魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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最近自分のジュエルシードに対する打ちミスがホントに酷い!

毎度毎度見直してみたらジュエルシードが『ジェルシード』になると言う失敗を過去作にしろ作ったばっかの話にしろ度々発見してしまいます。

ホントにこれは完全に私の失態なので自分でなんとかする他ないのですが、ジェルシードと言う単語見る度に(# ゚Д゚) と言う感情が生まれてしまう今日この頃。

読者の方に指摘されるまでまさかここまで大きな間違いに気付かなかったのが悔しかったです。

もし誤字脱字や文法的におかなしところがありましたら、遠慮なく言って下さい。暇があればできるだけ早く直す所存です。


第三十七話:忍者

「っで? てめェらホントなんなの? なにしに来たのホント?」

 

 頬を引きつらせる銀時の前には、何故かこの時の庭園にいる猿飛あやめと全蔵全蔵(やって来た理由と方法は不明)が並んで立っていた。

 

「なんだ、会ってそうそうやぶからぼうに」

 

 と全蔵が言うと猿飛が呆れ顔で。

 

「あんたが性懲りもなくイボ痔ネタするから銀さんは怒ってるのよ。分からない?」

「なんの前触れもなく登場しやがったテメェら両方に俺はイラついてんだバカヤロー!」

 

 銀時は怒り気味に言う。横のアルフは呆れ顔。

 

「前から思ってたけど……あんたの知り合いって、変なの多いね……。ま、あんたも十分変な奴の部類に入るけどさ」

「ふざけんな! こんな変態共と一瞬すんじゃねェよ!」

 

 銀時が怒鳴ると、全蔵が食ってかかった。

 

「おいおい、この摩利支天を変態呼ばわりとは随分なモノ言いじゃねェか」

「ケツにロウソク生やした奴を変態以外のなんと呼べと?」

 

 そう言う銀時がジト目を向けるのは、全蔵の尻の穴に刺さったままのピンクのロウソク。

 

「これはテメェが刺したモンだろうが!!」

 

 全蔵が怒鳴り返すと、猿飛が腕を組んで言う。

 

「まったくね。ケツにロウソク生やしたあんたは忍者ではなくただのイボ痔の変態と知りなさい」

 

 辛辣なさっちゃんに対して、アルフは半眼を向けた。

 

「いや、あたしからしたらあんたも十分変態に見えるんだけど……」

「うっさいわねこの雌犬風情が!! 私をこんなイボ痔と一緒にしなでちょうだい!!」

 

 胴体が前、顔が後ろ向きの猿飛が怒鳴る。銀時はそんなくノ一の姿にドン引き。

 

「いや、首が1回転半してるテメェは変態どころかバケモンなんだけど」

「つうかお前いつまで捻じれたままなんだよ!」

 

 とアルフがツッコムと、

 

「銀さん。忍者はね、時として相手の隙を自ら作らなければいけない時もあるのよ」

 

 突如語りだした猿飛。目を瞬かせる銀時の様子など気にせず変態くノ一の語りが続く。

 

「忍者の技の一つには相手の隙を作るための『死んだフリ』と言うモノがあるわ」

「むろん忍者の『死んだフリ』はテメェらが熊なんかにやるようなちゃちな『死んだフリ』とはワケが違う」

 

 と説明を繋げるのは全蔵。そして再び猿飛が自慢げに語る。

 

「それこそ、近くから見ても重傷を負って死んだようにしか見えないような高等テクにより相手を騙すワザよ。いくら銀さんといえど、素人の目ではただの屍にしか見えないわ」

 

 説明を聞いた銀時は汗を流しながら指摘した。

 

「いや、どんな高等テク覚えたら首が540度も曲げられるようなんだよ。つうか、首が一回転半してる死体なんて普通いねェし」

「とりあえず全蔵。首が痛くなってきたから戻してくれないかしら」

 

 猿飛は全蔵に後頭部を見せながら言う。

 

「いや、お前どっち向いて喋ってんだよ。俺こっちだから」

「しょうがないでしょ。胴と顔の正面が反対なんだから」

 

