魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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第七十四話:仕事が一段落した後の睡眠は一味違う

 時間は経ち、時刻は夜。

 

 次元航行艦アースラでは、多くの者たちが就寝。起きている者は夜の作業分担が任されているオペレーターや警備を任された局員に限られていた。

 その為、艦内は音も光も最低限となり、シンと静まり返っている。

 

 そもそも時間の概念があるかどうかすら分からない次元の海を渡るアースラに夜の時間帯とかあるの? 疑問もあるだろう。そこはもちろん接近している次元世界の地球の時間に合わせた時間帯にしているのだ。

 

 今の今までアースラで寝食をしてきたなのは、アリサ、すずかも事件が終わった事で家へと帰り、自身のベットでぐっすり寝ている。

 ちなみに海鳴市で一緒にジュエルシード探しをしてきた江戸の者たちは、少女たち三人の勧めで居候していた家へと戻り、今は夢の中だ。ちなみに新八、九兵衛、東城はアースラで夜を過ごしている。

 

 そしてそんな静まり返ったアースラ艦内の廊下を歩く、簡素な白い半そでの上着とズボンを着た銀髪天然パーマの男が一人。

 あてもなく廊下を徘徊する天パ。やがて食堂の扉を開け、中へと入る。

 するとその気だるげな瞳に、見知った顔が三つ。

 

「あッ、銀時さん。良かった、やっと〝目が覚めた〟んですね」

 

 私服のような恰好の上にカーディガンを羽織ったリンディがお茶(砂糖入り)が入った湯呑を両手に持ちながら微笑みを浮かべる。

 そしてリンディと同じテーブルに同席している制服姿のクロノと普段の服装姿のリニスの顔も反射的に銀時へと向く。

 山猫の使い魔は笑顔を向けるが、執務官は仏頂面を向けるばかりだ。

 

 さきほどのリンディの問いに対して、銀時はため息を吐く。

 

「まぁ、な……。まさか、起きたら夜(?)になってるとは俺も思わなかった」

「それにしても、どうして食堂(ここ)に?」

 

 小首を傾げるリニスに銀時は頭を掻きながら答える。

 

「さっきまでちょいと便所に行ってたんだが、そのまま目が冴えちまって寝れねェもんだから小腹が空いちまってな」

 

 クロノは腕を組みながら銀時にジト目向ける。

 

「アースラに戻った途端ぶっ倒れ、そのまま爆睡。まぁ、単純に睡眠時間を考えればこんな変な時間に目が覚めてもおかしくないだろう」

 

 と言いながらクロノは銀時に向かって手招きする。

 

「兎にも角にも気絶した後のことは知らないだろうし、僕も個人的に色々言いたい事があるから、座って話そう」

「わかった」

 

 頷いて銀時は踵を百八十度返して食堂を出ようとする。

 

「待て待て待て」

 

 クロノは食い気味に待ったかけ、文句を言う。

 

「なにがわかっただ。僕の顔を見て出て行こうとするとか、失礼極まりないぞ」

 

 足を止めて振り返る銀時は、露骨にメンドーという気持ちを表現した顔を作る。

 

「いやいや、どうせ口うるさい母ちゃんみたいな説教が待ってるだるんだろ? だったら寝れなくてもこのまま二度寝するわ俺」

「あーなるほど。どうやら僕に対するあなたの認識は小うるさい人間らしいな」

 

 と青筋浮かべるクロノ。

 するとリニスがニコリと笑顔を作る。

 

「折角なら、少しお話しませんか? 私個人としても色々と積もる話もありますから」

「それに小腹がお空きでしたら、パフェもありますよ」

 

 リンディが笑顔で掌に乗せたパフェを見せつける。

 

 

 

「俺もまー、当事者だからな。事のあらましってやつを知るべきだと思ったんだぜ?」

 

 リンディの横に座った銀時の手前には背の高いグラスがあり、中にはたっぷりとパフェが詰まっていた。

 パフェをスプーンから摘まみながら真剣な表情向けてくる銀時。対して、クロノは腕を組みながら「あなたはホントに現金だな……」と言って呆れた表情を浮かべている。

 

 銀時は白いクリームを掬って口に入れた後、自身の格好を見ながら眉間に皺を寄せる。

 

「つうかよー、俺の服どうしたんだ? なにこの格好?」

 

 クロノは腕を組みつつ、説明をする。

 

「あなたの今まで着ていた服は破損が酷くてな。あのままの格好はいかがなものかと思って、着替えさせたんだ」

「えッ!? 気絶してる間に勝手に俺を脱がしたのかよ!! お前まさか、男の服を脱がす趣味が――!!」

 

 引き顔で自分の体を抱く銀時に対し、クロノは青筋を浮かべる。

 

「僕じゃない!! 医療スタッフだッ!! 勝手に人を変態にするな!!」

 

 相変わらずの銀時に対し、エイミィは苦笑いを浮かべる。

 

