さて、奴らが去っていった後、アタシは男を横目で睨み上げる。その視線に気づかない男ではなかったらしい。仮面の下からチラッとアタシを見ているような雰囲気を感じた。
「……一体どういう方法を使った?」
「何の話だ?」
「……国境越えの事。仲間がいるとの事だけど、あんなにも簡単に抜けられるほど、あの国の包囲網は緩くないと思うけど?」
「ほう、少しは頭も回るらしいな。だがそれは企業秘密とさせてもらおうか。オレにも色々とあるものでな」
企業秘密と言われても、こっちも色々あるんだが。例えば泊まっていた宿のこととか、国境越えの待機の件とか、それらについてはどうするんだという。
「だから心配するな。お前の言いたい事もわかっている。その辺りもぬかりはない。伊達にオレ達は裏で行動しているわけではないのでな」
「…………」
やっぱり裏で行動していたのか。有名人らしいが、だからこそ表で行動して迂闊に知られないようにしているんだろう。
しかしわからないことがある。
さっきもあのジジイに何となく正体を知られていたけど、じゃあなぜ顔を隠しているのか。正体を知られてしまっては顔を隠す意味があまりないように思える。そこに至るのを防ぐ為、というならまだわかるけど、知られた後も隠すのは何故なのか。
それ以前にギルドの受付嬢に身分証明書を普通に使っている場面もあった。傍から見れば怪しい以外のなにものでもないのに、それでもああしていられるのは有名人だからなのだろうか。しかし有名人だからこそ顔を隠す? いや、自分から身分証明書を使っているのに顔を隠す?
色々とわからない奴、それがこの男だ。
「さて、推測するにロックラックを目指しているのではないか?」
「…………」
「ならば共に行くか。お前の成長も見てみたいからな」
無言だったがアタシの様子を見て肯定と取ったんだろう。というかこっちに出てきた時点で行き先といえばロックラックしかないと思う。だから推測もクソもない。
でもここでこいつに会えたというのはいい事だろう。借りを返せるチャンスだし、それに気についても知りたいことがある。別れるときにアタシを更に上へと押し上げてやるとか言っていたし、ロックラックでまた鍛えよう、とでも言ってくるんだろう。
ならばそれを利用しない手はない。それを受けてアタシは望むままに上に行く。
アタシ達は南西へと歩き出し、ロックラックを目指していった。
○
それにしても驚きだったな。よもやあんな奴と会う事になるとは思いもしなかった。
あの一族は他の魔族に比べれば更に巧妙に自分達の存在を秘匿している。まさしく世に忍ぶ者といえるだろう。
あの二人に会った時、上手くいけば二人も10年後の戦いの鍵になるやもしれない、と思ったのだが……奴がいるならそれも無理な話だろう。いにしえの秘薬を与えて縁を作ってみたが、アテが外れてしまったな。
しかし少し考えれば奴が何故あのような一族にいるのか、という疑問もないこともないか。どういう存在なのかは何となくわかったが、奴がそれのどれに当たるかまではわからなかった。情報がないのだからしょうがない。
どうせ七禍は知っているだろうが、教えてはくれないだろう。だが奴について訊いたところで、もしかすると藪をつつく事になるやも知れない。奴の存在がもしかすると七禍の計算外れになる可能性だってないこともないのだから。
まったく、将来有望な鍵を得られる事が出来ないなど、10年後の事を考えれば実に惜しい事だ。だが一族的な問題に加えて奴までいれば下手に手を出す事はできないだろう。ならば諦めるしかあるまい。
さて、あっちはどうなっているか。
ずっと聞いていただろうからローブに仕込んでいた札を通じてあっちに繋いでみるとしよう。
(そっちはどうなっている?)
