轟音が鳴り響いた。
ビリビリと地鳴りが震え上がっていく。トウキョウ租界の中心部から離れているはずのここまで、伝わってきた。
ブリタニア政庁が崩壊した。あの巨大な直方体の建物が、ガラガラと崩れ落ちた。租界と外とを隔てる外縁部と同じように、地面に吸い込まれるように。堅牢なはずの要塞はもろく崩れ落ちていった。
「―――おいおいゼロ。政庁は残して置くんじゃなかったのかよ……」
目の前に広がっている光景に驚く面々、動揺の色がにじみ出てきている。ゼロへの非難もこぼれた。ミーティング時に取り決めていた対応とは違う、政庁はできるだけ壊さず残して使わせてもらうつもりだと思っていた。……破壊してしまったら、これからのブリタニアとの戦いに不利になるのではないか。あの要塞は是非とも本丸として使いたかった。
戦略など今まで考えたこともなかった=目の前の問題とブリキのクソ野郎をどうにかするのに手一杯で考える余裕もなかったけど、今では役目があり部下を持ち果たすべき責任がある。ゼロの傍で共に戦い続けてきたことで、『次を活かすために今やるべきこと』を考えるようになった。まだまだ拙いながらも、アレはもったいないことだとはわかった。あまりよろしくないことだとは理解していた。
でも、顔に浮かんでくるのは喜悦、胸にこみ上げてくるのは解放感。腹の底から全身がブルブルと震えて、止められない。
圧政の象徴が消え去った、跡形もなく。アレが常に自分たちを見つめていた、アレの視界に入らぬように地下とゴミ溜めに潜らなければならなかった。アレのおかげで何千人も殺された、アレを維持させるために常に誇りを侮辱されてきた、自分で捨てなければ生き残れなかった。憎悪という言葉では言い表せないほど、恨み骨髄にまで染み込んだ建造物。……ソレが壊れた、壊した。自分たちの手で。
思わず、勝鬨をあげようと口を開きかけた。だが、嬉々として眺めていると、気づいた。自分の迂闊さに。―――ランスロットに向き直った。
(しまった! やられちまう―――)
ゾワリと冷や汗が流れた。焦って向き直る。もう幾分も遅すぎるが、それでもそちらに向き直った。
恐れていた出来事=死=全滅&本陣の破壊。この反乱そのものが瓦解してしまうこと。ランスロットが一体いれば、ソレは成し遂げられてしまう。奴に対抗できる唯一の戦力である《紅蓮弐式》は、ここから離れた市街区で修理中。ゼロも政庁で戦っている。間に合わない……。
だが、何も起こらず/起きていない。生きている。
向けられている銃口=ナイトメアの巨大な銃口は、そのまま。自分にピタリと向けられ動かされていない。いつでも引き金を引いて殺せる状態/殺せた瞬間だったにも関わらず……。
先までの気を取られていた数秒は、逆転のチャンスだった。人質を殺される前に、自分だけを撃ち殺せた。だけど、何もしてこなかった。動かなかった、チャンスをみすみす取りこぼした。……なぜだ?