 猿飛の言葉を聞いて全蔵は「たくしょうがねェなァ」と言いながら、猿飛の側頭部を両手で掴み固定。

 ゴキボキとかなり不穏な音を出した後に猿飛の首は元に――戻らず更に百八十度回転した。

 全蔵は満足げに頷く。

 

「これでよし」

「いやどこがッ!? 余計酷くなってんじゃねェか!! ついに二回曲がっちまったぞおい!!」

 

 銀時が青ざめながらツッコムが、猿飛は満足そうに肩を回す。

 

「ふぅ~。これで楽になったわ」

「なんでッ!? どこに楽になった要素あんの!? 命が楽になったの!?」

 

 戦々恐々の銀時の言葉を無視して、全蔵は片手を上げてさよならのポーズ。

 

「そんじゃま、俺たちはこの辺で退散するとするわ。やることまだ色々残ってるんでな」

「いや、おい!! 行く前に江戸に帰る方法教えろよ!! 俺に!!」

 

 と、慌てた銀時は食い気味全蔵の肩を掴む。

 

「お前ら江戸からこっちの世界に来たんだよな!? だったら帰る方法もちゃんと知ってるんだろ!?」

 

 銀時の懇願に対し、全蔵は取り合わない。

 

「わりィがこっちも任務なんでな。お前さんをこのまま江戸に帰すワケにも、帰す方法を教えるワケにいかねェ。もしマジで帰りたきゃ自力でなんとかしてくれ」

「自力でって、それができりゃあテメェみてェなイボ痔忍者に頼み事なんかするかボケェ!」

 

 どこ吹く風とばかりの全蔵は「あ、そうそう」と言って懐からあるものを取り出す。

 

「こいつは選別だ。マジで困った時はこいつを使って切り抜けな」

 

 そう言って全蔵が渡したのは、今週号のジャンプだった。

 

「これで何を切り抜けと!? おまけで付く切り抜き付録を切り抜けってか!」

 

 銀時のツッコミにアルフは「ウマイ」と呟く。

 

「ああッ! やっべ! 間違えた! それは買ったばっかのジャンプ!」

 

 と全蔵は慌てて銀時からジャンプ奪い取り、ズボンの中に手を突っ込む。

 

「本当に渡すもんはちゃんと大事にしまってあったんだった!」

 

 そう言いながら全蔵はズボンの中をまさぐり始めた――主に尻の部分を。その姿を見た銀時は青ざめる。

 

「なんつうとこに大事なモンしまってんだテメェはァ!?」

 

 全蔵は尻を弄りながら説明しだす。

 

「忍者ってのは身ぐるみ剝がされても大事な密書やら物品を奪われないようにするために予想外な場所に隠すんだよ」

「だからって野郎の汚ねェケツに隠すとかバカじゃねェの!! イボ痔のクセしてテメェは自分のケツが綺麗だとでも思ってんのか!? つうかそうやってなんか入れてるからお前イボ痔なんじゃねェの!」

「銀時やっぱコイツただの変態だよ!」

 

 ついにはアルフにまで変態呼ばわりされる始末の全蔵。

 スポンッ! という軽快な音と共に全蔵はズボンから握り拳を出す。

 

「ほれ、受け取りな」

「なに真顔でとんでもねェ要求してんのお前!?」

 

 無論銀時は全力拒否。

 

「んなもん汚くて受け取れるワケねェだろ! イボ痔がうつるわ!!」

 

 嫌悪感全開にする銀時はアルフに顔を向ける。

 

「アルフ代わりに受け取ってくんない? 洗ったら俺も受け取る覚悟決めるわ」

 

 と言う銀時にアルフは「断固断る!!」と拒否全開。

 

「たく、注文の多い野郎だ。つべこべ言わずに受けとりゃあいいんだよ」

 

 全蔵は握っていたものを銀時に投げつける。

 

「きったねェ!!」

 

 もちろん銀時が避けるのは当たり前で、全蔵が投げたものは当然地面に落下。

 

「そんじゃ、今度こそ俺ら行くわ。せいぜい頑張んな」

 

 全蔵は手を振って姿を消す。

 

「おィィ!! 行くにしてもこれ洗ってからにしろォ!!」

 

 銀時は止めに入ろうとするが、あっという間に全蔵の姿は消失。

 

「銀さん、私も首を長くしてあなたの帰りを待っているわ」

 

