人間兵器の逆襲   作:ごっほん

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ヴィンスモーク家脱出

 ある日目覚めると、自分は赤ちゃんになっていた。母親はそれなりに美人。というかマンガみたいな顔とスタイルでびびった。父親もマンガみたいなマッチョ。顔は現実にもいそうだけど、やはり漫画みたいなヤクザ顔。2人とも泣いて喜びながら物騒なことを口にする。

 

「なんたる幸福! これも全て王のおかげだ! お前は王のために死ぬのだぞ!」

「ヴィンスモーク家万歳! この命は王のために!」

 

 2人とも喋り方とか表情とかが宗教に狂った人みたいだった。

 王がこの2人を洗脳したのだろうか。俺も気をつけないとな。

 

 両親はとても教育熱心だった。言葉を全力で覚えさせ、運動を全力でさせる。例えば海で浮かぶ訓練があるのだが、単純に浮かべるようになると、溺れるギリギリの重りを付けてから落とされる。それにも慣れるとさらなる重りが加えられる。

 

 並みの赤子だったら死んでいたと思う。実際周りの赤子の半分くらいは死んだ。が、俺は生き抜いた。しかも同年代では断トツ一番の成績で。俺には知恵があり、効率のいい動きを見極めることができるし、効率のいい努力もできるのだから、当然の結果だ。両親や他の狂信者が俺をもてはやしたが、別にうれしくはない。他の赤子は死んでいるわけだしな。喜んではいけないと思う。まあかわいいメイドに褒められたら顔が緩んでしまうのは仕方のないこと。

 

 1年ほどすると、学校のような授業も始まった。ここでも俺は断トツトップの成績を叩き出した。

 あまりに優秀だということで、王に面会する機会を得た。ものすっごくデカいおっさんだった。身長4mくらいありそう。憎い相手だが、宗教団体トップ相手に下手なことは言えないので、ひたすら媚びへつらった。

 王は俺の世間話に興味を示さなかったが、俺の運動能力と学習能力の話は喜んで聞いた。

 

「なぜこいつだけこれほど優秀なのだ?」

「分かりません。両親とも我が国の優秀な兵士とは言え、我が国の中ではそれほどでもありません。偶然鬼才が生まれた可能性が高いです」

「そうか。しかし男と女の組み合わせ次第では凡才から天才が生まれる可能性も捨てきれん。こいつの両親に毎年子どもを生ませろ。遺伝子の選別を行う」

 

 王は俺の目の前で遺伝子の話をしていた。強力な両親を交配させることで強く従順な遺伝子を生み出し、且つその遺伝子を量産することが目的らしい。

 量産方法はまだ確立していないが、受精卵に手を加えると言っている。クローンのことだろう。クローンは寿命が縮んだりガン細胞になったり不幸話がつき物だからやめてほしい。まあ、今は何も言うつもりはないが。

 

 それから5年が経った。

 周りの子どもにも知恵がつき始め、効率のいいトレーニングを始めたので、俺と同じような成長速度となった。加えて、いくらかの子どもは俺より体格がよかった。俺と周りの運動能力の差が徐々に縮まり始めていた。勉強の方は断トツトップだが、これも大人になる頃には今より差が縮まっているだろう。

 ある日、俺に家庭教師がついた。

 

「君は戦闘よりも勉強の才能に優れているようだ。これからは勉強中心の生活となる。ヴィンスモーク家を支える大参謀となることを期待する」

 

 その日から本当に勉強中心の生活になった。

 いきなり高校レベルの数学。俺はそれを簡単にこなすので、次の日からは大学レベルの数学や科学を学ぶことになった。

 大学レベルはそれなりに難しかったが、1年ほどでだいたい覚えた。翌日からは研究の手伝いをするようになった。

 

 研究は多岐にわたる。爆発物の研究、流体の研究、受精卵の研究、電気の研究、悪魔の実の研究、覇気の研究。

 共通するのは全て兵器への転用を考えているということ。あと、悪魔の実という言葉が出たことで、この世界がワンピースの世界であることにようやく気がついた。と言っても、7年に及ぶ洗脳生活でワンピースに関する記憶はかなり薄れてしまった。主人公の名前や敵の顔は思い出せるが細かい地名などは思い出せない。

 

 俺は悪魔の実の研究を希望した。やはりどうせならファンタジーの研究がしたい。覇気の研究もファンタジーではあるが、あっちは応用性がなさそう。それに、かなり強力な悪魔の実を手に入れることができれば、すぐにでもこのクソッたれな国からおさらばできる。鳥とか氷とかそういうのが欲しいね。