「アハハ……それで銀時さんの服どうしましょう? 破損個所は時間を掛ければ直せますけど?」

「あー、直すなら直してくれね? 元の世界の俺の一張羅だから」

「なら、直るまでの間はアースラの隊員服を支給しましょうか?」

 

 と言うリンディの提案に対し、銀時は「いんや」と言って手に持ったスプーンを横に振る。

 

「とりあえず、なのはの地元の服屋で同じようなヤツ見繕うわ。探せばあるだろ」

「わかりました」

 

 リンディが頷けば、銀時はクロノにスプーンの切っ先を突き付ける。

 

「んで、おたくらこそこんな夜分に何やってんの?」

「スプーンで人を指すな」

 

 注意するクロノに代わってリンディが答える。

 

「できるうちに今回の事件の資料を大まかにまとめておこうと思いまして」

「はえ~、仕事熱心な事で」

 

 と言いながらパフェをまた一口掬う銀時に対して、クロノはため息を吐く。

 

「フェイトを助けたらあなたの仕事は終わりかもしれないが、僕たちは事件の報告書や資料制作が終わるまで、終了とは呼べないんだ。まぁ、捜査も継続しなきゃならないが」

「へ~、公務員ってやっぱ大変なんだな。こんな夜分遅くまで残業とか。将来なりたい職業に公務員選ばなくてマジ正解だったわ」

 

 そう言いながらまたパフェを口に運ぶ銀時に、クロノは青筋浮かべる。

 

「母さん。事件の功労者の一人とは言え、僕はマジでコイツをシバキたくて仕方ありません」

 

 アースラ艦長は精神的に苦労の絶えない執務官に苦笑いを浮かべ、銀時はリンディに顔を向ける。

 

「そんで結局、突入作戦の結果はどうなったんだ? プレシアとアリシアは助けられたの知ってけど、クリトリ――」

「クリミナルなクリミナル。いくらなんでもその間違いは許さないぞ」

 

 と食い気味のクロノ。

 

「そんで、そのクリミナルの下っ端連中は全員捕まえられたのか?」

 

 銀時の言葉を聞いてクロノは「あれだけ苦労して捕まえられたのがただの下っ端だったらホントに笑えないな」と皮肉を言いながらため息を漏らす。

 リンディは笑顔を浮かべながら言う。

 

「事件に主要に関わっていたトランス、並びにパラサイト。そして氏名不詳の博士と言う人物を確保することができました」

「後はあのアサシンのような方も確保できれば良かったのですが、それは欲張りすぎですね……」

 

 リニスの残念そうなというか疲れてそうな反応を見て、銀時はふとプレシアの事を思い出す。

 

「もしかしてよー、プレシアが『全員捕まえる』って駄々こねたりしたのか?」

「い、いやまー……そ、そんなことは……」

 

 リニスは顔と視線を逸らしてた後、「ハァ~~~……」と深くため息を吐く。

 猫の使い魔の反応で銀時はすぐに察した。これは大分あの大魔導師(あるじ)の為に四苦八苦しただろうと。

 

「救出作戦の〝立役者様〟だってのに、精神的疲労半端ないなー」

 

 銀時の言う立役者とはもちろんリニスのことだ。

 なにせこの山猫の使い魔が時の庭園の座標情報を把握していたからこそ、救出作戦を実行する事ができたのだから。

 

 銀時の言葉を聞いてリニスは「いえ、私はそんな大層なものじゃありませんよ」と言って首を横に振る。

 

「私はただ、プレシアの命に従って得られた情報を誰かに渡す機会を伺っていただけで、提供した情報を活用してプレシア、アリシア、フェイトを助けてくれたのは皆さんです」

「おいおい、度が過ぎた謙遜は褒められないぜ」

 

 と言いながら銀時はスプーンを弄ぶ。

 リンディも「ええそうです」と言って、ニコリと笑みを浮かべる。

 

「あなたという情報源があったからこそ、今回の事件でこれだけの成果を得られたのですから」

「そういうことだ。だからもうちっとそのでけェ胸を張って誇りな」

 

 と銀時が言うと、

 

「おい、セクハラだぞ?」

 

 とクロノがツッコム。

 

 リンディと銀時の言葉を聞いてリニスは嬉しそうに目を潤ませ、笑みを浮かべる。

 やがて猫の使い魔は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた後、銀時へと顔を向ける。

 

「皆さんにそう言って頂けるのは嬉しいんですが、今回の事件で多大な貢献をもたらしたのは私だけじゃありませんよ」

「確かにそうだな」

 

 とクロノは腕を組みながらしみじみ語る。

 

「銀時の頭のネジが数本外れた〝作戦〟がなかったらフェイトの救出はもっと難航していかもしれない」

「おい」

 

 と言ってクロノにジト目向けるこの銀時が、フェイトとの決戦に向けて立てた作戦、その名も。

 

『人間バインド(銀時)〝ごと〟なのはの必殺技でフェイトの意識奪うぞ作戦』

 

