魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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第七十話:救出劇

 時の庭園、城内部――螺旋階段の間。

 

「山ジミ! なんでプレシアとリニスを連中の元に行かせたりしたんだ!!」

 

 声を荒げながら近づくクロノに対し、山崎は涙目。

 

「山ジミって誰!? いくらなんでもその間違い方は酷い!!」

「す、すまん! 焦って名前間違えた!」

 

 クロノが謝る一方、土方が「山崎ィ!!」と怒鳴りだし、アリシアをおぶる山崎の胸倉を掴む。

 

「お前ふざけんなよ!! なんのために俺たちが陽動請け負ったと思っていやがんだ!!」

「だ、だってー……! プレシアさんの眼力と迫力メッチャ凄いし、それにアリシアちゃん任された後、すぐに連中の元に向かっちゃって……」

 

 涙目山崎は言い訳しだすが、血走った眼光を向ける副長には通じない。

 

「プレシアと俺、どっちが怖い?」

「ふ、副長の方がメッチャ怖いっす……」

 

 山崎は顔面蒼白になりながら答えると、

 

「まぁまぁお兄さん」

 

 土方の肩をポンポンと叩くのは、山崎におんぶされた笑顔のアリシア。

 

「私のママはすっごい強いから大丈夫。きっとすぐに戻ってくるよ」

 

 鬼の副長のおっかない顔を前にして、自信満々に母の無事を信じる少女。そんな彼女に山崎は頬を引きつらせながら言う。

 

「君、胆力凄いね……」

 

 クロノは「仕方ない!」と声を張り上げ、これからの行動を告げる。

 

「僕は当初の予定通り奴らがいる玉座の間に向かう!! 連中を逮捕すると同時にプレシアもちゃんと連れてくる!!」

 

 すると、番傘を肩に掛けた神楽と、自身の得物を握りしめた新八が前に出た。

 

「ならもちろん私らも行くアル!」

「うん! ここまで来たらとことんやってやる!!」

 

 続いて沖田、更に腕を組んだ近藤が一歩前に出る。

 

「仕方ねェ、乗りかかった船だ。いくら鬼ババアでも、警察としてを置いてくワケにはいかねェしな」

「ああ! 老人介護は任せろ!!」

「ここにプレシアさんいたらあんたら間違いなくぶっ飛ばされますよ?」

 

 と言って、ジト目向ける新八。

 土方は新たな煙草に火を付けながら山崎に顔を向ける。

 

「おい山崎。とりあえずお前は柳生の連中と一緒にアリシアをアースラまで護送しろ。いいか? お前はどうなっても構わんが、アリシアだけは死んでも守れ」

「副長! なんかリリカルなのはの世界来てから俺に二割増し厳しくなってません!?」

 

 玉座の間に行くであろうメンツが自然に決まった事で、クロノは「よし」と頷く。そして、後ろで疲労や魔力の消費により息が荒くなっている局員たちに顔を向け、指示を飛ばす。

 

「君たちにはアリシア・テスタロッサの警護を任せる! 無事に時の庭園から脱出させるんだ!!」

「「「「「わかりましたッ!」」」」」

 

 局員たちはクロノの指示に勢いよく返事をする。

 魔法が使えず少人数で向かおうとする侍たちの存在に異議を唱えない局員たち。彼らの実力を目の辺りにしたからだろう。

 

 このままクロノたちは玉座の間に、山崎たちはアースラへと向かう――っとすんなり事は運ばなかった。

 

「く、クロノ執務官!」

 

 局員の一人が慌てた声を出していた。

 廊下へと向かおうとしたクロノが後ろ振りむけば、局員が焦った顔で天井を指さす。

 

「天井から妙な傀儡(にんぎょう)たちが!!」

「なにッ!?」

 

 クロノと更には新八たちもまた局員の言葉を聞いて天井を見れば、わらわらと現れ始める――〝新型の傀儡〟。

 