 

 悪魔の実の研究。最終目標は、望んだ能力の実を量産すること。

 ベガパンクがゾオン系の実の量産に成功しているので、こっちはパラミシアかロギアを作りたいという。特に最強のロギアが欲しいところ。

 俺はとりあえず悪魔の実の因子を見つけるところから始めた。高値の光学顕微鏡を譲ってもらい、悪魔の実の細胞を調べていく。

 奇怪な文様がついている割に、ふつうのリンゴと同じ細胞だった。おかしい。こんなことは許されない。

 

 まあ、光学顕微鏡の倍率では遺伝子とかそういうのは見えないからな。もっと小さな世界で変化しているのだろう。DNA、ミトコンドリアDNA、RNAとかそういうやつが。もっと小さな原子、さらに小さな電子、さらに小さなクォーク、もっと小さなニュートリノが変化している可能性も無きにしはあらず。

 もしかすると、本当に謎の悪魔の力で能力が存在するだけであって、物理的には何の違いもない可能性もある。

 

 俺は悪魔の実の研究チームに入り、3年間研究を続けた。

 その間にヴィンスモーク家に4つ子が生まれた。名前は長男からイチジ、ニジ、サンジ、ヨンジ。全員ぐるまゆ。まさかサンジの国だったとは。サンジが王子だったとは。どうしてコックになったのだろうか。

 研究の方では、クローン技術が完成し、クローン兵の量産が始まった。このクローンをうちも使わせてもらい、悪魔の実のクローンの生産に挑戦した。

 悪魔の実のクローンは作れた。文様もそのままである。しかし、クローンの実を食べても、元の実を食べても、残った方の悪魔の力が消え失せた。これでは意味がない。

 

 俺達は被験者がクローンと元の悪魔の実を完全に同時に食べれば能力が2分されるのではないかと考えた。とは言え、完全同時というのは難しいものだ。厳密には不可能だとも言える。しかし、時間の精度をあげることはできる。俺達は見聞色の覇気が使える双子の兵士を用意し、完全に同時に食べる練習をやらせた。そして、一見差がないと思ったところで、実験再開。

 計3回挑戦した。しかし、それでも能力は一方の兵士にしか発現しなかった。いくら歩調を合わせたところで、ナノ秒程度の誤差は出ているだろう。完全に同時というのは厳しい。

 王は「悪魔の実はタダではないのだぞ! 結果を出せ!」と怒った。

 諦めたい。逃げたい。そう思った。しかし俺は相対性理論を思い出した。

 

 物体と物体に相対的な速度の差がある時、両者の間の時間が歪む。

 

 この時空の歪みを利用すれば、ナノ秒程度の誤差を無くすことができる。より厳密に言えば、両者の時間軸にとって自分が先に悪魔の実を食べた、という状況を作ることができる。

 

「何を言っているのか分からんな」

 

 しかし、俺は相対性理論を研究チームに説明することができなかった。実際俺の頭では相対性理論を証明することができない。光速不変の実験もできない。

 俺の案は却下となった。

 

 研究は完全に行き詰った。業を煮やした王は研究費の大幅削減と編成変更を迫った。

 

「研究費は10分の1に削る。研究員は3人に減らす。残りは海軍や四皇の科学班に潜入し、ベガパンクの悪魔の実の研究内容を手に入れよ」

 

 若く戦闘能力の高い俺は、問答無用で潜入班に入れられてしまった。しかしこれはむしろ喜ぶべきだ。

 俺はヴィンスモークに忠誠など誓っていないから、危険な潜入などせず、自由に海を渡ればいい。

 

 潜入組は大きく海賊潜入と海軍潜入に別けられた。俺は年齢から海軍に入れないので海賊組だ。

 危険だからやりたくないが、まあ辞めたい時に辞めればいいだろう。俺は海賊潜入を了承した。

 

 出航の前日、俺はクローン研究チームの元へ向かった。適当に挨拶した後、目的がバレぬよう笑顔でさらっと話しかける。

 

「最近入った女剣士のクローンあったでしょ。あれくれないかなあ。やっぱり潜入するにしても女がいるといないとでは相手の警戒感が全く違うと思うんだよね」

 

 本当の目的は、女剣士のクローンがとてもかわいらしかったので、メイドや妾に欲しかっただけだ。

 

