魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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第七十七話:家に帰るまでが旅行

 なんやかんや騒がしい事も色々とあったものの親睦会も滞りなく終わり、時は過ぎていく。

 ついにプレシアがミッドチルダへと向かう日がやって来た。

 時間はまだ日が昇ったばかりの早朝。

 

「ふわぁ~……」

 

 珍しく早起きした銀時は、重たい足取りで歩く。向かう先は海沿いの堤防だ。

 なぜ堤防に向かうのか? それはミッドチルダに向かうプレシアを見送るため。

 

 そしてもう一つ、〝江戸に帰る〟ためだ――。

 

 そう、つい銀時たちが江戸に帰れるのである。

 

 ジュエルシードやらクリミナルやらで、銀時を連れ帰るという当初の目的も忘却の彼方へと吹き飛んではいた。

 だが、事態は落ち着き銀時の「そう言えば俺らって江戸帰れんの?」の発言で新八たちもようやく自分たちの真の最終目的を思い出したのだから。

 慌てて新八が源外に貰った携帯で連絡を入れれば、「おう。とっくに修理完了だ」と言う嬉しい返答。

 

 そんなこんなで、海の見える堤防から一度江戸へと帰るというちょっと粋なさよならをする事となった。

 そのために、今回の事件に関わった全員が集まるわけだが、集合時間は結構朝早い早朝だったりする。

 銀時にとっては難のある時間帯でもあったが、起きれない事はなかった。

 

「ハァ~~……クロノと新八の奴、無理やり起こしやがって……。つうか先行って来いってなんだよ……。神楽を起こすの大変だから、俺だけも起きて先行けってなんだよチクショー……」

 

 とはいえ、まだまだ眠気が残るので、ぶつぶつと文句を漏らしてしまう。

 重たい足取りで歩いていると、目的地である柵が付いた堤防が目に映った。

 

 他のメンツはまだ揃っていないようで、いるのは栗色髪の少女が一人。

 

「――うん、そうだね。レイジングハート」

 

 手に持っている赤く丸い宝石と話している様子。

 

「よォ~、なのは。お前が一番乗りかよ」

 

 右手を軽く上げながら話しかける銀時。

 

「あッ、銀さん」

 

 声をかければ、すぐさま反応するなのは。

 少女に近づいて、足を止めた銀時は周りを見渡しながら腕を組む。

 

「そう言えば、他の奴ら遅いけどよ、後どんくらいで来るんだろうな」

「そうですね……後三十分くらいでしょうか?」

「はッ?」

 

 思わず強めに声を出してしまう銀時に対し、なのはは戸惑った声を出す。

 

「えッ? えっと……後三十分――」

「いやなんで? もう集合時間じゃねェの?」

「えッ? いえ、私はつい早く来ちゃったので、こうやってレイジングハートとお話しをしていて……」

 

 説明を聞いて、銀時は目をパチクリさせる。

 

「……えッ? えッ? マジ? クロノと新八の奴はもう時間だから急げって――」

 

 そこまで言って、銀時はふと気づく。

 

(あいつら騙しやがったなァァァァァッ!)

 

 新八とクロノは、どうやら実際の集合時間より三十分早めに伝えたらしい。

 ようは銀時の早起きが信用ならないから、嵌めたというわけだ。

 

(なーにが遅れてるから早く行けだあいつらァッ!! クソ眠い中無理やり起こしやがってコンチクショー共ッ!! 後三十分寝かせてくれても良かっただろうがァーッ!!)

 

 銀時の頭の中では、真面目キャラ二人のしてやったり顔が浮かんでいた。

 寝坊天パを遅刻させないようにちょっとした策を巡らせたのだろう。

 

 まあ、そもそも話だが。実は銀時はクロノから集合時間を聞かせられた時に、「へいへ~い」とほぼ生返事していた。

 そして明らかにちゃんと話を聞いていなかった銀時にクロノ君は青筋浮かべてイラッ。

 なので、新八と共謀して銀時を三十分早い時間帯に向かわせたと言うワケである。

 

 そういうワケで、この大事な場面で下手したらホントに遅刻していたかもしれないので、ある意味では二人に感謝するべきであろう。

 

 あと、神楽を早起きさせるのに苦労するという話は、

 

