降旗くんのヴァンガード   作:ねぎさだ

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モデルは知り合いの高校生
高校生のノリってこんな感じの認識



4:ファイプなう見学中

『こうなったら実際ファイトしてる所を見てもらって決めてもらえばいいんじゃないですかね。アマテブレイクは僕しか持ってないので僕が使いますが、ココサク赤司くん持ってたでしょう』

 

 結局共存させる事は出来ないがどっちがいいのか決めかねた降旗の横で、ココ押しの黒子が一声ないた。アマテ押しの赤司がココを使うと言うのは何とも皮肉ではあったが、赤司のアマテラスはツクヨミと組んでいたので仕方ないのだ。

 

『妹ちゃんに強請られたから、俺もココ軸持ってるぜ! 光ちゃん、俺と征ちゃんとどっちに解説して貰いたい?』

『今回は僕が解説に回ろう。というか和成のココを見たい』

 

 率先して解説に赤司が回ると言うと、黒子が反応する。

 

『分かりました。ではちょっとカメラの準備をしてきますね』

『オッケー。俺もちょっとカメラ入れるわ』

 

 言いながら高尾もマイクの向こうでがたがたと音をさせて、カメラを接続しているらしい。それからしばらくして、通話画面にカメラの画面が二つ現れた。そこには公式のプレイマット(Vサークルが赤のものだ)が映っており、六枚のカードとダメージゾーン、デッキが置かれていたが少し見切れているのをどうも高さを調節する事で全部映るようにしているらしく、画面ががたがたと揺れていた。

 

『上手く映りませんね。ダメージとデッキ見切れてもいいですか』

『いいんじゃね、ってあっ』

 

 少し途方に暮れたような黒子の声に返した高尾のものと思われる画面が、ごとんと言う音と共にひっくり返った。

 

『あああデッキがー!』

「和くん大丈夫?」

『和成落ち着け』

『高尾くんどんまいです』

 

 ひっくり返した拍子にデッキも崩れたらしい高尾が悲鳴を上げると、口々に慰めの言葉が飛ぶ。それから横になった画面が元に戻り、画面が黒子のものと同じような感じにセッティングされていった。

 

『僕の方は用意できましたが、そっちはどうですか?』

『俺の方もオッケーだぜ。先攻後攻はどう決める?』

『トップをめくってグレードの大きい方が先攻で』

『オッケ』

 そう言うと、めくったらしいカードが同時に画面に現れた。

 

『僕は2です』

『俺はクリティカルトリガーだ。こんなとこで出なくてもいいのになー』

『では僕が先攻ですね。3枚チェンジします』

『俺も3チェンだぜ』

 

 少しばかり嘆きながら宣言する高尾に、降旗はふと気になって尋ねた。

 

「何時もこんな風に先攻後攻決めてるの?」

『気分によるかな。じゃんけんする時もあればサイコロを振る時もある』

 

 素朴な疑問には解説役の赤司が答えた。二人は気にせずにゲームを進めて行く。

 

『僕の先攻ドロー。……ふむ。ではダークキャットにライドです。高尾くんは引きますか?』

『引かないとかないわー』

『ですよねー』

 

 言いながらお互いに一枚引くのだが、そこに赤司の解説が入った。

 

『ダークキャットはオラクルシンクタンクのVがいる時にお互いにドローする事が出来る効果を持っている。これは引かない事も出来るんだが、まあ手札を増やさない利点もないから大体引くんだ』

「成る程」

『ではえくれあを移動してターンエンドですね』

 

 言いながら黒子はRにカードを移動させてエンド宣言をした。

 

『じゃ、俺のターン! ドロー! ……ぬーん……ダークキャットにライド安定でした。引きますか?』

『安定の猫ライドですね分かります。引きますとも』

 

 言いながら同じカードにライドした高尾に、さっきと同じ光景が繰り返される。

 

『V裏にみるくコールして、Vにアタックするぜ』

 

 言いながらダークキャットの後ろにお天気お姉さんみるくをコールして、高尾がアタックを宣言した。

 

『1ターン目からいちまんななせんだと……勿論ノーガードです』

『みるくは手札が4枚以上の時に+4000される効果がある。だからこの場合合計が1万7千になるんだ』

「そっか。最低1万5千のガードをしなきゃいけないからノーガードなのか」

 

 赤司の効果説明に、降旗が納得したようにそう言えば、黒子が口を開く。

 

『まあそうなんですけどね、降旗くん。このゲームはですね、6点貰わなきゃ負けないだけじゃなくて、CB(カウンターブラスト)というのがあるんですよ。ダメージゾーンのカードひっくり返して使う効果なんですけどね。それを使う為にある程度ダメージは受けておくのは定石なんです』

『そうそう。大体3点目くらいまではノーガードじゃね? まあG2の時点で3点とかだとダメージレース的にガードしたりはするけど。ドライブチェックしていーい?』

『僕は構いませんが降旗くん、なんでとか思う事があったら言ってくださいね。進行止めるんで』

 

 トップカードを裏のままちらちらさせる高尾を、黒子がさらっと制する。そこに話を振られて、降旗は思わず尋ねた。

 

「えっ、じゃあダメージレースって?」

『そのままだよ。状況的に1対4とかになると巻き返すのが厳しいだろう? そうならないようにダメージをある程度調節するんだ』

「成る程ー。ありがと、もういいよー」

 

 赤司が丁寧に解説すれば、降旗はそういうことねと納得する。

 

『あいよー。じゃ、ドライブチェック。何もなしだ』

『ではダメージチェック、受けドローおいしいです』

 