「ポットに入ってるのはダメだ。あれはもう国王様の所有物だからな。失敗作だったら問題ないはずだ」

「生きてるの?」

「ああ。失敗作だとしても、なぜ失敗したか研究しておくべきだからな。とは言え、失敗の原因もだいたい分かったから、もう用済みだ」

「じゃあもらっていいの?」

「ああいいぞ」

 

 俺は失敗作が集まる場所へ案内された。地下牢のような広い倉庫に、クローンの種類毎に集められていた。

 

「こいつらが女剣士さ。というよりワノ国の侍の娘だがな」

 

 ほう、ワノ国。なんか海軍のメガネ娘みたいな雰囲気だな。お淑やかで従順そうだ。何よりかわいらしい。

 

「全員もらおう」

「腕がないやつもいるぞ? あいつなんて既に死にかけだ」

「その方が相手が警戒しないんじゃないか?」

「ああ、なるほど」

「別の娘も全員もらっておきたいが」

 

 俺は他の娘も見て行った。失敗作にも程度があり、重度の知的障害、軽度の知的障害、奇形、腕がなかったり指が多かったり、成長が遅かったり、単に反抗的なだけだったり、いろいろいた。年齢は皆3歳から0歳のはずだが、7歳くらいに見える子もいる。生命の冒涜だね。

 

 中でもお気に入りのクローンが、アマゾンリリー戦士クローンだ。5人いるのだが、全員すばらしい美少女で元気だ。単に反抗的だから失敗作と烙印を押されたようで、健康に問題はない。

 

「こいつらはアマゾンリリー戦士のクローンだ。アマゾンリリーの女は全員が優秀な兵士なのだが、我が強くてな。中でもこいつ、ボア・ブロッサムのクローンは強く、我がままだった。王を尊敬しようとしないのだ」

「まあ、なんとか言い聞かせてみるさ」

「天才と呼ばれた男の腕に期待しよう」

 

 全体的に、美少女と不細工は半々くらいだった。不細工はいらないのでもらわなかった。重度の知的障碍者も育てるのが難しいのでもらわなかった。この後殺処分されてしまうのだろう。ああ無情。

 こうして俺はクローン兵の失敗作を手に入れた。

 

「ほら、出ろ。次の主人は俺だ」

「チッ」

「戦士は簡単に主人を変えたりしない」

 

 軽く話しかけたが、不満そうだ。

 

「俺に従うのが王のためになる」

「王などどうでもいい」

「あいつは悪魔だ」

 

 確かに、他の娘とは反応が違うな。全く洗脳されていない。忌々しそうに俺と研究員を睨むばかりだ。

 

「すまないな」

 

 クローン担当の研究員は申し訳なさそうにため息をついた。

 こういう相手には、下手に出た方がいいのか?

 

「では、言葉を変えよう。ここから出たいなら俺についてこい。自分のために何をすべきか考えろ」

「何?」

 

 娘達は驚いたようだった。周りに視線を巡らし、ひそひそと話し合う。

 しばらくして、キリと真剣な顔つきになって俺を見る。

 

「本当に出られるのだろうな。もしウソなら……」

「ウソではないさ。ウソなら殺してくれても構わない」

「チッ」

 

 娘達は舌打ちしたが、程なく立ち上がった。

 俺は彼女達に背を向け、階段の方へ歩いてみる。娘達は後ろからついてきた。覚悟は決まったようだな。

 

 

 そんなこんなで、憎きヴィンスモーク家のジェルマ66から出航する。

 小船を漕いで進み、2時間ほどで近くの島へ到着する。

 

 ここで海軍チームと別れる。

 海賊チームはそれなりに強い海賊が現れるまで待機する。自分で海賊団を作れば目立つので、他人の海賊団に入り、あくまでモブに徹して行動し、それとなく船長を誘導し、四皇の傘下に入るという狙いなのだ。

 もちろん俺はそこまで頑張らない。隙を見つけて逃げる。娘達を率いて。

 

 

 時は流れる。有望な海賊を見つけるたび、海賊チームのメンバーが潜入していった。一気に全員が同じ船に潜入することはない。モブに徹すると言っても、雰囲気の似ているモブが集まると怪しまれるからだ。

 

 そうして7年が経った。

 俺は何かと理由をつけて島に残り続け、ようやく、クローン娘を除く海賊潜入チームの最後の一人を見送ることに成功した。クローン娘は病気で3人死に、2人海賊チームに取られたが、13人は残った。今後、義妹13人を養う健気な義兄という設定で生活する。さすがに13人もは養えないから彼女達にも働いてもらうが。