「ぬォォォォォォッ!! 早いッ!! 後三十分寝かせろォォォォォッ!!」

 

 本当だったりする。

 起きるのが嫌で抵抗する神楽に、

 

「ぶべらッ!!」

「危ない!! 暴れるなッ!! 早く起きろ!! でないとバインドするぞ!!」

 

 新八は殴られ、クロノは防御魔法でガードしていた。

 

 二人が苦労している事など露知らない銀時。

 

「まー、銀さんもー、超早く起きてたから良いけどね。ぜ~ぜん、大丈夫だからね」

 

 小さな女の子前で、ネチネチと怒りを抱えて愚痴るなんてダサいマネするワケにもいかないので、強がる。

 

「アハハ……そうなんですね」

 

 知ってか知らずか、銀時の強がりを聞いて苦笑いを浮かべるなのは。

 やがて銀時は歩き、なのはの隣に立って海を眺める。

 

「まー、早起きして、こうやって海の景色を眺めながら、今までの事を思い返すのも良いもんだしな」

「……そうですね」

 

 風で髪を揺られるなのはもまた、海を眺めながら、過去の出来事に思いを馳せているようだ。

 

 二人の間にいくばくかの静寂が訪れる。やがて、銀時が口を開く

 

「マジで今回は色々とメンドーな奴ら相手にしたもんだぜ。最初はよくわからねェ宝石で、次がよくわからん犯罪者連中。んで、最後がこれまたよくわかんねー機械(デバイス)だ」

「アハハ、よくわからないのばかりですね」

 

 苦笑いをしながら言葉を返すなのは。

 するとやがて、小さな魔導師の少女は横にいる銀時へと体を向けて、真剣な表情を作り、

 

「――あの、改めてお礼を言わせてください」

 

 ゆっくりと頭を下げる。

 

「あの時はありがとうございました! フェイトちゃんの為に体を張ってくれて! 私が切り札を使えるようにしてもらって!」

 

 なのはが言っているのは、刀型のデバイスとの最終決戦の時の事だろう。

 頭を下げ続けるなのは。そんな彼女の頭に銀時は軽く手を置く。

 

「――オメーも頑張ったな。よく、あのデバイスぶっ倒したもんだ」

「あの、その……最終的にデバイスをやっつけたのは銀さんなんじゃ……」

 

 頭を上げるなのは。その表情は少し納得がいってない様子だ。

 対する銀髪の侍は、諭すように語る。

 

「そもそもオメーの砲撃があったから、フェイトをデバイスから解放できたんじゃねェか」

「でも……」

 

 そこまで言ってなのはは思いつたように、銀時の手を取って両手で握り、笑みを浮かべながら言う。

 

「じゃあ……その、二人……いえ、みんなのお陰って事にしませんか? 銀さんや私、アルフさんやユーノくん、それにレイジングハートがいたから、フェイトちゃんを助けることができたって事に」

 

 すると、銀時はフッと薄く笑みを浮かべる。

 

「わーったよ。みんなのお陰だな」

「はい」

 

 回答を聞いて、なのはは満点の笑顔を浮かべる。

 そして少女の相棒もまた、まるで嬉しさを表すかのように優し気に輝いていた。

 

 その後、二人はとりとめのない会話を続ける。新しい集合者が現れるまで。

 

 そして、三十分が経った頃。

 柵が付いた海沿いの堤防には年齢も性別もばらばらな集団が集まっていた。

 

 万事屋の銀時、新八、神楽。

 海鳴市出身のなのは、アリサ、すずか。

 スクライア一族のユーノ。

 真選組の土方、近藤、沖田、山崎。

 柳生の九兵衛、東城。

 忍の猿飛、服部。

 管理局員のリンディ、クロノ、エイミィ。

 攘夷志士の桂、エリザベス。

 はやてとヴォルケンリッターのシグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ。

 そしてテスタロッサ一家のフェイト、プレシア、アリシア、アルフ、リニス。

 

 朝の時間が早い為に、この堤防には彼ら以外の通行人はいなかった。

 

「プレシアの見送りだってのに随分集まったもんだな……しかも数日で帰って来る話だしな」

 

 集まった一同を見回して銀時は頭をボリボリ掻くと、フェイトとなのはが若干寂びそうな笑みを浮かべる。

 