 高尾のめくったカードにトリガーはなく、黒子がめくったダメージカードにはトリガーがあった。1枚手札を増やした黒子に、高尾が呻く。

 

『なん……だと……ターンエンドだぜ』

『ではマイターンドロー。……もかにライドです。V裏にさめこコール、効果でトップをチェック……驚きの弱さです。ステイしかできないなどと……』

 

 言いながら黒子はライドしたもかの後ろにサークルメイガスをコールし、デッキの一番上を見てそのまま元に戻した。そんな黒子に苦笑したように高尾が声をかける。

 

『そんなに言うなら他の7000ブースト入れたら?』

『アマテラスにおむれっとやらララを入れてどうしろって言うんですか』

『うん、ごめん』

 

 素直に謝った高尾に、赤司が解説を挟む。

 

『おむれっともララもソウルが空の時に効果があるカードだ。因にアマテラスの効果はさっき見てもらったと思うんだが、ソウルを増やす効果だから全くもってシナジーしない。黒子は効果の使えないカードより、まだ効果が使えるカードを入れているという状態だな』

『赤司くん、櫂説ありがとうございます。そのまま降旗くんの櫂くんになったらどうです?』

『なんだ、僕は光樹にブラスターブレードを渡せばいいのか?』

「えっと……?」

『やめたげて光ちゃん分かってないからw』

 

 そのままネタに奔った黒子と赤司に、高尾がストップをかけた。

 

『光ちゃん、そのうちヴァンガの1話と2話、見よう。そうすれば大体分かるから。主に主人公のアイチの彼氏がライバルの櫂くんだって事とかwwwwww』

「あれ、主人公って、男じゃないっけ?」

 

 えっ、と思わず降旗が確認すると、

 

『どう見てもリリカルホモアニメですありがとうございますwwww』

 

黒子が声を震わせながら明後日の回答をする。

 

『最近カードゲームアニメになって来たよな。漸く世界の危機をヴァンガードで救う展開になって来た』

「なにそれ怖い」

 

 あまりカードゲームアニメを見ない降旗にはぴんと来なかったが、それでは世界の危機を救わなければカードゲームアニメではない事になる気がする。

 

『脱線しましたが続けてもいいですか?』

『おっけー』

『ではリアにプロミスドーターをコールして、アタック行きます。えくれあのブーストのプロミスでVにアタックです』

 

 さっと話を切り替えて、黒子はえくれあの前にプロミスドーターをコールした。そしてそのままカードをレストしてアタックする。

 

『ノーガード。ダメージチェック、何もなし』

 

 高尾のダメージにはトリガーはなく、そのままカードはダメージゾーンへと置かれた。

 

『ではさめこブーストのもかでアタック。18000です』

 

 同じように、今度はVのカードをレストしてアタックを宣言する。

 

『これもノーガードだ』

『トリガーチェック。ゲット、クリティカルトリガー』

 

 見えるように黒子がめくったドライブチェックには、黄色い星のマークが輝いていた。

 

『なんだとwwwww一点目、なし。二点目、なしwww痛ってえwwww』

『ドヤァ』

『テッちゃん口で言うなしwww』

 

 一向にめくれないトリガーに高尾は笑い出し、黒子は敢えて口に出してドヤった。

 

『和成、今日は運がないな』

『ほっといてwwww』

 

 慰めるでもなく見たままの感想を赤司が呟けば、同じ事を思ったらしい高尾が笑いながら嘆いた。

 

『ではターンエンドですよ』

『スタンドアンドドロー! 俺はワイズマンにライド! リアにぐらっせ、レックレスをコール。Vからアタック入るぜ!』

 

 一切の迷い無くバニラユニットに高尾はライドし、リアにバトルシスターぐらっせとレックレスエクスプレスをコールした。

 

『和成のココはタッチスパイクか』

「タッチ?」

 

 それを見た赤司が成る程とばかりに漏らせば、それに降旗が反応した。

 

『ああ、タッチと言うのは違うクランを混ぜる事だな。クランが違ってもシナジーするカードはあるから、それを合わせる事を言うんだ』

『レックレスエクスプレスはスパイクブラザーズのカードなんだ。で、続けていいー?』

 

 赤司の説明に高尾が付け足しつつ尋ねれば、

 

『問題ない』

「大丈夫」

『おっけーです』

 

 三者三様に肯定の返事が返って来た。

 

『ワイズマンでもかにアタック!』

『ノーガードです』

『ドライブチェック。おっ、ヒールキタコレ! 一点回復して、+5000はぐらっせにだ』

 

 ワイズマンをレストしながらの宣言に間髪入れずに黒子が返した。めくれたカードはヒールトリガーで、高尾はダメージゾーンのカードを一枚ドロップする。

 

『ダメージドローになってしまいましたか。仕方ないね。ダメージチェック、なしです』

 

 言いながらダメージトリガーをめくる黒子だが、トリガーは乗らない。

 

『じゃあレックレスブースト、ぐらっせでアタックだぜ』

『あ、ノーガードするんで計算いりませんしおすし。ダメージチェック、何もなし、と』

 

 計算しようとした高尾を遮って、黒子はトリガーチェックしてダメージゾーンのカードを増やした。

 

『んじゃ、これでターンエンドだわ』

『ふん、今に見てなさいよ高尾くん。アッと言わせてやりますからね。スタンドアンドドロー! 満を持して、光り輝け美しき女神、CEOアマテラスにライド』

『うわー、テッちゃん口上棒読みだしwwwwwww』

 

 完全なる棒読みで黒子はアマテラスにライドする。

 

『テツヤは相変わらずの棒っぷりだね』

「本当に言うんだねライド口上」

 

