その日、東京の街には国連軍の戦車隊が集結していた。
周囲に人の気配は一切なく、街を彩るネオンや音楽もすべてが止まり周囲は静寂に包まれていた。
戦車隊はまるで碁盤の目のように待機しており、さらに空中にはVTOL機が数台止まっている。まるで空から何かが来るのを待ち構えているかのようだ。
「西地区の住人の避難、只今完了しました。これで周囲の半径30kmの住人はすべて避難完了です」
「ご苦労」
地上では連絡を取り合っている者以外のほぼすべての軍人が空を見上げていた。
そのとき、何もない青空が水面へと変わったかのように波紋が広がった。
「来ました!」
「総員戦闘準備に入れ!」
隊長と思しき人間の号令で、戦車の砲塔が一斉に上空に向けられ、VTOL機も攻撃態勢に入った。
やがて波紋を中心に青空が渦巻きねじれ始めていった。この世のものとは思えない光景に、軍人たちの多くは呆然とするしかなかった。
やがて空間のねじれははひび割れのように広がっていき、ガラスのように砕け散り赤い空間が出現した。そしてその中に巨大な影が映し出された。
影は空間の中からゆっくりとはい出てくると、そのまま地上に落下してくる。それは明らかに異形の姿であった。
「目標出現!」
「攻撃開始せよ!」
隊長の号令を合図に、戦車の砲塔やVTOLのバルカンが一斉に火を噴いた。放たれた攻撃はすべて巨大物体へと吸い込まれていき、まるで連続花火のごとく次々と爆炎の花が咲いた。
白昼の街はあっという間に轟音、爆音と大爆発が鳴り響く戦場と化した。
戦いの様子は、国連軍士官も基地のディスプレイを通じて目にしていた。
「正体不明物体、地上に降下中。目立ったダメージは見られず」
「出し惜しみはするな。奴をここで足止めしなければ、甚大な被害を被ることになる」
「その通り。何としても目標を撃破するよう伝えろ」
そのとき、基地指令室にU.A.と書かれた制服を着用した男が入ってきた。男は敬礼すると、士官に挨拶をする。
「U.A.(UltraAce)隊長の南川、ただいま到着いたしました」
「来たか。だが今現在本作戦の指揮権は我々にある」
「承知しております。しかし万が一の事態に備えて、いつでも出撃できるよう隊員たちを待機させております」
「その時は頼んだぞ」
南川は一礼すると、ディスプレイに目をやった。巨大物体は国連軍の攻撃などまるで気にせずに進撃を続けていた。
「しかし、いったいあれは何なのかね。どこの学者もまるで見当がつかないと言っているが」
「今現在解っていることは、あれは我々の住むこの世界とは全く異なる世界からやってきたということだけです」
士官の一人の言葉に、南川が答える。
「何と言ったかね。確か名前は……」
「高次元螺旋体。二年前、初めて我々が遭遇した別世界の住人です」
南川は表情を変えずに言った。