魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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これまでのあらすじ


魔理沙はさとりの提案を採用し、こいしの協力を得ながら、マリサを215X年へと連れて来た。


第146話 魔理沙とマリサ

 ――西暦215X年9月21日午後5時――

 

 

(そろそろかな)

 

 何度も何度も時間移動を繰り返したことで、始まりと終わりのタイミングを掴んできた私。案の定、渦を巻くようにねじ曲がっていた世界は、正常に戻っていた。

 魔法の森は150年という長い時間を経ても変化がなく、強いていえば、木の幹が一回りか二回りくらい太くなっていることくらいだが、それすらも間違い探しに近いレベルだ。出発前に感じていた夏の蒸し暑さは影を潜め、東の空に浮かんでいた太陽は、西の空へと沈みつつある。

 辺りを見渡せば、霊夢、アリス、咲夜、パチュリーが此方向きで並び、その後ろには、私の居ない5分に現れたのか、自らの作り出したスキマに腰かける紫の姿。小町と映姫の影が見えないことから、どうやらこの2人は帰ったらしい。

 

「魔理沙が二人!?」

「ど、どうなってるの!?」

「私に聞かれても困るわ」

「とんでもないことになっちゃったわね」

「きっとどちらかがタイムトラベラーの魔理沙なんでしょうけど。もしかしたら両方?」

「全然見分けが付かない」

「あれはどの時間の魔理沙なのかしら?」

 

 細かな差異はあれど、驚愕と困惑が入り混じった様子の霊夢達。さらには「魔理沙み~っけ!」と、横から可憐な声が聞こえてくる。顔を向ければ、ほんのついさっき別れたこいしがそこに立っていた。

 

「アハハ、久しぶりだね~魔理沙。あの時の時間とちょうどピッタリ」

「来てたのかこいし」

 

 彼女もまた、例にもれず150年前から何一つ変わらない姿だった。

 

「そりゃもう、こんな面白そうなイベントを逃すのはもったいないじゃん。そうそう! 魔理沙の予言、ピッタリ当たったよ! あれから2ヶ月もしない内に異変があってね、こころちゃんと友達になったんだ!」

「お~そうか! 良かったじゃないか!」

 

 こころという少女が何者なのかは知らないが、こいしが150年前に感じていた空虚さは満たされたことだろう。別れる前よりも活き活きとしているように思える。

 

「ねえ魔理沙。一体何がどうなってるのよ?」

「霊夢に同じく、この状況について説明を求めるわ」

「貴女が抱きかかえているそのマリサはいったい何?」

「さっきからぴくりともしてないけど、ちゃんと生きてるのかしら?」

「というか、貴女は何処の時間の魔理沙なの? さっき過去に戻った魔理沙で合ってる?」

「こいしとは知り合い? なんだか、訳知りみたいな会話だったけど」

 

 私に一歩詰め寄り、霊夢、パチュリー、咲夜、いつの間にか会話の輪に加わっている紫やアリスから矢継ぎ早に繰り出される質問。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。どこぞの聖人と違って、そんな一度に質問されても答えきれん。立ち話だと長くなるから、私の家で話をしようぜ」

「分かったわ」

 

 ゾロゾロと自宅へ移動していくアリス達。そして歩き出そうとした霊夢を呼び止め、「霊夢。こいつを運びたいから、ちょっと足を持ってくれないか」

 

「仕方ないわね~。これでいい?」

「悪いな」

 

 色々と聞きたそうな顔をしている霊夢に手伝って貰いつつ、マリサを運びこんでいった。

 

 

 

 私を含め総勢八人もの少女達が我が家に入り、少し前まで――と言っても私の主観時間では半日以上経っているが――霊夢達と話していたリビングの長テーブルへと移動する。 

 しかしあまりの人の多さに、長テーブルの前に置かれた、二組の三人掛けソファーに座りきれなくなってしまい、別の部屋から木枠の椅子を持ち込む事で何とか座席を確保することができた。その間に、咲夜とアリスは新しくお茶を淹れ直し、紫やこいしを含めて人数分配っていた。