 どんな防御も突き破り、意識を一撃で奪う必殺技をなのはが持っていると言っても、バインドで動きが止められなければ避けられか、反撃される可能性が大きい。

 だったら魔力なしのバインド――ようは銀時が動きを封じてそのままなのはの砲撃でぶっ飛ばそうと言う、単純明快な作戦だった。

 

 そしてこの作戦、各々から多大な評価を受けている。

 

『あなた正気ですか?』

 

 と新八を呆れさせ、

 

『『お前やっぱ頭のネジ飛んでる』』

 

 とクロノと土方に言わせ、

 

『『…………』』

 

 リンディとエイミィを絶句させ、

 

『これから私の三メートル圏内には近づかないで』

 

 と神楽には軽蔑の眼差しを向けられた。

 

 こんな感じに、色々な感想を持たれたのである。

 

 そりゃそうだ。だってあんなウルトラマンやゴジラぶっ飛ばせそうな砲撃を死なないと分かっているとは言え、まともに受けようなんて考える奴は普通いない。

 神楽は単純に、フェイトに抱き着く云々での軽蔑だが。

 

 ちなみに、なのははいつの間にあの魔王も真っ青な砲撃を覚えたのか? 

 それは作戦を考えている時になのはが言っていた。

 

『レイジングハートと前から考えていたんです。魔力を吸収されるなら、吸収仕切れないくらいの強力な魔力攻撃で一気に決着を付ける。そのための切り札を開発していたんです!!』

 

 という意外にも脳筋な理由からだったりする。

 

 クロノは銀時の考えた作戦に言及しつつ、やれやれと首を横に振る。

 

「まぁなんにせよ、結果的に功績を残してしまったとんでもない作戦だったよ」

「あと、〝山崎さんの意外な活躍〟も我々には大きな助けでした」

 

 リンディは嬉しそうに頬を綻ばせれば、クロノもうんと頷き感心した声を出す。

 

「そうですね。まさか彼の影の薄さが救出の役に立つとは思わなかった」

 

 そう。山崎退と言う男の信じられないくらいの影の薄さ。そのお陰で、彼を先行して向かわせてもまったく敵の監視に気付かれずやり過ごし、見事プレシアとアリシアと捕まった局員が監禁されている部屋まで救出組を案内することができたのである。

 黒子のバスケもビックリの影の薄さの勝利であった。

 

「アイツいつかトラックに跳ねられそうだな……」

 

 褒める二人とは違い、銀時は山崎に同情の気持ちが芽生えた。

 

「山崎さんは後の『慰労会』でちゃんと労ってあげないといけませんね」

 

 リンディのセリフに銀時は「慰労会?」と訝し気に片眉を上げ、アースラ艦長は目を瞑りしみじみと説明する。

 

「地球出身の方々。それにはやてさんやヴォルケンリッターのみなさんなど、非管理局員でありながら事件解決に尽力してもらったみなさんを労うと同時に、一同が親睦を深められる場を設けようと思いまして」

「慰労会つうか親睦会みてェだなそれだと。そもそもあいつら勝手に親睦深めちまいそうだけど」

「えぇ、まぁ。彼女たちの人柄を考えると確かにそうですね」

 

 なのは、アリサ、はやてなんかは結構ぐいぐいと積極的に他人とコミュニケーション取って仲良くなるお子様だ。なので、一緒の空間に置いとけば相手が悪い人間でもない限り勝手に仲良くなる印象がある。

 

 更にエイミィが補足の説明をしだす。

 

「まぁ、慰労会前には表彰式。そして色々な後始末やらで一週間後にはなってしまいますけどねー」

「へー、てっきり『事件解決ありがとうございましたー』って表彰して終わるとばかり思ってたぜ」

 

 銀時の言葉を聞いて、腕を組むクロノは苦笑い浮かべる。

 

「まあ、確かに本来は慰労会なんてしないけどね。でもまー、こういう催しするのは頑張った彼女たちを労う為とお互いを改めて知る機会を改めて設ける、と言う点では必要だと僕も判断したんだ。話した途端、彼女たちも嬉しそうにしていたからね」

 

 銀時は肘を机の上に付け、掌に顎を乗せる。

 

「まー、俺としちゃただ美味いもん食えて酒飲めんなら別に理由なんてどうもでいいから」

「あなたはホントに自分に正直だな……」

 

 クロノが呆れた眼差しを向け、リンディはサラリと告げる。

 

「曲がりなりにも我々は職務中ですよ? お酒などの類はほとんど持ってきませんし、出せませんから」

「マジで!?」

 

 嘘だろと言わんばかりにショック受ける銀時を見て、クロノは更に呆れる。

 

「どんだけお酒を飲みたかったんだあなたは……」

「まー……飲めねぇもんは仕方ねェ。デザート腹いっぱいで妥協しよう」

「うん。〝あなたの為〟の慰労会じゃなくて〝みんなの為〟の慰労会だからな? とは言え、一応甘味はでるけど」

 

