「ハハッ、全然大したことねぇなコイツ(半笑い」とか思ってても形だけ高評価してもらえればそれだけで幸せになる卑小な生物です。
何が言いたいかっていうと、とりあえずみんな9点に投票して(懇願
輝夜と暁が平静さを取り戻すのにしばし時間を費やし。
再び、今後についての議論が行われる。永琳も今度は真面目な表情だ。
「では、これからの話をしましょう」
輝夜が口火を切る。
「まず第一に。暁の寝床ね。
「「えっ」」
声が重なった。
その声の主、鈴仙と暁はそれぞれ顔を見合わせる。
そして鈴仙はやや渋い表情で、暁は焦りの色を滲ませて、輝夜に言う。
「いや、姫様。さすがに患者でもない、それも男を住まわせるのはいかがなものかと……」
「そうですよ。それに俺一人で女性三人が住むこの場所に泊まり込むというのは……なんというか、息苦しそうなので個人的にも遠慮したいんですが……」
「そうなの?……っていうか、三人?」
「はい? えっと、輝夜さんと、鈴仙さんに、永琳さん。三人ですよね」
首を傾げる輝夜と同じく、指を折って数えながら首を傾げる暁。
そこで納得したように輝夜は手をポンと打つ。
「ああ、そういえば。あなたはまだ一度も見てないけど、ここの住人はあと一人いるのよ。てゐ、っていうのが。鈴仙が月の兎なら、てゐは地上の兎ね。今はお使いに行かせてるわ」
「あ、そうなんですか。……ちなみにその方は」
「女性」
「なおさら嫌ですよ! 見知ったばかりの女性4人と同じ空間で寝泊まりするとか気まずすぎますって!」
あっけからんと言い放つ輝夜に頭を抱える。
「そう? 私は気にしないけど」
「俺は気にします。多分鈴仙さんも」
「えっ、ちがっ……あ、あぁ、うん。そうね」
鈴仙は唐突に自分の名前が出て反射的に否定しかけるも、よくよく考えればなんら間違っていないので慌てて頷く。
「そんなこと言ってもねえ。じゃあどうするのよ。外の竹林で野宿でもする? 冬の夜は相当冷えるわよ。それに、この永遠亭には結界が張られてるから安全だけど、竹林には妖怪もウヨウヨしてるわよ? わざわざ危険を冒すの? 快適な寝床を捨ててまで?」
「うっ…………そ、それは……」
痛いところを突かれる。
(確かに、代案があるわけではない。しかし……)
そこで困り果てた暁を見かねた永琳は助け船を出す。
「姫様。確か、物置代わりに使ってた離れがありましたよね。あれはどうですか? 母屋とは多少離れていますし、ある程度気楽に過ごせると思いますが」
その言葉の半分は暁に向けられたものでもあった。
彼はその言葉に飛びつく。
「それです! そこを使わせて下さい!」
「ええ…………? 部屋があるのにわざわざ物置で寝泊まりさせるの……? アレ、相当長い間放置してなかった……? それに暁もよ。物置よ? 物置。埃も積もってるでしょうし、ガラクタの山もあるし、あそこで寝るのは……」
「大丈夫です。外界ではまさしくそんな状態の喫茶店の屋根裏部屋を与えられて、そこで寝泊まりしてましたから。とっくに慣れてますから」
「え、えっと、それは大丈夫とは言えないと思うんだけど」
食い気味な暁にちょっと引きながらも、そのあまりに不憫な境遇に居た堪れない思いを抱く輝夜。
物置同然の場所で実際に寝ていたことを聞いて鈴仙と永琳も同じような思いを抱く。
女性陣から憐れみ混じりの視線を送られていることにも気づかぬまま、暁は熱弁する。
「掃除すれば居心地は良くなりますし、少なくとも母屋の部屋を借りるよりはよほど気が楽です。住めば都とも言いますし、だから是非、その物置を貸してほし」
「わかった! わかったから! そこまで言うなら別に止めないけど! …………わざわざそんな場所を選ぶのは良いけど、さすがに掃除とかの面倒までは見きれないわよ?」
「ありがとうございます! 掃除は俺一人でやるから問題無いです」
「鈴仙も。それでいいかしら」
「えっ、あ、はい。離れなら……」
