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今回の話の時系列は『第208話 魔理沙の推理』から繋がっています
(……まさか本当に第二の記憶が来るなんて)
実時間では一秒、体感時間としてはおよそ30分にも渡る記憶の想起が終わった私は、驚きと戸惑いを感じていた。
(これはどう解釈したものか……)
今までの経験則からすると、一度目の記憶と二度目の記憶はそれぞれ別の過去改変と考えるべきだけど、腑に落ちない点がある。
それは二つの記憶の相関性だ。
というのもこの記憶は第一の記憶と明らかに時系列が繋がっており、中途半端に終わった第一の記憶を補完するような内容だからだ。
更に記憶の中の私は、今の私のように【直近の過去改変】――彼女の視点で見るなら第一の記憶になるな――について思考することがなく、それに気づくこともなかった。
なのでこれらの記憶は一つの歴史に起きた出来事だと考えた方が自然なのだけれど、それはそれで新たな謎が生まれてしまう。
(なんでこんな時間差で記憶が復活するんだ? それにこの一連の記憶は何を意味する……?)
これまで過去改変の影響を受けた人は皆、一度に改変前の歴史を全部思い出しているのに対し、私だけイレギュラーなことが起こっている。
加えて第二の記憶を見ても、歴史改変の決定打となりうる出来事がさっぱり分からない。
この記憶の中では、私とにとりが宇宙ネットワークのことでサイバーポリスとひと悶着あったものの、私がタイムトラベラーであることを証明することで問題が解決し、この星の治安維持組織の庇護を受けている。
この結果だけ見れば今の私達よりも多少は良い状況になっている気もするし、わざわざ歴史改変をするほどのことじゃないと思うのだが、未来の私は何を考えているんだろうか?
(あれ、そういえば記憶の中に咲夜は――)
「……理沙! 魔理沙!」
「!」
思考を遮るように大声で私の名前が呼ばれ、驚きつつ目の前に焦点を合わせると、憮然とした表情の咲夜と、不思議そうに見つめるにとりの姿が映った。
「やっと気づいたわね。言いかけてやめるくらいならちゃんと考えてから喋って欲しいわ」
「急に立ち止まっちゃうからビックリしたよ。どうしたの?」
「あぁ」
生返事と共に周囲を見れば、人通りが激しいメイト通りの真ん中で無意識的に足を止めていたようで、心なしか道行く他の異星人から注目を浴びている気がする。
もちろん隣にアンナとフィーネの姿はなく、現在地もアミューズメントパーク前からトルセンド広場入り口近辺まで変化していた。
「それがさ、たった今過去改変前の記憶が甦ったんだ」
「ええっ、また!?」
「……もしかして、さっき魔理沙が言いかけてたことって」
「そうなんだよ。にとりと一緒に遊んでたゲーム内でも同じ現象が起こってさ、咲夜なら何か知ってるんじゃないかと思ったんだけど……よくよく考えたらそんな時間がないよな」
不明瞭な過去改変にすっかり気を取られていたが、今の私達はアンナが定めた集合時間に遅れている状況なのだ。
「それならこうしましょう」
咲夜がその場で指を弾くと、目の前が突然真っ暗になった。
「!」
「うわわっ!」
私とにとりが咄嗟に眼鏡を外すと、活気に満ち溢れていた虚構の街は一瞬でゴーストタウンに早変わりし、辺りは静寂が支配していた。
「街が消えた……。もしかして咲夜の能力なの?」
咲夜は眼鏡をたたみ、手品のように右手から消しさってから答えた。
「ええ、私達三人以外の時間を止めたわ。これならいくら話しても霊夢達を待たせることはないでしょう」
「なるほどな」
それから私は第一の記憶と第二の記憶について、その時の詳しい状況と自分の考えも交えて話していく。
「――という訳なんだ」
「へぇ~、まさかサイバーポリスが駆けつけてくるなんてねぇ。それに宇宙ネットワークやこの眼鏡にそんな秘密があったなんて知らなかったよ」
「全くだ。この星は本当に底が見えないぜ、幻想郷とは何もかもが違いすぎる」
「多分この星は215X年の外の世界よりも高度な文明を築いているね。魔理沙の記憶の中の私も、もうちょっと宇宙ネットワークやデバイスについて突っ込んで質問して欲しかったよ」
「アンナと合流したら改めて聞けばいいんじゃないか? 多分快く答えてくれるだろ」
「それもそうだね~」
私の話ににとりは興味津々で、時折質問をぶつけてくることもあったが、対照的に咲夜は顔色一つ変えず静かに耳を傾けていた。
そんな咲夜の顔を真っすぐ見つめながら、私は質問をぶつける。
「なあ咲夜。一体私の身に何が起こってるんだ? 未来の私はどんな過去改変をしたんだ?」
次の話は11月20日までの投稿を目指します