人間兵器の逆襲 作:ごっほん
ここはグランドライン。ふつうに暮らしているだけでも、四皇に近い海賊と会う確率が高い。その時に娘達を海賊にさせない言い訳を作る必要がある。俺は見聞色によって心を読まれる危険があることに注目した。だから修行しなければならい、という方向に持っていけば時間が稼げる。
と言っても、全ての娘が同じ目的で動いていない。現在、ワノ国クローンとアマゾンリリークローンが4人ずついて、その他の高名な海賊や海兵のクローンが5人にいる。見聞色の話をするのは最後の5人だけでいい。残りの8人には別の理由を用意する。むしろ用意しなければ人心が離れる。アマゾンリリークローンは『強さは美しさ』という思考で動いており、ワノ国クローンの娘達は『人助けの喜び』や『心の美しさ』という思考で動いているからだ。
また、ベラミーの部下だった娘についても、新しい生活を提供する。俺達はベラミーのような海賊生活をしない。かと言って、彼女達に俺達のような修行漬けの日々を強制することもできないだろう。一般人に耐えられるレベルではない。俗っぽい娘には俗っぽい娘なりの生活を見てもらう。夢を見てもらう。仲間になったのだから幸せに暮らしてもらいたい。
などなど思案して、今後の予定を決めると言ってクルー全員を集めた。ベラミーも入れてあげた。
「まずは金と食料の集め方だ。以前の港街では、積荷やウェイターのバイトで金を集めつつ、食費を抑えるために畑も耕していた。海賊を狩って得た金もあるが、ほぼ貯金に回した。まっとうな仕事で得た金で生活するべきだと考えていたからだ。今後もこの方針で進めるつもりだ」
これは半分ウソで半分本当だ。俺は子どもの教育にいいと思って、まっとうな仕事で得た金しか使わせなかった。が、ジェルマの科学者達は、モブに徹するために金を派手に使わず、結果として貯金が溜まっていった。
「真面目ちゃんだねー」
「使わないともったいなーい!」
「新しい服ほしーい! 素敵なリゾートでワインが飲みたーい!」
「ドラッグ決めたいんだけど?」
元ベラミー部下の非行娘が不満を言う。アマゾンリリークローンが彼女達を睨む。
「ひっ」
「ご、ごめん」
非行娘が慌てて謝罪する。今までの航海で、クローン娘達全員がベラミー並みかそれ以上に強いことは非行娘にも分かっている。アマゾンリリークローンが暴力的だということも。結果、非行娘はアマゾンリリークローンを恐怖するようになってしまった。
しかし、俺は彼女達も仲間に加えたのだ。男として、船長として、彼女達にも居心地のいい空間を提供したい。
「しかし、この船には物が欲しい女がいるのも事実。俺は無理に止めるつもりはない。ただし、その金はまっとうな方法で手に入れなければならない」
非行娘達は露骨に嫌そうな顔をした。まあそうなるよね。
だが、俺は彼女達に窮屈な生活をしてほしいわけではない。
「金が欲しければ成功しろ! 社長になれ! 運のいいことに、グランドラインは海賊が出回っており、商人が少ない! ライバルが少ないということ! 俺達が護衛をすれば、海賊を迂回する必要もなく、他の商人に勝てる!」
商売が進むと利子のような不労所得で生活するようになってしまう可能性もある。それはまっとうな金と言いがたいが、今は置いておく。
「服が好きならブランドを立ち上げてもいい! デザインが好きなら自分のデザインで勝負してもいい! 歌手になりたいなら歌え! 夢を見ろ! 若いんだから何でもできる!」
俺は力強く宣言した。さて、非行娘の反応はどんなものか。
「社長って、きゃはは。いくらなんでもさあ。うちら海賊だったんだけど」
「まっとうな生活、か」
「商売敵が少ないのは分かったけどさあ」
「自分で作ったら面倒じゃん。男に買わせるのが気持ちいいのに」
肯定的な意見はほぼない。引いている感じだ。
しかし、目を見れば分かる。若干期待している。これから人生よくなると。
実際、商売なら勝てると思う。さっき俺が言った通りの理由で。グランドラインは海賊が多く、天候も厳しいから、島と島を行き来する商人は少ない。
失敗する可能性もあるが、それも経験だ。海賊として堕落して生きるよりは楽しいんじゃないの?
