降旗くんのヴァンガード   作:ねぎさだ

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降旗くんの初ファイト。
自分が初心者講習で体験したように、全てのカードをバニラとして扱っています。
なのでジェノサイドジャックが拘束解除してなかったりします。
そういう仕様ということでお願いします。


2:ヴァンガード初体験

 

 山のようだったチーズバーガーを火神が全て腹に収めるのを待って、少々の胸焼けを感じつつ黒子はデッキを二人の前に置いた。

 

「一枚だけ逆向きに合わせてあるのがファーストヴァンガード、最初のカードです。あ、火神くん」

 

 手に取って物珍し気にカード見始めた所で、黒子が火神を呼ぶ。

 

「なんだ?」

「それ、僕の嫁デッキなので曲げたりしたらイグナイトです」

「そ、そんなの使わせるな!」

 

 一瞬動きを止めてから慌てて叫んだ火神に、黒子はシレッと答えた。

 

「何ですか、僕の嫁が不満だとでも言うんですか?」

「そうじゃねーよ!」

「まあ、冗談は置いておくとして。そう言っておけば火神くん、乱暴に扱わないと信じてますから」

 

 真っ直ぐな視線を受けてそう言われれば、火神も黙るしか無い。信頼されていると思えば何処かむず痒くなって「、おう」とだけ返す。

 

「ではFVを自分の目の前に伏せて置いてください」

「こう?」

 

 黒子の言葉に従って、グレード0と書かれているのを確認してから、火神も降旗も目の前にカードを一枚伏せた。

 

「はい、それで結構です。そのカードの左右に一枚ずつ、その後ろに一枚ずつの系6枚が『場』になります。その最初の一枚をヴァンガード、V、その他をリアガード、リアなんて呼びますね。それではデッキをシャッフルしてこの位置に置いてください……あ、デッキと言うのは山札の事ですよ」

 

 そう言って黒子は伏せられたカードから二枚分程離れた右側を指差した。二人は指示された通り、山札をシャッフルして言われた位置に置いた。

 

「普通はここでじゃんけんで先攻後攻を決めるんですが、今日は横に僕が付いているので火神くん先攻で構いませんか?」

「あ、うん。大丈夫」

「ありがとうございます。では、デッキから5枚、カードをドローして下さい。ドローは分かりますよね?」

「遊戯王とでやってる『俺のターン、ドロー!』って奴だよね?」

「非の撃ち様が無いですね、それです。引けましたか?」

 

 全て降旗に向けられてた言葉であったのは、火神が帰国子女だからである。基本的に専門用語の類いは英語ベースになっているからだ。その辺りはマジックザギャザリングが米国で生まれた背景などがあるのだが、また別の話である。

 

「1、2、3、4、5っと……」

「これでいいのか?」

「はい。その中に右上にマークが書かれたものはありませんか?」

「あるよ」

「ではちょっとそのカードだけ見せて下さい」

 

 そう言った黒子の言葉に火神と降旗はそれぞれ何枚かのカードを公開した。

 

「これはトリガーという種類のカードなんですが、このカードは相手に攻撃した時のチェック時、若しくはダメージを受けた時にめくれた場合に効果が出るカードです。なので、今から行なうマリガン、あー……引き直しのルールなんですが、それでデッキに戻しましょう」

「おー……」

 

 既に言われるままの火神に降旗は少しだけ苦笑する。

 

「この時に手札に残すカードはライド、ヴァンガードにカードを順に乗せて行く関係でグレードが1~3があるのがベストです。無い場合はあるカードを残して、残りはデッキに戻します。今回は効果はなしという前提で進めますので、左下の数字、分かりますか? 5000て書いてあるこれです。これがカードのパワーなんですが、同じグレードが複数ある場合、今回は大きい数字のものを選んでください」

 

 言いながらパワーと書かれた部分を指で示した黒子に、降旗が聞く。

 

「何枚まで戻していいとかってあるの?」

「ヴァンガードにそういう決まりは無いです。でも引き直しは1度だけですね」

「成る程」

 

 言いながら火神は二枚、降旗は三枚のカードをデッキに戻してもう一度デッキをシャッフルした。それから戻した分だけ引き直した。

 

「これで準備は完了です。アニメに習って、『スタンドアップ、ヴァンガード』の掛け声でそのカードをオープンしてください」

「え、それ、やんなきゃダメか……?」

 

 露骨に嫌そうな顔をしたのは火神だ。言葉にはしなかったが降旗も同じ事を思っているであろう事は、その表情からも察せられる。

 

「これは一種の儀礼なんです。公式から推奨されているんです。 ……赤司くんすらやるのに、逃れられると思っているんですか?」

 

 無表情のまま切って捨てられた希望に、むしろ赤司が発している姿を思い浮かべてしまった。なんというか、とてもシュールだと火神は思う。それとは逆にセーくんならノリノリでやりそうだと降旗は苦笑した。

 

「ではご一緒に」

「「「スタンドアップ、ヴァンガード」」」

 

 マジバの店内という事で少々控えめながらも、三人で唱和しつつ、二人はカードをオープンした。

 

「最初はドローフェイズです。本来ならスタンドからの流れなのですが、最初なので無しです。火神くん、一枚ドローしてください」

「おう、引いたぞ」

 

 黒子の言葉に従い、火神はデッキからカードを一枚ドローする。

 

