前回のあらすじ
リュンガルトの襲撃後、タイムトラベルはおろか魔法すら一切使えなくなったことに気づいた魔理沙。
この原因はリュンガルトによるものだと目星を付けた魔理沙は、原因究明及び身の安全の確保の為、アンナの自宅を飛び出した。
玄関の扉を僅かに開けてこっそり外廊下の様子を伺う。
「……誰も居ないな。よし、いいぞ!」
人の気配が無いことを確認した所で私達は外に飛び出した。
「屋上にはエレベーターでいきましょう! すぐそこです!」
3203号室、3202号室と駆け足で通過し、3201号室に差し掛かった所でエレベーターホールからチャイムが響く。
中から現れたのは二人のリュンガルト兵。
「げっ!」
ここは32階という超高層階なうえに、この狭い外廊下には隠れるスペースも逃げる場所も無い。
驚く間にも彼らは射撃体勢に入り、トリガーに指を掛けたその時、並走していたフィーネが目にも止まらぬ早撃ちでレーザー銃を弾く。
(――っ!)
耳をつんざく二発の銃声。
「ナイスアシスト!」
「あとは任せなさい!」
先頭を走る私達の頭上を飛び越えて前に出た妹紅と霊夢はあっという間に距離を詰める。
レーザー銃を拾おうとするリュンガルト兵に、妹紅は炎を纏った飛び蹴りを見舞い、霊夢は博麗の札を勢いよくボディーに貼り付ける。
彼らは音もなくその場に崩れ落ちて動かなくなり、一瞥した二人はエレベーターホールへ飛び込んでいく。
室内を飛ぶレーザー光線と舞い散る火の粉が一瞬見えたが、やがてすぐに鉄を打ち付けるような音が聞こえ、静かになった。
「いや~あの二人は戦闘能力が高いねぇ」
「私は体術に関しては不得手だからな。頼もしい限りだぜ」
「歩く戦車とも呼ばれる戦闘用パワードスーツを着た人間を一撃で沈めるくらいですから、相当な威力が出ている筈ですよ。装着者が生きているのが奇跡なくらいです」
「妹紅の原理は知らんが、霊夢の技は防御を無視して本体にダメージを与える特殊な技だな。妖怪を無力化する時に使う技だ」
「なるほど、そんな技術があるのですね」
そして私達は気絶しているリュンガルト兵を飛び越えて、エレベーターホールの中になだれ込む。
それなりに広い室内を見渡すと、壁際に4人のリュンガルト兵が倒れていて、中心には無傷の霊夢と妹紅が立っていた。
「中にいた敵は片付けておいたわよ」
「流石だな」
「すみません、助かります」
「あの、お二人ともお怪我はありませんか?」
「大したことないぜ。それよりもエレベーターに乗るのはやめたほうがいいわよ」
「この兵士達はエレベーターから現れたわ。もし今昇ってきているエレベーターに彼らが乗っていたとしたら厄介よ」
ここには向かい合わせに並ぶ四基のエレベーターがあるのだが、乗り場位置表示器と表示灯は全て下層の数字を示していて、どんどんとカウントアップしていた。
「階段は無いのか?」
「それなら――」
「ちょっと、いったい何の騒ぎ!?」
フィーネの言葉を遮るように野太い声が廊下から響く。
振り返ると、そこには厳しい顔をした背の低いふくよかな中年女性が立っていた。
「誰だ?」
「リュンガルトではなさそうだけど」
さっきは閉じていた3201号室の扉が開いているし、この部屋の住人だろうか。
「メリッサおばさん!」
アンナがその中年女性の元へ向かうと、彼女は途端に柔らかい表情になった。
「あら、アンナちゃんじゃないの! 久しぶりね~! 三年くらい前に天の川銀河の惑星探査ミッションに行くって聞いていたけれど、もう帰ってたのね」
「はい。つい昨日この星に帰って来たばかりなんです」
「出発前よりも少し背が伸びたんじゃないかしら?」
「うふふ、そうですね。……あの、メリッサおばさん――」
このまま世間話が続くのかと思われた時、フィーネが会話に割り込んだ。
「お話し中すみません。私はサイバーポリスのフィーネと申します」
「あらやだ。サイバーポリスがくるなんて、何か事件でもあったのかしら?」
「今このマンションはリュンガルト武装勢力の襲撃にあっています。サイバーポリスへの通報と、住人全員に避難通達を出すよう管理人に伝えてください」
「まあ、大変! すぐに行いますわ!」
「貴女も避難してくださいね」
メリッサという名の中年女性は慌てて自宅に帰っていき、アンナとフィーネもすぐにこちらに戻って来た。
エレベーターは既に中層階まで上がってきていて、この階に到達するのも時間の問題だ。
「お待たせしました! 非常階段はこっちです!」
フィーネの案内の元、エレベーターホールの隅にある非常口の開き戸を通ると、折り返し階段の踊り場に繋がっていた。
非常階段というだけあって、普段はあまり使われていないのか、階段や手すり壁にはうっすらと土埃が積もっていた。
「屋上って確か51階だったよな」