「だって母さんの見送りだけじゃなくて、銀時たちの見送りでもあるんだよ?」

「銀さんたちが一回自分たちの世界に帰っちゃうんですから、ちゃんとさよならを言わないと」

 

 なのはが言葉を繋げて言えば、銀時は頭を掻きながら「まぁ、な」とぶっきらぼうに返す。

 

「つってもよ、おめェらに渡した携帯があんだ。またいつでも会えんだろ」

 

 銀時は頭をボリボリ掻きながら、なのはとフェイトが大事そうに握り締める黒い無機質な携帯を指さす。

 一応源外の説明通りならこの世界の座標は転送装置に記録されている為に携帯がなくてもいつでも来れるらしい。が、連絡を取るとなると話は別。魔法世界の技術でも通信することができないからこそ、携帯は連絡を取る為の数少ない手段として必要なのだ。

 タバコを咥えてポケットに両手を入れた土方がクールに告げる。

 

「つっても、万年暇人の万事屋たちと違って俺らは仕事があんだ。江戸に戻った後は会う機会も相当減るだろ」

「おいおいトシ」

 

 と近藤が困ったように笑みを浮かべる。

 

「そう意地悪な事を言うもんではないぞ。有給の一つでも取って会い行ってやろうくらいのキザなセリフの一つでも言うのが男の甲斐性と言うものだ」

 

 すると沖田は「安心しなアリサ」と言って金髪少女に向かって親指立てる。

 

「仕事の一つでもサボって弄りに来てやるからただ飯食わせてくれよ」

「うん。あんたはあんまり来なくていいから」

 

 と辛辣なアリサさん。

 

「お前には今後一切有給は与えん」

 

 と冷酷な土方さん。

 アリサのポケットからヒョイっと飛び出すのは、待機状態である炎を象り火の翼を生やしたフレイア。

 

《一時的なお別れとは言え、こうやってさよならするとなると寂しくなりますね~。沖田さんとはアリサさん関係では結構馬が合ってましたし》

「そうだな。俺も近くに暇潰しが居なくってつまんねェしな」

「さっさと帰れこの腹黒!」

 

 とアリサは憤慨するがやがて勝気な笑みを浮かべる。

 

「まぁ、たまには顔見せなさい。いつまでもあんたにおちょくられるあたしじゃないって事見せてあげるから」

《ツンデ――》

 

 相棒が何か言い切る前にアリサは地面にデバイスを叩きつける。

 九兵衛はなのは、アリサ、すずかの前まで歩くと膝を折り、少女たちと同じ目線で話しかける。

 

「折角仲良くなれたと言うのに、こうやって君たちと会えなくなると思うと少々寂しくなるよ」

「でも、すぐに会えますよ」

 

 ニコリと笑顔を見せるすずかに九兵衛は困ったように頬を掻く。

 

「と言っても、僕も真選組(かれら)ほどではなにせよ、家の事情で色々と多忙だから。そう頻繁には会えなくなるよ」

 

 と若干悲しそうに九兵衛は語るがすぐに薄く笑みを浮かべる。

 

「だが会う機会ができたのなら、今後は僕の親友の妙ちゃんを紹介するよ。彼女も少々君たちより年齢は高いが、すぐに仲良くなれるはずさ」

「「「はい」」」

 

 となのは、すずか、アリサは笑顔で頷く。すると同時に、九兵衛の横に東城がスライドするように移動。

 

「では今後こちらに赴く時には今度こそ若をリリカル九ちゃんに――」

 

 九兵衛の魔法(アッパーカット)が東城の顎へと炸裂し、宙を舞う柳生四天王筆頭はそのまま昏倒。

 九兵衛は仰向けに倒れ伏す東城に一(べつ)もくれることなくキッパリ告げる。

 

「今度来る時は妙ちゃん〝だけ〟連れて来よう」

 

 お付きの糸目にまったく容赦のない九兵衛になのはたちは苦笑を浮かべる他なかった。

 次になのはたち三人は朝早く起きて若干眠たげに欠伸する神楽と、隣に立つ新八の元へと駆け寄る。

 

「神楽ちゃん新八さん。またいつでも会いに来て!」

「もちろんアル! 私ら年中暇人だから明日にでも会いに行くアル!」

 

 と身も蓋もない事言う神楽になのはとすずかは苦笑し、新八が笑顔で。

 