 と続いて、首が二回転した猿飛も姿を消す。

 

「いや、お前は首が捻じれてるせいですでに微妙に長くなってんぞ!」

 

 と銀時がツッコミ入れてる間に、猿飛は姿を消してしまう。

 そしてこの場の空間に残ったは、アルフと銀時だけ。

 

「なー銀時、これどうする?」

 

 しゃがんでいるアルフが指を差す先には、イボ痔忍者のイボから出てきたと思われる謎の物体。

 布に包まれた正体不明の物を見て、銀時は一言。

 

「お前、ゴム手袋とか持ってない?」

 

 

「っで、あんたの知り合い連中は結局なんだったんだい? なんでこの『時の庭園』いた上にプレシアの奴に捕まって拷問紛いのマネまでされそうになってんのさ」

 

 怪訝そうなアルフの質問。対して、ゴム手袋とマスクで完全防備した銀時は袋の中のモノを取り出す。

 

「知らねェよ。あのバカ忍者共の目的なんて。何も話さずに消えちまったんだからな」

 

 つうかアレは拷問なのか? と銀時はつい内心疑問に思ってしまうが、とりあえず気にするのはやめておく。

 ボケ合戦しただけで結局重要な情報なんてものは一切得られることができなかった。もしかして自分に情報を与えないために敢えてボケ連発してたのか? などとアホな邪推までしてしまう始末の銀時。

 

「って言うか、あたしらこんなことしてる場合じゃないよ!! 今更だけど!!」

 

 すぐさまアルフは慌てた様子で言うが、銀時はまったく慌てずに返す。

 

「あん? なにが? ウン〇でもしたくなったか?」

「なんでこの状況でウ〇コの話になるんだい!!」

 

 と、怒鳴り返すアルフは捲し立てる。

 

「じゃなくてプレシアとフェイトだよ!! 結局玉座の間に二人を放置したままじゃないか!! 今度こそフェイトがプレシアの奴になにされてるか分かったもんじゃないよ!!」

 

 使い魔の訴えを聞いても、銀時の態度は依然として気だるい感じのまま。

 

「つうか、二回もあんな一場面みせられたらあの女に危機感なんて覚えねェよ。いや、子供の教育上的な意味じゃかなり危険な部類入るかもしれねェけどよ。あの様子じゃ別にフェイトにどうこうするような感じでもなかったろ?」

「た、確かにそうだけど……でも!! あたしが前々から感じ取ってたプレシアの雰囲気はホントに危険な感じだったんだ! フェイトにとっても!」

「わァーったよ」

 

 そう言って立ち上がった銀時は、包みから出したモノにアルコールをシュッシュと振りかけながら言う。

 

「そんじゃ、三度目の正直だ。今度こそヤベェ母親の姿って奴を拝ませてもらおうじゃねェか」

 

 アルコールをタオルでふき取りながら不敵な笑みを浮かべる銀時。

 

「――っで、結局それなんだったんだい?」

 

 アルフはしまらない絵面に微妙な顔をしながら銀時に問いかける。

 

「――鞘の……首飾りか?」

 

 タオルの中にあったのは鞘を模したペンダントのようなモノ。鞘の先端部分には穴が開き、そこから長い紐が通されているので、首にかける物のようだ。

 アルフは眉間に皺を寄せてペンダントを見る。

 

「それが一体なんの役に立つって言うんだい?」

「さァな。ま、あのイボ痔忍者のことだ。なんかあんだろうよ」

 

 そう言って銀時の鞘のペンダントをポケットに仕舞った。

 その時、

 

 バシンッ!! バシンッ!!