その問いかけにすぐにあっちから返事が返ってきた。
(問題ない。処理は完了しているぜ)
○
繋がっている相手、雷河は優羅が滞在していた国境付近の町を歩きつつ、ポケットに入れてある札に意識を向けていた。
この札は獅鬼が組み立てた術式が描かれたものであり、複数あってこそ意味があるものだ。
その効果は簡単に言えば電話のようなもの。魔力を通して意識を集中すれば、繋がった相手と会話する事が可能だ。もちろん普通に口語で会話も可能だが、頭の中で会話する念話も対応している。
傍から見れば普通に歩いている雷河だが、この札が獅鬼と繋がっているおかげで何事もなく念話で会話しているのだ。
(宿代も支払い、記憶を改ざんしてあの嬢ちゃんの事は忘れてもらった。もちろん国境の件も同様さ。書類も破棄し、同じように記憶を改ざん。……ま、鍛冶屋に関してはまだ手出しは不要だろ。武器についての不具合はちょっとだけマズいからな)
(うむ、ご苦労だったな、雷河。では手はずどおりに戻って来い。まだあいつが見張っているだろうからな)
(おう、了解)
繋がりを絶って雷河は町外れへと進んでいく。向かう先は優羅達が抜けたあの国境。そこで待たせているもう一人の仲間と合流するのだ。
雷河の役目はこうだ。
獅鬼が優羅と合流し、国境を抜ける事になった時から既に札による念話が始まっていた。そしてここで優羅が国境を越えるとどうなるかも獅鬼にはわかっていた為、急遽雷河にあの町に向かうように指示。
あとは今まで雷河が手を回して優羅が抜けても問題ないようにしておいたのだ。
この手際の良さも今まで同じような事をしていたから慣れていたに過ぎない。このような事はしょっちゅうあることであり、迅速な行動が望ましい。もちろん雷河だけでなく獅鬼も手を回す事もよくある話であり、その場の状況次第で手回しをするのを交代する事もある。
何はともあれここに裏処理は完了した。後は彼女に合流して別ルートからロックラックに向かうだけだ。
優羅達が去っていくのを見届けるものがここに一人。誰もがその存在を感じ取れず、今まで普通に岩肌に背を預けて佇んでいた彼女は一息ついて岩肌から離れた。
それは自分の周囲に一種の結界を張り、自分の気配や存在感を隠していたのだ。小さいながらも高度な結界術により、一人を除いて気づかれる事はなかった。
「……さて、雷河もこっちに来ているらしいし、もう少し待つとしましょうか」
乾燥地帯独特の乾いた風が頬を撫でるのを感じながら、その場に佇むのは
町を出ればあとは疾走するだけでいいので、待つ時間はそんなにかからないだろうと予想する。それまでただ吹き抜ける風に身を任せつつ、この光景を眺めるのも悪くないと風花は考えていた。
今回の事は獅鬼に呼ばれてこのロックラック地方まで飛んできていた。彼と知り合って数十年、久々に会った彼は力を貸してほしいと申し出てきた。
一体何事かと訊けば、近年確認されつつある黒い竜についての事だった。一概には信じられない事だが、あの獅鬼が自分に嘘をつく理由も見当たらない。だからこの数年は近隣を飛び回ってその真偽を確かめていた。
そして近日華国の件について協力を求められ、こうして国境付近でその力を振るっていたのだ。確かにこの華国の異変は風花にとっても妙に感じられる事だ。発端となった国の中枢に潜り込み、調査を続けていた三人だったが、一部の者達の暴走としか思えないものばかり浮かんでくるだけだった。しかし暴走するにはその原因があるはず。それが見つからないのが気になったが、それは見つける事ができなかった。
裏で誰かがそそのかしたのではないか、とも考えたのだが、その人物の影も形も見つからない始末。
しかし見つからないなら仕方がない。このまま引き上げ、別の件について調査を進める事になったのだ。
こうして華国の事を思い返していると、それは現れた。
「こんな所でどうかしましたか?」
「――――っ!?」
突然聞こえてきた若い女性の声に、風花は息を呑んで勢いよく振り返った。
そこにいたのはその声に違わず若い少女が佇んでいた。華国特有のスリットの入ったドレスを着こなした、黒い長髪をした少女である。穏やかさを感じさせる青い瞳がじっと風花を見つめていた。
こうして見る限りではどこにでもいるような華国人の少女だ。別に怪しい事はない。
だが、問題なのはそこではない。
風花は千年以上を生きる古龍種だ。それも古龍種という枠を超え、“自然”の域に到達した存在。だからこそ常人には感じられるように隠された気配も感じる事が出来る。つまり――
――ただの一般人が風花に気取られぬように背後に立つ事など不可能。
サファイアのように青い瞳に強い殺気が宿り始める。このような少女が自分の後ろに立つなんて有り得ない事が起きたということに、その心の奥底にさざなみが発生していたのだ。
静かに立ち上っていく風花の殺気と覇気を前にしても、少女は顔色一つ変えずに相変わらず風花を見つめ続けるだけ。その異常さをありありと見せ付けられ、本来少女が流すはずの冷や汗が風花の頬に小さく流れた。