 少し冗談だと思っていた降旗はちょっとノリについて行けていないのだが、他三人は予想以上にノリノリだというのは理解した。

 

『アマテラスの効果でソウルチャージして……あ』

『星wwww吸ったwwwwww』

 

 ソウルに吸い込まれて言ったのはクリティカルトリガーで、それを見た高尾が爆笑する。

 

『高尾くん笑い過ぎですよ。こんなの通常運転じゃないですかやだー。デッキトップをチェック、下へ』

 

 見た瞬間、黒子はカードを下に置いた。

 

『イケメンとジェミニをコールしてアタック入ります』

『テツヤ、光樹に見せるファイトなんだからカード名をちゃんと言ってやれ。因にイケメンはメテオブレイクウィザードと言う』

『スミマセン降旗くん。以後気をつけます多分』

 

 赤司の注意に全く反省していないしあまり気をつける気もなさそうに言った。

 

『さめこのブースト、アマテラスでVにアタック、21000です』

『ノーガードだぜ!』

『ではトリガーチェックです。ファースト、なし。セカンド、ドロー。1枚引いてパワーはプロミスに乗せます』

 

 堂々とノーガード宣言をする高尾に、黒子は淡々とドライブチェックを行なった。

 

『ダメージチェック、トリガーはなし』

 

 言いながら高尾はダメージゾーンを増やす。ダメージはこれで3対3になった。

 

『えくれあのブースト、プロミスでVにアタックです。+5000なので18000です』

『ここはロゼンジでガード』

 

 言いながら高尾はカメラにヒールトリガーのカードを映し、ドロップした。

 

『ジェミニのブースト、メテオでVにアタックします。アタック時CB、メテオを+3000し、21kです』

『これは無理して防がない! ノーガードで、ダメージチェック……何もなし……だと……』

『高尾くんのトリガーどこ行っちゃったんですか』

『俺が聞きてーよ』

 

 相も変わらずめくれないトリガーに、流石に高尾も若干ショックを受けているようだった。

 

「あ、そっか。メテオのとこが21000になるの分かってたから、その前の攻撃を和くんは防いだんだね」

『光樹は飲み込みがなかなか早いね。因に敢てダメージを受けてトリガーを乗せてから次に備えるというのも一つの手だよ』

 

 観戦していた降旗が思いついたようにそう言えば、赤司の講義が加えられる。

 

『まあターンエンドですよね』

 

 外野の事など知った事かと言わんばかりに黒子がエンドを宣言すると、高尾がさっきまでの態度はどこに行ったとばかりに声を張り上げる。

 

『俺のターン、スタンドアンドドロー! 赤き水晶よ、未来を照らせ、ライド! スカーレットウィッチココ!』

『きゃーココたーん』

「ちょwww黒子棒読みwwww」

 

 高尾のアニメの声優張りの抑揚のついたライド口上と共にライドされたRRRのココに、黒子が棒読みで黄色い声援を送る。普段ならやらない黒子の豹変に降旗は思わず吹き出し、赤司のマイクからもぐふともごふともつかないくぐもった音が聞こえてきた。

 

『テッちゃんに全部持ってかれちゃったじゃないですかーやーだー。リトルウィッチルルの効果で自身をスペリオルコールする。コール時にソウルのオラクルのカードを2枚ドロップして1ドロー』

 

 そんな事を言いながらも高尾は空いている後列にルルをコールした。それからソウルからカードを2枚抜き出しドロップゾーンへと送り、デッキからカードを1枚ドローする。

 

『更にココの効果を発動、ライド時ソウルが1枚以下のときCB2を支払って2枚ドロー!』

 

 それからダメージゾーンのカードを2枚裏返して、更に2枚ドローする。

 

「先にルルの効果入ってるから、ライド時じゃなくない?」

 

 それを見た降旗の素朴な疑問には赤司が答える。

 

『ココの効果もルルの効果も「ライドした時に使用できる」効果なんだ。タイミングが同じ場合、ヴァンガードは好きな順番に効果を使用することができる』

『どっかのカードゲームみたいに「タイミングを逃し」たりしないんだぜ☆』

『高尾くんどんだけカードゲームやってるんですか。コンマイ語検定レベル高杉ワロタワロタです』

 

 清々しくそういう高尾は何か恨みでもあるのかと言わんばかりだったが、咄嗟に引っ張ってくる黒子も黒子である。

 

『なのでルルの効果を使った後にココの効果を使うのも、問題なく処理できる』

 

 赤司は脱線するのを引き戻すのが役目になりつつある。赤司がまめなだけなのか、二人のテンションがおかしいのか最早分からない状況である。

 

「和くんと黒子の話はよく分からないけど、恨み?みたいなのは伝わったよ」

『それは重畳。時に高尾くん、手札が裏山な状況から進めませんか?』

 

 降旗の言葉を引き取ったのは黒子で、そのまま高尾へと投げてやる。すると高尾はどうすっかなー、と少しばかり悩んでからルルの前列にメテオブレイクウィザードをコールした。

 

『メテオコールで、アタックかな』

『どこから殴るんです?』

『みるくブーストのココからに決まってるじゃないですかー。手札が4枚以上だからみるくは1万ブースト、更にココのソウルは0なので+3000。23(ニーサン)でアタックだ』

 

 言いながら画面の中央の列がレストされる。

 

『という事は和成のココにはスタンドトリガーが入っていないという事か』

「あ、そっか。無駄スタンド防止、だっけ?」

 

 迷わずV列から殴った高尾に、赤司が感想を呟けば、降旗が放課後の事を思い出した。

 