 

 と何かを叩かくかのような乾いた音が玉座の間から聞こえてきたのだ。

 

「母さん……もう、わたし……!!」

 

 フェイトの弱々しい声を聞いて二人は三度目の突撃をした。

 

 

 

 ドアを無言で蹴破る銀時と、

 

「プレシアァ! あんたついに本性を現したな!!」

 

 気合の入ったアルフの掛け声。

 二人の目の前にはとんでもない光景が広がっていたのだ。

 

「母さん、わたし……もう無理です!!」

 

 根を上げる娘と、

 

「やりなさいフェイト!! これはあなたの為でもあるのよ!!」

 

 懇願する母。

 一見文章にするとようわからんが、説明するこうなる。

 娘が鞭を手に持ち、母親の尻を足蹴にし、その母親は娘に鞭でぶたせることを強要している姿だった。

 プレシアは叫ぶ。

 

「今こそ今までの教育の成果を見せる時なのよ!! さァ、この私をその鞭でぶったたき――!!」

 

 ズドォン!! という音と共に、拳がプレシアの脳天を直撃。大魔導師の顔面は地面にめり込んでしまった。

 そしてそれをやった人物こそ、フェイト・テスタロッサの使い魔の狼。

 

「あ、アルフ……」

 

 フェイトは自分の使い魔の行動に呆然。目の前の光景に銀時は頬を引きつらせ、アルフは一言も言葉を発さない。

 そしてアルフはボトボトと力なく歩きながら銀時の方へ向かって行く。

 

「……銀時」

「な、なに?」

 

 ビクッと肩を震わせる銀時。対して、アルフは光のない瞳で。

 

「なんか、あたしの勘違いだったみたいだね……」

「そ、そうだね……」

 

 銀時は怖くて乾いた返事しかできない。

 そのままボトボトと歩くアルフの後姿を見つめていた銀時は、フェイトに向き直る。

 

「ま、まァ……なんだ……。親子のスキンシップって奴も、ほどほどにな……」

 

 当たりさわりないことを言った後に銀時も玉座の間を後にした。

 

 

「チクショォォォォォッ!!」

 

 時の庭園の一室に戻った後、アルフは大声を上げながらベットに拳を叩きつけた。そして何度も何度もベットを両手で叩く。

 

「まさかプレシアの正体が実の娘にあんな変態プレイ要求する奴だったとはぁぁぁぁぁあああ!!」

「まままま、落ち着けって」

 

 微妙な顔の銀時が優しく声をかける。

 

「フェイトがプレシアに肉体的外傷を与えられてねェって分かっただけでもいいじゃねェか」

 

 銀時はフォローを入れるが、アルフは尚も声を荒げた。

 

「その分精神的な負担半端ないよ!! フェイトはあんな変態の母親の娘っていう足枷をずうっと履かされることになるんだよ!!」

「いや、まァ、な。うん……」

 

 正論なだけに銀時としては言葉を返し辛い。

 実は陳腐というか、間の抜けたテスタロッサの闇に対し、めんどくさく感じてきた銀時。

 これ、もう教育委員会とかの案件じゃね? みたいな考えまで頭に浮かんできてしまう。

 

 すると部屋のドアが開く。

 

「あ、二人共ここにいたんだ」

 

 扉を開けたのはフェイトだ。

 

「フェイトォーッ!!」

 

 フェイトの姿を見た途端、アルフは涙を流しながら自分の主に抱き着く。

 

「あ、アルフ……」

 

 突如抱きしめられたフェイトは戸惑い、アルフは涙を流しながら訴える。

 

「もうあんな頭イっちゃった変態クソババアのとこにいちゃダメだよ!! あたしとフェイトとついでに銀時の三人で逃げて静かに暮らそうよ!!」

 

 感情を吐露するように捲し立てるアルフに、銀時はさり気なくツッコム。

 

「いや、それはいくらなんでも言い過ぎじゃね? 仮にもおたくの主の母親よ? つうかついで扱いでお前、俺を巻き込もうとしてない?」

 

 アルフはフェイトから顔を離して力強く宣言。

 

「つうわけで、フェイトはあたしと銀時が頑張って育てるから! あんなのの元にいたらフェイトには悪影響しかないよ!!」

 

 そこで銀時が待ったをかける。

 

「いや、なんで俺まで保護者にしようとしてんの!? なし崩し的に人にデカい荷物背負わせようとすんの止めてくんない!?」

「旅は道連れ世は情けってことわざが地球にはあるらしいじゃないか!」

「なら小さい子には旅をさせろってことわざも覚えてとけバカヤロー!」

 

 いつ知ったかは知らないが地球のことわざをわざわざ引っ張り出してくるのアルフに、銀時もことわざで反論。

 

「ちょ、ちょっと待って二人共!」

 