 四足の足を使って壁をカサカサと素早く歩く姿は、蜘蛛を連想させる。

 体はボールのように丸っこい形状。一部に頭であろう突起物が生えており、首が長く、口に当たる部分には鋭く長い針が伸びている――キメラ型の造形。

 大きさにして、ボーリング球より少し大きいくらいで、今まで出てきた傀儡に比べればかなり小さい方だ。

 

 だがしかし、小ささをカバーするかのごとく、物凄い数の群れが壁を張って下に向かう姿は、まさに群れをなす蟻に近い。

 

「クソッ! 今度はやたら素早いのがワラワラ出てきやがった!」

 

 舌打ちする土方に対して、アリサは不気味な光景を見て若干引く。

 

「き、気持ち悪い……」

「うぎゃァーッ!! キッショッ!!」

 

 さすがの神楽もドン引きの様子。

 

 更にはダメ押しとばかりに、大型傀儡兵が作った巨大な壁穴から――また大型の傀儡兵が出現。

 ドシン! ドシン! と足音を鳴らしながら登場した、全身真っ赤な人型の傀儡兵。

 倒したばかりの巨大傀儡兵のような大砲は肩に乗っておらず、右腕自体が大砲になっている別タイプ。

 

 威圧感マシマシな色と姿をした敵の出現に、近藤は汗を流しながら焦り声を出す。

 

「ま、まずい!! アレは通常の三倍の戦闘力を有しているに違いない!!」

「なに三倍!? どういう事ですか!? なぜ三倍と判断を!?」

 

 さすがに聞き捨てならなかったクロノに対し、近藤はクワッと目を見開いて言い放つ。

 

「赤いからだッ!!」

「つまりどういうことだ!?」

「シャアザクじゃねェから!!」

 

 とツッコミ入れたのは新八。

 

「そうです!!  むしろあの腕に付いているのはロックバスターではありませんか!」

 

 と言うのは東城。

 

「ロックマンでもねェよ!!」

 

 再び新八のツッコミがさく裂。するとクロノは声を張り上げる。

 

「山崎! 君はアリシアを連れてアースラに帰還してくれ!! ここで転送魔法が使えない以上、君が時の庭園の入り口まで全速力で走るんだ!!」

「わ、わかった!!」

 

 山崎はアリシアをおんぶしながらすぐさま走り出し、新八は九兵衛と東城に顔を向ける。

 

「九兵衛さん東城さん!! 山崎さんとアリシアちゃん事をよろしくお願いします!!」

「あぁ」

「承りました」

 

 既に刀を抜いた九兵衛と東城は山崎に追走するように護衛に入る。

 すると突如、壁に張り付きながら下に降りてくる四足の傀儡たちが、飛び降り、雨あられと降って来だす。

 その光景を見て土方は思わず声を上げる。

 

「マズイ! お前ら! 上に気を付けろ!!」

 

 飛べないであろう形態の傀儡たちが十数メートルの高さから次々とジャンプ。

 局員たちは続々と地面に落下してくる無機物たちに動揺し、慌てだす。

 

 その光景はさながら、拳より一回り大きな石が次々と降ってくるかの如く。

 

「うわぁぁぁぁぁッ!!」

 

 さすがに防ぎ切れないと咄嗟に判断した新八。頭を両手でガードしながら螺旋階段の下に避難する。

 

 クロノやアリサやすずかは防御障壁で防ぎ、神楽は傘を広げてガード。

 残る侍たちは降って来る傀儡たちを刀や斧で必死に捌かなければならないので手を焼いている。

 まして数が多いだけに、あの土方と沖田ですら刀で防ぎ、体捌きで避ける事に注力している有様。

 

 質量の雨はどんな生き物にとっても脅威なのは遥か昔から変わらないのだ。

 

 そして泣きっ面に蜂と言わんばかりに、地面に無事に着地した傀儡が襲い掛かってくる。白鳥のように長い首を動かしながらの、口の長い針による刺突攻撃。

 

「慌てず冷静に対処するんだ!! 落下物は物陰に隠れてやり過ごせ!!」

 