 やれやれと首を横に振るクロノ。

 すると銀時が顔を上げて腕を組み、眉間に皺を寄せる。

 

「つうか良いのか? 犯人全員捕まえられてねェのにパーティとかして」

「まぁ、なのはさんたちを労うの目的の催しですから」

 

 柔和な笑みを浮かべるリンディの言葉を聞いて銀時は少し目を細める。

 

「そんでおたくらも主催者としてついでに参加ってか?」

「ええ」

 

 クスリと含みある笑みを浮かべるリンディ。

 たぶん何か企んでそうな艦長に対して銀時は、やっぱコイツは食えねぇな、と思った。

 

「なら話変えるけどよ、事件の主犯連中はどうした? もうとっくに尋問とかしたのか?」

 

 そこんところどうなんだ? と問う銀時に対して、クロノは少し残念そうな表情で答える。

 

「……黙認を続けているよ。捕まって目を覚ましてからは一度も喋っていないそうだ」

「もう一人は喋れませんし」

 

 と言うリンディ。

 二人の局員の意見に、銀時は訝し気に片眉を上げる。

 

「つうかよ、それだと連中のお口チャックを許してるってことか? 姿形を自由に変えられる奴とクモモドキに人権とかあんのか?」

 

 銀時の言葉を聞いてクロノは「う~~~ん」と苦しそうに唸りだす。

 

「そこが扱いとして難しいところなんだ。管理外世界でも、あんな非人間的な知的生物は確認されたことがないからね」

「とはいえ、知的生物ではありますから、人権は適用されるでしょう」

 

 真剣味のあるリンディの言葉を聞いて、銀時は頬杖を付く。

 

「じゃあおたくら、拷問でアイツらの口割らせられないな」

「いや拷問とかしないからな!」

 

 とクロノはツッコム。

 

「相手に人権があろうがなかろうが管理局は知的生物を苦しめて情報を引き出すような非人道的な組織じゃないんだぞ!」

「じゃあせめて解剖するぞと脅せば――」

「だからしないって言ってるだろ!! せめてってなんだせめてって!! 妥協案みたく倫理に外れた事よく提案できるなあなたは!! そんな違法行為した暁には僕たちが逮捕されるぞ!!」

「マジで? 俺の知ってる公務員はとりあえず犯罪者なら拷問する事を考えるぜ」

「あなたの世界の公安組織と一緒にするな! そしてそれはたぶん十中八九沖田の事だろ!!」

 

 などとボケてはツッコム会話の押収を繰り返す二人。

 それを見てリンディはクスリと笑みを浮かべ、散々ツッコまれた銀時は「はいはい分かりました」と頭を掻いた後、ふと捕まった三人目の事を思い出す。

 

「んでよー、あの博士とかいう奴はどんな人外だったんだ? 変身すんのか? 頭にキモイ本体が隠れんのか?」

 

 リンディとクロノはお互いの顔を見た後、執務官はうんと頷き、銀髪の天然パーマに告げる。

 

「あの博士と名乗る男だけ軽く体を検査して、驚きの事実が分かったんだが、どうやら奴の体は基本的に人間と差異がない」

「えッ!? マジかよ……」

 

 さすがの銀時も驚きの表情を浮かべ、クロノは不可解と言いたげな表情で語る。

 

「もしかしたらトランスのように変態すると体の構造が変わるのかもしれないが、今のところ体のどこにも非人間的と判断できるような部分は確認できなかった」

「少しでも人間と違う点が確認できるとばっかり思っていましたが……」

 

 こればっかりは予想外と言いたげなリンディの言葉。

 銀時は「へー」と言葉を漏らしつつ、言う。

 

「じゃあ、拷問できないな」

「だから拷問はしない!」

 

 とクロノは怒鳴る。

 またボケをかました後、銀時は少しの間口を閉ざしてから、少し鋭い眼差しで問いかける。

 

「……んで、フェイトが持ってたあの気味の悪ィ刀はどうなった?」

 

 クロノは真剣な面持ちで答える。

 

「あなたが刀身を折った後は特に変化は確認できなかったらしい。ただ、あのデバイスのコアが完全に破壊されたかどうかは分からない。だから、直接触ることができなくて回収するのもひと手間だよ。分析しようにも、あのデバイスは何ができるか分からない以上、本局に護送して、しっかり準備してから解析をするつもりだ」

 

 クロノの言葉を聞いてリンディは苦笑しながら語る。

 

「下手にアースラで解析してネットワークにウイルスを仕込まれたりしたら目も当てられませんからね。設備が整った本局で充分な準備をしてから解析と言うのが適切な対処でしょうね。ただ、危険と判断した場合は厳重に保管して表に出さないという形になってしまいそうですが」

「なるほどな」

 

 と呟いた銀時。少しだけ真剣みのある表情で問う。

 