「次はライドフェイズです。ヴァンガードの上にカードをライドさせます。グレード1のカードをヴァンガードの上に置いてください」

「どれでもいいのか?」

「はい、構いません。パワーが高いものなら尚よし、ですね」

 

 黒子の言葉を受けて、火神は手札の中から一番攻撃力の高いものを抜き出した。

 

「じゃあこれだな……あー……」

「鎧の化身、バーですね。カード名を相手に教えて、ライドすると宣言してください」

「……なあ、ライドって言わなくちゃダメなのか?」

 

 火神の読めないカード名を読み上げて、黒子がそう進言する。すると何だか複雑そうに火神がそう問い返した。

 

「ダメと言うか、それはマナー違反です。無言プレイはされたら気分も悪くなりますし、相手へのリスペクト精神にかけていると思いませんか。対人ゲームなので一人でやっている訳ではないのに、了承も得ずに勝手に進められてはいい気分はしないでしょう」

 

 少し気恥ずかしい気持ちは黒子も分からなくもない。けれど度々ショップ大会などで当たる無言プレイヤーはあまり気持ちのいいものではないと感じるのである。仲間内とはいえ、初めてやるのだったら最初はちゃんとした方がいいのでは。そう判断して黒子は出来るだけ優しくを心がけて火神に言った。

 

「なんか悪ぃな……えっと、鎧の化身バーにライド?」

「はい、それで大丈夫です」

 

 少し照れも混じった火神の宣言に、こういう素直な所は大きな子供を見ているようで可愛らしいと黒子は思う。

 

「次はメインフェイズです。メインフェイズ中にはリアガードに他のユニットをコールしたり、カードの効果を使ったりする事が出来ます。この時にコールする事が出来るのはヴァンガードに立っているユニットと同じグレードまでです。なので火神くんはG1までのユニットをコールする事ができます。ではVの後ろにユニットをコールして見ましょうか」

「V?」

 

 向かいの席で大人しく聞いていた降旗が、思わずと言った様子で口を挟んだ。

 

「ヴァンガードって長いでしょう。なのでVって短く呼んだりするんです」

「成る程」

 

 降旗が納得しているうちに、火神が手札からカードを一枚抜き出してV後ろに置いた。

 

「えーっと、きぼう?の火エルモをコール、でいいのか?」

「はい、カード名も合ってます」

 

 馬鹿にされていると感じつつも、合っているか自信がなかった火神はぐっと黙る。

 

「この後、本来ならバトルフェイズが入るんですが、先攻なので攻撃は出来ません。なのでこれでエンドフェイズです。自分のフェイズを終えて相手のフェイズに移ります。ターンエンドと宣言して、これで終わりだと相手に伝えてください」

「分かった。これでターンエンドだ」

 

 漸く自分の番が終わったと、火神は一息つく。

 

「それでは降旗くんのターンです。覚えてますか?」

「うん、一応。まずドローだろ」

 

 黒子の問いに答えながら、降旗は一枚カードを引く。 それから手札からデスアーミーガイをVの上に重ねた。

 

「んで、デスアーミーガイにライドっと」

「ああ、8000じゃ無いんですね。では丁度いいので説明させてください」

 

 それを見た黒子が少し口を挟む。

 

「この状態だと、攻撃をしても相手にダメージが通りません。火神くんのバーのパワーは8000なのですが、降旗くんのガイのパワーは7000しか無いからです。大丈夫ですか?」

「うん」「おう」

 

 降旗だけでなく火神も見て黒子は尋ねた。それに殆ど同時に二人が頷く。

 

「こういう場合は、後ろにユニットをコールして前のユニットにパワーを上乗せして攻撃します。ブーストという能力なんですけど、これを使えるのはここに上向いた矢印みたいなマークあるじゃないですか」

 

 そう言って黒子はグレードの数字が書かれた下を指差す。

 

「これを持ったユニットだけなんです。基本的にG1かG0のカードならブースト出来ると思ってくれれば問題ないです。なので降旗くん、G1かG0のユニットがいたら後ろにコールして下さい」

「分かった。じゃあブラウパンツァーをコール」

 

 頷いて、黒子に促されるまま降旗は後ろにカードを置いた。

 

「次はバトルフェイズです。相手にアタックする事が出来ます。自分の前列からユニットをレスト、横向きにして、相手のどのユニットにアタックするのかを宣言します。ブーストするユニットも同じようにレストしてください」

「こう?」

「はい、そんな感じです」

 

 たどたどしい手つきで、降旗がカードを横向きにしながら黒子を見た。それに黒子は何時もと変わらない表情で小さく頷いて促す。

 

「えーっと、ブラウパンツァーでブーストしてデスアーミーガイで攻撃、かな」

「大丈夫だ、問題ない。ですね。ここで攻撃力の合計も相手に言うとなお良し、です」

「あー、13000だな」

 

 パワーを暗算しながらそう言えば、黒子は火神に向かって口を開く。

 

「ここでガード側はガーディアンをコールしてアタックされたユニットをパワーアップさせる事が出来ます。注意して欲しいのがガーディアンもVのグレードと同じまでしか呼べない事です。火神くん、何か持ってますか?」

 言いながら黒子は火神の手札を覗き込んだ。

 

「ああ。ターを出してみましょう」

「これか」

 

 火神は槍の化身ターを取った。それを黒子が示したVの前の空間に置く。

 

「ガード時はこの横にあるシールドの数値を使用します。なのでこれで火神くんのヴァンガードはいまパワー18000になりました。ここまでは大丈夫ですかね?」

「うん」「おう」

 

