「な~んかお前の友達も忙しそうだな」
「この星っていつもこんな事件が起きてるのか?」
「いえ、普段はもっと平和なのですけれど……」
「でも良かったわ。もし魔理沙のことが知られていたら、厄介な事態になってたかもしれないし」
「それは――いや、うん。霊夢の言う通りだね」
「そうそう。タイムトラベルについて研究してる組織がいることには驚いたけど、私らには関係ない話だしな。それよりもこれからどうするか決めようぜ?」
「私もマリサに賛成するわ。もっと建設的な話をしましょう」
「今地図を周りに展開しますね。皆さんはどこか行きたい場所とかありますか?」
「う~ん、こうしてみるとまだまだ回ってない場所は多そうね」
「私は買い物よりもどっかで休憩したいわねー。ずっと歩きっぱなしで疲れちゃったわ」
「なんだ霊夢? この程度で音を上げるなんて鍛え方が足りないんじゃないのか?」
「うっさいわねー。外の世界は幻想郷よりも満足に仙術が使えないから体力が落ちるのよ。あんただって私と似たようなものじゃないの?」
「まーな。けど普通に活動したりちょっと空を飛ぶくらいなら問題ないぜ」
「なあ、一つ提案なんだけどさ、時間も時間だしそろそろ夕食にしない?」
「あ、それいいわね! 私もちょうどお腹がすいたなぁって思ってた所だったのよ~」
「霊夢に同じく、私も異論はないぜ」
「となると、飲食店に絞って探した方が良さそうだね」
「今レストランのみに絞りこんで検索を掛けました。地図上にマーカーで表示されているお店が条件に該当します」
「うわ~めっちゃ多いな! 一体何件あるの?」
「1000件以上は優にありますね」
「えっ、そんなに!?」
「選択肢があり過ぎて迷うわね」
「そういえばアンナ、この辺の店って何時まで開いてるんだ?」
「一部例外はありますけど、殆どのお店が年中無休終日営業ですよマリサさん」
「そいつは凄いな!」
「そんなにあくせく働くなんて、この星の人達は勤勉なのねぇ」
「アプトは〝眠らない星″ですから」
「なによそれ?」
空中に投影されたマセイト繁華街地区の地図を見ながら、皆がこれからのことを話し合っている間、私は会話に参加せず先程のフィーネの話を反芻していた。
(咲夜の予言の直後に大きく情況が動いたな。リュンガルト壊滅作戦……私にとっては願ってもない話だけど、今回の件は例の記憶と関係があるのか?)
改変前の記憶について頭を悩ませている時に発生した今回の件は、あまりにも都合が良すぎるし、とても偶然とは思えない。
私の主観では未だに彼らと直接相対したことはないが、今より未来の時間軸の私は彼らに散々と苦しめられており、並々ならない因縁がある。
これらの点を踏まえるなら今回の件は未来の私が関わっているとみるべきなのだが……、断定するには証拠が足りない。
何故ならフィーネはリュンガルト壊滅作戦に至った理由を『とある筋からのリーク情報』とぼやかしているし、仮に情報源が未来の私だとしても、更なる歴史改変を実行した理由がはっきりしないのだ。
考えられるのは300X年の私――私の主観から見て二つ前の歴史になるのか?――の話と同じ状況――リュンガルトによる襲撃事件――に陥った可能性だが、その点についても宇宙ネットワークを介して発見されないよう細心の注意を払っていた。
唯一怪しいのは第一の記憶内で起きた出来事くらいだが、その件だってサイバーポリスやアンナによって外部へ個人情報を漏らさないようにしていたため、リュンガルトが気づくとは思えない。
更には今回の件が未来の私の仕業ならば、尚更300X年の私が取った行動がおかしい気がする。
今回のようにサイバーポリスの力でリュンガルトを倒すことができるのなら、300X年の私が同じ方法を思いついて実行してもおかしくないのに、この私はタイムジャンプの改良という遠回りな選択をした訳だし。
……いや、待てよ? 確か300X年の私は既に四つの歴史を経ていたんだっけ。ひょっとしたらこの歴史改変の途中に私と同じ行動をした歴史があるのか……? …………むむむ、頭がこんがらがってきたぞ。
(今までの記憶の中に何かヒントがある筈なんだが……う~ん)
考え込んでいるうちに視界が徐々にぼやけ、意識が遠ざかっていくような感覚が生じる。疲れてるのかな……。
気合を入れなおそうと自分の顔を叩こうとしたが、ここで手足が思うように動かなくなっていることに気づく。
(っ!? いや、この感覚は記憶の想起か! だがこれは……!)
いままで経験したことがない強い既視感に襲われ、そのはずみでバランスを崩して後ろに倒れ込んでしまう。
まるで自分だけ時間が遅くなったかのような感覚の中、咄嗟に踏ん張ろうとするも、私の身体は人形のようにピクリともせず、為すがままに身を任せていると、冷たい地面の代わりに柔らかくも暖かい感触に預かった。
(あ――)
「……」
薄れゆく意識の中で最後に目にしたのは、いつの間にか背後に回り込み、身体を支えながら私の顔を覗き込む咲夜の真剣な表情だった。
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