 席順は、長テーブルの奥行きが狭く、一番目立つ位置に置いた木枠の椅子に私が座り、右手のソファーに、手前からアリス、パチュリー、咲夜。左手に、霊夢、紫、こいし、の順に座っている。ちなみにマリサは私のすぐ左隣、霊夢達が座っているソファーのひじ掛けとなっている部分を背に、座らせるようにして寝かせてある。

 

「さて、色々と聞きたいことがあるだろうけど、まずは私の方から幾つか確認がしたい。お前達は今日の出来事についてどこまで記憶がある?」

「どこまでって、どういうこと?」

「私は今日の正午に霊夢達と再会し、この場所でお互いの事を話して行った。そこで私がこの歴史のマリサのことを尋ねた時、彼女の遺書を見せられ、歴史を変える為に過去に遡ることを決めた。それからタイムジャンプ魔法を使おうとした時、小町と映姫が邪魔に入り、それを私が説得して、時の回廊経由で200X年の幻想郷へと時間遡航し、たった今、出発時刻の5分後に戻って来た。――ざっくり纏めるとそんな流れの筈なんだが、合ってるか?」

「うん。パチュリーと咲夜が帰ろうとした時に魔理沙が戻って来たから、びっくりしたわ」

 

 どうやらマリサを連れて来た事による彼女らの記憶の改変、歴史の変化は生じていないようだ。まあ私とマリサを見た時の反応が、予め事情を知っていそうな感じだったので、薄々分かっていた事ではあったが。

 

「次に質問だ。なんで紫がここに居るんだよ?」

 

 紅茶を楽しんでいた紫は、ティーカップをソーサーに置いてからこう答えた。

 

「ずうっと昔にね、霊夢からタイムトラベラーの魔理沙について聞いてたのよ。100年前にマリサが亡くなっちゃったから、正直なところ半信半疑だったのだけれど、念のためにと思ってスキマの中から隠れ見ていたの。そうしたら、霊夢の予言通りの時刻に現れちゃって驚いたわ」

「つーことは最初からずっと見てたのか? なんだよ、一言言ってくれれば良かったのに」

「だって私がいたらお邪魔になっちゃうじゃない。貴女達の空気を読んだ、と言って欲しいわ」

「ふ~ん」

 

 まあ別に見られたら困るようなことでもないので構わないけどな。

 

「悪かったな、色々と聞いて。なんせこれは初めての事だったから、私とお前達とで、記憶の食い違いがないか確かめておきたかったんだ。どうやら、歴史改変は起きてないらしい」

「それって、ここで寝てるマリサが関係することなの?」

 

 今もすやすやと眠り続けるマリサを指差す霊夢に、この場にいる全員の視線が集まった。

 マリサは、無意識な状態でも自宅に居る事の安心感を抱いているのか、この時間に連れて来たときよりマシな表情をしていた。

 

「ああ。そいつは西暦200X年9月5日の霧雨マリサだ。そう言えば分かるか?」

「え! それってあの宴会の次の日じゃないの!」

「宴会? そんなものあったかしら?」

「博麗神社で霊夢が突発的に開催したんですよ。お嬢様と私は参加しましたけれど、パチュリー様は参加されませんでしたから」

「……そういえばそうだったわね」

「ということは、このマリサは私達が良く知っているマリサなのね。ふ~ん……」

「それも一番若盛りの頃の、ね」

 

 アリスとパチュリーはまじまじと見つめていたかと思えば、今度は私の方に視線を向け、交互に見比べていた。

 

「見比べてみると本当そっくりね~。まるで双子みたい」

「もしマリサが双子だったら、毎日が騒がしくなりそうだわ」

「あはは、言えてる。マリサってトラブルメーカーだから、退屈はしないでしょうね」

 