「明日かどうかはともかく、銀さんや神楽ちゃんと一緒に必ずまた会いに行くよ」

 

 一方、銀時の元にはフェイト、アリシア、アルフがおり、

 

「どうせあんた戻っても暇なんだから、いつでも遊びに来なよ」

 

 アルフが銀時の胸を手の甲でパンと叩き、二カッと快活な笑みを浮かべる。

 

「――ご主人様♪」

「ご主人様?」

 

 不思議そうな顔で小首を傾げるアリシアに銀時は気だるげな声で。

 

「気にすんな。深い意味ねェから」

「ひっどいな~、あたしはこれでも結構本気なんだけどね~」

 

 頭の後ろで両手を組んで唇を尖らせるアルフを見てフェイトは銀時に顔を向けてから「そっか……」と言って薄く笑みを浮かべる。

 

「銀時、アルフに随分懐かれたんだね」

「これでも銀さんは犬の世話する男だからな。懐かれて当然」

「だから狼だっての」

 

 アルフは腰に手を当てて素直じゃないなーと言いたげな笑みを作る。すると次にアリシアが一歩前に出て元気に話し出す。

 

「お兄さんまたね! 遊びに来た時はケーキの作り方教えてね!」

 

 どうにもアリシアは銀時を結構気に入ってるらしく、積極的に話しかけてくれる。しかもお菓子好きだったのも相まって、この短期間でいつの間にか意気投合してこの甘党侍ともなのはたち同様に結構良好な関係を築いていたのだ。しかもお兄さん呼びは、銀時のみ。

 銀時は膝を曲げてアリシアと同じ目線となり頭を撫でる。

 

「おう。今度はまずはスタンダードなショートケーキの作り方教えてやるから楽しみにしてな」

「うん!」

 

 アリシアは笑顔で頷く。

 そして銀時は立ち上がり、別れの挨拶を済ませているなのは達を温かい目線で見守っているクロノ、リンディ、エイミィ、プレシア、ユーノの元へと近づく。

 

「そう言えば、おたくら管理局はどうすんだ? このままプレシアと一緒にミッドウェイに帰るのか?」

「ミッドチルダな。あなた、ワザと間違えてないか?」

 

 とクロノ言い、リンディが「いえ」と言って首を横に振る。

 

「警戒態勢を維持しつつ、私たちはまだ現地で捜査活動を続ける予定です。ですので、プレシアさんの送迎とクリミナル幹部三名と謎のデバイスの輸送は私の友人である提督に任せるつもりです」

「まぁ、奴らの能力と事件全容を把握している僕とエイミィが同行するから。アースラ局員で僕とエイミィはミッドチルダに帰還する事になるけどね」

 

 とクロノが補足説明し、プレシアが笑みを浮かべながら話す。

 

「海鳴市で暮らせるようになったら、一度でいいから家によりなさい。引っ越しはやっぱり男手が欠かせないでしょうし」

「そん時は今後こそ報酬をしっかり請求させてもらうぜ」

 

 ニヤリと口元を吊り上げて軽口を叩き返した銀時。

 すると最後に、ユーノが一歩前に出て頭を下げる。

 

「銀時さん。クリミナルに利用されたジュエルシードを取り戻す為に体を張ってくれて、本当にありがとうございました」

「お前、なのはと同じような事言うのな」

「えッ?」

 

 呆けた声を漏らすユーノに銀時は「いや、なんでもねーよ」と言って誤魔化した後、言葉を続ける。

 

「そもそも、成り行きで取り戻したようなもんだから気にすんな」

「はい」

 

 それでも銀時の功績が大きいと思ったからなのか、笑顔で言葉を返すユーノ。

 やがて銀時は振り返り、新八たちへと声を掛ける。

 

「ほれ、そろそろ(けえ)るぞ。永遠の別れでもねーんだからなうだうだ話しててもしょうがねェだろ」

「そう言うな銀時」

 

 と言って銀時の肩に手を置くのは長髪の優男。

 

「……ヅラ」

「ヅラじゃない桂だ」

 

 桂は若干寂しげな表情で言う。

 

「銀時よ。どんな形にせよ、一時の別れと言うモノは人に哀愁を感じさせるものだぞ」

 

