外で激しい戦いが行われているころ、基地地下の一室に一人の少年がいた。
「……何故だ。何故こんなことになったんだ?」
その少年、九重望は自分の置かれている状況が解らずにいた。軍直属の組織に努めている父親に呼ばれて基地に来てみたら、突然この地下の一室に待機するよう言われたのだった。
そこは質素なベッドが一つ置いてある以外は窓もなく、その代わりにドアのすぐ上に監視カメラが置かれている。カメラはこちら側を映していた。
まるで犯罪者を収容する独房ではないか。自分がここに入れられる理由が全く分からなかった。
監視カメラに呼びかければ、何か答えてくれるかもしれないと思った望は立ち上がって声を出した。
「あのー、すいません。ここって何なんですか?俺どうしてここに入れられるんですか?」
返事はない。よく見ればマイクらしきものは無いため当然なのだが。
その時、すぐ上で衝撃音が鳴り響いた。
地上で螺旋体を攻撃していた戦車隊は、螺旋体の放った攻撃によって瞬く間に壊滅させられた。VTOLも空から猛攻を加えるが、螺旋体はビクともしない。逆に螺旋体の方から放たれたミサイルのような飛行物体がVTOL機に一斉に放たれ、爆破した。
「地上及び空中の攻撃部隊全て撃墜!生存報告なし!」
「そんな馬鹿な!あれほどの部隊がもう壊滅だと!?」
「螺旋体、進行を始めました」
愕然とする軍人たち。すると南川が近づいてきて、新たな命令を告げた。
「現時刻を持って、本作戦の指揮権が我々側に移りました。これより、出撃させます」
南川は無線機を取り出すと、部下に命令を出す。
「只今作戦指揮権がこちらに移った。パンサーとファルコン、アーマー部隊を投入せよ。エースもすべて投入だ」
U.A.の基地では、南川の命令を受けた隊員が多目的航空機「ファルコン」と特捜車両「パンサー」に乗り込み、出撃していった。
大型装甲車には特殊戦闘要員が乗り込み、対螺旋体用のアーマーをコンテナ内で装着していった。
「了解、これよりエースを出します。全員投入でよろしいですね?」
「そうだ。急いで出撃させてくれ」
U.A.副隊長の芝崎が通信機を片手に後ろで待機している三人に頷きかけた。
「了解。俺達も今から行きます」
「さっさと仕上げて帰りましょうぜ」
「おっしゃ行くぜー!」
一ツ木清隆、青木栄二、五代綾音は大きく開いたゲートの前に立つと、陵の拳を突き合わせて叫んだ。
「エース!」
その瞬間、三人は光に包まれた。
墜落したVTOLの爆発によって望が入れられていた地下の部屋の天井が崩れ落ちた。ベッドの下に隠れていたことで難を逃れていた望は、ベッドの下から這い出して天井の穴を見上げた。
「今のって、爆発だよな?隕石でも落ちてきたのかな?」
瓦礫をよじ登って外へ出てみると、すぐ横をU.A.というロゴが刻まれた装甲車が停泊し、コンテナから騎士のようなアーマーを身に纏った人間たちが次々と降り立って、腰部のジェット噴射で大空へと飛びあがって行った。複数の戦闘機も一緒に飛び立っていく。
やがて望はビルの合間から出現した巨大な物体を目撃した。
それは巨大な人の形をしているが、明らかに人より大きな体をしていた。奇妙なことにその物体の両肩は不自然にねじれていた。物体は肩のねじれからミサイルのようなものを発射し、周辺のビルを破壊していった。
「な……何なんだよ、あれが、高次元螺旋体なのか?」
望は驚きのあまり声も出せなかった。高次元螺旋体の事はニュース番組や父からの話で聞いていたのだが、実物を見たのは初めてだった。
するとまたしても巨大な物体が、今度は三体出現した。だが今度現れた巨体は体の何処もねじれておらず、人に近い容姿だった。
螺旋体の前に出現した三人の巨人は、一気に加速して螺旋体の方へと向かっていった。
今回出現した螺旋体はU.A.では『SP-01 CORAL』のコードネームを与えられた、比較的古いタイプの螺旋体だった。過去に出現したことがあり、三人も交戦経験があった。
CORALは尻尾を振り回して攻撃してきたが、巨人の一人が腕でガードし、残りの二人の巨人がCORALにキックを浴びせた。CORALは両手の甲からもミサイルを発射してきたが、バック転を繰り返すことで回避する。二体が空中へ飛ぶと、地上に残った一体と一緒に光線を発射してCORALを攻撃する。光線の当たった部分に稲妻のような光がほとばしりCORALの細胞を分解、破壊していく。この巨人の光線には螺旋体の体細胞を破壊する力があり、それこそが螺旋体を完全に倒すことが出来る方法だった。