 何を想像しているのか、アリスとパチュリーは変な方向に盛り上がっていた。

 一方で、霊夢は真剣な顔を崩さず問いかける。

 

「でもどうして? マリサの過去を変えにいったんじゃなかったの?」

「そのことなんだけどな、悪い。結論から言うと駄目だった」

「「「「!」」」」

 

 無言で話を聞いている紫と、すっかり冷めきったお菓子に夢中になっているこいしを除く全員の顔が、目に見えて強張る。

 

「順を追って説明していくよ――」

 

 居心地の悪い空気を感じつつ、私は150年前の9月4日と5日に起きた出来事を仔細に話していった。

 

 

 

 

「――以上が事の顛末だ」 

「なるほど、そういう経緯があったのね」

「事情は分かったけど、なんというか、想像を上回ることをしてくるのね。信じられない」

「まさかマリサがそこまで嫌悪感を示すとはねぇ……。中々上手く行かないものだわ」

「それにさとりも大胆なことを思いつくのね。驚いたわ」

「私が手伝ったんだよ~。えへへ」

 

 手つかずに残っていたケーキをつまみながら、得意げに誇るこいし。

 

「マリサは私の事を偽物だと思い込んでいて、ちっとも話を聞いてくれやしない。だからさ、お前達の方から何か言ってやってくれないか」

「もちろんよ。私にできることがあれば何でもするわ。マリサを助けたい気持ちは、誰にも負けないから……」

 

 霊夢は悲しそうに頷き、それに共感するようにアリスと咲夜も首を縦に振っていた。

 

「協力することについてはやぶさかではないのだけれど、一つ疑問が残るわ」

「なんだパチュリー?」

「貴女さっき、『歴史改変は起こってない』と話していたわよね。それってつまり、これから私達がどんな行動を取っても、徒労に終わるのではなくて?」

「……ん? もうちょっと詳しい説明を頼む」

「貴女が200X年のマリサを連れて来ても歴史が変わってないのなら、200X年のマリサの人生は〝215X年の私達の説得が失敗して200X年に戻される″ことを含めて、私達の知る結末へと繋がるのではないかしら」

「え、そうなの?」

「今ここで寝ているマリサは、私達にとっての過去であって未来ではない。そういうことですね。パチュリー様」

 

 咲夜の言葉に頷くパチュリー。まさしく慧眼とも言える質問に、間髪入れず答える。

 

「いや、むしろその逆だ。まだまだ未来が変化する可能性は充分にある」

「何故そう言い切れるの?」

「確かにこのまま何もしなければ、私達が知る通りの結末になる。しかし私が過去のマリサの歴史に介入し、この時間に連れて来たことで、事態は動き始めているんだ」

「どういうこと?」

「既に確定している出来事をやり直す機会を作ったことで、私達が今いる時間軸は不確定な状態になっているのさ」

「…………つまり、そこで寝てるマリサの選択次第で現在が変わると、そう言いたいのね?」

「その通りだ。マリサは自分の芯を強く持っている人間だから、ちょっとやそっとのことでは行動原理に影響は及ばない。私が彼女の前に現れ、この時代に連れて来ても時間の連続性があったのは、その程度では事象を変化させるに至らなかったからだ」

 

 逆説的に言えば、それだけ考えを変えさせるには難しい相手とも言える。

 

「たった一人の選択で世界が変化するなんて、そんなこと有り得るの?」

「大袈裟過ぎない?」

「考えてもみてくれ。タイムトラベルに関係なくとも、歴史っていうのは、過去に起きたあらゆる出来事の積み重ねで成り立つものだ。それらも突き詰めていけば、その日、その時間に、人間達が環境の影響を受けつつ、どんな選択をしていくか、で決まっていくだろ?」

「さっき閻魔に話していたことね」

「そしてここにいる面々は皆、マリサと近しい関係の人ばかり。彼女に多かれ少なかれ、何らかの影響を受けているからここに集まっている。今私達のいる世界は、〝過去のマリサが霊夢の話を信じず、人生に後悔した世界″であり、その決定が為された時刻は西暦200X年9月4日だ。もしそれを完全に覆すことが出来れば、今とは違う現実になるんだよ」

