西暦下四桁のXは7です
第1話 博麗神社にて
―――博麗神社―――
西暦200X年7月20日。
うだるように暑い夏の日の事、私【霧雨魔理沙】がいつものように博麗神社へ遊びに行くと、これまたいつものように縁側でお茶をすすっている霊夢がいた。
私は箒から飛び降りながら、暑さを吹き飛ばさんばかりに挨拶する。
「よう、霊夢! 遊びに来たぜ!」
「あら魔理沙、いらっしゃい。あんたもこんな山の上までよく来るわねぇ、暇なの?」
「おいおい、せっかく来てやったのにつれないな」
「……否定はしないのね」
確かに霊夢の言う通り、博麗神社は人里から遠く離れた山の上に建っている。
幻想郷を一望できる素晴らしい景観が広がっているのだが、その分道中は険しく、参拝客は殆ど訪れない。
ちなみに私は空を飛べるから問題ないんだぜ。
「それよりお茶くれお茶。喉が渇いて仕方がないんだぜ」
私は霊夢の隣に座りながら催促すると、霊夢は「はいはい」と言いながら一度奥に引っ込み、やがて冷えたお茶を持ってきた。
早速それを手に取り一気に飲み干す。うん、相変わらず出涸らしのような渋苦い味だな。
「なあ、霊夢聞いてくれるか? 最近こんな事あってさ――」
ここ最近起きた出来事を話していく私だったが、霊夢は上の空な様子で「はあ……」とか「ふうん」とか、気のない返事を繰り返していた。
「おいおい、なんか今日はテンション低いな。もっといい反応を期待してたんだが」
「今はそんな気分じゃないのよねぇ。はぁ」
常に飄々とした態度の霊夢が珍しくため息を吐いている事が気になり、私はさらに問いかける。
「何かあったのか?」
「ちょっとねー……、ここ最近気持ちが上がらないのよねえ」
「どっか調子でも悪いのか?」
「調子が悪いって言うとちょっと違うのよねー。んーなんていうかさ、最近何をやっても楽しくないのよね。私の14年の人生の中でこんな事初めて」
「ふーん、そっか。まあでも、人の一生の内に何度かそういう日もあるだろ。私達はまだまだ若いんだし、これから輝かしい未来が待ってるんだぜ」
そう慰めの言葉をかけたのだが、霊夢はジト目で答える。
「なんかその言葉ババくさいわね……」
「うるさい」
それから色々な話を振って会話を盛り上げようとしたけれど、どんな話をしても霊夢は心ここにあらずといった感じで、生返事しか返ってこない。
「はあ~あ……つまんないなあ」
しまいには虚空を見上げながら溜息を吐く始末。
(こりゃ駄目だな。今日は諦めるか)
そう判断した私は話を切り上げて帰ることにした。
「なんだか霊夢と一緒に居るとこっちまで気分が暗くなってくるから今日はもう帰るぜ」
「あっそ。じゃあねー」
立ち上がって持参した箒にまたがった私に対し、霊夢はダウナーな感じのまま手を振っていた。
私はそれを尻目に、さっさと自宅へ飛んで帰って行った。