「……貴様、何者……?」
「…………」
問いかけられても少女は何も答えない。
ただ静かに観察するように風花を見据え続けた。
「…………くく」
ふと、少女が微かにうつむいた。前髪によってその表情が隠され、穏やかな笑みを作っていた口元が冷笑を浮かべて小さな笑い声を漏らした。
「……ふっくっく、問いかけずともヌシならおのずと気づいているのではないのか?」
「……っ、く……」
「それにそう殺気を漏らすものではないわ。
そう言いながら姿が変化していく。流れる黒髪は色素が抜けたように白く染まり、身を包む華国のドレスは緋色の和服へと変化していった。身長は少しずつ縮んでいき、およそ13歳前後の子供の姿となった。
実に見事な変化の魔法。その様を目の前で見せられ、風花はこの少女に抱いていた疑惑が少しずつ真理へと無理やり近づかせられたことを実感した。
「……そう、貴様のような存在がわざわざ私の前に顔を出してくるなんて、どういう風の吹き回しかしら?」
「なぁに、ヌシのような存在が此方の庭にやってくるなど、あ奴を除けば実に久しぶりなのでな。暇つぶしも兼ねてこうして足を運んできたまでよ。それにどうやら神倉の男や金獅子の小僧もおるようだしの。……ふっくくく、そんなに魔族狩りの件が気になるのか?」
冷笑を浮かべながら左手を翻すように動かせば、どこからともなく白い毛を使用した扇がその手に現れて握られた。さっきまで青かったその目は真紅に染まり、扇をあおぎながらじっと風花を見据えている。
「あれはあの阿呆どもによる暴走、それが結論であろう。……裏があると睨んでいるようだが、あまり首を突っ込むものではないぞ? 藪つついて蛇を出したくはなかろう?」
その目に宿る気迫は、さっきまでこの少女へとぶつけていた覇気や殺気は感じられないが、王者のような、あるいは神のような、高みに位置する者だけが纏うものがあった。
少女はただ風花を見つめているだけだ。
だが風花はその場に足を縫い付けられたように動けなかった。このような状態に陥ったのは一体何年ぶりだろうか、と頭の片隅で考えてしまう。
よもやこの自分が……! と考える傍ら、どうしてこんな存在がこの場に現れるというのか。本当に暇つぶしとして現れたというのだろうか、信じられるものではない、と少女に疑惑を再び抱き始める。
なにせ魔族狩りの事について口にし始めたのだ。まるで自分達の調査を全部見ていたかのようなのだから。
「ふむ、信じられないようだの。まあ無理もないだろうが、ここで終わらせたほうが身の為よ」
これはこの少女なりの忠告なのだろう。それに従わなかった場合どうなるか、それは容易に思いつく。
「……性格悪いわね」
「ふっくっく、それは褒め言葉として受け取っておこう。それに此方ら“世界”に属する者は総じてこのようなものよ。あ奴もまた暇つぶしと称して駒を見つけ、この先起こるであろう戦いにちょっかいだそうとしているからの」
「……戦い、ですって?」
「そう。黒く染まりし竜との戦いよ、くっくくく……」
「……っ、貴様、まさか……」
その事を口にするという事は、まさかこの少女が黒幕ではないのか、と風花の推測の中に浮かび上がった。
だがそれは少女にも伝わったらしく、あおぐ扇の手を止めて両手を小さく広げて嘆息しながら首を振った。
「やれやれ、短絡的よな? 事はそう簡単なものではない。何せこの件には様々な思惑が絡み合っているのだからの。此方とあ奴はそれに少し乗っかり、己の退屈を紛らわしたいだけよ。……まあ? 此方らにも何らかの望みがない、とは言い切れんがな」
「望み、ですって?」
「然り。此方らは次元を超えて様々な世界を渡り歩く。そしてこの世界に集ったのはほんの偶然であろうて。そして望みを叶える条件としては悪くはない運命の流れを感じた、というわけよ。だからこそ傍観者としてだけでなく、多少の介入もする。……そう、今の此方のようにな」
“世界”に属する者は次元を超えて様々な世界を旅する事が可能。言い換えれば空間魔法を自由に行使する事が可能、とも言える。そして彼らはほとんど寿命の概念がなくなっており、老いる事を忘れてしまっている事が多い。その原因については不明だが、やはり種族の枠を超える際に何かが体に起こっているのだろうという推測がある。
そして長い時を生きるにつれてほとんどの者は性格が歪んでくる。風花も今ではこのような者だが、昔はまだマシな方だった。それは自覚している。
今目の前にいるこの少女の性格の悪さはどうだ? 自分を見上げているはずなのに、見下されている気がするのは気のせいではないだろう。そして先ほどから浮かべている冷笑とその眼差しも相まって不愉快さが増していく。
これら全ての要因を孕んだ子供にしか見えない少女。これがとどめとなって風花の心は揺さぶられ、苛立ちが募っていく。よもや雰囲気と佇まいだけでここまで苛立たせるとは風花も思いもよらなかっただろう。