呆れ顔の輝夜は鈴仙にも一応確認をとり、承諾をとりつける。
「じゃあ永琳、暁を案内してあげて。鈴仙は掃除道具を持っていって。今すぐ掃除を始めるくらいじゃないと、寝床を作ることすらできないわ」
「はい、わかりました。それじゃ、暁は私についてきて」
「掃除道具ですね、取ってきます」
「よろしくお願いします」
永琳、鈴仙、暁の三人はサッと立ち上がり、その場を後にする。
自分の指示によって、一人だけぽつんと残された輝夜は、
「……まだ、一つめの議題が終わったばかりじゃない」
少し、寂しそうだった。
「これは……なかなかですね」
「その、不要になったものをかたっぱしから放り込んでたから…………」
暁と永琳。二人は離れに着き、扉を開いて見えたその光景に圧されていた。
見上げるほどうず高く積まれたガラクタの山。その上を覆い尽くす埃。
扉を開いて差し込んだ光は、舞い上がった埃とともに、それらを照らし出していた。
「……とりあえず、全部出しちゃってもいいですか?」
「構わないけど……その前に。凄い埃だし、口元は布か何かで覆ったほうがいいと思うわ」
「そうですね。ごもっともです」
彼は持ってきていた自分のバッグを足元に置き、ゴソゴソと中を探ってハンドタオルを取り出し、マスク代わりにする。
「ありがとうございました。あとは自分でやるので、もう行っていただいて大丈夫ですよ」
「そ、そう。じゃあ、頑張って?」
永琳は一応声援を残し、母屋へと戻っていった。
数分後、掃除道具を抱えた鈴仙がやってくると、そこには数々のガラクタが積まれていた。
(うわ。こんなに入ってたんだ……)
物置に入れられていた物の多さを再認識していると、中からまた新しいガラクタを持って暁が出てきた。
彼は目敏く鈴仙を見つける。
「あ、鈴仙さん。掃除道具、持ってきてくれたんですね。ありがとうございます」
「ああ、うん。ここに置いておくわね」
鈴仙はそう言って、邪魔にならないような場所に掃除道具をまとめて置く。
「……ものすごい量ね」
「そうですね。ちょっと想像を超えてました。でもまあ、平気ですよ。寝るスペースさえ確保できれば、残りは明日に回せますから」
「…………そう」
額に滲んだ汗を袖で拭いながら暁は笑った。
鈴仙はそれを直視することなく、生返事をする。
実のところ、彼女は多少の良心の呵責を覚えていた。
彼自身からこの離れでの生活を志願したとはいえ、そこには自分が一緒に寝泊まりしたくなかったという事情も含まれる。
いきなり現れた外来人、それも男とあって警戒するのは当然ではあるが、彼の話を聞く限り悪い人間ではないようだし、その話に嘘も感じられなかった。
随分と辛い目にあってきたらしい彼に、自分の我儘でこれ以上負担をかけさせるのは、いささか————
「鈴仙さん? どうかした?」
「…………手伝うわ」
「え?」
「掃除。私も手伝う。力仕事は無理だけど、今日はもう師匠の手伝いも終わってるし、暇だから」
「いや、そんな、悪いですよ。鈴仙さんに迷惑をかけるつもりは……」
「い、い、か、ら!」
語気を強める鈴仙。
彼にしてやれるせめてもの報いとして、掃除の手伝いくらいはやってやろう。
そんな心情だった。
「……すいません、鈴仙さん、助かります」
「それと!」
「な、なんですか?」
「その敬語。……気持ち悪いから、普通に喋って」
「え…………」
気持ち悪い、と断じられてさすがにショックを受ける暁。
たじろぎながら鈴仙を見ると、ジトっとした目でこちらを睨んでいた。しかしその目つきからは不思議と嫌悪感は伝わってこず、なんとなく不安げな印象を受ける。
暁は一つ息を吐いた。
「わかった。ありがとう、鈴仙。……これでいいか?」
「…………ふん」
その問いに鈴仙は返事をせずにそっぽをむき、持ってきた布巾の一つを暁と同じようにマスク代わりにする。
そして置いてある掃除道具からハタキを拾い上げ、そのまま離れへと入っていった。