CORALが空を飛ぶと、巨人三人も後を追って飛んでいった。ファルコンやアーマー隊員も後ろに付いてありったけのミサイルや光線を撃ち込んでけん制し、地上からは光線銃を持った隊員やパンサーの砲塔が援護する。
状況に付いていけずにいる望が戦いを見ていると、誰かに呼ばれたような、そんな気がした。
『……望……』
「だ、誰だ?俺を呼んだのか?」
『……そうだ。私は、君のすぐそばにいる』
返事がした。望は驚いて、姿の見えない何者かに呼びかける。
「君は誰だ?一体どこにいるって言うんだ?」
『……私は、君の中にいる。力を、君の力が必要だ』
「力だって?」
『そうだ。君の中に宿る力を解放するんだ。引き出し方は、すでに分かっている筈』
力の引き出し方、ふと声は望の両人差し指に付いている指輪から放たれている事に気付く。それは死んだ母が誕生日に送ってくれたもので、矢印のようなマークが刻まれた指環だった
『突き合せろ』
今度は指環からの声ではなく、自分の声が言った。その時、撃ち落とし損ねたCORALのミサイルが望のすぐそばに迫る。巨人たちが地上にいる望に気付いたときには、すでにミサイルは地面に着弾し、望は爆風に巻き込まれていた。
だが望の体が完全に爆風の中に飲み込まれる寸前、望は己の声に従い両拳を突き合わせていた。指環同士がぶつかり合う金属音が木霊する。
そして爆炎の中からまばゆいばかりの光が放たれると、望の姿は巨人へと変わり、炎の中から飛び出した。
「な、何だあの巨人は!?」
「もしかして、新しいエース!?」
「隊長、あれは間違いなくエースです!」
突如大地へ立った第四の巨人は、U.A.から驚愕で迎えられた。南川も驚いてはいたが、それを顔に出さず冷静に対処する。
「あれが敵か味方かはまだわからない。不用意に手を出すな」
新しい敵にCORALはまっすぐ向かっていった。望が変身した巨人はCORALの体当たりをジャンプで避けると、その首筋にキックを叩きこんで地面へと落とした。顔から落っこちたCORALは手の甲のミサイルを撃ったが、巨人の胸の前にはすべてはじき返されてしまった。
ミサイル攻撃がやむと、巨人はCORALに突進してダメージを受けている胸部に空手チョップをみまい、その体を大きく持ち上げて投げ飛ばした。飛ばされたCORALに向かって巨人は再び突撃していくが、CORALは口を大きく開くと猛烈な勢いの火炎を吐き出し、巨人を吹き飛ばした。倒れこんだ巨人の首をCORALは片手で締め上げた。それと同じくして巨人の胸の青い光球が赤く点滅を開始した。
すると今度は巨人の腕が虹色に光り始めた。振り下ろされた手刀はCORALの片腕の細胞を高速で破壊し、根元から切断した。
CORALは悲鳴のような声を上げ倒れる。巨人は輝く両腕を背中側まで振りかぶった。CORALは再び火炎を吐き出すが、巨人が両腕をL字型に組んだのが早かった。両腕から撃ちだされた虹色の光線はCORALの顔面を直撃し、その全身の細胞を破壊して消滅させた。
CORALが完全に消滅すると、巨人はその場に倒れ動かなくなった。その体は光に包み込まれて徐々に人間へと戻る。
闘いを見届けていた三人の巨人も同じく人間へと戻ると、道に倒れる望の元へ駆け寄った。
「やった……のか?」
「すっげーじゃん!覚醒していきなり螺旋体倒しちゃうなんて!」
「だがまだ動きに無駄が多い。隊長、この少年をどうしましょうか?」
南川は英二が送ってきた映像を見て望の姿を見ると、通信機越しに指示を送った。
「こちらに連れて来るように。その子は九重教授のご子息だ」
「了解。現時刻を持ってミッションを完了。全機帰投する」
通信を切り、ふっとため息を漏らす南川。そんな彼にすぐ上から羽を持った小さな動物が話しかける。
「まさか九重先生のお子さんが新しいエースだったなんて驚いちゃうぱむ」
「ええ、本当に。しかも今日はあの少年のお母様の命日……」
「確かに、運命感じちゃうぱむ。でも僕たちに後戻りする選択肢はないぱむ」
「解っています。ところえ、今回新しく表れたエースですが、なんと呼ぶおつもりですか?」
「そうぱむね~。あの子はどうやら射手座に守られているみたいだから……」
ディスプレイの巨人の映像をみて、動物は言った。
「ウルトラマンエースサジタリウス」