「さて、ヌシの名を聞こうか」
「…………名を聞くなら自分から名乗れば?」
「……くっく、それも然り。だが此方の名はそうそう名乗れんのでな。それに名乗るとして、此方には二つの名があるのだが、はて、どっちを名乗るべきかの」
正体は何となくわかっていても、それを口にするのも風花としてはよろしくはなかった。それを口にすれば少女が自分に牙を向いてくる可能性がないこともない。それだけ危険な存在でもあり、そして古龍種とはいえまだそれなりに見かけられるクシャルダオラよりも珍しい存在なのだから。
「……風花よ。貴様は名乗らなくていい」
「ふっくくく、賢明よな、風花」
口元に扇を当て、目を細めて見上げれば風花は少し視線を逸らしてこれ見よがしに舌打ちする。だがそれでも少女は気にした様子はない。左手を動かして扇をあおぎ、一息ついて話し始めた。
「さて風花よ。此方がここに来たのは他でもない。ヌシを利用させてもらう為だ」
「…………堂々と言ったわね」
「はて? この此方が回りくどい言い方で利用させてもらう、などと言うとでも思っておるのかえ?」
「ないわね」
間髪いれずに答えれば、少女は気を悪くした様子もなく、逆ににやりと笑みを浮かべるだけだ。
「ヌシもあの神倉の者に頼まれてこの世界を飛び回っておるのだろう? 黒い竜を探す為に」
「……」
「まだ信じておらぬ口だろうが、断言しよう。黒い竜はいる。……否、これから少しずつ増えてくるだろう。そこでヌシの役目を果たしてもらおう」
そう言い、扇に付けられている白い毛がふわりと風になびく。その先端を風花へと向け、少女は冷たい笑みを浮かべてその“役目”を告げる。
「黒い竜――狂化したモンスター達を見つけ次第、次々と殺していけ」
その言葉はある意味風花の予想を裏切った。自分を利用するというくらいなのだから、また別の無理難題でも吹っかけてくるものだと思ったのだが、それでいいのだろうかと疑惑の眼差しを向ける。
「それは当然でしょう。貴様に言われるまでもなく、私はそういう奴がいるならば始末するわよ」
「ああ、それでいい。そうやって始末していき、神倉朝陽たち、そしてあ奴に知られるようになればいいのだ」
「……あ奴とは誰? 貴様と同じ“世界”に属する誰かということでいいのかしら?」
「然り。あ奴は傍観者の癖に、どういうわけか一つの望みを持ちおってな、この世界に介入してきおったわ。……そう、あの神倉の者を駒にしてな」
その言葉に、風花はぴくりと眉を動かして反応した。思わず腕を組み、じっと少女を睨みつけるようにして見下ろしてしまうが、その反応もまた少女に笑みを浮かばせる要因にしかならなかった。
「……どういうこと?」
「言葉の通りよ。あ奴はあの者に対して予言を出し、仲間を増やすようにと告げたようでな。あの神倉も神倉朝陽などに思うところがあるらしくてな、あ奴の思惑通りに行動を始めたというわけよ。……そう、ヌシもまたその運命の渦の中に引き寄せられた者の一人でしかない」
「…………」
「そして此方はその中の一人であるヌシを利用させてもらうというわけよ。奴らを殺し、神倉朝陽たちに警戒心を抱かせる、それがヌシの役目。……ああ、その際は人の姿をとらず、本来の龍の姿で行ってもらおうか。その方が効果が高そうなのでな」
古龍とはこの世界では飛竜よりも警戒すべき相手とされている。飛竜よりも長く生き、粒子を操って飛竜には持ち得ない能力を行使する。もちろん肉体的な能力も飛竜よりも数段階高みに位置するため、能力を封じたからといって楽観できる相手ではない。
そんな古龍の一種クシャルダオラ、それも“自然”の域に達した風花が自分達の計画を邪魔している、となれば朝陽達に対して大きな牽制になるだろう。少女の狙いはそれにあるのだろうか。
「それもある。だがヌシはあくまでも普通のクシャルダオラとして行動してもらいたい」
狙いとしてはこうらしい。
狂化したモンスターを始末する事は始末するが、朝陽達には手を出さない。こうすることで風花を普通のクシャルダオラと思わせるのだと。
普通のクシャルダオラと思わせることで、いずれ偶然を装って何かの作戦に使えるのではないかという思考の道筋を作り上げさせるとのこと。
「それをして何になるの?」
「……ヌシ、戯れを好むか?」
「…………」
「図星か。ならば良い。10年後のある日、神倉朝陽たちの思惑通りヌシは五人のハンターに会うことになるだろう。そこでヌシはそのハンターたちを出来うる限り痛めつけてもらうが、殺しはするな。文字通り戯れておけ」
一々注文の多い事だ。ただ殺すよりも痛めつけるほうが自分には難しい事なのだが、少女はそんな苦情は聞かない、とでもいう風にどこ吹く風で扇をあおいでいる。
「いったい何を考えているのかしら?」