「そんじゃ、最後に一つ教えてくれ」

「なんだ?」

 

 と腕を組んで聞き返すクロノに、銀時は声を低くして告げる。

 

「プレシアとフェイトはどうなんだ? これから」

 

 場に静寂が訪れるが、やがてリンディが真剣な表情で説明を始める。

 

「まず、協力的な立場だったとは言え家族を人質に取られた。かなり特異な件ではありますが、デバイスに意識を乗っ取られていたという事前情報がある以上はフェイトさんは被害者。年齢的なことも考えれば、まず何の罰則も与えられる事はないでしょう」

「最初に会った時、クロノの奴ボコボコにしちまったけど、そこんとこ大丈夫なのか?」

 

 銀時の疑問を聞いて、クロノは「んん!」とワザとらしく咳払い。

 執務官にとってはフェイト(デバイス)に一方的に負けた事は苦い思い出の一つなのだろう。(詳しい内容は39話をチェック)。

 

 クロノは表情を元に戻しつつ、話す。

 

「まー、局員に危害を加えたのもデバイスに操られていた、もしくはクリミナルたちの脅迫によってで、なんとかなるだろう。罰則らしい罰則は厳重注意で済むように持っていくつもりだ」

「そうか……」

 

 内心では安堵する銀時であったが、すぐにもう一つの懸念を思い出して表情を引き締める。

 

「プレシアの方はどうなんだ?」

「プレシア・テスタロッサもまた同様でしょう。むしろ、犯罪者逮捕の為に使い魔を使って管理局に協力したと言う事実が功を奏しています」

「だが最大の問題はプロジェクトFの方なんだが……」

 

 クロノの言葉を聞いて「あー……そこかー……」と銀時は頭痛を覚えるように頭に手を当てる。

 さすがにおバカな銀時でも人造人間(クローン)を作るという行為が違法である事はあらかた予想できた。再現できる技術はあったとしてもやってはいけないと言う認識はどこの世界でも同じらしい。

 

「罰則は科されないだろう」

 

 キッパリ告げるクロノの言葉を聞いて、銀時は「えッ? そうなの?」と意外そうに言葉を返す。

 するとリンディは安心させるように微笑みを浮かべる。

 

「なにせ、クリミナルはプロジェクトF.A.T.Eに関する記録もデータも装置も何もかも処分してしまった。フェイトさんも普通の人間と変わらない体をしていますから、肉体的な検査でも証拠は出ない。仮にプレシア・テスタロッサがフェイトさんを作ったと言っても、起訴されるかどうかも怪しいラインになってしまいますね。ある意味、クリミナルたちが行った行為が回りまわって彼女を助けたと言えます」

「まー、諸々の原因あいつ等だけどよ、ちょいと皮肉な話だな」

 

 と言う銀時。

 リンディは優し気な笑みを携える。

 

「とは言え、私も今回の件は公にしないと言う形が一番だと思います。人造生命と言う存在は作った人間どころか、作られた人間にも風当たりが強くなる場合もありますから。下手に情報を公開してフェイトさんやアリシアさんを傷つけるべきではないでしょう」

「本局の方も、プレシアやフェイトの特殊な事情を鑑みてか起訴という形は避けているようだ」

 

 クロノ言葉を聞いて銀時は「そりゃそうだ」と口を開く。

 

「そもそも証拠もほとんどねェのにわざわざ負けるような裁判起こす奴はほとんどいねェだろうしな」

「いや、まー、それはそうなんなんだが……僕は人としての情の話をしているのであってな……」

 

 まぁ、いいかとクロノは半ば諦めたように呟き、銀時はゆっくりと立ち上がる。

 

「そんじゃま、聞きたい事も聞いたし、パフェも食ったし、俺は歯ァ磨いて二度寝するわ」

 

 右手をぶらぶら振りながら去ろうとする銀時にクロノが告げる。

 

「さっきまで爆睡してたのに、また寝れるのか?」

「大丈夫大丈夫。俺、のび太くんみたく二度寝とか三度寝とか得意だから」

「うん、そうか。ダメな方面の特技を持っているんだな」

 

 ジト目のクロノの言葉を聞き流しながら、銀時は食堂から立ち去ろうと歩く。が、すぐに立ち止まり、頭を掻く。

 

「――まぁ……その……なんだ……。俺がぶっ倒れた後、フェイトっつうか……テスタロッサの連中はどうだったんだ? 色々あったしよ」

 

 ぶっきらぼうながらもテスタロッサ親子――特にフェイトを気遣っている銀時の言葉にクロノは少し真面目な顔で告げる。

 

「……フェイトには何度も謝られたよ。ごめんなさいってね」

 

 少し顔を振り返る銀時はふと思い出す。デバイスとの決着が付いた後、フェイトが自身に謝った時のことを。

 クロノは噛みしめるように語る。

 