「なるほどね。良く分かったわ」

 

 パチュリーは納得したように頷いていた。

 

「ねえ魔理沙。さっきから世界を変える、なんて大胆なことを言ってるけど、幻想郷は大丈夫なんでしょうね?」

「それは実際その時になってみないと分からん」

「分からんって、貴女……!」

「不安を感じる必要はないぞ紫。霊夢の未来を変えた時だって、この通り私達はここにいるし、そもそもその件についてはとっくに解決済みだ」

「解決済み?」

「幻想を解明する研究所もないし、宇宙人が攻めてくることもない。お前には未来の世界でかなり助けられた。有り得ないが、もし万が一にも同じことが起これば、また幻想郷の復興に力を注ぐつもりだからな」

「……」

 

 紫は難しい顔で考え込んでしまい、それ以上何も言わなくなっていた。

 

 

 

「ところでマリサはいつ起きるの?」

「あ~何もしなければ、多分明日の朝まで起きないだろうな。私の魔法、結構効き目強いから」

「それじゃ駄目じゃない。そんなに待ってられないわ」

「パチュリー、お前の魔法で何とかならないか?」

「貴女が眠らせたんでしょ?」

「あいにく、目覚めさせる方は習得してないんだ」

「仕方ないわね……」

 

 パチュリーは膝の上に開いていた本を長テーブルに置いてから面倒くさそうに立ち上がり、眠っているマリサの正面まで歩いていく。そして、彼女と目線が合うように腰を屈め、おでこの前に人差し指を近づけつつ、小声で詠唱を始めていった。

 その間に私も席を立ち、パチュリーの隣へと移動しておく。

 

「――」

 

 皆が見守る中、パチュリーはおよそ20秒程度で詠唱を止め、「これで起きる筈よ。後は任せたわ」と言って席に戻って行く。

 

「……ん、ここは……」

 

 その言葉通り、すやすやと寝息を立てていたマリサはパチリと目を開け、目元を擦っている。

 

「よう、気分はどうだ? マリサ」

「!」

 

 寝ぼけ眼で私の顔を捉えたマリサは、意識が完全に戻ったようで、飛び起きながら私の胸倉を掴む。その衝撃で後ろの壁に叩きつけられ、家全体が僅かに揺れた。

 

「ぐふっ」

「お前、よくもやってくれたな! 人の事をいきなり眠らせやがって! ぶっ殺してやる!」

 

 肺から空気が漏れる音。強烈な殺意と、自分でも聞いたことのないような強圧的な声。

 

「魔理沙っ!」

 

 後ろでは真っ青な顔をしたアリスと霊夢。パチュリーは手早く魔導書を開き、咲夜は仲裁に入ろうと懐中時計に手を伸ばそうとした所だったが、私は右手を突き出し、立ち上がった彼女らに静止するよう合図を送る。パチュリーと咲夜は大丈夫なの? と言いたげな視線を送りつつ、手を止めた。

 そして後頭部と背中のズキズキとした痛みを我慢しつつ、マリサの目を見据えた。

 

「おいおい、いきなり乱暴だな。年頃の女の子がそんな汚い言葉を使うもんじゃないぜ」

「どの口がそれを言うか! 私に何か変な事してないだろうな!」

「お前が全然話を聞いてくれなかったからな、私がタイムトラベラーだって事を信じさせるために、未来へ連れて来ただけだ」

「何をふざけたことを……!」

「私は至って真面目さ。ほら、証拠に後ろを見てみろよ」

 

 首元に息苦しさを感じつつそう促すと、マリサは一瞬迷うような素振りを見せてから振り返る。席に着いたまま、無表情でこの事態を傍観するこいしと紫に、未だ動揺しているアリスと霊夢。険しい顔つきで睨むパチュリーに、メイド服のポケットに腕を忍ばせている咲夜の姿。決して穏やかではない雰囲気となっている。