 クロノは必死に声を張り上げ、続いて土方も指示を飛ばす。

 

「頭は武器か腕でガードしろ!!」

「み、皆さんも早く階段の下に!!」

 

 新八もまた必死に声を上げて、階段の下に移動するよう進言。汗だくになりながら、襲い掛かる敵の胴や頭を殴って弾き飛ばす。

 

「うわぁッ!」

「ぐあッ!」

 

 強力な防御結界で防げるクロノ、すずか、アリサとは違い、何人かの局員は防御魔法が破られてしまっていた。

 更に悪いことに、新八のように咄嗟に避難できていない局員もちらほらと。

 降ってくる傀儡に伸し掛かられたり、襲ってくる傀儡の針が体に掠ってしまうなど、とても対処できてるとは言いずらい状況に陥っていしまっている。

 

 アリサとすずかが襲われている局員たちを助けようと、魔力弾で出来うる限り援護。

 

「クロノ! なんとかアリシアや局員の人たちをアースラに戻せないの!!」

「このままじゃ!!」

 

 アリサとすずかの意見に、クロノは顔を(しか)めてしまう。

 

「無理だ!! こんな状態で彼らを送還させてしまったら、この傀儡たちまでアースラに呼び込んでしまう!!」

 

 だからこそさきほどクロノは山崎に時の庭園の入り口まで向かえと告げたのだ。とはいえ、敵が高所から特攻じみた攻撃をしてくるとはさすがに予想できなかったようだが。

 

 予想外の攻撃により、こちらの足をばたつかせる状況に陥ってしまっている。

 しかも嫌な事に、

 

「なッ……!?」

「おいなんだこれ!!」

「刺された所に痺れを感じるぞ!!」

 

 傀儡の針には毒が塗ってあるのか、体の痺れを訴えだす局員がちらほら出始めていたのだ。

 まだ運よくみんな戦えているが、このままでは戦闘不能者が出てくるのも時間の問題だ。最悪、命を落とすものも多かれ少なかれ出始めてしまうだろう。

 

 クロノもなんとか負傷していく局員たちを援護しながら視線を山崎たちの方へと向ける。

 

 さすがに剣の腕が立つと自負していただけに、九兵衛と東城は刀で降って来る傀儡たちを切り裂き、いなし、アリシアを抱えて反撃できない山崎を敵から守っている。

 とはいえ、さすがに無暗に動けないらしく、廊下に一歩一歩下がるくらいの移動で限界のようだ。

 

 だが、敵はもちろん上から降って来るだけではない。

 

『ウィィィィィィン!』

 

 大型の傀儡が、とうとう動き出したのだ。

 足元にいる傀儡兵などお構いなしに踏みつぶし、スクラップを増やしていく。

 

「デカいのが動き出した!!」

 

 と新八。

 

「あいつ味方なんざお構いなしか!!」

 

 フレンドリーファイヤ上等の敵に土方が舌打ちした時、降って来た中で無事な数体の傀儡たちが一斉に山崎たちの方へと向かって行く。

 凄まじい動体視力で上と下の敵を捌く土方が声を荒げる。

 

「おいッ!! 東城!! 九兵衛!! 山崎!! 気を付けろ!! 下からも敵だッ!!」

「ッ!」

 

 上の対処、さらには大型に気を取られていた九兵衛――だがしかし、走って突撃してくる傀儡数体を神速とも呼べる剣で一気に切断。

 東城もまた一体ほど処理するが、

 

「ッ!!」

 

 たったの一体だけが九兵衛と東城のガードを抜けて山崎へと飛び掛かろうとする。

 山崎は慌てて後ろに下がろうとするが避け切れるはずもなく、彼はそのまま敵の鋭い針によって刺突されそうななったところ、

 

《Schrange Bisen!》

 

 男性の音声が耳に届く。

 同時に、傀儡が素早く突き出された剣――いや、いくつもの刃を鉄のロープに通した連結剣――によって串刺しにされて吹き飛ばされた。

 