『そうですね、ありましたねそんな状況。よく覚えてましたね降旗くん。 三点目ですよ、ノーガードです。ダブクリは事故なので仕方ないですし』

『ドライブチェック、1枚目ーゲットクリティカルトリガー! クリティカルはココ、+5000はメテオに! 2枚目ー、はなし。ざんねーん!』

 

 軽快な声音と共にめくられて行くカードに、2枚目の黄色い星が乗っていなかった事を心底残念だと高尾は嘆く。

 

『もう一枚乗っていたら即死だった……ダメージチェック、1枚目ドロー、Vに+5000してワンドロー。2枚目、なし、です』

 

 以外とノって返した黒子に、高尾は少し残念そうに返した。

 

『ここで乗っちゃうかー。レックレスのブースト、ぐらっせでVにアタック。ぐらっせ効果、ソウル0なので+3000、合計18(イチハチ)な』

『それはプロミスでインターセプトです』

 

 既に5点でこれ以上ダメージを受けられない黒子は、盤面を削ってガードした。

 

『ルルのブースト、メテオでアタック。20(ニーゼロ)だぜ』

『ニケでガードですよ』

 

 黒子の画面にクリティカルトリガーの1万ガード札がアップで写されて、それから離れて行った。

 

『ちぇー……やっぱ手札厚いし無理だよなぁ。ターンエンドだぜ』

「今のトリガー乗らなかったらやっぱ厳しかった?」

 

 降旗から飛んで来た質問に少し面食らいながらも、黒子は少し考える。

 

『そうですね。乗ってなかったら多くてあと2枚は手札を使ったはずなので、厳しかったと言えば厳しかったと思います。てか降旗くん飲み込み早くないですか』

 

 今日の放課後初体験だったんじゃないんですかと言えば、降旗は画面の前で首を傾げた。

 

「今日初めてだったけど、そう?」

『そうですよ、これじゃ直ぐラインも覚えそうですね末恐ろしい』

『これは早く光樹にデッキを渡さないとだな』

『モチベ高めな内にファイトやろーぜ光ちゃん!』

 

 降旗には分からなかったけれど、それぞれがそれぞれにテンションが上がっているのだけは理解できた。

 

『あ、マイターン、スタンドアンドドロー。アマテラスの効果でソウルチャージしてトップチェック、下ですかね』

 

 盤面のレストしていたカードをスタンドしてからカードをドローして、アマテラスの効果を使った黒子は悩みもせずにデッキトップのカードをボトムへと送った。

 

『えくれあ効果、CB1で自身をソウルにインしてデッキトップ5枚確認……G3を1枚手札に加えます。危なかった、5枚目にアマテラスがいました』

 

 それから1枚ずつトップのカードをめくって行って、G3のカードがいた事に安堵し息を吐くのと同時に、高尾が突っ込む。

 

『え、シズク互換ってCB1ソウルに置いてデッキシャッフルって効果だろ?』

『それは高尾くんの運命力が足りてないんですよ。ドヤァ』

『だからドヤァやめwwwwww』

 

 イチイチ声に出してドヤッと言ってくる黒子に、笑う高尾に釣られて降旗も少し笑ってしまった。頭の中で何時もの無表情でドヤァと言ってる様はなかなかシュールだ。

 

『まあデッキシャッフルまで終わりです。うーん……黒猫コールで、ドローしますか? しなくてもいいですよ』

『あざーっす!』

 

 少し悩んでダークキャットをコールした黒子は、どうにも高尾にドローさせたくなかったようである。

 

『はぁ……こういう時のさめこはどうしてもう場にいるんですかね。ライブラたんをコールしてこのままバトルに行きますよ』

 

 溜め息が心からそう思っているのだと物語っていたが、それでもメイデンオブライブラをコールしてからアタックを宣言した。

 

『さめこのブーストでアマテでココにアタック。21000です』

『ここは完ガ切ってもいいかな。手札からメテオを捨てて、しょこらで完全ガードだぜ』

 

 4点目でVアタックを通す程手札がキツい訳でもない高尾は、トリガーを考慮して多めに手札を切るより2枚の手札で完全に防ぐ方を選んだようだった。

 

『ではトリガーチェックです。ファースト、なし。セカンド、こちらもなし……って完ガセットキマシタワー』

『俺がwwww今wwww切ったのとwwwww同じwwwww組みwwwww合わせwwww』

『和成、五月蝿い』

 

 イヤホン越しにヒィヒィ言って笑い転がる高尾に、少し嫌そうに赤司がそう言うと、笑い声が遠ざかった。どうやらマイクを遠ざけたらしいが、多分赤司が言いたいのはそういう事じゃないんだろうなと降旗は苦笑する。

 

『あー、高尾くんヘッドセットでしたっけ?聞こえてるんですかね』

『わりwwww聞こえてるぜー』

『ではジェミニのブースト、メテオでアタック。CB1で21000です』

 

 高尾に聞こえているのを確認して、黒子はアタックを再開する。

 

『ノーガードだろ。ダメージチェック、ゲットクリティカルトリガー。ココに+5000するぜ』

「なんで今の、カズくんは通したの?」

 

 殆ど考えずにノーガードを宣言した高尾に、降旗が赤司に尋ねた。その声に紛れてしまったが、小さく舌打が聞こえたような気がするがきっと気のせいだ。

 

『ここでトリガーが乗れば最後の攻撃のガード値が低くてすむのもあるし、和成は次で仕掛ける気なんだろう。光樹、テツヤの手札を覚えているかい?』

「えっと、完ガとメテオ?」

『その前にえくれあでアマテラスを手札に加えていた。これでテツヤの手札のうち完ガが1、G3が2。それからドライブでめくれたトリガーが少しと、あとめくれたけれど場に出ていないG2が1枚かな。約半分が分かっている状態だ。そしてテツヤはガードでG0をあまり切っていない事から、手札に0が多いと推察される。ここまでいいか?』