必死に考える。今も向けられている銃口、注意をそらしてしまった数秒、この機を見逃す理由―――……。可能性に気づいた。
「…………もしかしてお前、それ以上動けねぇんだな?」
恐る恐る尋ねるも、沈黙し続けるランスロットと裏切り者。今この時であっても引き金が引かれてない。
ソレが確信させた。
「……ハんッ! 脅かしやがって。ハッタリだったのかよ!」
余裕が戻ると、地面に唾を吐いた。口の中の苦味を取り去る。となりではラクシャータも、安堵の笑みを浮かべている。
ありえない現象だった。あの《ゲフィンオンディスターバー》の効果範囲で、ナイトメアがほんの少しでも動けることは。一度試したことはあるが、どうやっても身動き取れない。ギリギリ通信装置は使えるが、エンジンがほぼ稼働していない。その網の中に入ったら、ナイトメアは巨大な鉄の塊になるだけ。黒の騎士団にとっての切り札の一つだ。でも、ランスロットは動いた。範囲の中こちらに銃口を向けてきた。かの兵器は無効化されていたのだと、思わされた。……そうではなかったらしい。
「ラクシャータ。アレはちゃんと機能してるってことで、いいんだよな?」
「簡単な動作は出来るけど、指先を動かすような繊細な動作はできないってわけね。波動が全体の駆動系を麻痺する前に、一番先にやられる末端を犠牲にして保持したってところかしら。それとも、ライフルの防磁までは手が回らなかった、てところかなぁ。無反動の超電磁砲ならアレの影響で動かなくなるし……。でも、そんなヘマをあのロイドとセシルがするわけない―――」
研究者としての顔で、独り言をブツブツぶつぶつ。イライラを露に考え込んでいた。
「……もしもーし、聞こえてんのかラクシャータ?」
「―――そもそ、どうやって輻射波動の周波数を理解したのよ、捉えるセンサーはどうやって? 戦闘データと破壊の痕跡だけからソレを見つけ出したとでも言うの? だとしても何より、そんな高速なスイッチングをどうやって作り上げたの? ナイトメアに搭載されている演算機だけでどうやって? ガヴェイン並みのスパコンならともかく、運動機能に大半のメモリを持ってかれているはずのランスロットにどうやって……。私だって作れてないから、限定空間内でしか効果を発揮させられないのに―――」
唖然とする面々、助手たちも研究所長の姿に呆然。かまわずラクシャータは、イライラいらいら。いつも飄々と底意を読み取らせない余裕は吹っ飛んでいる。周りの目を気にせず、爪を噛むまで=ライバルが予想を超えて優秀であることに嫉妬。闘争心がむき出しになっている。
だけど、すぐにいつもどおり。何かを納得した顔。ここにはいない誰かに向かって宣言してきた。
「……こんな短期間でやるじゃない、ロイド。あんたのこと見くびりすぎてたわ。でも、ここで頂いちゃえばいいだけだから―――」
「ラクシャータ! コイツはこれ以上動けねぇってことでいいんだな?」
「今あんたが生きてるってことは、そういうことなんでしょうね」
投げ捨てるように答えると、興味がないとばかりに再び己の考えに耽る。
呆れた、勝手な女だ……。ゼロが連れてきた奴らはこんな奴ばっかりだ、頭にくる。優秀であることは認めるが、性格が破綻しすぎてる。コイツの研究とやらで何度こっちが振り回されたことか……。
だけど、それで弾みがついた。冗談は言うが嘘はつかない、特に自分の専門分野では。その彼女のお墨付きを得たのだ。もう怖れる必要はない。
ニヤリと口元を歪めた。
「聞いてるか裏切り者! てめぇのハッタリは見破ったぜ。さっさとコックピットから出て来いよ!」
最後通告。だが、沈黙をつづけるランスロット。
構わない、腹を立てる必要は全くない。慌てている奴の顔が目に浮かぶ、先まで余裕をかまして脅しつけてきた分スカッとさせてくれる。
「……降りたくねぇってんなら、別にかまわねぇぜ。そこでショーを見てろ。―――コイツラに鉛玉をプレゼントしてやる」
ガチャリと、今一度銃を学生たちに向け直した。追随して部下たちも向けた。
今度は、誰にも邪魔されない。止めるつもりもない。
「てめぇら、急所は外せよ! 何発ぶち込まれてから死ぬか、賭けようぜ!」
朗らかにそう言うと、部下たちは口の端を歪めて笑った。笑いあった。学生たちはヒィッと怯えた声を漏らすと、目をつぶりその時に備えた。