 唖然とする山崎たち。彼らの後ろの通路から桃色の閃光が飛び出し、螺旋階段の間の中心へと躍り出る。

 

 突如として現れたのは、桃色の服を着た、ピンクの髪を後ろで一つに結った騎士――シグナム。

 彼女は手に持った愛機を構える。

 

「行くぞ、レヴァンティン」

《Angriff!》

 

 シグナムが大きく剣の柄を振ると、山崎を助けた連結剣がまるで踊り狂う蛇のように縦横無尽に暴れまわる。地上や階段――果ては空中に点在する傀儡たちを次々と貫き、切り裂き、鉄の残骸をあたりにまき散らす。

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 突然の出来事に驚く面々をよそに、数メートル上の壁を突き破りながら赤い閃光が姿を現す。

 現れたのは手にハンマーを持ち、赤髪を二つのおさげに分け、髪に合わせたように赤い服を着た少女――ヴィータだ。

 

《Schwalbe Fregen!》

 

 ヴィータは空中に静止し、自身の前にいくつもの鉄球を展開。そして、鉄球群に向かってバッドを振るかの如く、手に持ったハンマーを構える。

 

「出血大サービスだ!! 食らいやがれぇ!!」

 

 ヴィータは思いっきりハンマーを下へと振りかぶり鉄球を下方に発射。更には体を一気に捻って上に残った鉄球たちを上方に発射する。

 上下両方に発射された無数の鉄球は壁と床に張り付く傀儡に次々と命中し、爆発。

 

「いったい……!?」

 

 まさかの光景に驚く新八をよそに、大型の傀儡の視線が動く。

 

『ウィィィィィイイイイイン!』

 

 視線の先は、突如現れた赤い騎士。

 自身より少し高めの位置にいるヴィータに向かって、威嚇するかのごとく駆動音を鳴らし、赤く光る眼をギラリと光らす。

 そして大砲の腕を上げ、砲口を小さな騎士へと向ける。

 

 しかし、素早い足音と共に、一筋の銀色に光る軌跡が大型の傀儡の膝裏を、更にはアキレス腱に当たるであろう箇所を急襲。

 二か所を切り裂き、鋭い切り口が瞬時に出来上がる。

 

 突如として足のふんばりが効かなくなった傀儡は膝を付き、(こうべ)を垂れる。

 そして巨大な足を一瞬にして斬った長髪の侍は、懐から三つの鉄の魂を取り出す。内二つは腕の大砲に放り込み、最後の一つは傀儡の顔面へと投げつけられた。

 

 直後、ドォォォン!! と傀儡の大砲と頭が爆散。なにより大砲内部の破壊が凄まじかったのか、腕から右胸にかけて大きく破裂するように内側から粉砕されてしまう。

 これで決着と思いきや、顔が爆炎に覆われたままでも、傀儡は長髪の侍に向かって残った腕を伸ばす。だが、指先が顔の前まで来た直前に動かなくなり、力なくその巨体は倒れこむ。

 

「ヅラッ!!」「桂さん!!」

 

 神楽と新八が嬉しそうに現れた長髪の侍の名を呼べば、

 

「ヅラじゃない桂だ」

 

 とお決まりの返しを披露する桂。

 

「桂、テメェ……なんのマネだ?」

 

 土方は刀を手に持つ桂に鋭い視線を向ける。

 一方の新八は、一気に傀儡たちがいなくなった事で彼らへと顔を向けながら驚きの声を上げる。

 

「そもそもなんで、桂さんやヴィータちゃんやシグナムさんが此処に!?」

「なに、我々は家主である――八神はやて殿の願いを叶えに来ただけの事」

 

 桂は襲ってきた残党傀儡を真っ二つに切り裂きながら答える。

 

「願い?」

 

 沖田が首を傾げると、桂の横に並ぶシグナムが「あぁ」と短く頷く。

 続いて、上空からゆっくり地上に降りてくるヴィータがハンマーの柄部を肩に乗せながら、めんどくさそうに告げる。

 