「う、うん」

 

 なんで覚えてるのそんな事、降旗はそう思ったが黒子も高尾も口を挟まないという事は予想やらから離れていないという事なのだろう。

 

『そうなるとオラクルには真太郎で弄られていたサイレントトムというカードがあってな。そのカードが攻撃する場合、攻撃された側はG0でガードする事ができないんだ』

「えっ、なにそれ強くない?」

『強い。だから和成がトムを握っているなら、仕掛けて勝てる確率が上がる。ここで切り返されても手札的に凌ぐ事もできるだろうし、何より今手札に加わった完ガをトムで切らせる事が出来るからな。その次を見越しても動いて差し障りない。因に5点目を受けたのは4点以上に回復されない為だろう。テツヤ、確かまだヒールが見えていないよな?』

 

 確認するように赤司に尋ねられて、黒子は通常の口調で答える。

 

『そうですね、まだ見えてません。高尾くん、考えてる事全部解説されましたがねえ今どんな気持ちですか』

『ねえ征ちゃん俺の手札見えてるのwwwwwwww』

 

 殆ど考えている事が筒抜け、というよりも自分もココを組んでいる赤司のパターンと似たりと言った感じだったのだろう。ねえどんな気持ちされた高尾が笑い出す。

 

『まあ、次のターンは手札を削ってやろうと言うのがメインだろうね』

「ヴァンガードってそこまで考えるゲームなんだね……」

 

 駆け出しの降旗は若干引いたように声を上げた。

 

『赤司くん降旗くん引かせないでください。で、続けてもいいですか、三和赤司くん』

『僕はいつから三和になったんだいテツヤ。光樹の櫂トシキじゃ無かったのか?』

 

 解説で中断していたファイトの再開を聞いた筈なのに、漁っての方に突っ込みを貰って、黒子はファイトを続ける事にした。

 

『解説役はどう見ても三和くんです。続けますね、猫のブースト、ライブラでグラッセにアタックします。16kですよ。ドローさせてくれてもいいのよ、チラッチラッ』

『引かせねえよ?! じんじゃーでガードだ』

 

 リアガードのぐらっせにアタックした黒子を、クリティカルトリガーで高尾はガードを宣言する。

 

『ですよねー。まあ手札ももげたので良しとしましょうか、エンドです』

 

 ちっとも残念でなさそうに黒子はエンドを宣言した。

 

『ライブラはアタックがヒット時にCB2でカードを1枚ドローするという効果だ。要するに、テツヤは張り替えるカードにガードを強いる事と自分にドローさせるかの二択を迫ったという事だな』

「あ、そっか。トム出すならインターセプトか張り替えるしかないのか」

 張り替えるカードにガードを強いるというのはなかなかに意地が悪い気がしたが、そういうのが戦略なのだろう。降旗が納得したところで、赤司の解説を待っていた高尾が自ターンを開始する。

 

『俺のターン、スタンドアンドドロー! ところでテッちゃん、手札何枚?』

『10枚ですね』

『多っ! やっぱ手札もぐとこからですよねー。花占いの女神サクヤにライドするぜ! ライド時の効果でリアのオラクルのカードを全て手札に戻す』

 

 場のレックレスエクスプレスを除いた全てのカードを手札に戻して、高尾は少し考えた。

 

『まあV裏みるくは安定でしょー。トムとジェミニコール、ここも安定。あとー、ここにはハイスピードブラッキーでしょー』

 

 完全に場を作り直した高尾に、気持ち減なりした声の黒子が口を開く。

 

『トムは予想してましたけど、ブラッキーいたんですか。やだー。ダメージに流れてたからもういないかと思ってました』

『まだ居たぜー? でもこのライン強いだろ?』

『ええまあうざいですよね、メガネですし』

 

 割とどうでもいいと言うような言い方で流そうとする黒子に、やっぱり引っ掛かって行くのが高尾だった。

 

『だから真ちゃんディスんなって!』

『ディスってませんよ。愛です愛』

 

 赤司が口を挟まないのだから、その通りなのだろうと降旗だけでなく高尾も思ったのか、それ以上高尾は突っ込む事無く先を進める。

 

『はいはい、じゃあアタック行くぜ? みるくのブースト、サクヤでアマテにアタック。24(ニーヨン)だ』

『……完ガですね。アマテラスを捨てて、しょこらでガードします』

 

 少し手札と相談していた黒子は、結局ここで完ガを切る事に決めたようだ。

 

『ここで完ガはおいしい。ドライブチェック、1枚目なし。2枚目ドロー! +5000はトムにだ』

『ここでトリガー乗ってきますか』

 

 あまり抑揚のない声だったが、苦々しく思っているのは確実だろう。

 

『レックレスのブースト、ブラッキーでアマテにアタック。ブラッキーはソウルブラスト1で+5000して21(ニーイチ)だぜ』

『ニケとライブラでインターセプトします』

 

 手札を悩みながら、黒子がガードを宣言する。

 

『ブラッキーはクローズステップにデッキに戻る、と』

 

 アタックを終えたブラッキーをデッキに戻してシャッフルし、定位置に置いてから高尾はアタックを続ける。

 

『ジェミニのブースト、トムでアマテにアタック。トリガーが乗ってるからパワーは21(ニーイチ)だぜ』

『15(イチゴー)要求三連キツいです。完ガします』

 

 言いながら黒子は2枚目のしょこらを切った。手札からはメテオが捨てられた。

 