「なに、そいつらもまたあの者が見つけた仲間の一部。そしてあ奴が思い入れをする者もいるのでな、少し手を出してもらうだけの話よ。……まあ、それもあ奴にとっては楽しめる要因になるだろうが、構わん。そしてそのハンターに手を出すことで神倉朝陽たちに油断を誘ってもらうのよ」
「油断、ねえ」
この少女は一体何が見えているのだろうか。いや、知っているのだろうか。
世界を渡る際に彼らは時をも越える事を可能としている、という噂を耳にしたことがある風花は腕を組んだままじっと少女を見つめる。
つまりこの先起こる事を別の平行世界で見ているのではないか、という予想が風花の中に浮かび始める。
「そこまで裏で手を回して何がしたいのかしら?」
「言ったであろう」
再びあおぐ手が止まり、口元に扇が当てられてその真紅の目に光が宿る。
「此方は退屈を嫌う。故に暇つぶしがしたいのよ。そして願わくば、此方の望みを叶えたいだけよ」
「…………」
「疑うならばそれでも良し、信用など要らぬわ。ヌシはただ此方の望むがままに動けば良い。……ああ、しかし拒否権は存在せぬからそのつもりでおれよ?」
「ああ、やっぱりそうなのね」
「くっくっく……わかっているなら話は早い。以後、そのように動くがいい」
拒否権がないのは風花もわかっていたこと。逆らえば文字通り殺される可能性があるからだ。自分は実力があるほうだと自負しているが、この少女はそれをも超えるだろう。だから逆らおうなどと考えれば、笑みを浮かべたまま自分を殺しに来るだろう。
ならば出会わなければ良かった、と考えてしまうだろうが、それも無理な話だろう。
この少女はどこからともなく現れる。だからどこに逃げようとも追いかけてくるはず。
つまりは逃れられぬ運命。
やっかいな奴に目を付けられたものだ、と風花は心の中で溜息をついた。
「……さて、あの猿もそろそろ来る頃だろうて。此方はそろそろ退散する事にしようか」
そういえば随分と話していたが、未だに雷河がやってくる気配がなかった。場所はわかっているはずだし、結界をすり抜ける魔法具も持たせているはず。
優羅達が安全に国境を抜けられたのは、風花が張った結界の効果によるものだ。その効果は人払いとモンスター侵入を遮断するもの。それにより国境を見張る兵とモンスターの姿がなかったのだ。
そして先頭を歩いていた獅鬼がその結界を無効化する魔法具を持っていたため、すぐ後ろをついていった優羅達も結界の効果を受けずに国境を越えることができた。
この少女は結界の効果を受けずにすり抜けてここまでやってきたということになるのだが、今更そこにつっこむ意味もない。どうせ普通にすり抜けてきたのだろうから。やはりこの存在らは色々と規格外だ。
いや、そんなことよりも雷河だ。なぜ未だに来ないのか。
「ああ、安心しろ。なにか害をなしたわけではないわ。多少この辺りを弄って迷わせているだけに過ぎん」
「弄るって……何をしたの?」
「……ふっ、言ったであろう? 国境を越えたとはいえ、この国、そしてその周囲は此方の庭。影響力はまだ残っておるわ。故に少し手を入れれば人一人迷わせる事など容易い」
つまり雷河がこっちに向かってくる事がわかった上であらかじめ仕掛けをしておいたという事らしい。自分の事を知られないようにするための準備を怠らず、その上で風花に接触してきたという事のようだ。
何はともあれ雷河に悪影響がないだけでも幸いだろう。その気になれば抹殺する事も容易いだろうから。
「ああ一つ言っておくが、此方の事は誰にも言ってはならん。神倉や猿、それ以外にもな。ヌシの心の中にしまっておく事だ。よいな?」
「……わかっているわよ。破れば殺す、でしょう?」
「わかっているなら話は早い。では、此方は去ることにしよう。……せいぜい頑張る事だな、ふっくくく……!」
最後まで何かを含んだ冷笑を浮かべて扇を翻した。すると風が舞い上がりその姿を覆い隠していく。その風はすぐに消え去ったが、そこに少女の姿は既になかった。
あれだけの存在感を匂わせていたというのに、その名残も全くない。そこにいた痕跡までなくなっているが、自身の中にある苛立ちや微かに流れ落ちた冷や汗が彼女が確かにここにいたのだということを証明している。
本当にやっかいな存在に目を付けられたものだと思う。彼女の言葉を信用するならば、自分が獅鬼と出会う事になったのは、獅鬼を駒として扱っている誰かの思惑通りだという。いやもしかすると、仲間を増やすのが思い通りであり、自分が選ばれる事になったのは偶然かもしれない。その誰かが自分を知っているかどうかはまだわからないのだから。
何はともあれ、こうなったからにはせいぜいあの少女の気の済むように動かなくてはならなくなった。
めんどうなことになったものである。
「おう、待たせたな」
「…………」
そう考えていると、ようやく待ち人が現れた。待たせて悪かった、という風な顔をしている。汗を流していないのはやはり元がラージャンだからか。なかなかの体力をしている。
しかしそこまでだ。