 二人が頷くのに頷き返しつつ、黒子は口を開く。

 

「ヴァンガードが攻撃した場合のみ『ドライブチェック』というものを行ないます。降旗くん、デッキの一番上を捲ってください」

「こう?」

 

 聞き返しながら降旗はデッキの上をめくった。

 

「残念、トリガーはなしですね。ここでトリガーカードがめくれると効果があります。ターのマーク見てください。ここに5000て書いてあるでしょう?」

 

 そう言って指差された右上に書かれたマークを見ると、確かに+5000と書かれている。

 

「これがチェック時にめくれるとパワーに+5000とマークに応じた効果が得られます。例えばこの星はクリティカルといってダメージが1点の所を2点与える事が出来ます。緑色のヒールトリガーなら、自分のダメージが相手より多い時に1点回復できます。そんな感じです。

今はガードされてしまったので、チェックでめくれたカードを手札に加えてくださいね」

「了解」

「ガードしたガーディアンはドロップゾーンに置かれます。なので火神くん、ターをデッキの後ろに表向きで置いてください」

「わかった」

「なあ、シールド値のマークないやつはガードできないの?」

 

 降旗の疑問に黒子はああと頷く。

 

「グレード3のカードですね。はい、基本的にグレード3のカードはガード時に使用できません」

「りょーかーい」

 

 納得したように降旗も答えて、それぞれの処理を終えて、二人は黒子を見た。

 

「これで降旗くんがエンド宣言をしたら火神くんのターンになります」

「じゃあターンエンドだ」

「あー、ドロー。で、クロスショットガープ、にライド……でいいんだよな?」

 

 降旗のエンド宣言に、火神が自信なさそうにVにカードを重ねる。それから横目で伺うように黒子を見るので、黒子は妙に面白い気分になってきた。大きな弟でも出来たような気分になる。

 

「火神くん、違ってたら口を出しますので大丈夫です。それに初めてなのでぎこちないのは仕方ないです」

 

 こんなものは慣れですと、そう言い切って黒子は頷いて見せた。

 

「慣れ、ね。ベリコウスティドラゴンをコールしてバトルするぜ」

 

 そんなもんかと言った風体で呟いて、火神はヴァンガードの右隣にカードを置く。

 

「希望の火エルモのブーストでガープでデスアーミーガイにアタック。パワーは16000だ」

 

 宣言しながら、ヴァンガードとその後ろのカードをレストした。それを受けた降旗は、少し唸ってから「ガードはなし!」と宣言する。

 

「ドライブチェック、だっけ?」

「はい、そうですよ」

「……何もなし」

 火神のめくったカードにはトリガーのマークはない。それを手札に加えた所で、黒子は口を挟んだ。

 

「では降旗くん、ダメージチェックを行います。デッキの一番上をめくって下さい」

「チェック……お、なんか出た」

 

 黒子に促されてめくったカードには、引という文字の茶色いマークがついていた。

 

「ドロートリガーですね。好きなユニットにパワーを+5000してカードを一枚引いて下さい」

「じゃあデスアーミーガイに+5000してドローっと。このカードはどうするの?」

「デッキと反対側にダメージゾーンというのがありますので、そこに表側にして置いて下さい」

「この辺?」

「はい、その辺で結構です」

 

 降旗が聞くと、黒子が頷いて肯定した。なので降旗はカードをヴァンガードから少し離した所に表側にして置いてから、カードをドローする。

 

「ん……? あ! ベリコウスティドラゴンだとパワーが届かねえ!」

「よくできました、火神くん。こういう場合があるので、パワーの低いユニットからアタックする方がいいですよ」

 

 火神が気付いたように声を上げれば、黒子は全く褒めていない様子で勉強になりましたねと言った。

 

「教えてくれてもいいじゃねえか」

「そうですね、ダメージチェックは教えてもよかったかもしれませんでした。すみません。でも好きなようにやって貰う方がいいじゃないですか。基本的に計算間違いとかトリガーとかで口を挟むので、君のやりたいようにやって下さい」

 

 最初からあれこれ口を出すのは、余り黒子の好みではなかった。そんなのはもう少し慣れてからでいいのだ。火神も直ぐに謝られてしまったので大人しく引き下がる。

 

「分かった。じゃあターンエンドだ」

「どんまい」

 

 ちょっとばかり眉を下げて笑いながら降旗が声をかける。知らなかった火神がやったが、これは自分も忘れてやりそうだなと思う。

 

「えっと、先にスタンド?させるんだっけ?」

「はい、スタンド&ドローです。まあ慣れるまではスタンドするの、忘れるものですよ」

「スタンド、&ドローっと」

 

 さっきのターンは攻撃をしていなかったので、ドローが先かスタンドが先か自信がなくなったらしい。それに自分が始めた頃を思い出して、黒子は小さく苦笑した。そんな黒子に気付かずに、降旗はレストされたカードをスタンドさせてからカードをドローする。

 

「なあ黒子」

「どうしましたか?」

「ヴァンガードをパワー低いの置いて、横に高いの置くのもありかな?」

 

 降旗から問われた質問に、黒子はほう、と感心した。

 

「そうですね、ケースバイケースといった所でしょうか。火神くんのVは10000なので、リアに9000を置くならばブーストがないと攻撃が通りません。V裏に何もいなかったとした場合、リアに10000、Vに9000を置くのはほぼ定石です。運にも依りますが、ドライブチェックでトリガーが乗った場合、Vならば自身で攻撃が通りますからね」