『2枚握ってたのか。それは仕方ないよな、ターンエンドだぜ』

 

 それでも手札を半分削ったのだから、上々だろう。そう思って高尾はターンを終了する。

 

『ではマイターン、スタンドアンドドロー。アマテラスの効果……なんでアマテラスはトリガー吸うの大好きなんですかね』

 

 ソウルへと消えて行った二枚目のクリティカルトリガーに、黒子が思わず嘆けば、

 

『通常運転だろwwwww』

『トリガー枚数保存の法則だ』

 

高尾は笑い、何処となく遠い目をしていそうな赤司がよく分からない事を呟いた。

 

『チェック、ステイです。リアにプロミスドーターをコールして、アタック入ります』

 

 トップをめくって、迷い無くトップに戻した黒子に高尾はトリガーである事を確信する。

 

『さめこのブースト、アマテでアタック。21kです』

『あー……見える範囲のトリガー教えてくんない?』

『分かりました、ちょっと待ってくださいね』

 

 高尾からの要望に答えて、黒子はドロップゾーン、ダメージ、ソウルのトリガー枚数を数え始めた。

 

『ドロップに3枚、ソウルに2枚、ダメージに2枚、ですね』

『あー……なら完ガ切るわ』

 

 以外と見えていなかったトリガーに、高尾は大人しく手札を2枚切る事を選択した。

 

『ではトリガーチェック。ファースト、クリティカルトリガー、プロミスに全て乗せます。セカンド、なしです』

『上に置いてたもんなー……』

 

 全てをプロミスに乗せて、黒子は宣言する。

 

『では、猫のブースト、プロミスでトムにアタックします。プロミスの効果で手札からメテオを捨てて+5000、さらにトリガーも合わせて26kです』

『ここでトム狙いかよ! つーことは守るしかないだろっ! ルルとサイキックバードでガードだ!』

 

 クリティカルを無視してトムを潰しにかかって来た黒子に、高尾も全力でトムを守りにかかる。

 

『ジェミニのブースト、メテオでトムにアタックします』

『うおお、みるくとドローとぐらっせでガードする……!』

『守り切られましたか……しかし手札はボロボロ、次を凌いだら僕の勝ちだ……! エンドです』

『守り切らせねーよ? 俺のターン、スタンドアンドドロー!』

 

 執拗な黒子のトム狙いを、高尾はギリギリどうにか防ぎ切った。

 

「ねえセーくん、なんでカズくんはトム守ったの?」

『ああ。まあ黒子はトムがいない方が守りやすい手札と言う事なんだろうな』

「0をガードに使えないんだっけ?」

『そう。Vに攻撃したところで相手も5点、防がれるのを分かっているならば防がれない可能性のあるトムを潰しに行きたかった、そう言う事だろう。実際トムをスルーしていたら和成は最低あと3枚は手札が残っていた筈だ』

 

 赤司の冷静な分析に、納得しつつも降旗は別の選択を問うてみた。

 

「セーくんならこういう時どうする? 守る?」

『僕だったら……か。僕なら、そうだな……守らない、と思う。ああ、別に和成が間違っているとかいうつもりは無いから勘違いしないで欲しい。僕は基本的にリアは守らないからね。あまり積極的にリアを殴りにも行かないから、この辺はもうプレイングの好みじゃないか?』

「そうなの?」

 

 プレイングの好みという結論に、降旗は今ファイト中の二人にも振って見た。

 

『そうですね。僕は積極的にリア叩きしたりしますけど、基本的にリアは守らないかもです』

『俺はまちまちかなー。今のはテッちゃんがトム残されたら嫌そうな場面だったから守ったけど、あんまり積極的には守らないかも』

 

 遊んでいればその辺は分かると思いますと言われて、そんなものかとも思う。

 

『んじゃ、俺はココに再ライドする。効果でCB2で2ドロー。更にブラッキーをコール』

 

 ココの能力を使って引いたカードの中にあったのか、はたまた手札に握っていたのか。再び現れたハイスピードブラッキーに嫌そうに黒子が声を漏らす。

 

『また引いたんですか。積み込みよくないです』

『積み込んでねえよ?!』

 

 思わず反射で突っ込んだ高尾だったが、ごほんと一つ喉をならしてから改めてバトルを宣言した。

 

『レックレスのブースト、ブラッキーでアマテにアタックだ。ソウル抜いて21(ニーイチ)だぜ』

『サイキックバードとドリームイーターでガードします』

 

 黒子は迷わずにG0を合わせて切って来た。ソウルブラストしたブラッキーはデッキに戻って行き、デッキをシャッフルし終えた高尾が改めて宣言する。

 

『みるくのブースト、ココでアマテにアタックする。19(イチキュー)しか無いけどな!』

『ニケとロゼンジでガードします』

 

 高尾のVアタックを黒子が2万でガードした。

 

「これだと完全ガードだよね?」

『そうなる。だが後のトムを考えると妥当だろう』

 

 本来なら1万5千で防いでおきたい所なのだが、5000札は後のトムのアタックに備えて残しておきたいという事だろう。

 

『んじゃ、ドライブチェックー。一枚目、なし。二枚目、ドロー! 1ドローして+5000はトムにだ!』

 

 ドキドキしながらめくれるカードを見守れば、女神は高尾に輝いたらしい。

 

『うわあここでトリガー乗せてくるとか高尾くんまじHSK』

『意味分かんないからね? ジェミニブーストのトムでアマテにアタック! ここも21だぜ!』

 

 そう言いつつも神がかったトリガーにテンションはうなぎ上りらしく、先ほどよりテンション高めにアタックを宣言する。

 