「もちろん僕だけじゃなくて、ブリッジに集まったアリサやすずか、それにユーノ。彼女が戦って傷つけそうになった人たちに何度も謝ってたよ。本当に申し訳なさそうに」

 

 クロノの言葉を聞いてエイミィは苦笑を浮かべる。

 

「なのはちゃんたちは『フェイトちゃんは何も悪くない』、『脅されてしかも操られていたんだから仕方ない』って色々とフォローしてくれたけどね」

「それにアルフさんやプレシアさん、そしてリニスさんまで一緒になって頭を下げ始めてなのはさんたちが困惑し始めてしまいましたね」

 

 とリンディは少しおかしそうに笑みを浮かべつつ語り、リニスは少し恥ずかしそうに頬を赤くする。

 そこまで聞いたクロノはフッと薄く笑みを浮かべる。

 

「そして謝り切った後は、ありがとうってお礼の言葉を送っていたよ。自分と家族の為に尽力してくれた皆に」

「そうか……」

 

 と短く言葉を返す銀時は少し視線を逸らしてからまた口を開く。

 

「まー……問題なさそうだな」

「そうだね。今後は少し大変だろうが……家族と一緒に過ごせるワケだしね」

 

 と、クロノは満足そうに告げるのだった。

 

 アースラの個室で妹と母と一緒にベッドで川の字で寝ているフェイト。そんな少女の傍らには狼姿の使い魔が前足を枕にして眠っている。

 やっと離れ離れだった家族と一緒に眠ることができた少女の寝顔はこれ以上ないくらいに安らかで幸せなモノであった――。

 

 

 翌日の昼過ぎ。

 夜目が覚めてもう一度寝直した銀時が再び目を覚ませばもう昼を過ぎた頃。

 少し遅めの昼食を食べようと欠伸をしながら食堂に向かって廊下を歩いていると、前から犬のような耳を頭に生やした女が歩いてくる。

 

「あッ……」

 

 銀髪の姿に気付くアルフ。声を漏らしつつ瞳を開き、嬉しそうに口元を吊り上げて足早に銀時へと駆け寄る。

 

「よ~やく目が覚めたんだね! クロノに夜起きてたって聞いた時は安心したよ!」

 

 駆け寄り、肩に腕を回し、天然パーマに拳をグリグリと擦り付ける。

 

「いつも通りダルそうだけど元気そうだね!!」

「いででで……やめろ……」

 

 覇気のない声を出す銀時。

 アルフのスキンシップを受けつつ、チラリと視線を首に向ける銀時。彼女の首に首輪がないことを確認し、会ったら直接聞こうと思っていたことを口にする。

 

「んで? オメーの方こそフェイトの使い魔に復帰できたのか?」

 

 銀時の言葉を聞いてアルフは彼の頭をグリグリするのを止め、少し声音を低くし語る。

 

「フェイトには……」

 

『今までアルフをいっぱい傷つけて……苦しめた……。資格はもうないかもしれない……。けど、私はもう一度アルフの家族(マスター)になりたい』

 

「――って言われたんだ」

 

 そこまで言ってアルフは銀時を離し、二ッと犬歯を見せつける。

 

「だから『何があったってあたしのご主人様はフェイトだよ!』って返してやったんだ!」

 

 両手を腰に当てて満面の笑顔を浮かべるアルフ。

 満足げな狼の使い魔の様子を見て銀時はフッと薄く笑みを浮かべる。

 

「まー、これで元の鞘ってことだな」

 

 肩の荷が下りたような気分を覚えながら、自身の左肩を揉む銀時。やがてふとした疑問を口にする。

 

「そんで、フェイトにもらった首輪はどうした? もういらなくなったから押し入れに放り込んぢまったか?」

 

 アルフは笑みを浮かべ、左手で右の二の腕を軽くポンポンと叩く。

 

「折角フェイトとあんたにもらったんだ。ちゃ~んと……」

 

 アルフが叩いた部分を見れば、魔力を貯蔵する宝石が埋められた黒い首輪が、まるで腕輪のようなアクセサリーとして彼女の二の腕に巻かれた。

 

「――大事にするよ」

 

 少し懐かしむように腕に巻かれた首輪を指先で軽く撫でるアルフを見て、銀時は笑みを浮かべつつ息を吐く。

 

「……これでようやく臨時のご主人様も終了ってことか」

 

 聞きたいことも聞けたし、特に文句のない結果に落ち着いたので銀時は「そんじゃ俺はこれで」と言って歩き出そうとした時。

 

「あー、それと!」

 

 声音を強くしながらアルフは再び銀時の肩に腕を回す。

 え? なに? と目をパチクリさせながら横のアルフに目を向ければ、狼の使い魔はその鋭い犬歯を見せつけ、人差し指を突き付ける。

 