「社長!? まっとうに生きる!? バッカかてめえ!」
と、べラミーが不意に叫んだ。こいつは海賊の割に夢を見ない男なのだ。俺の言葉が気に障ったようだ。
「ふぐうっ」
アマゾンリリークローンがベラミーの腹を殴った。ベラミーは苦しそうに腹を抱え、黙った。
「商売の話はじっくりと考える必要があるだろう。地元住民とも話し合い、何が必要か確かめなければならない。税金や関税の話もある。とりあえず、お前達が何をやりたいか教えてくれ。ここでは言いにくいこともあるだろうから、後で船長室に一人ずつ招く。では、お前達は解散だ。出て行っていいぞ」
というわけで、非行娘用の話を終え、ベラミー達にも出て行ってもらう。次はクローン娘達を説得する番だ。
「はあ、面倒なことになった」
「あいつ、かなりズレてるよねえ。男に買わせるのが肝なのに」
「ドラッグダメとかカスでしょ。ああぶっ殺したい」
ベラミー等の気配が消えるのを待つ。ドアに耳を立てている非行娘がいるな。まあ聞かれてもいいか。
「さて、うすうす気付いているだろうが」
俺は重苦しい雰囲気で始める。実際今から言うことは、このチーム存続の危機に関わってくることだ。しかし、いつかは言わなければいけないこと。もう隠し続けることはできない。
「俺達は、同じ目的で動いていない」
そう言って、ワノ国クローン、アマゾンリリークローン、洗脳クローンを見る。
皆、真顔になって黙っている。当然、気付いてはいたのだろう。それが分断や戦闘につながりうるということも。
「まず、表の目的について、なすべきことを説明したい」
俺は洗脳クローン達を見る。
「見聞色の覇気を知っているだろう?」
俺が尋ねると、娘達はゆっくりとうなずいた。視線は鋭く、アマゾンリリークローンやワノ国クローンの娘達を警戒している。俺に対してもそれなりに警戒している。
「四皇はこの世界最高の海賊達だ。当然、見聞色の覇気についても最高峰の使い手がクルーにいる。ならば、心を直に読まれる。仮に行動を起こさずとも、スパイだとバレるということ」
これは洗脳された娘達をとどまらせるための言い分だが、事実でもあるだろう。洗脳された娘達は「うっ」と苦しそうな表情になった。
「目的を達するにはまだまだ修行が足りない。精神的な部分を相当鍛え上げなければならない。ある種の無我の境地、つまり任務の思考を停止しながら、任務を遂行しなければならない。長年の修行が必要である」
そもそも修行してできるようになるかどうかすら不明である。上手くいけばこのまま永遠に娘達を手元に置ける。かなりいいアイディアだ。
洗脳された娘達の反応は、納得半分、疑い半分という感じだった。まだ危ないな。やはりもう1つの計画を進めるべきか。
「さて、先ほど夢を持てという話をした。俺も夢を話しておこう」
娘達の緊張がフッと和らいだ。文字通りピリピリした緊張が解けていく。意図してかせずが複数の娘が覇気を使っているようだ。
だが、ここからが本当に恐ろしい話なのだ。
「俺達が生まれた国。あそこの王は何故王だと思う?」
王の言葉を出した途端、また場が重苦しくなる。
俺は洗脳された娘の方を見る。
「王は王だから。王です」
「それは、か、考えてはいけないことっ!」
次いでアマゾンリリー娘を見る。
「強いから、ではないか?」
「そうとも限らん。単純に王の子どもとして生まれたからではないか?」
その返答に、洗脳された娘がアマゾンリリー娘達を睨む。射殺すさんばかりに覇気を飛ばす。これってたぶん覇王色だよな? うーむ。
「俺もそう思う」
「えっ」
「なっ!」
「ほう?」
俺が言うと洗脳された娘達はギョッと驚いた。アマゾンリリー娘達は薄く笑む。
「俺の国の王。彼は王の血を継ぎ、且つ王族で最も強い。だから王なのだ。これはおかしいことか? 考えてはいけないことか?」
「そ、それは」
「しかし」
洗脳された娘達は言いよどむ。これは否定できないだろう。だって当たり前のことだもの。
「ここで俺の夢につながる。俺の夢は、レイジュ様を王にすることだ」
「えっ」
「なっ!?」
ふふふ、意外だっただろう。アマゾンリリー娘もワノ国娘も口ぽかーんだ。
そしてこれはまだ言えないが、レイジュの夫になるのは俺だ。そうすれば俺が国を操れる。あのメイド達も俺のものだ。
「お前達は知らないだろうがな。王子で最も強いのはイチジ様で、レイジュ様は若干劣るが二位につけている。こちら側でレイジュ様を支援すれば、逆転できる差だ」
「ま、待ってよ!」
「不敬だ! いくら兄貴でもそんなことを言ったら!」
「レイジュ様には了承を得ている」
洗脳された娘が怒り出したところで、また爆弾発言を投下する。
「えっ」
「そ、そうなの!? 本当!?」
さすがに王族の了承を得ているとなれば否定できないだろう。洗脳された娘達は黙ってしまった。
まあ、ほぼ嘘だけどな。
『レイジュ様が王になられるお姿が今からでも楽しみです。私は全身全霊で支えましょう』
『う、うん。ありがとう』
『いえいえ』
程度の話だったからな。当たり障りのない会話だった。あの子も確か3歳だったから覚えてないだろうよ!
