魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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最高評価及び高評価、そして多くの感想ありがとうございます。
連載当初から決めていた終わりの形が好評だったことにとても嬉しく思います。


第165話 第四章後日談(前編)

 ――西暦215X年9月23日午前8時30分――

  

 

 

「ん……」

 

 窓から差し込んで来た朝日で自然と目が覚めた。ベッドから体を起こした私は、いまいちスッキリしない頭のまま辺りを見渡す。

 

「ここは……マリサの寝室か」

 

 部屋の中は、タンスの前に脱ぎ捨てられた衣服や、机の上に積み上げられた本、ベッド脇に転がる干からびたキノコが詰められた瓶など、お世辞にも整理されているとは言い難い状態だった。

 私はゆっくりとベッドから抜け出し、下へ降りていく。

 

(昨日の夜は色々あったな)

 

 博麗神社で催された宴会は、幻想郷に住まう全ての妖怪が集まった訳ではなかったが、昔交流を持っていた妖怪や初対面の妖怪などもいて、懐かしさと新鮮さが入り混じってた。

 宴会への参加がかなり久しぶりなこともあって、最初は柄にもなく緊張してしまったが、彼女達は別の時間から来た霧雨魔理沙であることを知ってもさして驚くこともなく、酒やつまみを飲み食いしながら話すうちに、すぐに打ち解けてしまった。

 このおおらかさ、流石幻想郷と言うべきか。

 

「よし!」

 

 回想している間に身支度を整えた私は、ここに来る途中のリビングのソファーで、死んだように眠るマリサの元へと歩いていく。

 

「そろそろ起きろよマリサ。もう9時だぞ」

 

 肩を揺らしながら呼びかけると、寝息が収まり、うっすらと目を開けた。

 

「んあ……お前は……魔理沙? なんで私がここに……」

「おいおい、昨日のこと忘れたのか?」

「ん~……あぁ、そうだったな」

 

 マリサは目をこすりながら、気怠そうに起き上がる。

 昨日の午後に話し合い、〝私″ではややこしいので、互いのことを下の名前で呼ぶことに決め、見分けを付ける為、こちらのマリサがいつもの恰好をする事に対し、私は昨日のように、帽子を脱いで、後ろで髪を纏めたスタイルで過ごすことになった。

〝魔理沙”なだけあって、趣味や好みまでそっくりなのは仕方ない。

 ちなみにこれは余談ではあるが、もっと区別しやすいようにと、赤色のカラコンを入れてオッドアイにしてみたのだが、思いのほか似合わず、皆に笑われてしまったので髪型だけに留めることにした。

 

「あーだるい……」

「おいおい、大丈夫か?」 

「頭いてぇ……飲み過ぎた……。水飲んで来るぜ……」

 

 覇気のない顔で立ち上がったマリサは、おぼつかない足取りで洗面所へと向かっていく。まあ昨日の宴会で調子に乗って一升瓶をラッパ飲みしていたわけだし、十中八九二日酔いだろう。

 私はマリサほど浴びるように呑んでないので、体調はまあまあだ。

 

「さて、今日は何をしようかな」

 

 まだ熱が残るソファーに足を組みながら座りながら考えていると、さっきよりは幾分か血行の良い顔になったマリサが洗面所から戻って来た。

 

「調子はどうだ?」

「顔洗って水飲んで、ついでに酔い止めの魔法を掛けて来た。気分すっきりだぜ」

 

 そう言いながらマリサは私の隣に座った。

 

「お前の方は、そんな難しい顔してどうした?」

「これから何をしようか迷っていた所なんだ。昨日の今日で霊夢に会いに行ってもいいかなって」

「変な遠慮しなくていいんだぜ? お前の失った時間は必ず取り戻せるんだからさ。きっと霊夢だって、それを望んでる」

「ああ、そうだな。うん、じゃあ霊夢のところに行ってくるよ!」

「おう――ってちょっとまってくれ。昨日は言い忘れてたが、実はにとりと紫と輝夜から、それぞれお前宛に伝言を預かっていたんだった」

「伝言だって? しかも三人も?」

 

 マリサに呼び止められた私は、浮かせた腰を再度下ろした。

 

「順番に話していくからな。まずは一人目、にとりからだ。今から三日前――」

 

 マリサは9月20の午後5時頃に、宇宙飛行機のことでにとりが訪ねて来た事を話していった。

 この時、にとりはマリサ=私だと勘違いしたようで、自宅までマリサを連れて行ったにとりは、少し前に家に帰って来たら、宇宙飛行機の格納庫が消失していたことを訴えたそうだ。

 やがて話が噛み合わないことで、にとりはようやく魔理沙違いに気づいて謝ったらしいが、マリサは納得できず、状況について色々と質問するも、全て魔理沙に聞いて欲しいの一点張りだった為、大人しく家に帰ったとのこと。

 

「まあつまりだ。一言で纏めると、『宇宙飛行機のことで話がしたいから家に来てほしい』って話だ。割と切実感あったぜ」

「一昨日の夜にそんなことがあったのか」

 

 当時の私は、魔法の森上空で別れてから、自宅に帰ってすぐに寝てしまった。にとりが家を訪問したのに気づかなかった可能性が高い。

 

「これはすぐにでも行った方が良さそうだな。霊夢と遊ぶのはまた今度にするか」

「まあ落ち着け魔理沙。まだあと二人残ってるし、にとりの伝言とも関係するから、最後まで聞いて行ってくれよ」

 

 そう言ってマリサは次のように語る。

 

「二人目は紫。これも宇宙飛行機関連のことなんだが――」

 

 マリサ曰く、一昨日の晩、改変前の記憶を取り戻した霊夢達が帰った後に、文の発行する新聞を持った紫がここに現れ、玄武の沢に突如現れた宇宙飛行機に自分の能力が使用された痕跡がある為、私から事情を聞きたい、と話したそうだ。

 改変前の〝一昨日″にマリサを説得する場面に居合わせた以上、その時の記憶が復活するのは不思議ではない。しかし、宇宙飛行機に関して言えば、幻想郷と外の世界を自由に往来する為に、紫との協力を取り付けた、とにとりが前に話していた筈なんだが……。これはどういうことなんだ?