 二人が言い合っているとフェイトが両手を出してストップをかけた。

 少女の静止を聞いて犬耳女と天然パーマの視線がフェイトに集まる。

 

「わたし、このまま母さんのためにジュエルシードを集める」

 

 フェイトは決意の籠った目ではっきり言う。

 無論、納得いかないでろうアルフは「なんでだよフェイト!?」と驚く。

 

「アレだよ!? アレなんだよ! あんたになんか、変な事させるような母親の為にどうしてそこまで……」

 

 言葉を選びながら悲しそうな顔をするアルフ。

 

「まァ、SMプレイさせるような母親はヤベェはな」

 

 言葉選ばずにガッツリ明言する銀時もさり気なく同意。

 

「――私には、分かる」

 

 と言ってフェイトはアルフの腕に手を置き、俯き気味に語りだす。

 

「母さんは、たくさん大変なことがあって疲れてるだけ。だからあんな変なことまでしちゃったんだと思う……」

「フェイト……」

 

 アルフは悲しそうに瞳を潤ませる。

 

「え? なにこれ? 今の話の流れからシリアスすんの?」

 

 銀時が後ろでなんか言ってるが、フェイトは構わず続けた。

 

「教えてもらったの。ジュエルシードが集まれば、母さんが長年求め続けていた研究に近づけるって。そうすれば、ゆっくり休むことができるって」

「その研究って?」

 

 アルフの問いにフェイトは首を横に振る。

 

「研究の内容は教えてもらえなかった。でも、私は最後まで母さんを信じる」

 

 フェイトは自身のシャツの胸部を掴みながら顔を反らして言う。

 

「母さんの願いを――ジュエルシード集めれば、きっと昔の母さんが戻ってくるって……予感がするから」

 

 主の話を聞いて使い魔は視線を反らした後、首をぶんぶんと振り、力強く言う。

 

「わかったよ! ならあたしもとことんフェイトを信じるよ!! ダメで元々だ! やるだけやってみようじゃないか!!」

「……ありがとう、アルフ」

 

 フェイトはアルフの手を取り、優しく微笑む。

 そんな二人のやり取りを、腕を組む銀時は壁に背中を預けながら見ていた。

 

 

 

 報告も済み、地球に戻る時だった。

 

「なァ、フェイト」

 

 フェイトの後ろにいた銀時が唐突に話し掛ける。

 

「なに、銀時?」

 

 少女は振り向かずに返事をするが、銀時は構わず聞く。

 

「お前、なんか悩んでることでもあんのか?」

「…………どうして、そんなこと聞くの?」

 

 依然と振り向かないままフェイトは言葉を返す。銀時はポリポリと頭を掻きながら答える。

 

「いや、特に他意はねェんだけどよ……。アルフに喋ってる時のお前、なんつうか、気持ち悪いの我慢してる感じ? みてェに見えたからよ」

「あの……白い魔導師の子と……決着をつけないといけないと思うからかな。たぶん、自分で思ってるよりも……きんちょー、しているんだと思う」

「そうかい。ならいいんだけどよ」

 

 そう言って別の方向に視線を移した後、銀時は口を開く。

 

「そういやァ、俺とアルフが買ってきたケーキ、ちゃんと母ちゃんに渡せたか?」

「……うん。渡せた」

 

 とフェイトが頷いて返事をすれば、銀時は軽く返す。

 

「……そうかい」

 

 それっきり二人は地球につくまで、会話をすることはなかった。

 

 

「ええええッ!? 忍者ですか!?」

 

 バニングス低のリビングで驚きの声を上げるのは新八。

 対して、土方は「ああ」と頷く。

 

「どうやら今回の事件、プレシア以外にも妙な連中が暗躍してんのは間違いねェみてェだ」

 

 くノ一と人間に寄生する化け物が裏で何かしている、と説明した土方はコーヒーを啜る。ちなみに周りに幼い子供がいるのでTPOを弁えタバコは我慢しています。

 

「しかもさっちゃんさんと同じくノ一なんですよね? その忍者って」

 

 新八と問いに土方は無言で頷く。

 

「お、さすがムッツリ眼鏡。女と聞けばたちまち発情アルか?」

 

 人聞きの悪いこと言うチャイナにメンチ切る眼鏡。

 話を聞いたアリサは微妙な表情。

 