普通の計算上では雷河はとっくにここに着いている。だが現実はあの少女が去った後にやってきた。
「ん? どうした?」
「……いえ、なんでもないわ」
雷河の事だからあの念話が終わった後にはもう走ってきている事だろう。ラージャンだが、獅鬼の教育で普通の人族となんら変わりない姿と考えを持っている。とはいえラージャンの名残として少々好戦的ではあるが、そこはまだ許容の範囲内だ。
つまり風花を待たせたとわかっているなら、雷河は謝罪の言葉を口にしているはずなのだ。
しかし雷河は予定通りに着いた、と思っている風にそこにいる。
どういうことかというと、雷河は今まであの少女によって迷わされたと気づいていないという事になる。
これは推測だが、あの辺り一体はあの少女によって一種の幻影空間になったのだろう。それに囚われれば時間の経過や距離感を狂わされ、普通の距離を走っているはずなのに実際にはその何倍もの距離と時間が経過しているのではないだろうか。
それが少女が去っていくと同時に解かれ、今さっき雷河が到着した。
だが本当に恐ろしいのはそんな事じゃない。
恐ろしいのは今もなお雷河がその幻影にかけられた事に気づいていない事だ。
幻影は大抵の場合時が経てば何かがおかしい事に気づき、そこでようやく自分が嵌められている事に気づくのだ。
だがそれに気づかなければどうなるのか。
幻は存在しないからこそ幻になりえる。
だがそれが幻だと認識しなければ、それはその人にとっては真実となる。
つまり雷河にとってさっきまでの時間は幻ではなく真実となり、今もなおおかしいと気づいていないのだ。
ここまで高度な幻影を見せる事が出来るなど、普通は信じられるものではない。だが風花はどこか納得していた。
何故ならあの少女は人を欺く事に長けた存在なのだから。
そして華国を騒がせた魔族狩りは、その日を持って突如解除される事となった。
国の発表よれば、一部の者たちによる暴走によるものだという。その者達は魔族に対して偏見を持ち、近年の状況を照らし合わせて独断で発布したものだという。
しかしそれを解除する機会も潰され続け、今の今まで解除できなかった、と説明されたが、当然ながら国民は納得できるものではなかった。ちゃんとした説明を求むもの、魔族の友を持つものなどが決起し、国へと押しかける事件が勃発し始めたのだ。
それから数ヶ月、華国は荒れる事になる。
だが一部の者達は疑惑を持つ事になる。
突如触れを出し、そして解除された魔族狩り。
果たして本当に一部の者たちによる暴走なのだろうか、と。
まるでとある魔族を狙うために国を挙げて調査に乗り出し、そして事が済んだから解除したかのような空気を感じたのだった。
○
数日歩いた後、砂上船と呼ばれるものが置いてある砂漠の中継地点へと到着。そこから砂上船に乗って移動する事これまた数日。ようやくアタシ達はロックラックへと到着した。
砂漠で暮らすものにとって水はとても貴重なもの。そしてオアシスは人々にとって救いとなりえる。とはいえこれはオアシスというより湖と呼べるほどに広大だ。
そしてこのロックラックは砂上船と飛行船によって世界中と物資が入り乱れている。つまり貿易によって栄えた街といえるらしい。
街を歩けば活気に満ちた雰囲気が包み込んでいるのがわかる。商店街を歩けばあちこちから呼子の声が聞こえ、世界から集められた様々なものが並べられているのが目に入る。
さすがは貿易の街。
こういう空気はどうも苦手だ。
そんな中を通り抜けていき、ようやく宿に到着する。これから数年は世話になるだろう部屋に荷物を置くと、少ししてあの男がやってきた。
「邪魔するぞ」
ガチャリと扉を開けながらそう言って入ってくる。相変わらずの様子だ。服装も全く変わっていない。どうやら部屋の様子を見てきてすぐにこっちに来たらしい。
「さて、だらだらと話をするのもめんどうだ。すぐに本題に入らせてもらう」
「……ああ」
「お前がいいのならば、明日から久しぶりにお前を鍛えてやるが、どうする?」
「…………それでいい」
断る理由はない。今日は旅の疲れもあって無理だ。だから今日はゆっくり休み、明日からこいつにまた鍛えてもらう。その流れに異論はなかった。
「わかった。約束通り気などについて教えてやろう。……あと」
そこで男はローブに手を入れ、一つの水晶らしきものを取り出した。それを手にしたままこちらへとやってきて、そっと差し出してくる。
「お前、魔法の才能に開花したな?」
「…………」
やはりあれは見間違いじゃなかったらしい。“もう一人のアタシ”が兵達へと行使したあの爆発。あれはどうやらアタシの中に眠っていた魔法のようだ。
「オレは生憎と魔法の才能にあまり恵まれなかったが、それを教える事は可能だ。そしてこれは『虹水晶』というもので、粒子に反応して様々な色合いを見せてくれる。これを握り締め、意識を集中しろ。するとお前の血が自然と粒子を集めてくれよう」