「成る程。じゃあ俺はマジシャンガールキララにライド。リアにジェノサイドジャックをコールするよ」

 

 最初から自分で色々考えながらプレイするのは、実は結構大変だと言う事を黒子は知っている。特にドライブチェックまで考えるのは初心者には難しい、というかそこまで余裕が無いのも事実だ。あれ降旗くん実は違うカードゲームやってたりするんですかねと、ちょっとばかりそんな事を考える。

そんな事を考えているうちに、降旗は盤面を作って行く。

 

「こうで、リアのジェノサイドジャックでえーっと、ガープにアタックする」

「あー……えーっと」

 

 降旗のアタックに、手札を見ながら迷っているらしい火神の手札を黒子は覗き込む。

 

「あ、火神くん降旗くん。ちょっといいですか?」

「あ、なんだ?」

「なに?」

「この、グレード2のカードのここのマークについて説明しますね」

 

 火神の手札を見て、火神が何を迷っているのかを、何となく察した黒子が口を挟んだ。ここで口を挟んでおくべきだと判断したのだ。

 

「この戻って飛び出して行くような矢印のマークは『インターセプト』が出来るというマークです。リアガードに出た状態からガードに飛び出せるって事ですね。ガード値はさっきと同じように横の所の数値で、処理が終わったらドロップゾーンに送られます」

「へえ」

「なるほど。なら、ベリコウスティドラゴンでインターセプトする」

 

 さっき覗いた火神の手札がなかなかアレな事になっていたので、ここで教えて実践してもらうのもありだろうと思ったのだ。予想通り、火神はリアにいたドラゴンでインターセプトをして攻撃を防いだ。

 

「今度はブラウパンツァーのブーストで、マジシャンガールキララでアタックする。パワーは15000だ」

 

 火神がインターセプトしたカードをドロップゾーンに置き終わるのを見計らって、降旗が宣言してカードをレストする。

 

「あー……黒子、攻撃と防御が同じになる時ってガードできるのか?」

「残念ながら同数になる時は攻撃側が優先されます」

「ならガードしないぜ」

 

 歯切れの悪い火神からの疑問に、まあ無理にガードしなくてもいいんですけどねと黒子は心の中で付け加える。

 

「じゃあドライブチェックするぜー……あ、これクリティカルだっけ?」

 

 降旗がめくったカードには輝く黄色い星のマークが描かれていた。

 

「おや星出ましたね。では火神くん、一枚ずつチェックしてください」

「分かった。一枚目、なし。ここでいいんだよな?」

 

 ぺっとめくったカードを、火神が向かいの降旗が置いたダメージの対格に置きながら確認する。それに「大丈夫ですよ」とバニラシェイク(ちょっと溶けている)を啜りながら黒子が答えた。

 

「二枚目、っと、何か出たぞ」

「ヒールトリガーですね」

 

 火神がめくった二枚目には、緑色で治のマークが書かれている。

 

「これは自分のダメージが相手と同じか多い場合、ダメージを一点回復する事が出来るトリガーです。なので火神くんはダメージを一点回復ーードロップゾーンに置いてから、このカードをダメージゾーンに置いてください」

「おー」

 

 言われた通り、ダメージゾーンのカードをドロップゾーンに置いて、それからヒールトリガーをダメージゾーンに置いた。

 

「ちぇー」

「あぶねー……」

 

 それを残念そうに見ながら、降旗はターンエンドを宣言する。

 

「Stand and, draw」

「無駄に発音いいのがイラッとしますね」

 

 そう言いながらカードを起こし、ドローする火神に黒子が読めない表情で言う。それに呆れたような表情で火神が物申した。

 

「意味わかんねえぞ黒子……」

「確かに発音いいけどさあ」

「あ、どうぞ続けて下さい」

 

 しれっと続きを促す黒子に、降旗も困ったように笑う。それに隠しもせずに溜め息を吐きながら、火神は手札からカードを一枚抜き出した。

 

「ドラゴニックオーバーロードジエンドにライドする」

「あ、降旗くん、赤司くんと遊ぶ時はライド口上を言うと喜ばれますよ」

 

 火神がキラキラしいジエンドにライドする傍らで、黒子がそう言って「彼、中二ですから」と付け加える。何のことかよくわかっていない火神だったが、知りたくなかったた思うのはあながち間違いでもない筈だ。

 

「何そのいらない豆知識!」

 

 確かに赤司なら喜びそうというか、嬉々として言いそうだが。知りたくなかったと降旗は叫ぶ。WC以降一年PG組で連み始めて、赤司に対する恐怖心は克服された。だが同時にイメージもブレイクされ続けている気がする。

「試合中みたいなカッコイい赤司くんとか説滅危惧種ですよ」とは黒子の言だ。

 

「赤司って変な奴だよな」

「否定はしません」

「そこは否定しようよ!」

 

 ある意味傷心の降旗に火神が追い討ちをかける。黒子と降旗から聞く赤司の話からすっかり火神の赤司のイメージは変わり者で定着している。

 

「続けていいか?」

「あ、うん。ごめん」

 

 大丈夫と答える降旗に、火神は鷹揚に返しながら場にユニットをコールした。

 

「ドラゴンナイトネハーレンと……これなんて読むんだ?」

「魔竜導師ですね」

「マリュウドウシキンナラをコール」

 