話はそこで終えた。洗脳された娘達はポカーンとしたまま部屋を出て行った。
アマゾンリリー娘達はにやにやしながら近づいてきた。
「まだ何か企んでるだろ」
「レイジュ様を王にして、何をするつもりだ? そっちが本当の狙いだろ?」
さすがに鋭いな。まあバレバレか。
「ふっふっふ。まあ簡単に言えば、俺好みの国に変えてもらうのさ」
「俺好み? どんなだ! それは!」
「どうせエッチなんだろ! スケベなんだろ!」
アマゾンリリー娘達は肘で俺を小突く。
さすがに鋭いな。まあバレバレか。
「お前達にとってもいい国になるさ。こんなところでコソコソしなくても済む。その力を気持ちよく振るえるようになる」
「本当か! 本当だろうな!」
「ウソだったら許さないぞ!」
アマゾンリリー娘達はにやにやしながらヘッドロックやアームロックを仕掛けてきた。これが喜びの表現のようだ。
俺は技を外し、逆にこちらから押し倒し、寝技を仕掛けていく。そのままプロレス勝負のようになった。
「ギブ、ギブギブギブ!」
あっという間に俺が負けた。4対1ではさすがに勝てない。こいつら全員覇王色持ちだしな。
その日の夜、ワノ国クローンの娘達が全員で船長室に入ってきた。
顔色から不安や不信感が伺えた。ワノ国クローンのリーダー格であるタカコが口を開く。
「マット兄さんは、本気でレイジュ様を王にするつもりですか?」
まあ当然その話だよな。
「本気だ」
「今の王が認めると思いますか?」
「認めさせるさ。あの国では力こそが正義だ。レイジュ様には最強になってもらう」
「しかし、その方法では……」
タカコ達は下を向く。
「心配するな。もちろん人死にの出ない方法で行う。クーデターのようなことはしない」
「本当ですか!?」
タカコ達はパッと明るくなった。
「ああ。お前達は知らないだろうが、レイジュ様はとても優しいお方なのだ。何も言わずとも犠牲の少ない方法を選ぶさ」
そう、死ぬのはあの糞野朗だけでいい。ジャッジとかいう外道だけでな!
そして翌日。べラミーの元部下を一人一人船長に呼び、夢を尋ねていった。
「ってかうちさー。商売とか興味ないんだけど。計算とかマジうっぜー」
「あたしの夢はさあ。毎日リゾートでゆるーく遊んで暮らすことなんだよね。働きたくない」
「あたしモデルか女優になりたいんだけど。プロデューサーとかできるの?」
「あたしは歌手」
「結局、ここにいるみーんな商売とか興味ないわけ。当然でしょ? 真面目ちゃんなら海賊になるわけないじゃん」
女達は言いたい放題言った。あまりに俗っぽいので頭が痛くなった。
しかし、後からタカコに調べさせてみると、非行娘の本当の夢は『恋をしたい』のようだった。やりたいことはやることだったのだ。男の感覚で言えばそうなる。
おしゃれが非行娘達の趣味であることは正しいが、女優だとかモデルだとアパレルだとか言う女のほとんどが、おしゃれに人生をかける気はなく、男にモテるのが本当に狙いだった。ベラミーの部下になったのも、あの海賊団に若くておしゃれな男が多かったからだったのだ。
細部を見ると『恋をしたい』の中でも『とにかくいろんな男とやりたい派』、『好きな男を奴隷にしたい派』、『好きな男に尽くしたい派』、『好きな男とゆっくり暮らしたい派』に別れていた。1番目と2番目の女はエネルギーがありそうだから商売をさせる。3番目の女は勉強させて秘書にする。4番目の女はいいお母さんになりそう。
二番人気が歌手などの音楽活動。4人いたのでチームを組ませたぞ。三番人気がとにかくグータラととにかく冒険で2人ずつ(男に関係のないグータラと冒険)。とにかく冒険派は鍛えて優秀な部下にする。とにかくグータラ派は畑仕事を任せる。
他、政府に復讐したい。仲間が欲しい。家族が欲しい。強くなりたい。料理が好き。なんて意見もあったぞ。政府に復讐したいやつと強くなりたいやつは修行に加えて工作員や戦闘員にする。料理が好きなやつは当然コックだ。仲間や家族が欲しいやつは頑張れ。