俺も含めてここにいる奴らは、多かれ少なかれこんな経験を強いられたことがある。目の前で仲間や友人が殺されるのに、何もできず指をくわえて隠れているしかない。やられた時はただただ不愉快で無力で、いつかそいつに同じ目を遭わせてやると臓腑に刻み付けるだけだった。それしかできなかった……。でも今、同じことができる。させてやることができる。無抵抗な奴に銃を向けるなんて最悪な気分がすると思っていたが、痛快な気分で満たされている。引き金が全く、重たくない。
銃を構え、狙いを定める。引き金に指をかけ、力を込める。銃弾が発射され、学生たちに最高のミュージカルをさせられる―――。
ただし銃弾は、真上から降り注いできた。
全身を揺さぶる銃声/地面を大きく穿つ銃痕、土埃が舞い上がり被せられた。反射的に腕を上げソレを防ぐ。
「―――な、なんだ! 何処から撃ってきた!」
土埃と銃弾の衝撃で汚された視界、その端で捉えたのは、ゲフィオンディスターバーが破壊された跡。ブンブンと唸りを上げて瞬いていたソレは、バチバチとスパークを上げている。
背筋が冷える/舌打ちした。
かわりに拘束を解かれ、復活するランスロット。関節部と両胸のファクトスフィアから、奪ったはずのサクラダイトの輝きが灯る。
「クソォッ! こんな場所に敵襲か―――くぉっ!?」
動揺し乱れた統率の中、再びの銃撃/今度は連射でばら撒かれた。飛び退いてどうにか躱す。
『―――スザク君、無事!』
上空から飛来するナイトメア、そのスピーカーから放たれた女の声。形はサザーランドだが色が違う、おまけに空も飛べている。ブリタニアの正式な軍隊じゃない。
増援。まさか来るはずがないと思って、油断していた。
「ちくしょぉがぁーーーッ!!」
ランスロット守護するように舞い降りたナイトメア、叫びながら銃弾を浴びせるも防がれた。半透明な電磁シールドが張られて、機体の装甲を傷つけられない。……予想通りカスタム機。
形勢は逆転された。一気に俺たちの方が、追い詰められた。
『―――こんばんわぁ、黒の騎士団の皆さぁん♪』
緊迫のこの場に相応しからず、陽気なおどけた声。上空から地上まで、最大ボリュームで放たれてきた。
見上げるとソコには、巨大な船。空に浮くはずのない戦艦=かつて式根島でみたブリタニアの空中浮遊戦艦。飛来したカスタム機を守るように、取り付けられた機銃から銃弾をばら撒いている。スポットライトを当てて、牽制してくる。
トドメ、泣きっ面に蜂だ。………もう逃げるしかない。
だけど、このままでは終われない。この場を任されたのは俺だ、それなのにこの体たらく。仲間へ、特にゼロへの面子が立たない。
喚き散らしながら銃弾をばら撒き続ける部下たち。隣のラクシャータですら動揺を露にしている。
彼らを尻目に、この場から離れた。
◆ ◆ ◆
(―――もう、これまでか……)
生徒会のメンバーに向けられた銃口、それを止める力は今の俺にはない。どうにかして腕だけ動かせても、ライフルは作動しない。先のチャンスで撃てればよかったのに、こちらのスイッチに反応してくれない。そのどうしようもない状況すら、敵にバレてしまった。
もはやこれまで。メンバー全員助けるためには、自分がコックピットから出ていなくてはならない。例え、ほんの少し殺されるのを遅らせるだけだとしても、助けられるのなら助けなくてはならない。この命に、まだ価値があるうちに………。
“―――――――――生きろ!”
こみ上げた諦観に押されてハッチのスイッチを開こうとすると、いきなり胸の動悸が激しくなった。諦めを倍するような圧力が全身から吹き出し、伸ばした指先を硬直させた=スイッチをとどめた。
“――――――――に、生きろ!”
沸騰させられたかのように、頭の中が真っ白に染められていった。チカチカと意識が明滅を繰り返した。俺が俺でなくなっていく、何かの力の奔流=かつて感じた違和感=ギアスの呪いで洗い流される。抗らいがたく止められない/止めきれない。占領されていく。
“――――――と共に、生きろ!”
奴の命令に従わされてしまう、彼らを無視してこのままここに居続けようとする。ソレが正しいことだと、やらなければならない使命だとも錯覚させてくる。ソレはとても楽しく喜ばしく、素晴らしい崇高な行為だと思わせる。俺の意志を、奪おうとする。安寧の暗闇に、とかされてしまう―――……… 。
“ユーフェミア・リ・ブリタニアと共に、生きろ!”