 

「んなっ……! お、お前らいつの間に私の家に?」困惑するマリサはさらに部屋の中を見渡して、「いや、そもそもここは本当に私の家か? あまりにも綺麗に整理されすぎている」

「今日は西暦215X年9月21日。お前がいた時代から150年経っている。家主が居なくなったこの家はアリスがリフォームしたんだ」

「そ、そんなでたらめを信じられるか! 150年後とか言う割には何も変わってないじゃないか! お前、アリス達を集めて何を企んでるんだよ!」

「ぐ、う……」

 

 マリサの怒りが収まる気配はなく、私を掴む両腕にさらに力が入り、圧迫感が強くなる。

 

(あ、ちょ、まずいかも……)

 

 本格的に息苦しさを覚えた頃、「ねえマリサ。そろそろ彼女を放してあげて。お願い」と、霊夢がマリサの後ろに近づいていく。

 

「あぁ? てか、お前誰だよ?」

 

 凄むマリサに一瞬ビクッとしつつ、悲しい声色で、「私は霊夢よ。博麗霊夢。分からない?」と、消え入りそうな声量で囁くように答えた。

 

「え……本当に、霊夢なのか?」

「うん」

 

 目を丸くしているマリサから力が抜け、私は咳き込みながらその場に崩れ落ちる。

 

「大丈夫?」

「な、なんとかな……」 

 

 うずくまる私に駆け寄ってきたアリスに、乱れた衣服を直しながらそう答える。その一方でマリサは私に目もくれずに、霊夢をジロジロと見つめていた。

 

「言われてみれば霊夢に似てるような……。でも霊夢はもうちょっと背が小さいし、巫女服を着てるはずだ」

 

 本物なのか? とでも言いたげな感じのマリサ。

 

「……マリサは、昨日の夜の宴会で私が言ったこと覚えてる?」

「もちろん忘れる筈が――」

 

 と言いかけて、何かを思い出したかのように、彼女を見つめていた。

 

「ま、まさか……」

「今の私はもう博麗の巫女じゃないの。あれから華扇の元で修行して、仙人になったから」

「!」

「ちなみにね、咲夜もいるのよ」

「久しぶり……と言えばいいのかしら。昔のマリサ」

「咲夜だって? え、でもその姿は……」

「お嬢様に永遠を誓ってね。もう貴女の知る十六夜咲夜ではなくなったのよ」

 

 霊夢の隣に立つ複雑な表情の吸血鬼咲夜を見て、マリサは目に見えて戸惑っている。

 

「そ、それじゃ、本当に未来なのか? コスプレとかじゃなくて!?」

「どんなコスプレよ! 私にそんな趣味はないわよ!」

「なんならこの羽触ってみる? 柔らかいわよ」

 

 立派な羽をこれ見よがしに見せつける咲夜に、恐る恐る手を伸ばし、皮膜の先っぽ部分をつまむマリサ。「あ、本当だ。プニプニしてる……」と、呟いていた。

 

「どうだ、私を信じる気になったか?」

 

 マリサの後ろから声を掛けると、睨むような顔で私や霊夢を見比べ、さらには、ソファーに座ったままの紫やこいしにも視線を向けて考え込み。

 

「……分かったぞ」

「え?」

「お前ら私のことをからかってるんだろ! 本当のことを言え!」

「なんでそうなるのよ……」呆れる霊夢。

「私の偽物に、紫とこいし。どう考えても怪しすぎるぜ! まずはお前の正体を明かせよ!」と、マリサは私を指さしながら叫ぶ。

 

「……私ってそんなに怪しいかしら?」

「これまでの行いを振り返ってみなさいよ。パッと思い浮かぶだけでも、ここ50年間に起きた異変の半数近くに関わっているじゃない」

「私からは何とも言えないけど、お姉ちゃんは何考えているのか分からない妖怪だって話してたよ」

 