「侍の次は忍者……」

「ホントに江戸時代の人たちなんだね、土方さんたちって……」

 

 すずかは関心半分驚き半分といった顔になった。

 

「新八さん。さっちゃんさんて誰ですか?」

 

 新八の口から発せられた聞きなれない人物名に、なのはは首を傾げる。

 

「僕らの世界のくノ一だよ。僕たちの知り合いでもあるんだ」

「ちなみにさっちゃんはドMで銀ちゃんのストーカーアル」

 

 と神楽が付け足す。

 

「えッ? なにそれ……」

 

 アリサはさっちゃんの人物像を聞いてドン引きし、沖田が口を開く。

 

「あの雌豚は近藤さんと同族ってことだ」

「おいおい、俺をあんな変態マゾヒストと一緒にするなよ総悟ォ」

 

 軽い調子で言う近藤をアリサはジト目で見る。

 

「いや、変態的な部分ならあんたとどっこいどっこいよ」

「他にどんな忍者さんと神楽ちゃんは知り合いなの?」

 

 純粋に興味があるらしいすずかは神楽に質問。チャイナ娘は腕を組んで答えた。

 

「う~ん……あと知ってるのは、ジャンプ好きのイボ痔の忍者アル」

「イボ……」

 

 すずかは神楽の言葉を聞いて絶句。

 

「あんたたちの世界の忍者ってマトモなのいないの?」

 

 半眼で引き気味のアリサに新八が弁明する。

 

「いや、僕らの『知り合い』の忍者が特殊なだけで、ちゃんとした忍者もいるからね!」

「つまりあんたらの周りって基本変なのしかいないってこと?」

 

 アリサの言葉にまったく言い訳できない新八は黙った。

 なんか話が脱線しだしたので土方は「とにかく!」と大きな声を出して話を軌道修正させ、声を低くして告げる。

 

「まったく未知の輩がこの世界で何かしら企んでいるのは確かってことだ」

「その人たちって、悪い人たちなんですか?」

 

 なのはの質問に土方は首を左右に振った。

 

「さァな。可能性は高いが、悪人かどうかまでは判断できん。だが、得体のしれねェ化け物を引き連れてる連中だ。マトモな奴らでは、ないだろうな」

 

 説明を聞いたなのはは不安な表情を作ってしまう。

 アリサはため息を吐く。

 

「フェイトのことだけで手一杯だってのに、その上正体不明の敵。正直、これから先どうなるのかしら」

「まァいいネ。私らの邪魔するならぶっ飛ばすだけネ」

 

 神楽が拳を掌に叩きつける。

 

「あんたホント物事を頭で考えないわね……」

 

 アリサは呆れた目で神楽を見るのだった。

 そして数日ほど時間が経ち、海鳴市の海岸付近にジュエルシードが発動することとなる。

 

 

おまけ

  

 ちなみにフェイトがプレシアのために持って来たケーキは一体どこから入手してかと言えば……。

 

 チャリンという軽快な鈴の音と共に喫茶翠屋のドアが開き、新たな客がやって来る。

 

「いらっしゃいませー」

 

 と無難な言葉で応対するのは、地味にレジ打ちまで覚えた山崎退。

 この山崎と言う男はその地味な見た目に反して運が悪かったする。

 原作でも初恋相手の時に最悪の見合いをセッティングされたり、志村家にスパイをしに行ったらいつの間にか抹殺されそうになるなど、結構な頻度で酷い目にあっているのだ。

 

 そして今回たまたま午前中のレジを任された山崎の前に不運がやって来てしまう。

 

 軽快な音と共にまた店のドアが開き、その音に反応した山崎が慣れたあいさつを口にしようとした。

 

「いらっしゃいま――」

 

 ドアを開けやって来たのは、銀髪天然パーマとオレンジ髪の女――ようは銀時とアルフ。

 招かれざる客とはまさにこのこと。

 今現在、敵対関係に位置するであろう一派の二人。そいつらが、なんか知らんが自分が店員として働いている喫茶翠屋にやって来たのだ。

 

 ――嘘ォォォォォォォォ!?