「…………つまり、この水晶が見せた色が……」
「然り。お前が得意とする属性という事になる」
今の色合いは黄土色。ここが砂漠という環境の為、自然と土属性の色合いを見せているという事だろう。それを受け取り、目を閉じて意識を集中させる。
粒子を操るなんて今のアタシには無理な話だ。だからただ意識を集中させるだけ。そうすればアタシの体に流れる血が自然と答えを導かせてくれるだろうさ。
アタシの両手に何かが集まっていくような気がした。そして虹水晶が熱を持ち始めたような気がしたので、そっと目を開けてみる。
そこにはさっきまで黄土色だったはずの水晶が、炎のように揺らめく赤色に染まっていた。
「……なるほど、お前の得意な属性は火か」
やっぱりそうか。
あの日から火に対しては何か心がざわつかせるような気がしたんだ。村が焼けた時も、心が大きな変化を起こしたあの時も、そして夜の砂原でリオレイアの火とあのハンターの火を見たときも。
思えばあれはアタシの血だけでなく、アタシが持ちうる魔法の才能を刺激されたからなんだろうか。もう一人のアタシも炎には縁があるとか言っていたけど、もしかするとこの事も示していたのかもしれない。
「では今日はゆっくり休むといい。明日からまた鍛える日々が続くのだからな」
「……ああ」
そして男は扉を閉めて去っていった。
それを見届けてアタシはローブと身を包むハンター装備を脱ぎとった。インナー姿となった後シャワー室へと向かい、溜まった疲れと流した汗を流す。頭から被るように温水が当たるのに身を任せ、アタシは両手を見つめた。
あの日また人を殺した。
この手はモンスターだけでなく人の血にも染まっている。それでもアタシの心は揺らぎない。去年から一度も殺さなかったというのに、もはや人殺しにも慣れてしまっているかのようにアタシは落ち着いていた。
全く……笑える話だ。
自粛し続けた事をいとも簡単にやってしまっている。それだけアタシは入手した小烏を振るいたかったんだろうか。
初めて手に入れた自分の剣を本来使う相手ではなく、人殺しに最初に使うなんて笑い話にもならない。でも数時間振るっただけであそこまで使いこなすのもまたアタシの血統の影響だろうか。
「…………」
ノズルを回してシャワーを止め、肌に張り付く自分の黒髪にそっと触れる。鏡には垂れ下がった前髪から覗く真紅の瞳が映っている。自分で言うのもなんだけど、やっぱり昔に比べて随分と変わったものだと思う。
でもアタシはこのまま突き進んでいくだろう。もはやこれがアタシだ。
黒崎優羅はこのまま上へと上っていく。明日からの修行、アタシが得られるもの全てを掴み取り、アタシの実力へと変えてやる。
決意を新たにシャワー室を出、バスタオルを手にとって体を拭いていった。
バサッ、と黒髪が舞い上がり、その下から覗かせた目は、アタシの決意を示すかのように光を宿していただろう。
そして月日は流れ、その時はやってきた。
1年という時間は本当にあっという間だった。
この男から体術、気、そして魔法を教わる時間は瞬く間に過ぎていった。でもその分得られたものは大きい。昔のアタシに比べて随分と強くなったと実感できるほどにアタシは変わっている。
そして変わったのは実力だけじゃない。
まともな食事と修行という名の運動により、アタシの体も成長していた。
あの日の変化から、歳に似合わない性格をしていたけど、この1年で外見的にも歳相応とは言えなくなってきている。
少し小柄だったアタシの身長は一気に伸び、およそ150cm近くになっている。恐らくこのまま同じように日々を過ごしていたら、更に伸びていくだろう。
そして目の前にはアタシを師事した男が砂上船の前に佇んでいた。1年も同じ街に滞在するというのはこいつにとっては珍しい事。アタシの為に1年の時間を費やしたのだ。
一度それでいいのか、と訊いたことがあるが「なに、構わん。お前の成長を見届けるのも、師匠の役目だろう?」と返ってきた。なるほど、確かにそれもそうだと少しだけ、ほんの少しだけ納得した。
「さて、今までよく頑張ったな」
「……どうも」
「今日で修行は終わるが、オレはお前はまだまだ伸びると見ている。精進しろよ」
「……わかっている」
そう返すと仮面の下でニヤリと笑ったような気がした。
この1年、こいつはずっと仮面をつけたままで素顔を晒す事はなかった。そして名字も聞かされることはなかった。まあ名前を知ったところでどうでもいいから、男だとかこいつだけで充分だ。
そしてもう去ろうとしているが、まだこいつには用がある。
「……ちょっと待て」
「む? どうした?」
「……渡すものがある」
「ほう? それはなんだ?」
ローブの中に手を入れてアタシはオデッセイブレイドを取り出した。鞘に納めた状態でそれを男へと突き出してやる。
それでどんな用なのか何となく察しがついたらしい。仮面の下で苦笑いしている気配がした。
「まさかとは思うが、今までの借りを返す、とか言うんじゃないだろうな?」