『大人しくノーガードです。ダメージチェック、……ヒールトリガーキター(゚∀゚)ー!』

 

 6点ヒールに黒子のテンションが聞いていて分かる程に振り切れた。

 

『なん……だと……』

 

 勝ち確していた高尾のテンションも振り切れた。

 

『運は僕を見放してはいなかったのだ! 1点回復して、高尾くんエンドですか?』

『うわー、まじかよ。エンドするしかねえわ……』

 

 ほくほくしている黒子とは反対にコレどうするんだと言わんばかりの声音で高尾がエンドする。

 

『和成、3点ダブクリと6点ヒールは事故だ』

『いや、まあそうなんだけど。これは結構ショックだわー……いやコレが楽しくてヴァンガやってるんだけどさ』

 

 初心者でも玄人に勝てるカードゲーム、それがヴァンガードなので仕方ない。

 

『ではマイターン、スタンドアンドドロー! ファイナルターンできなければ僕が死ぬ!』

『んな大袈裟なwwwww』

 

 何時もより強い口調で言い切った黒子に高尾が笑うが、さっきの手札の放出っぷりを見るに確かにターンを譲ったら守りきれないだろう。

 

『アマテラスの効果でソウルチャージ、チェック。下です。ではアタックに入ります』

 

 迷う事無くボトムへと送り、黒子はバトルフェイズを宣言する。

 

『ジェミニのブースト、メテオでココにアタック。CB1で21kです』

『ヒールにかけるしかねえだろ……ノーガードだ。ダメージチェック……うっそ、ヒールトリガーまじで来た!!』

『はぁ?!』

 

 潔くノーガード宣言した高尾がめくったカードはロゼンジメイガスだった。高尾の叫ぶ声に負けず劣らずな声で黒子も叫んだ。

 

「すごいね……」

『何このヒール合戦。二人とも積み込みダメ絶対』

 

 意味が分からないと言わんばかりに赤司が突っ込むが、二人同時に『積み込んでない(です)』と返して来た。

 

『+5000はココに、ダメージは未だ5点!』

『ええい、僕のバトルフェイズはまだ終了していないです。さめこブーストアマテラスでココにアタックします!』

 

 命を繋いだとテンションを上げる高尾に、黒子はアタックの続きを告げる。

 

『サイキックバードとトムをインターセプトするぜ!』

『トリガーチェック、ファーストなし、セカンド……ヒール、だと……。1点回復してプロミスに+5000です』

『何ですと……え、なにこのヒール祭り……』

『だから積み込みはいけないと言っている』

 

 ヒール祭り状態に戸惑っているのはやっている当人たちで、積み込みはいけないと言い続けている赤司の声は笑っていた。

 

『びっくりですね。黒猫ブーストのプロミスでココにアタックします。更に手札を捨てるので26kです』

『手札からサイキックバードとトムでガードする!』

 

 要求値を上げるべく手札を捨てるが、高尾もここでやられるは訳にはいかないとばかりに手札をほぼ使い切って守りきる。

 

『ぐっ……凌ぎきられましたか……ターンエンドです』

『やっべ、うわー……どうすんだこれ。俺のターン、スタンドアンドドロー! やるしかねえじゃん。レックレスとメテオをコール、アタックに入るぜ』

 

 1点余裕があるとはいえ、終盤で手札に余裕がない黒子もきついが攻める高尾もかなりきつい。この状態で守る気などなく、攻めきれなければ負けだ。そうして、高尾は手札を全て使い切って場を整えた。

 

『ガン攻めじゃないですかやだー』

『みるくブーストのココでアマテにアタック!19(イチキュー)だぜ』

『ロゼンジとプロミスのインターセプトでガードです』

 

 黒子の手札は残り4枚、そのうちの1枚をここで削る。

 

『2乗りで通る、と……ドライブチェック。1枚目、ドローか……取りあえずドローして……。うん、レックレスに+5000する。2枚目、ヒールトリガー! 乗せときゃよかった……! メテオに+5000だ』

 

 高尾が頭を抱えている姿が目に浮かぶようだ。

 

『この終盤に4:4になるとか意味が分かりませんね。しかしこれで高尾くんの手札は最高25000ですか』

 

 溜め息と共に吐き出された言葉に全てが籠もっているようだ。

 

「えっと、こういうのは珍しいの?」

『普通ないな。というか二人ともちゃんとカットしてるのか疑うレベルだぞ』

 

 アニメレベルの盛り上がり方をしていると評する赤司に当事者二人も同意する。

 

『本当にな……どこのアニメだよこれ……ジェミニのブースト、レックレスでアマテにアタックだ。パワーは20000』

『受けるならここでしょう、ノーガードです。トリガー来い……! ダメージチェック……ヒール、だと……?!』

『えー……』

『和成がヒールしてたから回復するな。テツヤ、おまえ最初七切りしたか?』

 

 やってる本人たちも言葉を失ったこの状態で、赤司が冷静に突っ込んだ。

 

『しました。というかその後もえくれあでシャッフルしてますし。取りあえずアマテラスに+5000して一点回復しますね』

『ダメージ差が縮まらないんだけどどういうことなの……』

 

 攻撃している筈なのにダメージは4対4のままなのだ。

 

『レックレスのブースト、メテオでアマテにアタックする。トリガーとCB1で25(ニーゴー)だ』

『これガードしなくてもいいんじゃないでしょうか……ノーガードで。ダメージチェック、トリガーなしです』

 

 一瞬ここでガードするべきか悩んだものの、このターン最後の攻撃であるという事もあって結局ノーガードを選んだ。

 