 前列に二体と、ネハーレンの後ろに読めなかったキンナラを配置する。そして火神がバトルフェイズに入ろうとしたところで、黒子が口を挟む。

「グレードが3になったので、口を挟ませてください。インターセプトとかのマークの所、星みたいなマークありますよね?」

 示された場所には確かにそんなようなマークがある。それに頷きながら、降旗が口を出した。

「何か能力があるの?」

「はい。ツインドライブという能力です。グレード3はトリガーのチェックを2回行うことができるんです」

「へえ」

「要するにドライブチェックで最大10000攻撃力が上がる可能性があると言う事なんですが、分かりますか」

 

 かなり軽めに流した火神に、思わず黒子がそう尋ねる。ここはかなり重要なポイントであるのだが、初心者にはなかなか理解されないポイントでもある。何が?と今にでも問い掛けてきそうな火神と降旗に、黒子は一つのたとえ話をした。

 

「そうですね……例えば5点ダメージを受けていたとしましょう。その時に11000Vに対して17000でのヴァンガードの攻撃を宣言されました。二人ともどれくらいでガードしますか?」

「えっと、10000あれば足りる、よな?」

「そうですね。ギリギリでガード出来る数値です。けれどドライブチェックでトリガーが1枚でも乗ってしまえばその攻撃は通ってしまいます。5点受けていると言う事は後がない状態ですよ」

 

 火神の答えに黒子は冷静に返す。それに降旗がそっか、と思いついた言葉を口に乗せる。

 

「2回チェックがあるから、最大27000になる可能性があるのか。じゃあ20000でガードするのが正解?」

「そうですね、手札に余裕があるのなら余裕を持ってガードするのがいいでしょう。基本的に15000でガードして、トリガーが1枚乗っても耐えられるようにすると良しです。トリガーが二枚乗れば通ると言うのは、逆に言えば二枚乗らなければ通らないと言う事です。攻め手側もVに乗せるかリアに乗せるかを迷いますし。結局ダメージ数が変動するのはユニットの効果かトリガーの効果の二つに一つです。パワーも同じくトリガーが乗らなければ変わらない。余裕を持って防がなければならないのはVの攻撃だけなんですよね。分かりますか?」

「わからん」

 

 降旗に返した黒子の説明に、頭上にクエスチョンマークを飛ばしながら火神が首を傾げる。それに黒子は少し考えてから口を開いた。

 

「結局クリティカルが乗らなければどんなにパワーが高くても1点しかダメージを与えられないって事です。数値が決まっている攻撃を止めて、パワーが変動する可能性のあるVの攻撃を通す。或は1点と割り切ってリアの攻撃を通して、クリティカルの乗る可能性のあるVの攻撃を止める。この辺は好みですけど、手札は有限ですからね。ある程度止める所を絞らないと5点目でノーガードになりますよ」

「要するに?」

「Vに対してギリギリガードだといざと言う時に負けますよ」

 

 分からなさすぎて考える事を放棄した火神に変わって、降旗が要約を促した。それを火神くんマジバ火神と内心思いながら結論だけ教える。

 

「最初からそう言えばいいじゃねえか」

「そうですね僕が馬鹿でした。実際貫通して負けて覚えてくださいね」

 

 シールド値を越えて攻撃が通る事を貫通などと呼ぶのだが。既に投げやり気味な黒子はその辺の説明を端折る。そのうちまた教えればいいだろう。

 

「ヴァンガードの攻撃はドライブチェック、二回行なってください。まとめじゃなくて、1回ずつ処理してくださいね」

「おう。じゃあ希望の火エルモのブーストで、ドラゴニックオーバーロードジエンドでVにアタックする。パワーはえーと……11000の…………17000か」

 

 黒子に促されて中断していたファイトに戻る火神が、中央の列をレストしながら宣言する。

 

「えーと……じゃあレッドライトニングとザゴングの15000でガードする。合計24000だから、トリガーがひとつ乗っても大丈夫だよな?」

「……そうなります」

 

 降旗に尋ねられた黒子は頷いた。だが少し考えるような素振りを見せた事に、降旗も火神も気付かない。

 

「ドライブチェック、一枚目ドロートリガー……なる程、こういう時に乗せるかどうか悩むのか」

「そういう事です。火神くんはこのままVに乗せてもう一枚乗ることに賭けてもいいし、安全にリアに乗せて攻撃力を上げてもいいです。この判断は一枚ドローしてからでも構いません。ドローでトリガーを引いた場合デッキの中のトリガー枚数が減るので、次でトリガーが出る確率が下がりますからね」

「なるほどな。じゃあ取りあえずドローして……+5000はリアのドラゴニックオーバーロードだ」

 

 黒子の説明に納得したように、火神はカードをドローした。それから少し考えてリアのオーバーロードに+5000する事にした。それから2度目のドライブチェックしを行う。

 

「二枚目、トリガーはなし、と」

「黒子、こういう場合Vに乗せる事ってあるのか?」

 

 火神に対する説明を一緒になって聞いていた降旗が、黒子にそう尋ねた。

 

「ありますよ。例えば4点で相手が15000でガードしてきた時、一枚目でクリティカルトリガーがめくれた場合とか。二枚乗ったら、相手がヒールトリガーをめくらなければ此方の勝ちですし。逆に言えばそう言う越えたら勝ちという場面以外は、堅実にリアに振る場合が多いですけどね。でもここぞという場面で貫通して勝てたら、主人公みたいで物凄くテンションがあがります」