消えかけた暗闇の底で、その声を聴いた。奴の言葉ではない=書き換えられた命令。俺が望んだ俺の願い、選び取った未来だ。
胸の中に宿るのは、悔恨/怒り/使命感。それらがこみ上げ圧倒していく。ソレができなかった懺悔が、ソレが失われたことへの復讐が、ソレを奪ったことへの重責がのしかかってくる。―――彼女の魂まで汚すわけにはいかない。絶対に俺が形にしてみせる。
安息を払い除けて立ち上がらせた。何もかも置き去りにしたまま、ココから去るわけには行かない。………すくなくとも、まだ。まだ、ここでは―――。
消えかけた寸前で、つなぎ止められた。
『―――スザク君、無事!』
懐かしい声に、ハッと顔を起こした。起こせることに気づいた。
気が付くと、スイッチに指を乗せたまま、だけど押すまではいかず。先の強制力は残滓もなく消えていた。
「セシルさん……、ですか?
どうしてここに、その機体はどうしたんですか?」
『ランスロットの試作量産機よ。何とか間に合ったようね』
「間に合っ……た?」
呆然としたままセンサーを見た。
そこには、しじみだれて銃を乱射している黒の騎士団、先程とは違って慌てふためいている。そして、彼らの手から逃れることができた生徒会のメンバーたち。すぐさま、この場を離れて安全な場所に退避してくれていた。
生唾を飲み込んだ。背筋に冷や汗が流れ落ちる。
数十秒、あるいはもっとか。意識が途切れていた。その間俺は、何もせずただ固まっていただけ。ハッチを開けずにこの場に居続けて。生徒会皆のことを無視して、自分だけ助かろうと………。
怒りがこみ上げてくる。自分の不甲斐なさに腹が立った。が、すぐさま気持ちを切り替える。今は反省している暇はない。
もう一度周囲を確認すると、特徴的な銃痕がひとつ。ナイトメアの機銃にしても巨大な跡、小さなクレーターのように抉れた地面。それは、ランスロットを停止させていたゲフィオンディスターバーの二つを、正確に破壊していた。
拘束の輪は効力を失い、ランスロットは通常通りの稼働を再開している。―――これでいつでも、戦える。
『―――セシルさん、さっさとその特攻野郎を動かしてください。増援が駆けつける前に終わらせます』
通信に割り込んできたのは、きりりと引き締まった女性の声。セシルさんとは違う軍人の声、だけど年下/自分と同い年の少女の声=アリステルの声。懐かしの頼れる相棒の声だ。
見上げてその姿を確認した。アヴァロンの下部の腹/半ば開けられているハッチを、その奥で狙撃用ライフルを構えているであろうナイトメアを。ランスロットと同じ第七世代ナイトメアフレーム《エレイン》の優美な姿が、そこにあるはず。
そのままでは何も見えなかった。だけど、ランスロットがこちらの行動を読み取ってズームアップ。カメラを絞る、ファクトスフィアが読み取った情報を元に補完。ハッチに隠れたその姿がディスプレイに映し出された。
「アリスも、無事みたいだな」
『ええ。機体は半壊しちゃったけど、支援狙撃ぐらいはできる。……上官を愛称で呼ぶような不届き者を、撃ち抜くぐらいはね』
半壊。その有様に驚かされた。外縁部の崩落に巻き込まれたのか? それと誰かと、あるいは集団と交戦したのか?