暁は苦笑しながらそれに続いた。
鈴仙が手伝い始めたことで、暁だけでしていた時より遥かに速く掃除は進む。暁がガラクタを外へと運び、それによってもうもうと舞い上がる埃を鈴仙が処理する。
互いにだんだんと要領を得て、 動きも効率的になっていく。テキパキと動きまわり掃除を続ける途中、鈴仙が口を開いた。
「ねえ……………あ、
「ん? なんだ?」
間になにやら葛藤が挟まれたようだったが、気にせずに彼は聞く。
「…………その、外でもこんな場所で生活してたって言ってたけど。それって暁が言ってた『お世話になった人』のしたことなんでしょ? 本当にお世話になったの?」
「…………ああ、そうか。そりゃそう思うか」
こわごわと尋ねる鈴仙につい笑ってしまう。
それを見た彼女は怒る。
「な……! わ、笑いどころじゃないでしょ!」
「そうだな、ごめん。でも世話になったことは紛れもない事実だよ。最初は確かにちょっと冷たい感じだったけど……そもそも、その人が俺を引き取ってくれた当時の俺は『暴力沙汰を起こした問題児』だったしな。そんな人間を、些細な縁から面倒をみることを決断できる人は、そうはいない」
「それは……そうね」
「誤解が解けるにつれて、あの人も俺に優しくしてくれたし……屋根裏部屋に関しては、自分の家に俺を上げられない、止むに止まれぬ事情もあったから。何の不満も感じてないよ」
「事情?」
手を止めて、外にいる暁を見る鈴仙。
彼も動きを止めて、何かを思い返すように空を見上げていた。
「うん。大切な、家族のため」
「…………」
空を見上げる暁はやけに透徹した瞳をしていて、鈴仙は声をかけるのが憚られた。
一瞬沈黙が流れ、彼は空に向けていた目を鈴仙へと移す。
「長い話になるから。……また違う機会に話すよ。約束する」
「……そう。ならいいわ」
静かに言う暁。
どことなく穏やかなものを彼の言葉から感じとり、特に文句を言うこともなく鈴仙も納得した。
どちらとも、それ以上何を言うでもなく、自然と作業は再開された。
そこから一時間ほど経ち、積まれた全体のうち、およそ半分ほどのガラクタが外に出された。
鈴仙の協力もあって埃もほとんど無くなっているので、最低限寝ることはできるようになっただろう。
「ふう……今日はここまでにしよう。ありがとう、鈴仙。本当に助かった」
「別に、そんな大したことはしてないでしょ」
「それでもだ。手伝ってくれて嬉しかった」
「……や、やめてよ。なんか恥ずかしくなってくるじゃない」
鈴仙は頭を下げて感謝する暁にたじろぐ。
ちょうどそこに母屋から永琳が様子を見にきた。
「調子はどうかしら? ……あら、鈴仙? 彼の手伝いを?」
「あ、師匠。はい、そうですね。そんなところです」
「彼は一人でやると言ってたし……自分から言い出したの? あなたが?」
「な、なんですか! 何が言いたいんですか!」
「いや……どういう風の吹き回しかと思ってね。驚いた」
どうやら永琳は鈴仙をからかっているのではなく、本心から驚いているようだ。
そこに暁が声をかける。
「すいません、永琳さん。このガラクタの山、出したはいいんですが、どうすればいいですか? また違うところに運びますか?」
ガラクタの処分に困っていた彼は、タイミングよく訪れた永琳に尋ねた。
「あ、そうね。もう不要なものだから全部燃やしてもいいんだけど……それだとなんとなく勿体無いわよね」
「そうですね。じゃあ、また別の場所に——」
「…………いいえ、待って。あるわ。有効的にガラクタを一気に処分できる方法」
暁を押し留め、鈴仙に目をやる。
「鈴仙。彼を『
「香霖堂……ああ、確かにあそこならこのガラクタも……」
「そういうこと。手押車は用意するから。二台……で足りるかしら?」
鈴仙が納得したのを確認した永琳は、一人で思案しながら再び母屋へと戻っていった。
暁は鈴仙に尋ねる。
「香霖堂、というのは?」