「フェイトと協議した結果、名誉ご主人様ってことで正式にあんたはあたしのご主人様二号ってことになったから」

「いや名誉ご主人様ってなに? 会員制? 使い魔の主って会員制なの? なんか特典とかあんの?」

「もちろん。立派な使い魔がダメダメなダメご主人様を立派な真人間にしてやるって豪華特典さ♪」

「わーい。うれしくなーい」

「フェイトと一緒に立派な人間目指して頑張っていこう~!」

 

 意気揚々と右手を上げるニコニコ顔のアルフ。彼女は肩に腕を回したまま強引に銀時を食堂に連れて行き始める。

 

「……元の鞘に戻るどころか、鞘ぶっ壊れて新しい鞘新調しちまったなー、おい」

 

 めんどくさそうな顔をする銀時。

 新しい繋がりを引き連れつつ、アルフはあることを思い出し始める。

 

 

「ねーアルフ。アルフってもしかして銀時のことを私みたいに……」

 

 アルフがフェイトとようやく元の関係に戻り、繋がりが戻った時。

 気持ちがある程度通じてしまい自身の気持ちを察せられてしまった狼の使い魔。耳を少し垂らしながら頬を赤くし、少し視線を逸らして頬を掻く。

 

「そっか……」

 

 使い魔の様子を見つつ気持ちを感じたであろう(フェイト)は、

 

「アルフのしたいことをして良いよ」

 

 とても優し気で、開きかけの小さな花のような表情を作ってくれた。

 

 

「とりあえず、まだ疲れも抜けてないだろうし今日のところはあたしが飯食わせてやるよ」

「いいって。さすがに自分で食えるから」

「なら、フェイトに食べさせてもらうかい? フェイト、あんたが食堂に来るの待ってるよ」

「だからいいって。幼女に飯食わしてもらうとか、ただの羞恥罰ゲームだろ」

 

 戻ってきた繋がりと新しい繋がりに思いを馳せつつ使い魔は今の幸せを噛みしめるのだった。

 

 

 アースラの食堂。

 

 そこでは、フェイトが切ったウインナーをフォークで刺して、

 

「銀時、あ~~ん」

「だからすんなっつってんだろうがッ! やめろ恥ずかしいッ!」

 

 銀時は幼女(フェイト)にご飯あ~んさせてもらっていた。

 だがフェイトちゃんは決して引く気はないようで、

 

「ダメ。だって銀時、なのはの砲撃を受けて満身創痍だから」

「それお前もだろッ! だったら俺が『あ~ん』してやろうか! ああん!?」

 

 するとフェイトは「じゃ、じゃあ」と顔を赤くして、目を瞑り、少しだけ口を大きく開ける。

 

「あ、あ~~ん……」

「よ~し、俺があ~~んして――やらねェよッ!! お前は羞恥心をどこへ置いてきたの!!」

「じゃあ、やっぱり私があ~~んをして――」

「一回あ~~んから離れろ!」

 

 銀時の拒否を受けて、少し寂しげで不満げな顔のフェイト。

 

「いや、そんな顔してダメなもんはダメだから。周りからロリコンと思われちゃうから俺」

 

 銀時は若干いたたまれない表情を浮かべ、周りを見渡す。

 

 ロリコン侍(予定)になってると思ってる銀時の言葉とは裏腹に、他の局員はそれほど注目していない。

 少し〝ませた行為〟をしている女の子に懐かれているお兄さん、程度の認識しかされてない感じなのだ。

 

 フェイトは確かに美少女ではあろうが、いかせん、銀時とは歳が離れすぎてる。二人の行為は局員にとっては微笑ましいか、さして興味を持つ程でもない光景でしかないのだろう。

 

 雑談したりしながら、黙々と食事を済ましている局員たちを見て、銀時は思った。

 

(えッ? 思った以上に、特になんも思われないの? えッ? そういうもんなの?)

 

 銀時が気にしすぎな上、周りの連中(銀時の知人)が弄り過ぎる傾向が強すぎるだけらしい。

 

 とはいえ、やっぱり『あ~ん』をしたとして、ロリコン疑惑かけられる可能性は低くない。特に沖田を始め、知人連中にロリコンと思われた暁には、江戸に帰った際の自分の名声がどんなものになっているか想像したくない。

 

 どうにか『あ~ん』を避けようと考えながら、周りを見渡して、あるモノを見つける銀時。

 

「ほれ、見てみろアレを」

「ん?」

 

 人差し指を向けた先にフェイトの視線が向けば、

 

「キィィィィィィィッ!!」

 

 顔中に青筋浮かべた新八が、フォークをギリギリと嚙み込む姿。それこそ、嚙み砕かんばかりの勢いだ。

 

『リリカルなのはの人気ヒロインとイチャイチャしてんじゃねェェェェェェエエエエッ!!』

 

 と言わんばかりの念が伝わってきてしまう。

 

「童貞=彼女いない歴の眼鏡(ロリコン)が嫉妬で狂っちゃうから。ロリコンの心の平穏のためにも、ここはやめ――」

「聞こえてんぞ天パゴラァァァァァッ!!」

 