 

 その「主人公みたいな勝ち」を思い出したのか、黒子は気持ちうっとりとしたように息を吐く。

 

「そんな風に勝てるもんなの?」

「デッキが微笑んでくれた場合は勝てます」

「デッキって生きてるのか?!」

 

 思った事をそのまま尋ねれば、黒子がロマンの塊のような答えを返す。それをそのまま受けてぎょっとした火神に、黒子は珍しく残念なものを見るような目で火神を眺めた。

 

「比喩とか擬人法です。言わば勝利の女神的なアレです。嫁のご加護と言った所でしょうか。ちなみに僕の嫁は今火神くんのVに立ってるジエンドにゃんです」

「え?! 黒子の嫁これなの!?」

「よ、嫁……?」

 

 てっきり女の子のカードなのだとばかり思っていた二人は思わず疑問の声を上げる。

 

「なんですか文句でもあるんですか」

「や……文句はねえけどよぉ……」

「てっきり女の子カードだとばっかり……」

「ふつくしいじゃないですか」

 

 心なしかうっとりとそう言った黒子に、これは何を言ってもな感じだと火神も悟る。降旗がちらりと火神を見れば火神も同じように此方をみて頷いて、二人はファイトに戻る事にした。

 

「キンナラのブーストでネハーレンでVにアタックする。16000だ」

「うー……ノーガードかな。ダメージチェック、トリガーなし」

 

 火神の宣言に、降旗は手札と相談してノーガードを宣言した。ダメージゾーンへと落ちたカードは無情にもトリガーのないカードだった。

 

「ドラゴニックオーバーロードでVにアタック。トリガーが乗ってるから16000だぜ」

「これもノーガード! ダメージチェック……うええここでクリティカルトリガーかあ……」

「割と良くある光景ですね。ドンマイです」

 

 カツカツ気味な手札にノーガード宣言をした降旗は、めくれたトリガーに思わず声を上げた。それに無表情な声音で黒子が慰めるが、全く慰められた気がしない。

 

「これで俺はターンエンドだな」

「それじゃスタンドアンド、ドローっと」

 

 レストされたカードをスタンドさせてから、カードをドローして、降旗は少し考える。

 

「獣神アズールドラゴンにライド、それからデスアーミーガイをコール」

 

 中央に青い竜を象ったロボットのイラストのカードを置いて、それからジェノサイドジャックの後ろにデスアーミーガイをコールする。

 

「あ、そうだ。忘れてました。降旗くん」

「え、何?」

 

 今思い出したとばかりに、黒子が口を挟む。

 

「そのデッキ、四種類目のスタンドトリガーって言うのが入ってます。まだ出てないのですっかり忘れてました」

「スタンドトリガー?」

「はい。アタックが終了したユニットを起こすことが出来るトリガーです。なのでそのデッキに関してはリアから殴らないとV裏のカードが虚しく起きる事になります」

 

 そうなる前に思い出して良かったですと、一人頷く黒子。それを何とも微妙な表情で眺める火神に、何となく同じ事を思ってるような気がする降旗である。

 

「黒子ってマイペースだよな……」

 

 ちょっと脱力しかけたが、気を取り直して攻撃を再開する事にする。

 

「デスアーミーガイのブーストでジェノサイドジャックでアタック。Vのジエンドに、パワーは18000だよ」

「あー……バーニングホーンドラゴンとドラゴンダンサーモニカでガードする」

 

 頭の中でガード値を暗算しきれない火神がカードを持っていない方の指を折々数値を計算する。

 

「じゃあブラウパンツァーのブースト、アズールドラゴンでVにアタック。17000だよ」

「これはノーガードだな」

「ならドライブチェック、一枚目……これスタンドトリガー?」

 

 チェックでめくったカードの右上に、ブルーで醒という文字をモチーフにしたマークがある。それを黒子に尋ねる。

 

「はい、そうです。僕空気読めましたね」

「うわそのドヤ顔止めろ。イラってするから」

 

 満足げな黒子のドヤ顔に不満を漏らしたのは火神で。それを苦笑しながら降旗はジェノサイドジャックをスタンドさせた。

 

「じゃあジェノサイドジャックをスタンドして、パワー+5000な。二枚目……ドロートリガー。ジェノサイドジャックに更に+5000して一枚ドロー」

「ダメージチェック。お、ドローだな。Vに+5000して一枚ドローっと」

「受けドローはおいしいですね」

 

 お互いにドローするのを見て黒子が呟く。今降旗のジェノサイドジャックはパワー21000だが、火神のジエンドも16000になっている状態だ。

 

「もう一度、ジェノサイドジャックでジエンドにアタック。パワーは21000だ」

「うーん……ノーガードだ。ダメージチェック、クリティカルトリガーかよ……」

 

 ダメージゾーンへ落ちていった黄色い星にあからさまに残念そうに火神が呟く。さっき自身も経験したばかりなので何となく降旗も気持ちは分かった。

 

「これでターンエンドだよ」

「ならStand and, Draw……うーん、このままバトルに移るぜ。エルモでブーストしたジエンドでVにアタックだ。パワーは17000」

 

 引いたカードを手札に合わせて、火神が小さく唸ってからバトルフェイズに移ると宣言した。降旗はやっぱり少し考えて、手札を二枚切る。

 

「バトルライザーとスリーミニッツでガードする」

「ドライブチェック、一枚目……ヒールトリガーか。黒子、こういう場合はどうなんだ?」

 