 

「次に輝夜について。今から50年も前の話になる」

 

 そう言って語り始めたマリサの話を要約すると以下のようになる。

 西暦210X年5月17日の昼過ぎ、籠いっぱいのキノコを持って迷いの竹林にある妹紅の家を訪れた際に、偶然輝夜と遭遇したマリサは、何故貴女がここに居るのかと問いかけられた。

 マリサは、『妹紅とはたまに食材を交換する仲なんだ』と答えたのだが、求めていた答えはそうではないらしく、居ない筈の人間が何故ここにいるのか? というものだった。

 質問の意味が分からなかったマリサが質問返しをすると、彼女は同年1月30日に、自身の持つ永遠と須臾を操る程度の能力によって、歴史の変化、すなわち新たな並行世界へ分岐したのを感じ取り、変化前の世界との差異と、その原因をずっと探していた。そんな折にマリサと出会い、顔を見た際に、自身の第六感がマリサに何かあると感じたからだ、と答えた。

 その日付は偶然か否か、〝マリサが人だった頃の歴史の記憶″を取り戻した日であり、マリサは悩んだ末、歴史改変を引き起こした人物――すなわち私に説明を放り投げることに決め、その人物が来たら輝夜に紹介することを約束して、その場は別れたそうだ。

 

「輝夜か……」

 

 今の今まですっかり忘れていたが、そういえば彼女も歴史改変の影響を受けない数少ない存在なんだっけ。え~と確か、最後に会った日は西暦300X年の6月9日だったな。この時代の幻想郷は今よりずっと広くて海もあって、彼女以外にも紫や妹紅、そして綿月姉妹も順風満帆な生活を送っているように思えた。

 しかしそんな遠い先の未来について、今は関係ないだろう。この時間から一番近い日付で最後に会った日は、今年の9月19日だった筈。

 この日は原初の石を紀元前39億年の地球から拾って来て、月の都へ届ける道すがら、宇宙飛行機の因果を成立させるために一度幻想郷に戻り、一人で西暦213X年のにとりの家へ遡ったんだったな。そして20年前のにとりに宇宙飛行機の設計図を渡して元の時代に戻った私は、にとりや妹紅と共に宇宙飛行機に搭乗し、西暦200X年8月2日の月の都へ原初の石を届けた。

 あの時間、にとり、妹紅、輝夜以外にも慧音と文がいた。輝夜が全ての歴史を覚えているのであれば、四日前の事も全て覚えているだろうし、説明する手間が省けそうだ。

 そうして過去のタイムトラベルを振り返っていると、一つ気になる点が浮上する。

 

(そういえば、さっきにとりのガレージが消失した、と話していたな)

 

「なあマリサ、三日前にとりに呼ばれた時、宇宙飛行機は何機あった?」

「一機しかなかったぞ? つーか、にとりの家にはちょくちょく遊びに行ってたけど、あんな馬鹿でかいもんを密かに建造していたなんて知らなかったぜ」

「なんだって?」

 

 私の記憶では、どちらかといえば堂々と造っていたように思えるのだが、マリサが嘘を吐いてるとは思えない。

 それにマリサの言葉を振り返ってみれば、三日前ににとりがマリサと話したことや、紫が文の新聞で宇宙飛行機を初めて知ったのは不自然だ。ひょっとして、私が体験した日は既に古い歴史になっているのか?

 

「魔理沙。さっきから一人で考え込んでないで説明してくれよ。宇宙飛行機とはなんだ? にとりが言っていた、未来の幻想郷が滅亡するって話は本当なのか?」

「あれ、お前にとりから何も聞いてないのか?」

「言ったろ? 『教えてあげたいのは山々だけど、あんたが魔理沙からなにも知らされてないのなら、彼女なりに何か考えあってのことかもしれない。私の口からは話せないよ』ってさ」

「そうだったな。別に話すのは構わないが、紫と輝夜が一堂に会してからでいいか? なるべくなら話は一度に済ませたいんだ」

「……まあいいけどさ」

「よし、そうと決まれば準備するか!」

「準備?」

 

 席を立った私を見上げるマリサ。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

 二階に上がり、ノートとペンを用意してから戻って来た。

 

「それで何をするんだ?」 

「皆に説明する前に、一度自分のタイムトラベルを振り返って、どんな時間移動を行って来たのか書き出しておこうと思ってさ」

「ふーん。じゃあお前がそれを書いてる間に、私は皆を集めてくるぜ」

「それなら集合場所はにとりの家で頼む」

「分かった」

 

 頷いたマリサは箒に乗って飛び出していき、私は自分の記憶を掘り起こしつつ、客観的な時系列に沿って、それぞれの時間に起きた出来事をノートに書き連ねていった。




前編で終わってしまってすみません。
なるべく早いうちに続きを投稿します。


第四章の内容も含めた年表については、後日談が終わった後に投稿する予定です。

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