「なんでも売ってる雑貨屋みたいなところ? 店主がかなりの物好きで、変なものばっかり置いてる店よ。ガラクタみたいなものを探しに出かけることもあるらしいわ」
「…………なるほど。まさにうってつけだな」
「でしょ? だからそこに行って、このガラクタを売りつけてこい、ってことなんだけど…………」
「……………………この量は、ちょっと大変だな」
「……………………そうね」
二人は運び出したガラクタの多さと、その総重量を思って、沈黙した。
少ししてから、永琳が手押車を持ってきた。
二台あるそれに、ガラクタをできるだけコンパクトにまとまるように押し込み、載せていく。その結果、なんとか二台にまとめることはできたが、代わりに重さが相当なものになった。
「……やっぱり、三台にしておく?」
「いえ、これならちょうど一回で運べますから。このままでいいです」
永琳の提案を辞退する暁。
彼女もそれに頷く。
「そうね。うどんげがいるなら二台で——」
「いやいや、鈴仙に面倒はかけませんよ。俺が運びます」
「「え?」」
永琳と鈴仙の声が重なる。
鈴仙に手伝わせると思っていた永琳はもちろん、力仕事は無理と自分で言った鈴仙も、その言葉は予想外だった。
「あなたが……って、どうやってよ。この重さを一人で運ぶのはいくらなんでも無茶よ。そもそも二台を同時に押すなんて不可能でしょ」
「できますよ。
パチン、と指を鳴らす。
同時、暁は蒼炎に包まれる。
既に一度見たその光景に、しかし永琳と鈴仙は度肝を抜かれる。
次の瞬間、彼は怪盗姿になっていた。
傍らには彼のペルソナ、【アルセーヌ】が佇んでいる。
暁——いや、
「ここに、
永遠亭で永琳と鈴仙を驚かせた後。
ジョーカーは鈴仙の後について、手押車を押していた。
ペルソナを発動している間、彼の身体能力は常人のそれと比較にならないほど上昇する。その力を活用し、一人で手押車を押していた。
その後ろでは、同じく手押車を押す存在——【アルセーヌ】があった。
少しだけ振り向いてその光景を見ながら、鈴仙は何度目かになる疑問がまた浮かび上がってくるのを自覚した。
(…………あんな使い方していいのかしら……)
本体である暁と、その分身であるペルソナ、とやら。
はたから見たら立派な分担作業だが、実際はどちらも彼自身。内情を知る者にとっては妙な気分にしかならない。ましてや、押している彼の姿がムダにスタイリッシュな怪盗服。
手押車を押す怪盗。シュールすぎる。
「なあ鈴仙」
「は、はい? なに?」
そんなことを考えている途中に声をかけられ、返事の声がややうわずった。
「香霖堂にはあとどれくらいでつく?」
「そ、そうね。あと十分くらいかな」
「ふむ、そうか。それなりに遠いようだな」
「……………………ええ」
妙な気分になる理由のもう一つはコレだ。
(なんか話し方、っていうか雰囲気とか、変わってない?)
掃除の時をきっかけに、砕けた話し方をするようになった暁だが、今の彼はそれともまたどこか違うような気がする。
どこが、と言われると、わからない。
まだそこまで彼のことを知っているわけでもない以上、どうしようもないのだが…………
(でもやっぱ、なんか、変)
彼女は言いようもない違和感に苛まれながら悶々とし、 香霖堂までの道を歩き続けた。
正月はゴロゴロ炬燵に入りながら執筆してたらムダに筆が進みました。
寝正月万歳。
ペルソナに覚醒すると気分が高揚することによって笑う、というのは意外と知られていないかもしれませんね。
3、4、5と主人公の覚醒シーン見てもらえればわかるので、気になる方は動画か何かでご確認ください。
それと似たような話で、主人公こと暁はペルソナを使い怪盗姿になるとハイテンションになります(公式設定)。
口調も変わり、まさしく別人のようになるため、鈴仙はそこに違和感を感じたわけですね。
プレイ中に「ショ↑ウターイム!」とかいきなり言い出した時は思わず吹きました。