 なんやかんやで良いセリフを吐く桂に銀時は「まぁ、そうだな」とぶっきらぼうに返し、桂は肩をぽんぽんと叩きながら告げる。

 

「だから俺も……〝待っているぞ〟」

「ん?」

 

 意味深な発言に銀時は声を漏らし、桂は背を向けて少し距離を開け、一気に振り返る。

 

「また海鳴市に返って来い銀時! 俺たちはいつでも待っているぞ!」

 

 グッと親指見せてサムズアップする長髪の言葉を聞いて、はやては嬉しそうに声を上げる。

 

「ほんまか桂さん! こっちに残ってくれるんですか!」

 

 車椅子の車輪を回しながら近づくはやてに対して桂は力強く頷く。

 

「ああもちろんだ! こちらに居ればしつこい真選組など気にせずに堂々と大手を振って歩けるからな!」

『桂さんが残るなら私も残りましょう』

 

 とエリザベスもボードで答える。

 図々しい事この上ない発言かます攘夷志士(テロリスト)共に土方は青筋浮かべるが、一方のはやては笑顔を向けている。

 

「嬉しいわ~。お別れせなあかんと思っとったのに、素敵なサプライズや!」

 

 更にははやての守護騎士であるヴォルケンリッターたちもまで歓迎ムードとなる。

 

「うっし! 桂! エリザベス! 残るってんなら後でゲートボールしようぜ!」

 

 とヴィータは握りこぶし作ってニカッと勝気に笑い、

 

「ならば、また剣の相手をしてくれないか? 貴殿の方が勝ち星が多いからな」

 

 とシグナムはクールに再戦の申し込みをし、

 

「フッ……」

 

 とザフィーラは薄く笑みを浮かべながらエリザベスの肩に手を置き、

 

「ならまた何か手料理ごちそうしますね♪」

 

 シャマルは優し気な笑顔を向ける。

 ヴォルケンリッターたちの言葉を聞いてはやてはパンと手を叩く。

 

「それなら折角や! 桂さんとエリザベスくんも残るんやし、今日の夜はパーッとすき焼きや!」

『やりましたね桂さん! 肉です!』

 

 表情は変わらないがボードで喜びの言葉を伝えるエリザベスに、桂は腕を組んで笑み浮かべながら頷く。

 

「うむ。それにはやて殿の手料理は美味であるからな。より期待が高まると言うものだ」

 

 そこまで言って桂はクルリと土方たちへと振り向き、腕を伸ばして親指を立てる。

 

「っと言う事で今日の夜、俺は豪勢に肉を頂く! 貴様ら真選組はみすぼらしい屯所でみすぼらしい飯でも食っているがいい! ハーハッハッハッハッハ!!」

 

 などと思いっきり煽るだけ煽って桂は腕を組みながら高笑い。そして沖田は桂の後ろに一瞬にして回り込み、腰に腕を回してガッチリホールド、そのまま背中をエビぞりに曲げて長髪にジャーマンスープレックスを決める。

 

「ッッッ!」

 

 地面がひび割れるほど思いっきり後頭部を強打し仰向けるに倒れ桂の腹部に、すかさず土方が肘を曲げてエルボー・ドロップを叩きつける。

 

「ブバァッ!!」

 

 桂は空中に向かって思いっきり唾液か胃液か分からん液体を吐き出し、気絶。

 そしてそのまま近藤と山崎が、白目を向いて涎を垂らす桂の両腕を肩に乗せ、体を持ち上げる。

 

「よし、このまま元の世界に帰って逮捕だ」

「そのまま豚箱でみすぼらしい飯を食わせてやりましょう」

 

 二人が桂の足をズリズリ引きずりながら連行する姿を確認した土方は、静観しているクロノへと顔を向ける。

 

「こっちじゃコイツは犯罪者じゃねェだろうが、俺たちの世界じゃ立派なテロリストだ。元の世界連れて行ったらそのまま逮捕するが構わないよな?」

 

 クロノは無言で腕を伸ばしてグッと親指立てる。

 よどみのない執務官の態度を見てエイミィは「クロノくん辛辣だね」と言って苦笑する。

 桂制裁の光景を見てから銀時はすぐに新八へと声を掛ける。

 

「よ~し、新八。とっとと帰るぞ」

「はい」

 