 朝は妹の声で起き、日中は畑仕事や出稼ぎ。昼食は妹が作った弁当。夜には妹と共に戦闘訓練をし、終わると一緒にお風呂に入る。おっぱいを洗ったりする。

 

 俺は勝ったのだ。人生に勝ったのだ。

 

 このまま娘達とゆるーく過ごすのもありだろう。彼女達は俺を信頼しており命令すればたいてい従う。

 しかし、今までの教育はほぼヴィンスモーク式で行っていた。先日まで他の研究員がいたので、ヴィンスモークに反する行動は取れなかった。これから娘達の洗脳を解いていかなければならない。ジェルマの正義を信じきっているので大変だ。

 

 俺は歴史書を買って娘達に読ませることにした。

 何故民衆は王に従うのか。王の義務は何か。何故海賊は生まれるのか。権力者の腐敗は何故起こるのか。王に従うのが本当に国のためになるのか。

 などなどを説明した。権力者の失敗の歴史を見せて、ヴィンスモーク家に対する不信感を煽りたかった。

 ワノ国の娘クローンは真面目でお淑やかなので、すぐに俺の意図に気付き、ヴィンスモーク家に疑いを持った。他の女の子はまだまだヴィンスモークを信じきっている。アマゾンリリー戦士クローンはまた別の反応だ。

 

「結局、弱いから悪なのだ。勝ったものが正義を語る資格を持つ。ならば我々は、最も強い戦士になるべきだ。それが最も美しいことでもある」

「強さこそ美しさだ。我々は美しく生きるために強くなるのだ」

 

 と、こんな感じだ。ヴィンスモークの教育として強さの重要性を教えていたが、俺以外は「王族の役に立つために強さが必要」と説明していた。しかしそれではアマゾンリリークローンは聞く耳を持たなかった。俺は「強さは美しさだ」とか適当なことを言った。それに納得したようで、以後真面目に訓練するようになった。が、我がまま度は増した気もする。

 

 そんなある日、港で積荷のバイトをしていると、娘達が言い争っているのが聞こえた。

 

「だからあいつは将来絶対強くなるって!」

「バカか! あんな情けない男の下につくなど!」

「あんた任務の意味分かってないでしょ! 情けないとかそういうのは関係ないの!」

「愚かものがあ! 美しくない生き方に意味などない!」

 

 どうやら洗脳された娘達が有望そうな海賊を見つけたらしい。

 対して、アマゾンリリークローンの娘達は気に食わないようで、怒っている。

 このままでは戦闘になってしまいそうだ。

 

 俺は積荷を中断し、全力で娘達へ駆ける。

 

「おい、こんなところで戦うな」

「お前か」

「チッ」

「兄貴! なんとか言ってくださいよ!」

「むしろこんなやつら放っておきましょうよ! 明らかに任務の邪魔です!」

 

 アマゾンリリークローンは不満げで、他のクローンは期待するように俺を見る。

 

「誰かを放っておくことはない。俺達はチームで動く」

「兄貴! どうして!」

「任務よりも、仲間が大切だと言うこと」

「仲間!? でも私達は道具! 国王様のためにだけに生きて死ねばいい!」

 

 おい! あんまりデカい声出すな! 周りの人間が引いてるだろうが!

 

「俺達はな、人間なんだ。心があるんだ。道具になり切ることはできないし、なる必要もない」

「なっ、兄貴!」

「ばっかじゃねえの!」

 

 洗脳された娘達は叫び、不満げに去って行く。

 うーむ、このまま放っておくのはまずいかもなあ。

 

「仲間か……」

「今のお前はなかなか美しかった。見直したぞ。ゴミから虫に格上げしてやってもいい」

 

 アマゾンリリークローンの評価は上がったようだ。よかった。

 

 俺は洗脳されたクローン達の後をつけていった。

 俺のさらに後ろからアマゾンリリークローン達もついてきていた。

 

 洗脳されたクローン達は港の離れへ移動する。そこに海賊船が止めてあった。

 娘達はもみてをし、船番の男に話しかける。

 

「かっこいい! 筋肉すごーい! 私達、強い男が好きなんです!」

「海賊船に乗せてください!」

 

 俺に黙って船に乗り込む気か。あいつらめ。

 