「はやてがおめぇら心配でしょうがねぇって言うから、あたしらがこうやって気ぃ効かせて助っ人に来てやったんだよ」

 

 

 

 

 場所は代わり、アースラのオペレータ室。

 

 そこにはパネルを操作するエイミィと、彼女の後ろに立つリンディ。

 そして、車椅子に乗った茶髪の少女。車椅子の手押しを握る金髪の女性に、その隣に立つ筋骨隆々で白い髪の頭に犬のような耳を生やした男と、白いペンギンのお化け。

 

 車い椅子の少女――八神はやては、桂たちが螺旋階段の間で活躍している姿見ている時、ふいにリンディへと顔を向ける。

 

「クロノくんたちにシグナムたちの事を教えてなかったんですか?」

 

 首を傾げるはやてにリンディは指を立ててニコリと笑顔を作る。

 

「まぁ、こう言ったサプライズの方がシグナムさんたちの参戦を否定しそうな頑固者の息子を強引に納得させられますので」

「なるほど」

 

 とはやては納得。一方、エイミィはパネルを操作しながら苦笑する。

 

「もう艦長。本当にクロノくんストレスで脱毛症とかになったら笑えませんよ? ここにきて、局外の人間の助力を頼んじゃってるんですから」

 

 オペレーターの言葉を聞いて、車椅子の手押しを握るシャマルは無言で苦笑い。

 はやてもまた、苦笑しながら言う。

 

「まさか、リンディさんから協力して欲しいって頼まれた時は予想もしてなくてビックリしましたよ」

「私も、まさかはやてさんはともかくヴォルケンリッターの方々があんなにあっさり協力の申し出を受け入れてくれると思いませんでした」

 

 そう言ったリンディははやてに体を向け、佇まい正してから頭を下げる。

 

「改めて、今回の協力の申し出を快く受け入れくれて、本当にありがとうございます。あなたの大切なご家族のご助力が得られたこと、感謝の言葉しかありません」

「頭を上げて下さい。お礼の言葉をもらうのは私じゃありませんから」

 

 はやては若干申し訳なさそうにしながら両手を前に出す。

 彼女は少し悲しそうな、だがどこか愛おしそうな表情で画面で活躍するシグナムとヴィータと桂を見つめる。

 

「皆さんを手伝うって言ったのも、そして今頑張っているのも、私じゃなくて私の『家族』と『友達』ですから」

 

 そしてはやては花が咲くような笑顔をリンディへと向ける。

 

「だからシグナムやヴィータ、それに桂さんにお礼を言って労って下さい」

「……はい」

 

 リンディは微笑を浮かべてはやての言葉に深く頷く。

 するとはやての騎士の一人であるシャマルがふっと思いついたように、唇に指を人差し指を当てながら問いかける。

 

「にしても、良かったんですか? エイミィさんがさっき言った通り、いくらシグナムやヴィータちゃんや桂さんが強いからって協力を申し出て」

「こう言った事後処理は慣れていますので、あなたたちが心配なさる必要はありません。それに……」

 

 そこまで言ってリンディはニコリと笑みを浮かべる。

 

「〝後々の事〟を考えればお互いにとってとてもプラスになると思いますよ」

 

 リンディの含みある言葉を聞いてはやては首を傾げる。

 はやての騎士の一人であるシャマルは彼女の言葉の真意がなんとなく分かったのか微笑を浮かべ、ザフィーラはやれやれと首を横に振る。

 そして、エリザベスは特に何を考えているのかわからない眼で状況を静観していた。

 

 

 

 

「艦長……僕はダメだとあれほど言ったのに……」

 

 寛容と言うか自由と言うか臨機応変と言うか、ある意味破天荒な艦長の作戦。そんな母の笑顔を思い出して、クロノは青筋浮かべながら頬を引き攣らせていた。

 

「はやてちゃん……」

 

 一方、すずかは嬉しそうに最近知り合った少女の名を口にし、アリサは笑顔で助っ人にお礼を言う。

 

「ありがとう。お陰で助かったわ」

「お、おう」

 