 何故かしょんぼりしている紫に、ツッコミを入れるアリスとこいし。

 

「だから、私は霧雨魔理沙だと何度言えば分かるんだ!? ちょっと歴史が違うだけで、私もお前なんだって!」

「違う歴史とか意味の分からないこと言うな! 私は私だ! お前なんか知らない!」

 

 一方で全く聞く耳を持たないマリサ。同じ会話が繰り返され、このままでは堂々巡りになりそうだと判断した私は、大きくため息を吐きながらこう言った。

 

「……はぁ。そこまで信じられないんだったら、この時代の幻想郷を見て来いよ」

「なんだと?」

「ここに居る面々は、お前を除いてみんな妖怪だ。年も取らないし肉体的な成長もない。お前が疑いを持つのも良く分かる。言葉で説明するよりも、直接見て貰った方が早いだろう。私らはここで待ってるからさ」

「……お前の案に乗るのも癪だがいいだろう」

 

 不服そうではあったが、マリサは外へと出ていき、窓の外からはどこから取り出したのか、いつもの竹箒に乗って夕暮れの空へと飛んで行く姿が見えた。




ここまでお読みいただきありがとうございました。


以下現時点までの第4章の年表です。 
結構長いので必ずしも読む必要はありませんが、今どういう流れで来ているのか参考になると思います。


スタート地点は西暦215X年9月21日、午前11時です。


【W】西暦200X年9月2日 タイムトラベラー魔理沙、人間の魔理沙と入れ替わる。霊夢と接触。
 
      
   同日午前10時20分⇒咲夜の時間停止に巻き込まれてしまったタイムトラベラー魔理沙は、仕方なく咲夜を捜すことにする。
   
   
   同日午後⇒霊夢に正体がばれてしまったタイムトラベラー魔理沙。思い切って正体をばらし、妖怪になるよう勧める。
   
   
   同日夜⇒ 霊夢、妖怪になることを決意。タイムトラベラー魔理沙はここで約束を交わし、西暦215X年9月21日へ帰る。 【X】へ

        その後人間の魔理沙が現れて、霊夢の自宅へ泊って行く。
        
        
 西暦200X年9月3日⇒霊夢、紫に博麗の巫女を辞めて妖怪になることを伝える。紫、それを承認。
 
  
   9月4日夜⇒博麗神社の宴会で人間を辞める宣言。最後まで魔理沙が食い下がったので霊夢が真相を伝えるも、魔理沙は信じなかった。
      

【Y】9月4日午後7時⇒150年前に戻って来た魔理沙は、博麗神社へ向かい、人間マリサも参加する宴会を影から覗き見る。途中早苗に絡まれるも、やり過ごす。 そして 霊夢の巫女を辞める宣言を聞き、マリサが怒って帰って行った所を見届け、魔理沙はマリサの後を追って行く。

   
     同日午後10時15分⇒魔法の森をトボトボと歩くマリサを発見。密かに泣くマリサに魔理沙は声を掛け、事情を説明しようとするも、マリサは聞く耳を持たず、弾幕ごっこへと発展してしまう。
    
            隙を突いて何とか逃げ出し、たどり着いた先は妖怪の山。そこで一部始終を見ていたこいしに誘われ、地霊殿へと向かう。
            
            
     同日午後11時00分⇒旧地獄に到着。勇儀の誘いを断り地霊殿へ到着し、さとりに出会う。詳しい話はまた明日ということになり、魔理沙は泊って行くことに。 
  

      同日午後11時45分⇒地霊殿の部屋で寝る。
   
   
     9月5日午前6時10分⇒暑さで目が覚めた魔理沙。風呂へと向かい、そこで空と出会う。風呂から出た後にお燐と出くわし、さとりとこいしの部屋の場所を聞きだし、そこへ向かう。
   