 めくれたカードはヒールトリガーだった。自分と降旗のダメージゾーンを見比べて、火神が尋ねる。

 

「ダメージが同じ場合は回復します。なので火神くんは一点回復して下さい」

「そうなのか。分かったぜ」

 

 火神は黒子の指示に従いダメージゾーンのカードを一枚ドロップゾーンへと置いた。

 

「+5000はオーバーロードにだな。二枚目、トリガーなし」

「ダメージなし、と」

 

 少し安心したように降旗がガーディアンをドロップゾーンへと置く。

 

「キンナラのブーストでネハーレンでVにアタック。パワーは16000だ」

「これは……ノーガード。ダメージチェック……クリティカルトリガー。パワーはアズールドラゴンに乗せるよ」

 

 火神のアタックに、少し困ったように眉を寄せて、降旗はノーガードを宣言した。そして降ってきたクリティカルトリガーに内心ほっと息をつく。

 

「ドラゴニックオーバーロードでVにアタック。同じく16000だぜ」

「これはジェノサイドジャックをインターセプトするよ」

 

 リアのカードをVの前へと出して、降旗は攻撃を防ぐ。

 

「ならターンエンドだ」

「スタンドアンド、ドロー! うー……デスメタルドロイドとアシュラカイザーをコール。このままバトルするよ」

 

 手札を見て悩む降旗に、黒子は少し後悔した。違うデッキを持ってくれば良かったかもしれない。だが手前にあったデッキを適当に3つ持ってきた結果だから不可抗力だとも思う。そんな事を考えながらデスアーミーガイの前に置かれるデスメタルドロイドと、その逆側に置かれるアシュラカイザーを眺めた。

 

「ブラウパンツァーのブーストのアズールドラゴンでジエンドにアタック!」

「ノーガードだぜ!」

「ドライブチェック! 一枚目、ヒールトリガー! パワーはアシュラカイザーに。二枚目、クリティカルトリガー!」

「盛り上がって居るところすみません。いいタイミングでクリティカルトリガーが出たので口を出させて下さい」

 

 半ばヤケクソ気味に頑張っていた降旗のプレイに、黒子が口を挟んだ。

 

「何?」

「僕が口を出さなかったら、降旗くんはクリティカルトリガーを全てアズールドラゴンに乗せますよね?」

「うん」

「スタンドトリガーとクリティカルトリガー位しか具体的には意味がないんですが、トリガーは+5000と効果は別々に乗せることが出来るんです」

 

 分かりますかねと告げる黒子に、降旗も火神もよく意味が分かっていない様子で首を傾げる。

 

「この場合、火神くんノーガードじゃないですか」

「うん」

「クリティカルを乗せる意味はありますけど、+5000しても有用ではないですよね?」

「ああ、なる程」

 

 黒子の説明に納得した声を上げる降旗に、ピンときていない様子の火神が首を傾げる。

 

「+5000はリアのアシュラカイザーかデスメタルドロイドに乗せた方がいいのは分かりますよね?」

「おう」

「折角ガードしないでいるんですからクリティカルはVに乗せて、パワーはリアを上げた方がお得ですよね」

「確かに……!」

 

 丁寧に火神に教える黒子に、降旗は幼稚園の先生を見た気がした。

 

「じゃあこの場合クリティカルはVに、パワーはアシュラカイザーに、でいいのかな?」

「その方が効果的ですね」

 

 尋ねる降旗に、黒子は少し満足そうに頷いてみせる。

 

「ダメージチェック、一枚目……ドロートリガー。一枚ドローして、パワーはジエンドに。二枚目、なしだ」

 

 一気に増えたダメージに、火神は顔をしかめた。

 

「しかしなんなんですかね……よく切れてなかったんですか、このトリガー率…」

 

 かなり姿を見せているトリガー率の高さに黒子が少し遠い目をする。

 

「デスアーミーガイのブースト、デスメタルドロイドでVにアタックするよ。パワーは17000ね」

「約束の火エルモでガードだ」

 

 手札からG1のカードをドロップゾーンへと置いて、火神がガードする。

 

「アシュラカイザーでVにアタック。パワーは21000だよ」

「えーっと、黒子、これ10000で防げる…んだよな?」

「火神くん。16000+10000です」

「えーっと、えーっと……にまんろくせん……大丈夫か。ドラゴンモンクゲンジョウでガードだ」

 

 黒子が足し算を促すと、どうにか火神は自力で答を導いた。大丈夫、青峰くんもここまではどうにかなりましたと黒子は一人頷いた。

 

「うーわー……ターンエンド」

「Stand and,Draw。バーをコールして、バトルいいか?」

 

 あまりの降旗の焦りっぷりに、黒子は思わず降旗の手札を覗いてみた。確かにこれはキツいか。だがまだダメージは三点だしなんとかなります……! 心の中だけで黒子は応援する。

 

「エルモのブーストでジエンドでアタックする。パワーは17000だぜ」

「ラウンドガールクララでガードするよ!」

 

 あ、そこガードしちゃうんですね。黒子は口にチャックを貫く。

 

「ドライブチェック、一枚目なし。二枚目、クリティカルトリガー! これ乗ると通るよな?」

「通りますね」

 

 聞かれた答えに淡々と返しながら、黒子は胸の内でそっと手を合わせた。

 