 ヴィータは少し気恥ずかしいのか頬をポリポリと掻く。

 沖田はアリサにジト目を向ける。

 

「あり? お前のキャラ的にここはツンデレゼリフ言わねェの?」

「あんたが何を期待してんのか分かんないけど、大体腹が立つ事ってのはわかるわ」

 

 アリサもお返しとばかりに沖田にジト目を向けた。

 クロノはヴォルケンリッターの二人から少し視線を逸らした後、深く息を吐いてから向き直る。

 

「……すまない、助かった」

 

 軽く桂、ヴィータ、シグナムに頭を下げるクロノを見て新八は若干驚いた。

 

(クロノくん……)

 

 彼の過去、そして職に対して高いプライドを持っている人柄から考えて、こうも素直にお礼を言うのは少々予想外であったからだ。

 

 視線をチラリと上へ向けるシグナム。視線の先では、さきほどより圧倒的に数は少ないが、丸い傀儡たちが壁に張り付きながら降りてくる。

 

「どうやらあまり長話をしている時間はないようだ」

 

 シグナムの言葉を聞いて各々はお互いの顔を見て頷き、クロノは桂たちに顔を向ける。

 

「助けてもらった上に無関係な君たちに頼むのは申し訳ないが、山崎やアリシアが逃げる手助けをお願いしたい!」

 

 シグナムは「あぁ」と短く頷く。

 ヴィータはハンマーを肩から降ろしながら「まッ、その為に来たんだしな」と言った後、新八たちに手の甲を向けて手首を払う。

 

「おめぇらまだやる事あんだろ? とっとと行けって」

殿(しんがり)は我らに任せてもらおう」

 

 桂の言葉を皮切りに、クロノを先頭として土方、近藤、沖田、神楽、アリサ、すずかは奥へと繋がる回廊へと走りだす。

 そして新八が「ありがとうございます!!」と深々と頭を下げた後、先を向かう者たちの後を追って走る。

 新八たちが走ると同時に、時の庭園の入り口に向かって走っていく山崎たち。局員たちはお互いに肩を貸し合いながら撤退していく。

 

 逃げる彼らに桂、ヴィータ、シグナムが目を向けていると、上から三体の傀儡が三人に向かって降って来る。

 

 しかし、一瞬にして襲い掛かって来た敵を桂とシグナムは剣で斬り裂き、ヴィータはハンマーで壁まで吹き飛ばす。そして、傀儡の破片が周りに飛び散る。

 

 ヴィータは「クソ……」と呟き、自身の服に付いた破片を見て露骨に嫌悪感を現す。

 

「折角はやてに〝作ってもらった〟騎士甲冑が汚れちまう……」

 

 パンパンとスカートや帽子に付いた破片を手で叩き落とすヴィータ。

 するとシグナムが「しかし……」と呟き、ヴィータが「ん?」と反応を示す。桃色の騎士はやれやれと首を横に振りながら走っていく新八たちの背中を見る。

 

「まさか、目覚めて幾ばくも経たぬ内に、我ら守護騎士が主以外の者の為に剣を振るう事になるとはな」

「いいじゃねぇか。管理局に借りを作れるなんて、滅多にねぇんだしよ。それに……」

 

 ハンマーを肩に掛けるヴィータはシグナムに向けてニヤリと笑みを浮かべる。

 

「〝主が望んだ事〟を実行すんのも守護騎士の務めだろ?」

「フッ……そうだな」

 

 応えるように、笑みを浮かべるシグナム。

 桂は少し離れた山崎たちを見ながら二人の騎士に顔を向ける。

 

「さて、我らも行くとしよう」

 

 刀を鞘へと納刀する桂の言葉を聞いてシグナムとヴィータは頷き、時の庭園の入口へと走り出す。

 桂は廊下を走りながら、別の場所で戦う銀髪の侍を思い浮かべるのだった。

 

(銀時よ……。お主の(けん)、異世界でも決して霞む事はないと信じているぞ)




第七十話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/80.html
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