   
     同日午前8時00分⇒さとりの部屋で未来のことを話す魔理沙。さとりにマリサの事を相談すると、逆に助ける必要があるのか問われ、魔理沙は精神的に追い詰められながらも助けるときっぱり答える。そんな魔理沙に、さとりは一つの案を授け、こいしと共にマリサの家へと向かう。
   
   
     同日午前8時50分⇒マリサの家に到着し、マリサの説得を試みるも、話を全く聞く様子がない。魔理沙は意を決し、こいしの協力を得てマリサを捕まえ、自分の時代(西暦215X年9月21日午後5時)へと連れて行った。 ⇒【Z】へ
   
   
   
   
   9月5日午後1時10分⇒咲夜の証言によると、マリサは霊夢がふざけた事を話したことにいまだ怒っているようだった。   
      
   
   同日午後3時30分⇒霊夢はマリサの家に謝りにいったが、マリサは聞く耳を持たなかった。
    
    
   9月6日午後3時20分⇒紅魔館で行われた咲夜と霊夢のお茶会。何を言って怒らせたのか気になる咲夜だったが、霊夢は真相を話すことを恐れて何も話さず。翌日もう1度マリサに謝りに行く事に。
   
   
   9月7日午前9時35分⇒マリサの家に再び謝罪にいく霊夢。霊夢の説明は最後まで信じてもらえなかったものの、マリサとの関係を修復することはできた。
   
   
   9月9日午後2時57分⇒霊夢、咲夜とのお茶会で、咲夜がお嬢様から提案された吸血鬼になることを断ったことで、レミリアが圧力をかけてきていることに悩む。霊夢は、大切な人と過ごす時間がどれだけ貴重な物かを説いて、よく考えるように説得する。
   
   ついでに、ここで時間旅行者霧雨魔理沙の存在を、咲夜が知っていたことに霊夢が初めて気づく。お互いに情報交換を行い、咲夜は、霊夢の全ての秘密を知った。
   
   
   9月16日午後2時15分⇒紅魔館に招待された霊夢、そこで咲夜が吸血鬼になったことを知る。咲夜は霊夢の言葉で考えを改めて、永遠にレミリアに仕える道を選ぶ。
     
     それと同時に、女神咲夜≠十六夜咲夜となり、二人の存在は一致しなくなり、死後、女神咲夜の元へ魂が還る事はことはなくなった。(正確には死ななくなったので、女神咲夜の元へ魂が還らない。もし死ねば女神咲夜と記憶が一致する) 
             
   
 西暦2008年4月6日午前10時⇒ 霊夢、博麗の巫女を後任の巫女(退魔師の家系の少女)に譲る。そして博麗の名を捨てることなく、霊夢は仙人になるべく茨華扇の屋敷へと向かう。
 
  
   10月10日午前11時05分⇒ 半年に渡る修行の末、霊夢は見事仙人へと昇華する。そのことを降りてマリサに伝えに行くと、彼女は複雑な気持ちを抱えつつも歓迎の言葉を投げた。そして、肉体の時間を止める魔法(老いをごまかす魔法)を使うかどうか迷う。      

 西暦2010年5月15日午後4時00分⇒仙人霊夢に弾幕ごっこで負けまくる17歳の人間魔理沙。魔女になってしまうかどうか悩むも、結局人として生きることを決意。姿を偽る魔法を使用する。
 

 西暦2020年3月29日午後1時20分⇒27歳の人間魔理沙。努力が実り霊夢と5分5分で戦えるように。この時霊夢に自分が魔女になったと嘘をつく。

 
 西暦2054年8月2日午後3時00分⇒霊夢と妹紅の弾幕ごっこを羨望の眼差しで見つめる人間魔理沙。
 

   同年8月3日午前11時30分⇒61歳の人間魔理沙。秘密を知ったアリスに、人間を辞めるように説得されるも、それを拒否。人であることの誇りを持って。そしてアリスにだけ、この世界をひっくり返す魔法(タイムトラベル)を開発してることを明かす。
   