「……わかっているなら話が早い。さっさと受け取れ」
「どうしても受け取らなければならんのか?」
「……そうだ。アタシは借りは作りたくない。これで返せるとは思っていないけど、上位の片手剣だ。それなりに釣り合いは取れているんじゃないのか?」
アタシには小烏がある。だからここでオデッセイブレイドを渡したところで困るような事はない。剣を振るうのは主に人殺し。アタシのメインの武器はライトボウガンだから問題ないのだ。
それに元よりこれは拾い物。だからどうということはない。
「……それにこれはアタシを今まで鍛えてくれた礼としてとってもらう意味もある。……このアタシが礼をしているんだ。よもや受け取らないなんて事はないだろうな?」
「おぉ、礼か。ふむ、確かにお前が礼を差し出すのは珍しい事だな。実に喜ばしい事だ」
「――――ああ、鍛えてくれた報酬でいいか」
「待て。礼ならば受け取らんわけにはいかんな。喜んで受け取らせてもらおう」
礼から報酬に切り替えれば、どこか慌てたようにオデッセイブレイドを受け取りやがった。最初からそうすればいいのに、最後までめんどうな奴だ。
「……これで借りたものは返した。それでいいな?」
「わかったわかった。まったく、強引な奴だな」
「……何か言った?」
「何でもない」
ギロリと睨みあげれば苦笑したまま両手を胸元まで上げて小さく首を振る。まったくどこまでも食えない奴だ。でもそれがこいつだろう。
謎は謎のまま。ただ規格外、というだけしかわかることはなかった。
よく考えれば今までの借りがオデッセイブレイド一つで返せるはずもないのに、こいつはそれで了承した。あの時否定していたけど、やっぱりこいつはお人よしだと思う。
やれやれと嘆息した男はじっとアタシを見下ろし、調子を取り戻して口を開いた。
「……まあ、お前とはまたどこかで会うだろう。その時のお前がどのようになったのか、そしてどこまで成長したのか、楽しみにさせてもらおう」
「……ふん」
「じゃあな。また会おう――優羅」
そして奴はローブを翻して砂上船へと乗り込んでいった。
最後に、ここで初めてアタシを名前で呼んで。
一瞬だけ思考が停止したアタシは、さっきの言葉でそっぽ向いたまま固まったままだったため、去っていく男を見届けたのは砂上船が動き出したあとだった。
小さくなっていく紅い姿が見えなくなるまで、アタシは柄にもなくそこで佇んだまま見送っていた。
アタシにとっての戦いの師匠。
変わってしまったアタシを否定することなく、それを認めたうえで戦う術を仕込んだ男。
規格外にして謎が多い男。
そしてたぶん、アタシにとって昴達以外で初めて境界線の外から近づき、そしてアタシもそれをある程度受け入れてしまった奴。
「…………アホが。やっぱり気に入らないな」
乾燥した風が吹き、アタシの黒髪が舞い上がると同時に微かな憎まれ口が漏れて出た。
こんな事を口にするしか出来ないけれど、たぶん本心ではあいつに――獅鬼に感謝していたんだろう。結局礼の品を渡しただけで、ちゃんとした礼を口にする事が出来なかった。
ただの一言告げるだけでよかったのに、アタシはそれが出来なかった。
たぶん悔いているんだろう。でも感情が麻痺しているアタシはそれを実感することなく、宿へと帰ってしまった。
○
また月日は流れ――
――黒崎優羅、14歳。
身を包む装備はガルルガシリーズ一式となり、腰に挿したボウガンは岩竜バサルモスの素材を使用したグレネードボウガンとなっている。
4年の歳月を経て彼女は心身ともに成長していた。
だが常に一人で行動し、受けるクエストは街でありながらもチームを組まずにソロでこなし続けた。そして使用するものはソロでは珍しいとされるライトボウガン。
子供でありながらも彼女はただただそれを続け、その全てを成功に納めてきたのだ。その度に彼女は少しずつ成長すると共に、ロックラックの街で噂となりつつあった。
時が流れるにつれて優羅は有名となり、人目に触れられるのを嫌う優羅は一時ロックラックを離れて周辺の村々を放浪した。様々なフィールドでのクエストの経験も積み、それによって優羅は更に成長する。この選択もまた彼女に経験という名の報酬を与えたのだ。
そして今、優羅はロックラックの砂上船の港へとやってきていた。
その理由はただ一つ。ロックラック地方を離れて西へと向かうためだ。
当初の予定通り14歳となった優羅は中央へと向かう。
だが4年の時を放浪していたとはいえ、その時間はロックラック地方にて彼女を有名にさせた。
常にガルルガキャップをつけて素顔を隠し、ライトボウガンを手にしてソロでクエストをこなす少女のハンター。その腕前は百発百中、その弾はまるで吸い込まれるかのように目標へと着弾する。
しかし彼女はあまり人と関わらず、一人を好むかのように振舞い続けた。今までチームを組んだ事はなく、常に一人で過ごした彼女を人はこう呼ぶ。
『孤高の銃姫』――と。