降旗くんのヴァンガード   作:ねぎさだ

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1:一人だけハブは寂しいもんな

「ヴァンガード?」

『そう。聞いた事はないかな、結構CMとかやってるんだけど』

『絶賛アニメも放映中だぜ!』

 

スカイプ通話越しにそう言われ、少し遅れてチャットにURLが貼られた。それをクリックすればヴァンガードと書かれた公式ページに飛んだ。

 始まりは趣味の話だった。高尾がトレーディングカードゲームをやっているのだと言って、どのタイトルをやっているのかと赤司が聞いた。そこで飛び出したのがヴァンガードというタイトルだった訳である。公式ページを見ながら(確かにCMとかで見た事あるかも)と降旗は思う。

 

『え、征ちゃんもヴァンガやってるの? マジで!』

『なんで和成はそんなに驚くの。中学の時にテツヤが嵌まってね』

 

 何のクラン使ってるのとか、僕はゴルパラを使ってるけど和成はとか、俺グレネ!とか。さっぱり話題に付いて行けない降旗は、とりあえず黙って公式ページを眺めた。専門用語が飛び交う中、降旗がすっかり黙ってしまった事に赤司が気付いて、ごめん、と降旗に声をかける。

 

『二人で盛り上がってしまってすまなかったね、光樹』

『ほんとごめん、光ちゃん』

「ああ、うん、気にしないで。公式ページ見てたし」

 

 謝られた降旗は苦笑しながら、ルールページを流し見る。分かったような分からないような気分だ。

 

『何、光ちゃんヴァンガに興味あるの?』

 

 聞いただけで明らかにテンションが上がった声で尋ねれば、あー…と少し歯切れの悪さを残しつつ降旗は答えた。

 

「セーくんとカズくんが面白いって言ってるから、少し興味ある、かな」

『ほう。ならテツヤからレクチャーしてもらうといい』

 

 デッキも沢山持っているしね。そう言った赤司の声は、明らかに楽しそうだと分かるものだった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「と言う訳で幾つかデッキを持って来たんですが、どうしますか降旗くん」

 

 昨晩のうちに赤司からメールが来たらしい黒子が、降旗に都合を尋ねた。言外に断っても構わないと告げているのは、どうせ赤司が降旗の都合も聞かないまま話を進めたのだろうと思っているからだ。

 

「え、マジで? 昨日公式サイト覗いたくらいの初心者なんだけど大丈夫?」

「問題ないです、誰でも最初は初心者なので。では……今日の部活後なんかはどうでしょうか」

「昼休みじゃダメなの?」

「ダメではないですが……多分休み時間内に終わりませんよ?」

「え、そんなにかかるの?」

「説明しながら教えるので、やっぱり時間がかかりますし」

「フリと黒子は何の話をしてるんだ?」

 

 そんな二人の遣り取りを聞きながら、火神が不思議そうに首を傾げた。

 

「降旗くんにヴァンガードを教えるんですよ」

「ヴァンガード?」

「カードゲームです。こんな感じの」

 

 言いながら黒子は鞄から一つデッキケースを取り出し、中からデッキを取り出して火神に手渡す。それを受け取って、火神は物珍し気にカードを見た。

 

「カードゲームにしてはCMに力を入れてるので、名前位は聞いた事あるかもしれませんね」

 

 スリーブに包まれたカードを表にすれば、大きくロボットのイラストが描かれたカードに何やら色々と書かれている。

 

「へー……キラキラしてんだな」

「レアリティが高いのですね。……火神くんもやってみますか? 覚えたらまあ青峰くん位なら倒せると思いますよ」

 

 彼はキセキの中でも最弱なので、と何気に失礼な事を言って黒子は火神を見上げる。

 

「え、青峰もやってんの?」

 

 驚いたのは降旗で、赤司はそんな事を一言も言っていなかった気がする。

 

「はじめたのは僕でしたけど、赤司くんが嵌まった時点でお察しですよね」

「なるほど……」

 

 妙に納得した降旗を頷いて見せて、黒子は火神にまあ……と切り出す。

 

「簡単な足し算が得意になりますからやってみたらどうですか」

「お、おう」

 

 その問いに自分の数学のテストの点を思い浮かべた火神は、思わずといった感じで頷いたのだった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 部活後の日課のように、今日もマジバへと黒子たちは向かう。何時もと違うのは降旗が一緒とい事だろう。黒子は何時もの様にバニラシェイクを購入して四人掛けの席を陣取った。それから降旗と火神が来るまで、持参したデッキを鞄の中から取り出した。カードをめくって目的のカードを探しているところで、一足先に降旗が、それからトレーと番号札を乗せた火神が遅れてやって来た。

 

「火神くんは僕の横に座ってください。僕は君の計算能力を信用していませんので、横から僕が口を出します」

「うわぁ……」

 

 歯に衣を着せぬ黒子の物言いに、降旗は思わず生暖かい眼差しになる。火神は苦虫を噛み潰したような顔をしてはいるものの、テストの点数まで筒抜けな黒子に言い返す事が出来ないようで、大人しく黒子の横の席に着いた。

 

「火神くんも算数位はできると信じたいんですが……一万という位に惑わされたお馬鹿さんを僕は知っていますので」

 

 遠い目をした黒子に、誰の事だか何となく察してしまった降旗は、乾いた笑い声を漏らす。

 

「まあ、食べながら簡単な説明を聞いてくださいね。火神くんが食べ終わったら遊んでみましょうか」

 

 黒子はそう言って、降旗のトレーに乗っている買い食いを腹の中に納めてしまう事を促した。

 

「降旗くんはともかく、火神くんはこのゲーム自体知りませんよね」

「まあ、名前位は」

 

 店員の持って来た大量のチーズバーガーから一つ、手に取りながら火神が言う。それに何時もの無表情を崩さずに黒子が答える。

 

「ですよね。カードゲームの世界観とかはこの際おいておくとして、どうしたら勝ち負けが決まるか教えます。ヴァンガードといってセンターに置かれるカードがあるんですが、そこにダメージを6点与えたら勝ちです。分かりやすいでしょう」

「確かに」

「分かりやすいな」

 

 各々に頷く二人に、黒子が続ける。

 

「一番大切な所なので、これだけは覚えておいてください。6点受けたら負け、です。ではゲームの流れを説明します」

 

 いいながら、黒子はさっき探し出したカードを火神と降旗に見えるように置いた。

 

「ここ、見てください」

 

 そう言って指差したのは左上に書かれている0という数字だ。

 

「数字が書いてありますよね?」

「おう」

「ここには0~3のどれかの数字が書いてあります。このカードはグレード0、一番最初のカードです。ファーストヴァンガード(FV)って言うんですけどね。ここから自分のターン毎に次のグレードのカードをライド、つまり乗せて行くんです。このグレードは一つずつ大きくならなきゃダメです」

「えっと、自分のターンにレベルアップしてく感じ?」

 

 降旗が自分の解釈を伝えれば、黒子は満足そうに頷きながら言った。

 

「そんな感じです。後は食べ終わったら、実際に遊びながら教えます」

 




Q.なんでPG一年組が仲良くなってんの?
A.個人的にこの三人がわちゃわちゃしてる話が好きなので。それ以上の理由はありません。
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