 新八は平然とした表情でカチカチ携帯のボタンを押せば、携帯はプルルル! と音が鳴り始める。

 

 後ろでは、はやてが土方に「あのぉ、桂さん連れて行ってしまうんですか?」と悲しそうな表情で尋ね、鬼の副長は「じゃあ、俺たちの世界に来た時にでも面会させてやるよ」と冷徹に返している。

 

 ちなみに新八は前もってとっくに源外に銀時が見つかったと連絡を取っており、装置が直った事も聞いている。だから後はもう一度源外と連絡を取ればすぐにでも江戸に帰れると言うワケだ。

 やがてピッと言う音が新八の耳に入れば、

 

『おう。新八か? もう帰る準備は整ったのか?』

 

 源外の声が聞こえてくるので、新八は頷きながら返事をする。

 

「ええ。ですので、装置の起動をお願いします」

『あー……それなんだけどよ……』

 

 なぜか源外が言い辛そうに微妙な声を出すので、新八は嫌な予感を覚えて眉間に皺を寄せる。

 

「……装置はもう直って……ますよね?」

『もちろん装置の方はキッチリ直って問題ねェんだけどよ……今度はエネルギーの方に問題があってな』

「えッ!? ど、どう言うことですか!?」

『実は前に銀の字には説明したんだが、俺の装置って結構エネルギー喰うんだわ。そんでその必要なエネルギーを(まかな)う為に〝勝手〟にターミナルのエネルギーを供給してたのよ』

 

 何か段々と話が怪しくなってきたので新八はダラダラ汗を流しながら頬を引きつらせ、源外は平然とした声で説明を続ける。

 

『それで勝手にエネルギー使ってたことがバレちゃって警察が捜査とか始めたから、今雲隠れしてるとこ。つまりだ――』

「僕らは当分……江戸に帰れないと?」

『簡単に言うとそういう事』

 

 と無責任極まりない発言して源外は電話を切る。

 汗をダラダラ流す新八。やがて、ハッとある事に気付き、傍観している服部と猿飛にギギギとブリキ人形のように顔を向け、速足で近づく。

 

「ぜ、全蔵さんさっちゃんさん。た、確かあなた達って、松平さんに頼まれてこの世界に来たんですよね?」

 

 忍者二人は無言で頷き、新八は若干焦りながら口早に問いかける。

 

「な、なら松平さんに連絡する手段を持っていたりしますよね?」

「いや、ねェよそんなもん」

 

 と服部が首を横に振るので新八は「へッ?」と間の抜けた声を出し、イボ痔忍者は説明する。

 

「だって俺たちクリミナルとか言う人外軍団に捕まった時に衣服以外持っていたモン全部押収されちまったんだ。だから、江戸つうか幕府に連絡できる機器なんてなに一つ持ってねェぞ」

 

 服部は「まぁ、銀髪に渡した発信機だけは最後の綱だからなんとか尻に入れて守り通りしたんだけどな」と言うが、彼の言葉などもう新八の耳には届いていない。

 眼鏡の頭の中は、

 

(どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ……)

 

 一単語を延々繰り返し続けてる状態だ。だが、やがて新八の肩に手を置く人物が。

 ハッとした新八が顔を振り向けば、自身の肩に手を置く銀時。そしてその後ろにはここに集まった者たちが所狭してと集まって眼鏡の顔を見つめる。

 あッ、これダメだなと即座に思った新八は何か悟ったような涼し気な表情で。

 

「――僕たち……まだ江戸に帰れません」

「なんで?」

 

 と銀時。

 

「源外さんのせいです」

「なるほどな……」

 

 何かを察したように銀時はポンポンと新八の肩を叩いた後、後ろに居る者たちに目配せをすれば、江戸出身の何人かはうんと頷いて一気に息を吸い込み、

 

「「「「「ふざけんなァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」

 

 海鳴市の曇りなき青空に男女の怒声は消えていくのであった。

 これにて、ジュエルシードを巡る事件は閉幕――。




第七十七話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/87.html



どうにかこうにか無印編の終わり辺りまで書ききる事ができました。
こんな長い期間、この小説を読んでくれている読者の方々に感謝しかありません。
なんとか投稿を続けて(できれば早めに投稿して)、A's編も完結できるように頑張っていく所存です。
これからもよろしくお願いします。
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