前者は想像できず、さりとて後者も考えられない。彼女とエレインを倒せるだけのナイトメアが、黒の騎士団にあるのか。あの紅蓮以外に、どんなものが………。
思い出されたのは、夜色の機体。紅蓮に匹敵する強敵、空を駆けることができるナイトメア。ナリタ連山で、旧日本軍を掃討するための港で、青森ゲットーと九州での同時両面の反乱で苦しめられた。あの機体の姿がどこにもなかった。見渡した戦域の中に、奴の姿はなかった。―――彼女が倒してくれた。
もし奴が紅蓮と共闘していたら、自分はここにいなかった。ランスロット捕獲され、自分は殺されていたことだろう。生徒会の皆を/アッシュフォード学園の皆を助けることができずに。見えない場所でのサポートに、頭が下がる。
「……すいません。あんなこと言ったのに、結局助けてもらいました」
『気にしないでスザク君。アヴァロンが通る道の敵は倒したんだから、それだけでも上々よ。―――エナジーフィラーの交換は、必要?』
エナジーメーターを確認。残量を調べた。
駆動させ続けることは問題ない。甚大な被害を受けるかしなければ止まらない、俺自身にすら止められない。ギアスの影響下にいる限り、半永久的に動けるだけのエネルギーを保ち続けている。だけど、戦闘を継続するとなると話は別だ。フロートシステムや両腕の電磁シールド・両胸の高性能ファクトスフィアなどなどスラッシュハーケンですら、ランスロットの武装は大食らいだ。エナジーフィラーからエネルギーを供給しない限り、それらを十全に稼働させ続けることはできない。
「お願いします。途中で《紅蓮》と戦闘があって、腕とエナジーの大部分を持って行かれまし―――」
『てめぇ、だけはァーーーッ!!』
雄叫びをあげながら、突撃してくるナイトメア。その腕に抱えているのは、ブリタニア軍から奪ったであろうルガーランス。速度が乗れば電磁シールドを簡単に貫く。森の影から、虚を突かれた。
セシルさんの悲鳴が上がる。何とかしガードさせようと、手を伸ばそうとしてくる。だけど、他の牽制攻撃に妨げられできない。虚しく悲鳴だけを上げてきた。
そんな彼女と違って俺は、ゆったりと構えていた。怯えることなど微塵もない。先制こそ取られたが、その程度のことだ。すぐに覆してしまえる。
問題なのは、上空の味方だ。すでに狙いを定めているであろうアリスとエレイン。彼女にとって自分と味方に突撃してくる敵機は、撃ち殺して無力かする選択肢しかない。
突貫してくるナイトメアに振り返ると、ランスロットの膝から力を抜いた。前に重心を集めると、同時に後ろ脚が撓められ力が込もる。人体もナイトメアも同じだ。前に倒れるギリギリまで重心を移動させ続ける、力を貯め続ける。爆発の瞬間に備えた。
突き出したルガーランスの穂先が、手を伸ばして届く距離まで迫る/踏み込む。もう完全には回避しきれない距離/無手のこちらの間合い。―――直後、一気に弾けた。
発射されたかのような速度、グワンッと潰されるような重圧がコックピットに襲いかかった。初速からマックスのスピードで、ランスロットは飛んだ。
ルガーランスの刃を避け、敵ナイトメアと交錯/横を通り抜ける。その寸前に、真横に伸ばした腕。ちょうど敵の首元に引っかかる高さに置いた。互いに逆方向のベクトルが全て、敵の首元でぶつかった=ラリアット。
―――バキィンッ……。
敵は空中逆上がりをすると同時に、その頭部が切り離されていた。ぐるりと回転しながら飛び、なくなった頭部を/肩と首を地面にぶつけて地面を擦る。ガリガリがりがりと地面を削りながら滑ると、止まった。
倒した敵には一瞥もくれず、上空にいる相棒へと声をかけた。
「―――できれば誰も殺したくない。コックピットは外してくれよ、アリス」
通信機越しに、小さな舌打ちが聞こえた。
『……相変わらず、誰にモノ言ってるんだか。私はあなたの上官なのよ―――』
『う、ウあぁぁぁーーーっ!!』
横手から、なくした腕の方角からまた敵襲。今度は突撃ではなくライフル、腰だめに両手で構えて向けてきた。
シールドで防御できる、避けることだって可能。相手は動揺していて上手く狙いも絞れていない。すぐに反撃して倒せる。
でも、背後の森には生徒会メンバーの姿見えた。防御しなくてはならない。ナイトメアのライフル弾は一発でも致命的だ。しかし、片手だけのシールドでは銃の乱射を正面から防ぎきれない。機体の装甲で受けるしかない。
壁になるために身構える=ダメージを負う覚悟。その時の衝撃に備えて、歯を食いしばった。―――轟音が鳴り響く。
放たれた銃弾は一発。目の前の敵のライフルと両腕を破壊して、地面を穿った。上空の戦艦から発射された、相棒のサポートだ。
『できるに決まってるでしょ。こんな雑魚どもなら、ね』
頼もしい一言に、自然と顔が綻んだ。
長々とご視聴、ありがとうございました。
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