「そりゃあうれしいが、お前達みたいなガキじゃあなあ」

「うちの船長も10代だが、お前達はちょっと若過ぎるなあ」

「私達、雑用でもなんでもします!」

「こう見えて鍛えてるんですよ!」

「鍛えてるっつってもなあ」

「とりあえず船長に会わせてみるか」

 

 娘達は船番に連れられて中に入って行く。

 娘を盗られた気分だ。イライラする。

 

 しばらくすると、海賊の船長らしき男が大勢の部下を連れて帰ってきた。全員若くて背が高い。かわいらしい不良娘もけっこういる。

 

「あんな情けない男に盗られるとは……」

 

 自分の娘を盗られるのも腹立つが、若く美しい娘を大勢連れているのも腹立たしい。

 船長らしき男は「テストしてやる」と言って娘達とニット帽をかぶった男を戦わせた。結果、娘達の圧勝。男は「女相手に本気は出せねえよ」と言い訳をしていたが、力の差は歴然。船長らしき男は満足げに「合格だ」と言った。

 

「ありがとうございます! 兄貴!」

「船長と呼べ」

「はい船長!」

 

 チッ、イライラする。潰してやりたい。

 

 船長の手が娘に伸びる。にこにこと笑う娘。

 もう我慢できない。俺は走り出す。目標は金髪の船長。

 

「ん? ぶへえっ!?」

 

 いきなり顔をぶん殴った。すまんな。

 金髪はひしゃげた顔でぶっ飛んで行く。森に突っ込み、木に叩きつけられる。

 

「ベラミー!」

「てめえ! やりやがったな!」

「何もんだ!」

 

 ベラミー? 何か頭をかすめる名前だ。まあ今はどうでもいい。

 クローン娘達を一瞥する。

 

「あ、兄貴……」

「なんで……?」

 

 その間にも、ベラミーの仲間達が俺に襲い掛かる。まずはナイフ使いの男。避けるのも面倒だから、覇気を纏った拳でナイフを破壊しつつ男をぶん殴る。次にニット帽の男。ボクシングスタイルで殴ってきたので、クロスカウンターをお見舞いする。

 

「チッ、この野朗!」

「海賊を舐めるな!」

 

 接近戦は分が悪いと悟ったのか、他の男は距離をとって銃を取り出した。女達もだ。

 そして俺を銃撃する。

 

 俺は全身に武装色の覇気を纏う。銃弾が肌に弾かれ、ポトポトと落ちて行く。

 

「そ、そんな……」

「一瞬肌の色が変わったぞ! 悪魔の実か!?」

 

 次はこっちの番だ。

 

「えっ」

「消えっ」

 

 やつらに見えないスピードで駆け、男達を殴り飛ばして行く。男達はマンガのように吹っ飛んで行く。

 後には女だけが残された。

 

「ひ、ひえええええ!」

「きゃああああああ!」

 

 女達も叫び声を上げながら散り散りに逃げて行った。

 

「兄貴……」

「任務は? 兄貴」

「あんな雑魚についていくべきではない」

 

 俺は適当な言い訳で押し切った。

 

 

 その後も、有望そうな海賊が現れる度に俺が自ら出向き、潰した。賞金首は捕まえて換金もした。生活がずいぶん楽になった。

 洗脳された娘達は「兄貴、兄貴が強いのは分かった」「これじゃあいつまで経っても潜入調査できないよ。こんな片田舎に兄貴より強い海賊は来ないもん」と不満そうだった。俺は一切聞き入れなかった。逆に、アマゾンリリークローンの評価は上がっていった。「強い男は好きよ」「修行をつけてくれないか?」と。

 

 このまま生活していてもよかった。しかしある日、海兵が家にやってきた。俺達を海兵にスカウトしたいらしい。その中に海兵スパイになったヴィンスモーク家の人間もいた。

 この男はひっそりと俺に近づいてきて、耳打ちした。

 

「お前、海賊になるの諦めたのか? 海兵のスパイになるか?」

「いや、まだ諦めたわけじゃない。海賊の選別に時間がかかっているんだ。四皇に会うとなるとそれなりに強い海賊じゃないといけない」

「グランドラインに入ってから探したらどうだ? こんな場所じゃ海賊も限られる」

「それがいいかもな」

 

 俺は気楽に返事をしたが、内心ビクついていた。

 雑魚海賊は恐ろしくないが、ヴィンスモーク家は恐ろしい。このままでは裏切りを疑われかねない。北の海ではジェルマに会う確率も高い。

 いろいろ考えて、グランドラインの方が安全そうなのでグランドラインに入ることにした。

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