『リア潰しておくべきだったのか……? ターンエンドだ』

『ではマイターン、スタンドアンドドロー。……さて、アマテラスの効果前に、トリガー枚数確認行ってみまみしょうかね』

 

 自分の場をスタンドさせてから、黒子は徐に公開情報のドロップ、ダメージ、ソウルのトリガー枚数を数え始めた。

 

『デッキにトリガー1枚しか入ってないじゃないですかやだー。アマテラスの効果、ソウルチャージしてトップチェック。ステイで』

 

 数え終わった黒子は、トップを見てそのまま置くことを宣言した。

 

『メテオをコールして、アタック入りたいです』

 

 さっきのターンにインターセプトして開いた場にメテオブレイクウィザードをコールし、そのままバトルへと突入する。

 

『さめこブーストのアマテラスでココにアタックします。21000です』

『テッちゃん、出てるトリガー枚数詳しく!』

『おkです、少々お待ち下さいね』

 

 堂々とあと1枚宣言をしていた黒子に、高尾が尋ねて再び公開情報のチェックが始まる。

 

「そういうの聞いてもいいの?」

『公開情報だからね。デッキの中や相手の手札を見るのはアウトだが、使用済みのカードは相手の許可を得れば見ることは可能だ』

 

 赤司の補足に降旗はなる程と思う。見て何の得があるのかはイマイチ分からないが、そういうものなのだろう。

 

『ドロー5、ヒール4、☆6ですね』

『スタンドなしの☆7かドロー6のどっちかか…デッキ枚数は?』

『いちにーさんしー……10枚ですね』

 

 黒子の答えに高尾が唸る。

 

『カズくんはなんであんなに細かく聞くの? 分かるもんなの?』

 

 降旗がこっそり(と言っても筒抜けな訳だが)尋ねると、赤司は勿論と断言する。

 

『トリガーの枚数は16枚と決まっているからデッキの枚数と出ているトリガーの枚数で次のトリガーの確率が予想できる。更にはトリガーの配分もパターンがあるからな。そこから何が残っているのかを予想して受けるかガードするかを考えられるだろう?』

『言われると確かに……』

 

 理詰めの説明に降旗は納得するしかない。

 

『ノーガードでいく!』

 

 そんな中、高尾も覚悟を決めたのだった。

 

『では、トリガーチェック行きます。ファースト、ゲットクリティカルトリガー。セカンド、なしです』

『まじで?! 完ガとかじゃねえの?! ここで最後のトリガーなの!?』

『運命の女神は僕に微笑んでますかね。さあ、ダメージチェックをどうぞ。2点ですよ』

 

 画面には見えないが、きっと黒子はドヤ顔をしているだろう。思わず叫んだ高尾はきっと、悪くない。

 

『ヒールに賭けるしかねえ……ダメージチェック、1点目クリティカルトリガー、+5000はココに。2点目……! ですよねー』

 

 捲れたカードはスカーレットウィッチココで、そう何度も6点目ヒールなんてしないよなー。高尾は溜め息を吐きながらそうぼやいた。

 

『しかし燃える展開だったじゃないか。和成、6点ヒールは事故だから仕方ない』

『でも高尾くん、あそこでトリガー乗らないとどの道防ぎ切れませんでしたよね?』

 

 赤司に労われつつ、黒子に問われて高尾はそれを肯定する。

 

『2万しか手札なかったからな。V通すしか無かったんだわ』

『まあ、運も絡んでくるゲームですし、仕方ないね!』

 

 そう言って黒子は高尾の健闘を称えたのだった。

 

 

『で、使ってるとこみてどーだったよ光ちゃん』

『ココとアマテ、どっちも赤司くんにおねだりすれはきっと送ってくれますよ』

 

 熱い展開にすっかり忘れていたが、そう言えばそれが目的だったと降旗は思い出す。

 

「混ぜられないんだよね?」

『まあやってやれなくはないが、事故率は上がるだろうね』

 

 ミサキさんも混ぜていたし、と赤司が言う。

 

「ミサキさん?」

『アニメのヒロ……イン? でいいんだよな?』

『ヒロインはアイチくんですよね?』

『まあヒロインだ』

 

 言いたい放題の高尾と黒子に、何故か赤司がまとめ役になっている。

 

「見てて面白そうだなって思ったのはアマテラスかなあ」

『だそうですよ赤司くん。おっと、手元に特価で投げ売りされてて思わず回収してしまったアマテラスがー』

『テッちゃん説明乙。よかったじゃん光ちゃん、テッちゃんがアマテ奢ってくれるってよ』

『マジバのバニラシェイク一本で手を打ちましょう』

 

 多分最初からアマテラスを組むと言ったら投げるつもりだったのだろう。やっぱり何時もの棒読みで、黒子が降旗に言う。

 

『明日黒子にアマテラスとしょこらを送るから、テツヤと一緒にデッキを組んでみたらどうだ?』

 

 レアで足りないのがあれば一緒に送ると赤司は黒子と話を進める。

 

『そうですね、もかとさめことここあが余っていたらお願いします』

『デッキ組むとき俺も行っていい? しょこらも渡したいし』

 

 もうすっかり来る気でいる高尾が口を挟めば、赤司が拗ねたように声を上げる。

 

『どうせ僕だけ県外だ』

『京都に進学したのは赤司くんなので諦めてください。まあラインで実況しますので』

 

 何も言っていないけれど、集まるのは確定のようだ。

 

『えっと、お手柔らかにお願いします』

 

 降旗光樹は色々と諦めた。けれど、悪い気はしない。寧ろ楽しくなってきて、きっと早くても明後日あたりにマジバで屯すであろう事に、思わず笑みを零すのだった。

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