魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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2017/08/21 誤字修正しました。
2020/06/24 文章表現が間違ってたので一部修正しました。


第14話 魔理沙の忘れ物

 西暦200X年7月21日―― 

 

 

 

 side――博麗霊夢――――

 

 

 

「またね魔理沙~!」

 

 何故か名残惜しそうに何度も振り返る魔理沙に、見えなくなるまで手を振って見送った後、私は神社へと引き返していく。

 

「それにしても、昨日今日となーんか変だったわねぇ。魔理沙ったらまた何か企んでいるのかしら?」

 

 そんな独り言を呟きながら下駄を脱いで、自宅へ上がると、畳の上に一冊のルーズリーフが落ちているのに気づいた。

 

「あれ? これって……」

 

 拾い上げてじっくりと観察してみたけど、両面の表紙には何も書かれていなくて、まるで新品みたい。

 私は自分の記憶を探ってみたけど、こんなルーズリーフが自宅にあった記憶はない。

 ってことはつまり。

 

「魔理沙が忘れて行ったのね。もしかしたらさっき転んだ時に落としちゃったのかな?」

 

 確か昨日まではなかった筈だし、確証はないけどそう考えるのが一番しっくりくる。

 今すぐ届けに行けば間に合うかなあと思ったけど、お腹がぐうと鳴ってしまった。

 

「ま~次会った時でいっかなぁ。今はご飯食べよっと。あ、その前にお布団を片付けなきゃ」

 

 私は魔理沙のルーズリーフを畳の上に置き、布団を片付けてから台所へと向かった。

 

 

 

 この後魔理沙が来るのを待ち続けていたけど、結局今日は誰にも会うことなく、神社で静かな1日を過ごした。

 

 

 

 西暦200X年7月24日――

 

 

 あれから3日後、魔理沙が神社に遊びに来たので、ずっとお喋りをした。

 魔理沙はいつも、アリスや紅魔館、早苗の事とか色んな話をしてくれて、実は彼女の話を聞くのが密かな楽しみだったりする。

 でもそれをストレートに言うのは気恥ずかしいから、つい誤魔化しちゃうんだけどね。

 私も最近の出来事を話したんだけど、4日前のお泊り会について口を滑らせそうになったので、慌てて口を塞いだ。

 魔理沙は少し訝しげにしてたけど、私はうまくごまかしてなんとかその場を凌ぐことができた。当の魔理沙も4日前に泊まっていってくれた事について一切話題に出さなかったし、約束はきちんと守らないとね。

 

(あ、そうだ。確か忘れ物があったんだっけ)

 

 3日前に畳に落ちてたルーズリーフの存在を思い出して、縁側に座る魔理沙に差し出した。

 

「ねえ、これって魔理沙の物でしょ? 神社に置き忘れていったみたいだけど」

「なんだこりゃ? 私はこんなもの知らんぞ?」

「……え?」

 

 心底不思議そうな表情でルーズリーフを見つめている魔理沙。その目に嘘はなく、心からそう思っているみたい。

 

(あれー? 確かに魔理沙の忘れ物だと思ったんだけどなあ。おっかしいなあ)

 

 やがて夕方になって魔理沙が帰った後、何かヒントがないか、ちょっと申し訳ないなぁと思いつつ、中を拝見させて貰うことにした。

 ルーズリーフのページには、謎の数式やヘンテコな図、良く分からない文字が紙いっぱいにびっしりと記されていて、私にはチンプンカンプンだった。

 

(さっぱり分からないわね)

 

 内容はぜんぜん分からないけど、なんらかの魔法のことが記されているんだろうなぁ、というのは何となく分かる。

 それに読み進めていくと、どのページにも【時間】という単語が良く出てきていて、二重丸が付けられていた。

 

(……少し考えてみましょう)

 

 4日前の昼間に会った魔理沙は、今日みたいに呑気で楽しそうに話をしてた。

 だけど、私といてもつまんないって言って午後になって一度帰った。

 でも夕方になって、私が倒れた時に魔理沙が駆けつけてご飯を作って食べさせてくれた。

 その時の魔理沙は何か雰囲気が変わっていて、いつものおどけた様子はまるでなくて、とっても必死そうだった。

 さらに夜~深夜に掛けて起こった事件についても、まるで自分の事のようにとても親身になって接してくれて、私が抱えていた問題も解決してくれた。

 翌朝、私と別れる間際にとっても名残惜しそうに帰っていった……。

 それから3日後――つまり今日になって彼女と再会したけど、あの時のことが嘘のように、いつもとおんなじお調子者の魔理沙だった。

 いくら約束したこととはいっても、あれだけ熱心だった魔理沙が、すぐに気持ちを切り替えられるのかな? まるで本当に知らないみたい。

 極めつけは魔理沙が落とした筈のルーズリーフを見せた時の反応、そして中に記されている謎の魔法? や【時間】というワード。

 一見すれば些細な謎だけど、それが次々と結びついて、一本の線になっていく。 

 自分で言うのもなんだけど、私は生まれつき勘が鋭く、これまでの異変も自分の直感を信じて行動してきた。

 

(〝あの時の魔理沙″はもしかして――!)

 

 一つの答えを導き出した私は、暗くなりはじめた空を見上げた。

 

 

 

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