このように、できるだけ娘達に適材適所を用意してみた。計算好きな女もいたので、商売もなんとかなる気がする。足りなかったらどこかの島で人材を引き抜こう。
翌日から、港で聞き取り調査を始めた。足りない物は何か。欲しい物は何か。売りたい特産品や売れ残りはあるか。
調査をしていると、地元の商人が近づいてきた。恰幅のいいおっさん。金持ちそう。
「困るよお。勝手に商売始められちゃあ。こっちは生活がかかってるんだ」
まあこういう人もいるだろうな。どうしたものか。
考えていると、非行娘達が商人に近づいていく。
「おっさんの生活なんて知るかよ」
「ウェイターなり農業なりやればいいじゃん。甘えんな」
ボロクソに貶す非行娘。あかんよお。こういうのはあかんよお。
でも非行娘達は美人だからおっさんの顔が赤くなってる。
「だ、だまれガキ! こっちは子どもも女房もいるんだ!」
「はあ? 別に商売しなくても生きれるだろ。ハゲ!」
「臭いんじゃ息すんな! ゴミ!」
ガラ悪いなあ。知ってたけど。
俺は娘達の間に割って入る。
「生活がかかっているとおっしゃいましたが、この辺りは海賊が出るので商売は難しいでしょう。国軍を持っている国ならば話は別ですが。あなたはどうやって稼いでいるのですか?」
「そりゃあ傭兵雇ってだな。あとは朝の早い時間にそうっと」
「なるほど」
まあそうなるよね。と、また非行娘が前に出てきた。
「はん! 傭兵だってさ! うちらは強いから傭兵は必要ない! この商売勝ったね!」
「なんだとお!」
「何がなんだとだうちら舐めんなオラァ!」
さすがは元海賊。弱い相手にはびっくりするくらい押しが強いなあ。
俺は非行娘腕に抱え、商人から離していく。
「すみませんねえ。失礼なやつらで」
「お、おい!」
非行娘達は暴れるが、意に介さない。
「何すんの! チャンスじゃん!」
「こういうのは地元住民が納得する形で進めるべきだ」
「納得ぅ!? あんたが言ったんじゃない! この辺はライバルがいないから勝てるって! うちは言うとおりにしようとしたのに!」
「そりゃあそうだが。経済を壊すのは好きじゃないんだ。あのおっさんが悪人だったら潰してもいいが、そうじゃないなら生活できるくらいの取り分は残してあげるべきだ」
「はあ!? 商人なんて金の亡者しかいないに決まってんじゃん!」
金の亡者くらいだったら生活させてやってもいいじゃん。お前海賊だったろうに。
とツッコミたくなった。
この会話のすぐ後に、俺達はとある海賊団に襲われ、逆に壊滅させた。そこでとんでもないことが分かった。
先程の商人のおっさん、実は裏でこの海賊とつながっていたのだ。海賊に村を襲わせ、海賊から格安で村の特産品を買い取り、それを街に売りつけるという商売をしていた。さらには、ライバルとなる商人が現れた時は、海賊に襲わせて潰していた。そうやって富を独占し、裕福になっていたのだ。
このおっさんは外道だったので海軍に引き渡した。財産は没収となった。妻と娘はかわいらしかったのでうちの農園に雇った。
さて、問題はここからだ。俺達は商売を成功させるために地元住民へ調査を続けた。近くの島をいろいろと巡った。すると、金持ちの商人のほぼ全員が、海賊と関わっていることが判明してしまった。
世は大海賊時代。一般人が金儲けしようと思ったら海賊と手を結ぶのが手っ取り早く、逆にそれ以外の方法では不可能ということか。
俺達は外道商人を潰し、外道商人の商売ルートを手に入れていった。ある意味外道のおかげで成長していった。外道商人の方もそれに気付いたようで「お前達は同じ穴のむじなだ! 偽善者め!」「俺達の夢を奪うのか! 金持ちを目指して何が悪い!」なんて言葉を何度も聞いた。
なんだかなあと思った。