人間兵器の逆襲 作:ごっほん
金で知識人を集め、ガールズカンパニーという名の会社を設立した。農業、漁業、林業、傭兵派遣、運送業で広く成功を狙う。俺は会長という立場で自由に口を出すことにした。
傭兵派遣と運送業は初めから大成功だった。ライバルがいないので当然である。農業と漁業は自分達の食費を抑えるために役立った。
1年もすると、噂を聞きつけた近隣住民がドッと集まってきた。特にクローン娘に惚れた若者や協力を求める賞金稼ぎが多かった。賞金稼ぎは人格を見極め、使えそうなら傭兵に入れた。それ以外は農業、漁業、林業行き。傭兵を希望する若者には夜の修行への参加を許可した。もちろん同じメニューをこなすわけではないが。
その頃、地元の農民と漁師から、若い子を取らないでくれと苦情が来た。交渉の末、農業組合と漁業組合を作り、足りない場所に若者を派遣することにした。
しかし半年後、ど田舎の農地に派遣した元商人と元海賊が反乱を起こした。付近の海兵が負け、多くの住民が人質になるほどの暴動になった。
海兵並び住民から傭兵の派遣を要求される。当然受け入れ、娘達総出で現場に向かう。特に作戦はなく、元海賊達が反応できぬスピードで動く。まず人質を解放し、海賊達は殺すつもりでボコボコにした。半分くらい死んだところで反乱軍は投降した。
地元住民は喜び、海兵から感謝された。一部の若者が海兵をやめて傭兵として会社に入ってきた。マッチポンプ?
生き残った反乱軍の若者は相変わらず農業に当てたが、愚痴を言うばかりであまり働かなかった。農業組合から俺に「真面目なやつに代えてくれ!」と苦情がきた。俺は認めなかった。俺だって不真面目な人間はいらないからだ。その代わり娯楽施設を作ることにした。スポーツ施設、カジノ、遊園地、風俗店、などだ。
コンサート、モデルショー、武道大会などのイベントも小規模ながら開いた。徐々に大きくしていくつもりだ。
海軍が海賊団の討伐を依頼するようになってきた。ほぼ全て承諾したが、魚人海賊団だけは断った。単に勝てるかどうか怪しいのもあるが、魚人に恨まれたくないというのも大きかった。
海賊狩りとイベントの成功で俺もなかなかの人気者になった。農業と漁業に力を入れていることもあり、年寄りの評判も悪くなかった。
そして、グランドラインに来て約3年後。7つの小島の長から、島ぐるみの経済協力と安全保障協力を依頼された。この7つの島の力がちょうど同じくらいだったので、7人の長と俺からなる会議を開いた。そこで7つの島を纏めた連合を作ることを提案し、可決された。
ほとんど国作りだった。利権の分配、税金の取り決めがとんでもなく面倒臭かった。議論するとしんどいので「まずは実験的に行い問題点は後から変えていく」という俺の一声の後、俺の独断で次々と決めて行った。4人の長に嫌われたが、3人の長には「リーダーシップがある。さすがだ」と褒められた。別に褒められたからと言って優遇したりはしなかった。
そんなある日、海軍本部の人間がズラズラとうちの庭に入ってきた。そのほとんどが見知らぬ顔だった。強いところから派遣されてきたようだ。
偉そうな男が一歩前に出た。マウス大佐と呼ばれていた。男はびっしりと文字の書かれた紙を胸の前に広げる。嫌な予感がした。
「ガールズカンパニー設立者にして会長のマット! 貴様に逮捕状が出ている! 大人しく縄につけ!」
「はあ!?」
思わず叫んでしまった。
信じられない。黒いこともやってないわけではないが、それ以上に貢献してきたつもりだった。地元海兵とも仲がいい。
出る杭は打たれるというやつか?
「貴様はベラミー海賊団を始め、数々の海賊団を傘下におさめてきた! のみならず、その海賊を使い、善良なる民の富を収奪してきた! 証拠は既に揃っているぞ!」
男は脅すように叫んだ。
「確かに、海賊が傘下に入ることはあった。だが、海賊行為は辞めると誓わせたし、裏切った者は殺すか縛った海軍に送った」
「言い訳するな! お前は善良な市民から富を奪ったんだ!」
「善良な市民の富は奪っていない。海賊と結託し大儲けしていた商人の富を地元住民に分け与えることはあったがな。俺自身、贅沢な暮らしはしていない」
「嘘をつけ! こんな広い庭で!」
「武道の練習場をかねているから広いだけだ」
「武道だと! 人殺しの訓練のつもりか!」
聞く耳持たず。まあ逮捕するつもりで来てるんだからそうなるわな。
「おいおっさん! バカ言ってんじゃねえぞ! マットがどれだけ人助けしてきたか!」
「お前ら海兵だって世話になっただろうが! うちらが海賊を狩ったおかげでどれだけの海兵が死なずに済んだか!」
「貴様等! マットを庇おうと言うなら貴様等も同罪だぞ!」
「なんだと!」
アマゾンリリー娘達が擁護してくれた。だが、徒に海兵を煽ると不利になるかもしれない。
まだ聞いておくことがある。
「罰金で済むなら払おう。いくらだ?」
「ダメだ! 貴様の罪は規模があまりにも大きい! エニエス・ロビーにて公正な裁判が要される!」
ダメか。エニエス・ロビーって確か、死刑しかないってやつだったよな。
ならば逮捕されるわけにはいかない。戦いしかない。
「腐った海兵め。いや政府の責任か」