 

 山崎は内心シャウト。

 

 ――いや、なに!? なんでこの二人平然とここにやって来てんの!? ここなのはちゃんの家だよ! つまりアウェーだよ! 本丸だよ!

 

 と山崎は内心では思ってみるものの、すぐに予想がついた。どうせこいつらはこの喫茶店がなのは一家が経営しているとは知らずに来たのであろうと。

 

 ――や、やべェよ……。どうしよ……。あの二人なんか俺見て、固まっちゃるし……。あの旦那のことだ、ぜってェロクなこと考えてないよな……。

 

 真選組一番隊隊長である沖田総悟並に時たまドS 行為働く男だ。自分もあの銀髪にひどい目に遭わされた記憶が何度もある。モヒカンにされたり……。

 

「おい、俺があいつの顎に一発入れるからお前は……」

 

 と銀髪が耳打ちすれば、オレンジ髪の女は。

 

「なるほど。そこであたしが首をこう、カブっと……」

 

 ――なんかすっげェ物騒な話し合い始めたんですけど!

 ――しかもなにあれ? ヒソヒソ話のつもり? 小声で話してるつもりなの!? おもっくそこっちにあんたらの物騒な相談丸聞こえなんですけど!

 

 このまま店員として棒立ちしていたらなにをされるか分かったもんではない。

 待っていては()られる。その前にこっちから牽制するのだ。自分がネゴシエイトして向こう側の銀時をこっちに引き入れるしかない。

 

「ちょ、ちょっと万事屋の旦那! 俺たち別に敵対する必要ないでしょうが!! 俺、これから土方さんに連絡入れて、話し合いの場儲けますからおとなしくして――!!」

 

 と言い切る前に、突如動いたのはアルフ。自分の口になにかを突っ込んだのだ。

 

「んごォ!?」

 

 ――んぎゃああああああああッ!? なにッ!? なんかイクラみたいな大量のつぶつぶが口に放り込まれた!?

 

 ちなみに山崎の口に放り込まれたのはドックフード(アルフのおやつ)。

 突如の不意打ちにもんどりうつ山崎。

 山崎に攻撃してきたアルフは拳をボキボキ鳴らしながら睨みをきかせる。

 

「おいあんた。余計なマネすんじゃないよ。こっちはいつでも臨戦態勢OKだ。隙見て仲間にチクろうったってそうはいかないよ」

 

 山崎は「ぺッぺッぺッ!!」と鼻につく固形物を口から吐き出し、すぐに弁明開始。

 

「ちょちょちょッ!! だから俺は話し合いをしようとしてるだけ――!!」

 

 すると今度は銀時が山崎の首に腕を巻いて言葉を遮る。

 

「おい、学級王山崎くん」

「いや、誰それ!? 俺そんなコロコロ的な異名名乗った覚えないし!」

「わりィけど、俺あのニコチンマヨネーズパーリィ野郎とグダグダ揉めんの嫌なんだわ」

 

 だから、と言う銀時の手にはガリリリリと鳴る機械が握られている。そして銀髪はサディステックな目線で。

 

「もし、おめェの上司&うちの社員&あの白チビに俺たちが来たこと教えたら、てめェのヘアースタイルが世紀末か坊主のどちらかになるぜ」

 

 山崎は青ざめた顔で自分の眼前にある電動剃刀を見る。目の前で立っているアルフも無言で、駆動音が鳴る髪を散髪するための機器を構えていた。

 銀時は剃刀を近づけながら言う。

 

「とりあえず、俺たちが来たことは黙った上で、ケーキ全品100%OFFにしな」

「それ最早ただの強盗じゃん! 脅迫じゃん!!」

 

 山崎は抵抗のツッコミ入れるが、髪質を取られている以上は最早抵抗するわけにはいかないのであった。

 

 

 

「ありがとうございましたー……」

 

 山崎が店員としての挨拶をし、喫茶翠屋から銀髪とオレンジ髪の客が出ていく。

 すると裏から高町家の母である桃子が出てくる。

 

「あ、山崎さん。そろそろ休憩を入れて、少し早めのお昼にしたら――」

 

 新しく入ったバイトの頭を見て、店主の妻は絶句。

 

「おっす。おら、山崎」

 

 涙を流す山崎の頭髪はザキロットへと進化を遂げたのであった。

 

 


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