 「ロリコンじゃねェし!! 嫉妬もしてねェからなッ!!」と怒鳴る新八。

 不名誉な言い分にさすがの新八も怒ったらしい。とはいえ、リリカルの人気ヒロインにあ~んしてもらう事に関して、嫉妬してないは嘘ではあろうが。

 

 そもそもなぜ、新八だけ居候先の家に戻らずにアースラで昼食を摂っているのか? と問われれば、江戸組を代表してアースラに残り、銀時の安否の確認をしていたから。

 

 だからさきほどの言い草は、心配してくれた青年に対する物言いではないのだが、そこは銀時だから仕方ない。

 

 そして指摘されたフェイトちゃんはと言うと、

 

「ん~~……でも銀時、わがまま言って良いって言ってたよ?」

 

 新八なんぞ知ったこっちゃない、と言わんばかりにまだ食い下がるのだ。

 

「いや、まー、うん……言っちゃったね。銀さん言っちゃったね、そういう事。でもねー、うん……」

 

 そこ指摘されると苦しい、と返しの言葉に苦心してしまう銀時。

 ホントにフェイトは羞恥心をどこかに置き去りにしてしまったのか。いや、あんなことをした時点で羞恥心を振り切ってフルスロットル全開になってしまったのか。そもそも、周りをジャガイモか何かと思ってるほど気にしてない冷徹(クール)キャラなのか。

 

 真面目に『あ~~ん』をどうするか悩む銀時。

 

 するとまたふとあるモノを見つける。

 

「ほれ、フェイト。アレを見てみなさい」

「ん?」

 

 銀時が指さすを方に目を向ければ、

 

「グガガガ……ギギギギギッ!!」

 

 ヤバい(おと)を出しながら、プレシアがギリギリとフォークを噛んで、折り曲げていた。

 しかも銀時は念話が使えないはずなのに、

 

『私もあ~~~んして貰った事ないのにィィィィィィイイイイイイイッ!! うちの娘とイチャイチャしてんじゃねェぞテメェェェェェエエエエエエエッ!!』

 

 と言わんばかりの悍ましい念が伝わるのだ。

 

「こ、怖いから……お前の母ちゃん怖いから……」

 

 そして指摘した銀時が色々と気づき過ぎてビビっていた。

 プレシアの嫉妬の炎がデカすぎて、呪ってんじゃないかと思わんばかりだ。

 

 嫉妬に狂う母の圧力を察知してか、周りには局員がほとんどいない。っというか、食堂から局員がいなくなっている。

 たぶん、下手に関わるべきではないと判断したのか、早食いして退席したのだろう。

 

 もう食堂に残っているのは、テスタロッサ一家だけである。

 

「きょ、今日は勘弁してくれ……なッ? 察して」

「んーー……わかった」

 

 少し悩んだ末に、了承の意を示すフェイト。

 ホッと一息つく銀時。これで羞恥&恐怖の大魔王からの逃られることができ――。

 

「はい」

「んぐッ!?」

 

 フェイトは強引に銀時の口に切ったウインナーの押し込む。

 不意を突かれたと言わんばかりに、目をパチクリさせる銀時。

 

 呆然とする銀時に対して、少し頬を赤くしたフェイトはニコリと笑みを浮かべて言う。

 

「〝今回〟は、〝これだけ〟にしておくね」

「…………」

 

 口に入ったウインナーを咀嚼できないでいる銀時。

 油が切れた人形のように、グギギギと首を動かし、プレシアへと顔を向けた。

 

 ザクッ!! とウインナーをフォークでぶっ刺す、ニコニコ笑顔のプレシア。

 そして、刺したウインナーを持ち上げて、見せつけると――プレシアの表情が一変!

 真顔で目を光らせると同時に、シャキンッ! とナイフでウインナーを半分に切断。

 

 ――ヒエッ!

 

 内心でビビり、股間を抑える銀時。顔面蒼白になってしまう。

 咀嚼しないまま、口の中のウインナーをゴクンと丸呑み。

 

 今しがたの一連の表現が何を指し示しているのか、考えたくない銀時。とりあえず、視線を一切合わせたくない。

 もう羞恥などはなかった。代わりにあるのは、恐怖のみだった。

 

 なので、フェイトに別の話題を振ることにした。

 

「……な、なーフェイト」

「なに? 銀時」

「そ、そそいえばさ。お、お前、アリシアちゃんといつの間に仲良くなったのー? 俺、知りたいなー」

 

 声を震わせる銀時の心など露知らず。

 フェイトは目を何度か瞬きさせてから、噛み締めるように言葉を紡ぐ

 

「……そっか……そう言えば、まだ話してなかったよね……」

 

 フェイトは視線を、母親に『あ~~ん』している(アリシア)へと向ける。

 

「えっと……私がアリシアと最初に遭ったのはね……」

 

 そこからフェイトは話し始めた。アリシアとの馴れ初めの話を。




第七十四話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/84.html
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