろしていたが、もう戻ってくることはないようだ。
時間を見ればもう午後20時。ランポスたちも巣に戻ったのだろう。安心してシアンが先行していく。
ふと、昴が妙な気配を感じ取った。原石を持っている紅葉もまた視線をあちこち動かして辺りを警戒し始める。
「ちょっと待って」
「え?」
前を行くシアンを紅葉が呼び止めた。肩越しに昴に振り返ると、昴が前に出てエリア5を確認する。
そこには何もいなかった。だが少しして森があるエリア9方面から何かが飛んできた。そのまま中心部へとゆっくりと舞い降りていく。
ゴム質の皮を持ち、額には鉱石質を含んだトサカとくちばしから火打石のように突起したものがある。そして体内で生成された毒液を撒き散らす怪鳥。
毒怪鳥ゲリョス。
それがかの存在の名前だった。後ろにいたライムとシアンは呆然とゲリョスを見つめて固まっている。そんな様子に苦笑しながら昴は溜息をついた。
「やれやれ、現実はそうは甘くはないってことか」
終わりかけたと思ったクエストは、まだまだ続きそうだった。