俺は頭のスイッチを切り替える。常人モードから戦闘モードへ。
「ま、こういうのも悪くないか」
「私も政府嫌いだからね」
俺の雰囲気が変わったのを察してか、娘達も戦闘の雰囲気を帯びていく。
「ま、待て貴様等! やる気か! 調子に乗るなよ! 全員死刑にするぞ!」
と、生真面目そうな大佐が目に見えてうろたえた。実力の差は理解しているようだ。
俺は、にぃ、と嗜虐的な笑みを浮かべる。
「ひっ! く、来るなぁ! 近づくなあ!」
「来るなと言われてもな。そっちから来たんだろうが! 嫌なら出ていけ!」
俺が叫ぶと、大佐は恐れ驚いて飛び跳ねる。と、次には背を向けて駆け出す。
「うわああああ! て、撤退だ! 撤退だああああああ! お前達! 急げ! 船を出す準備だああああ!」
「本当に出て行くのかよ」
思わずつっこんでしまった。ギャグみたいだ。こんなやつに今の地位を奪われるかもしれないと思うと、腹が立つが。
「おい、追いかけなくていいのか? どうせ敵になったんだから減らせる時に減らしておけばいいだろう」
アマゾンリリークローンの代表格、マツが尋ねてくる。
「腐った上官だけ殺せればいいが、正面から戦ってしまえば真面目な海兵にも死人が出る。余計な死人は必要ない」
娘達は不満そうだったが、俺は認めなかった。単に真面目な海兵を殺したくないのもあるが、海兵を殺せばもっと強いやつが出てくるのも理由の1つだ。海軍を潰したいなら戦うしかないが、逃げるだけなら放っておいた方が無難だ。
軍艦はいそいそと去っていった。
翌日、ニュース・クーが早速俺の手配書を配っていた。
”成金”マット。懸賞金2000万ベリー。
成金か。まあそうだろうけどな。なんか小物ちっくで嫌だなあ。
懸賞金は、初頭手配にしては高すぎる気がするが、まあ1億くらいの海賊をわけもなく捕まえてきたからなあ。
その後、細かい記事もチェックしていった。俺が気になっていたのは、俺だけが犯罪者扱いなのか、系列会社ごと犯罪組織と認定されてしまうのかということだった。俺だけが犯罪者ならば、俺が会長を辞めればいい。後任は信頼できる人間に任せ、俺はその裏から口を出せばいい。
記事を読む限りでは、俺や元海賊の引渡しのみを要求していた。娘達については、『マットに奴隷にされた若い人』という紹介のみだ。これなら大丈夫かもしれない。娘達は不満そうだが。俺は早速会長を譲る準備を始めた。
その日の昼前、近くの海兵から使者が来た。知り合いの男だった。
「マウス大佐から、ガールカンパニーの会長職を政府に渡すなら罪は見逃すと」
男は開口一番そう言った。やはりマウス大佐は政府の差し金だったようだ。もしくはマウス大佐の独断か?
「誰が次の会長になるか分かるか?」
相手次第なら譲ってやってもいい。もともと譲るつもりだったし、会長はほとんど名誉職で法的な権限はないからな。俺は軍事力と住人の信頼があるから命令できるだけで。
「おそらく、マウス大佐かと。会長になれるなら海軍は引退すると言っていたので」
「あいつか」
あんな小物に会長の座を奪われるのは嫌だな。だが、嫌かどうかで判断すべきではない。
性格は明らかに小物。賄賂で私腹を肥やそうとする人間だろう。
だが、小物はある意味扱いやすい。力の差を見せ付けてやれば、操ることができるかもしれない。
「いいだろう。譲ってやる」
「えっ」
海兵はびっくりして飛び跳ねた。娘達も驚愕していた。
「お、おい!」
「私はあんな間抜け面に従うつもりはないぞ!」
「落ち着け。会長は名誉職みたいなもんだ。実は命令する権限はない」
「えっ」
「ど、どういうことだ! 会長が一番偉いんじゃないのか!?」
「権限はないということだ」
俺は娘達に丁寧に説明していった。マウス大佐を会長にした後、脅して手ごまにするということも。
翌日、マウス大佐が少数の部下を連れてやってきた。おそらく根回しの済んだ部下達なのだろう。
しかし、譲るとは言ったが信用しすぎだろう。あの人数で俺達と戦ったら一たまりもないと気付いているのか?
マウス大佐は2日前とうってかわって下卑た笑みを浮かべていた。
「ちゅちゅっちゅ、話の分かる男で助かったぞ。君のことは激しい戦闘の末に死んだと本部に伝えておく。その時の負傷が原因で私は海軍を辞めることになるわけだ。そしてこの会社を受け継ぐ」
まあそういうシナリオがいいだろうよ。
「会長を譲るという契約書をくれ。サインする」
「俺が譲ったとして、何か分け前はあるか?」
「ちゅちゅっちゅ。金が欲しいならやろう。分け前は1対1でいいか?」
「まあ、いいだろう」
1対1と言っても、会長の給料はゼロだがな。
もちろんそんなことは教えてやらない。俺は黙って契約書を渡す。
「ちゅちゅっちゅ、これで莫大な富が俺のものに……」
マウスはサーっと内容を読み上げる。これには会長を譲るとしか書いてないが、マウスは満面の笑みでサインした。俺もサインする。
ここに契約が成立する。
「ちゅちゅっちゅ、ご苦労。では、そうだな。そこのお嬢さん、新会長にコーヒーを一杯をいただけるか?」
マウスは若いメイドに声をかける。
メイドは一瞬顔を顰めたが、俺が顎をくいとやって従わせた。