「じゃあ全部ヴァンガードに乗せるぜ」

「うわー…ダメージチェック一枚目……あ、ヒールトリガー!」

「残念なお知らせです。ダメージチェックはダメージゾーンに置かれる前にチェックがあるので、この時点で降旗くんは火神くんにダメージで勝っていることになります。なので回復はしません」

 

 思わず喜色を孕んで上げられたら声に、黒子は死刑執行人のような気分で事実を告げた。

 

「まじで?!」

「まじです。でもパワーは上がりますよ」

 

 さっきから一転した表情で悲鳴を上げた構いませんよ降旗に、黒子は少し同情する。

 

「じゃあパワーはアズールドラゴンに。二枚目、なし……」

「あー……悪いなフリ。キンナラのブースト、ネハーレンてVにアタックするぜ」

 

 がっくりきている降旗に多少罪悪感めいたものを感じつつ、火神はバトルを続行する。所詮ゲームである。

 

「レッドライトニングでガードするよ」

「バーのブースト、ドラゴニックオーバーロードでVにアタックする」

「ノーガード! ダメージチェック……! ですよねー!」

 

 最後に降ってきたのは何もないカードで、初めてのヴァンガードは火神の勝ちで幕を閉じたのだった。

◇◆◇◆◇

 

「降旗くん。最後のあれ、Vをノーガードにしていたらワンチャンありましたよ」

「え、うそ?!」

 

 カードを片そうとする二人を留めながら、一番気になった所だけ黒子は口にした。

 

「あそこをノーガードにして、トリガーに賭けます。火神くんに結果的に乗りましたが、結果だけ見れば降旗くんにも乗りました。なのであそこでガードせずリアをどちらも止めれば、もう一ターンありましたね」

「……なる程……」

 

 がっくりしている降旗の肩をぽんと叩いてから、黒子は二人を見た。

 

「なんとなくゲームの流れは掴めましたか?」

「おう。結構面白いな、これ」

「うん、大体は」

 

 二人の答えに頷いて、黒子は少し満足そうに言う。

 

「流れはこんな感じですが、今回は省いたカードの効果がここに加わります。これが加わると劇的に出来ることが増えます」

 

 それは降旗にも何となく分かった。

 

「効果は追々覚えて貰うとして、今からカードのマークを説明します。オーバーロードさんのここ、二つ目の効果の説明文の頭のマークありますよね。このひっくり返したようなマークです。これはカウンターブラスト(CB)と言いまして、コストを払う事によって使える効果になります。そこのダメージゾーンの表側のカードを枚数分だけ裏返して、コストを支払うのがCBです」

 

 黒子が指差した所には二つの長方形を矢印で繋いだようなマークがある。その後ろに3と数字で書かれている。

 

「オーバーロードはCB3でパワー+5000でリアにヒットした時に……これは?」

「スタンドのマークですね。スタンドする。その代わりツインドライブ……ドライブチェックが一回だけになります」

「強い、の?」

 

 思わず尋ねた降旗に、黒子は真顔で頷いた。

 

「強いです。リアで使えばデメリットなしです。パワー+5000でリアを潰したらおっきするんですよ。もう一回殴りかかって来るんですよ」

「確かにそれは強いね……」

 

 カードゲームに余り詳しくない二人は説明されれば分かったが、どうにも地雷を踏んだようだと少し遠い目をしてしまった。

 

「まあいいです……よく使うのはこれ位ですかね。それで、楽しかったですか?」

 

 こほんと一つ喉を鳴らして、黒子は二人に問いかけた。

 

「結構面白かったよ!」

「俺もフリに同じだ」

「じゃあデッキ、欲しいと思いますか?」

「俺は一つ位作るつもりかな。セーくんとカズくんとも一緒に遊んでみたいし」

「そうだなー。フリも黒子もやってるなら、一個位持っててもいいんじゃねえかとは思うぜ」

 

 二人の答えを聞いて、黒子は一つの提案をする。

 

「どのデッキにもある程度高いカードがあるんですが、完全ガードというのが特にお高いです。その分だけ頂けるなら、手持ちで使っていないカードでデッキを作って来ますが、どうしますか? 降旗くん」

「え、俺だけ?」

「さっき使って貰ったノヴァグラップラーというロボのクランなんですが、完全ガードが二枚程交換待ち状態でして。流石に僕もお小遣いで遣り繰りしてるのでこれはあげられませんが、回し方さえ覚えてしまえば普通にお二人とも戦えるデッキだと思いますよ」

 

 赤司と高尾とも戦えるデッキだと、黒子は太鼓判を押す。

 

「正し完全ガードの二枚目以降は自分でどうにかして下さい。ショップで買うと800円位してしまうんですが。まあ、お二人に相談してからでも構いません。違うクラン使いたいというならカード集めるの手伝いますし」

「んー……分かった。ちょっと相談してみる」

「二人共僕のSkype知ってるので呼びつけてくれても構いませんよ」

 

 降旗と話してから、改めて黒子は横の火神を見上げた。

 

「火神くんにはワンコインでデッキ作って差し上げますがどうします? 混クランですがそこそこ強いですよ」

「は? え、いいのか?」

「取りあえず安くそこそこ遊べるデッキで組んでみて、それ以上の興味が出たらまた考えてみましょう。新規さん歓迎です。自分のデッキを持つとまたモチベも変わりますし」

「うん、じゃあ頼む」

 

 さくっとその場のノリで決めた火神に黒子は満足そうに頷いた。

 

「今度は火神くんのデッキで遊びましょうね」

 

 

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