   
 西暦205X年1月30日午前10時02分⇒マリサ、心臓発作を起こし死亡。さらに遺書を読んだ霊夢は悲しみに明け暮れる。
 

 西暦205X年2月4日午前9時49分⇒紅魔館でマリサの遺書と、遺した研究の書類を調査するアリスとパチュリー。結論は一週間後に
 

 西暦205X年2月11日午前11時05分⇒死の間際までマリサが研究していた題材はタイムトラベルと判明。マリサ亡き後研究を引き継ごうとする二人だったが、霊夢はタイムトラベラーの魔理沙の存在を告白する。話し合いの結果、霊夢が約束した100年後まで待つことに決める。
 
 
 西暦2108年10月10日午後2時~2時10分⇒仙人化した霊夢に100年目の試練。死神との戦いに瀕死になりながらも勝利する。それを影から覗いていた小町は映姫に報告。50年前のマリサの裁きのこともあり、彼女に興味を持つ。
 
 
   同年10月12日午後4時20分⇒霊夢の家を訪れる小町と映姫。タイムトラベラー魔理沙の存在を聞くも、霊夢は拒否し、険悪な状態で別れる。しかし霊夢の様子のおかしさからタイムトラベラーの存在を確信。215X年になった時、霊夢を見張ることを決断
 
 
 西暦2151年4月19日午後4時35分⇒幻想郷のとある山中で、博麗杏子(215X年の博麗の巫女となる少女)の母親を仙人霊夢が救出し、人里の家へと送り届ける。
 

 西暦215X年9月21日午前11時頃⇒未来を救った魔理沙だったが、気持ちはすっかりと晴れない。紅魔館のパチュリーとアリスに相談しに行く。(旧){第4章、霊夢仙人化}
 
   
   同日午後3時⇒霊夢に会いに行くことを決める。(西暦200X年9月2日へ時間遡航)【W】へ (旧){第4章、霊夢仙人化}
 
 
【X】西暦215X年9月21日午後0時⇒博麗神社の妖怪封じの結界は消え、魔理沙邸の前には霊夢、アリス、咲夜がいた。魔理沙と霊夢は再会を果たす。(ノーマルエンド)


   同日午後1時⇒お互いに情報交換を行った事で、201X年の出来事、出発前の出来事が無かった事になっていた。さらに人間マリサの無念の遺書を読み、魔理沙は200X年9月4日へ遡ることを決意する。
   
   しかし、過去へ跳ぼうとした時に、四季映姫と小野塚小町の妨害が入る。魔理沙は仕方なく彼女らの話を聞くことに。
   
   同日午後4時18分~午後4時55分⇒タイムトラベルは過去の人々の歴史を踏みにじると言う四季映姫、それに対し魔理沙は不幸な結末を変えたかっただけだと主張。四季映姫は魔理沙の過去の行いで判断しようとするも、そこで見たのは滅びた未来の姿。
   
        魔理沙の行いに大義を感じた四季映姫は今回は見逃すことにし、魔理沙は200X年9月4日、時の回廊を経由して時間遡航する。【Y】へ
        
        
   同日午後4時55分~4時59分まで⇒映姫の言葉で、影で話を聞いていた紫が現れる。外の世界は順調に科学が発展しつつあり、幻想郷のもう1人の賢者、摩多羅隠岐奈が外の世界の動向を見てる事を明らかに。
   
    
      
【Z】同日午後5時⇒マリサを連れた魔理沙が現れる。 ←今ココ
            
   
   
   
   

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時の回廊での出来事


 7度目【W~Xの間】(魔理沙不在。時の女神咲夜のみ)魔理沙の歴史改変による変化を観測する。このことを魔理沙は知らない。


 8度目【Y】(魔理沙がマリサを助けに過去へ遡る時)マリサの歴史を見ていた女神咲夜は、魔理沙の身を案じる。魔理沙は大丈夫だと答え、騒動の種となったタイムトラベルの魔導書を預け、200X年9月4日へと時間遡航する。




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