「ええ」
「うへぇ~、この石段を登るのは大変そうだぜ」
「文句言ってる場合じゃないでしょ? 早く行きましょ」
「待ってください。またリュンガルト兵が現れるとも限りません。霧雨さん達を守る必要があるでしょう」
「確かにそうね」
「私と博麗さんが先頭に行きますので、藤原さんは後ろの守りをお願いします」
「ああ、任せとけ!」
妹紅が快諾して最後尾へと移動する中、マリサは歯がゆい表情で「くっ、こんな時に何もできない自分が情けないぜ……!」と辛うじて聞き取れるくらいの声量で呟いていた。
私も今の状況に思う所がないわけではないが、魔法が使えない魔法使いなどただの一般人と変わらない訳で、下手に戦おうとすれば足を引っ張ることになってしまうだろう。
だからここは霊夢達に任せるのが合理的な選択だ。
「あんたも後ろにいった方がいいんじゃないの? その銃だとぱわーどすーつだっけ? それに効かないんでしょ?」
「敵の武器を弾くことくらいはできますし、博麗さんに任せきりという訳にはいきませんから」
霊夢とフィーネが話をしていた時、エレベーターホールから再び到着のチャイムが響き、続々とリュンガルト兵が降りてきていた。
妹紅は乱暴に非常扉を閉め「やばい、来たぞ! 急いで上れ!」とジェスチャーを送りながら叫ぶ。
「ああ!」
私達は急いで階段を上っていき、中間踊り場に到達したところで背後から爆発音と衝撃が伝わってくる。
「な、なに!?」
アンナの驚く声で足を止め、振り返る。
先程まで立っていた32階フロアへ続く踊り場に大きな穴が空いており、非常扉を開けたリュンガルト兵達が下の階へと落ちていくのが見えた。
「か、階段に穴が……!」
「ほら、振り返ってないで急いで上って! こんなの時間稼ぎにもならないぜ」
「は、はい!」
妹紅に急かされ、私とアンナを待っていた霊夢達と一緒に階段を駆け上がって行く。
37階の中間踊り場まで到達した所で、38階の非常扉が蹴り破られ、レーザー銃を構えたリュンガルト兵が現れたが、フィーネの援護を受けた霊夢があっけなく撃退していた。
このまま屋上まで一気に駆け上がりたかったけど、階層が高くなるにつれだんだんと体力の限界が訪れはじめ、45階の中間踊り場まで到達した所でついに足が止まる。
「はあっ、はあっ……ちょっと……休憩……させて……くれ!」
手すり壁に寄りかかり、肺を膨らませて必死に酸素を取り込む私。
魔法が使えない影響なのか、どうやら体力も落ちてしまっているようで、簡単に息が上がってしまった。
外の景色――といっても、支線道路を挟んだ向かい側に同じような超高層マンションが建ち並んでいるだけだが――を悠長に眺める余裕はない。
「私も……だ! これ、以上は、きついぜっ……!」
私と似たようなタイミングでマリサも限界を迎えたようで、胸を抑えながら踊り場に座り込む。
「はあっ、はあっ、はあ~……」
「ふう~こんなに走ったのはいつ以来だろ」
肩で息をしているアンナとにとりも階段に座り込み、乱れた呼吸を整えていた。
「分かったわ。少しだけ休憩にしましょ」
「このくらいで音を上げるなんて、体力無いなあ」
「これ以上追手が増えると厄介ですので、早めに休憩を済ませてくださいね」
数段先に上って周囲を警戒する霊夢、階下から呆れた様子で私達を見上げる妹紅、拳銃を降ろした姿勢で壁にもたれかかるフィーネ。
彼女らは疲労の色が無く呼吸も落ち着いていて、まだまだ余裕があるように見える。
日頃から鍛えてる人とはここまで体力に差がついてしまうのか……。
彼女達を見ながらそんな事を思っていた時、何気なく私の背後の空に視線を送ったフィーネは、打って変わって絶望の色を浮かべる。
「あれは――! 皆さん、すぐに逃げてください! レーザー砲が来ます!!」
「魔理沙危ない!」
「え――」
彼女が絶叫した次の瞬間、煌く光が背後から生じ、辺り一帯は真っ白になった。
(眩しっ! な、なんだ!?)
私は前に一歩進んでから振り返り、発光源に向けて手で覆いながら目を慣らしていくと、だんだんと現在の状況が掴めてきた。
なんと、一隻の宇宙船から照射された八本のレーザー光線が、空中で屈折を繰り返しながら集束して私達を襲っており、いつの間にか隣に移動していた霊夢が周囲に結界を展開して防いでいたのだ。
その宇宙船は宇宙飛行機よりも一回り大きく、私達と同じくらいの高度に浮かんでいて、距離もそれなりに近い。
さっき外を見た時は影も形も無かったし、隣の超高層マンションから現れたのだろうか。
機体のデザインはモノトーン柄で先端部は鋭利に尖り、胴体と機尾から並行に伸びた三角翼は飛行機を連想させる。
その先頭部分は半円形に突き出たガラスで覆われていて、恐らくコックピットだと思うのだけれど搭乗者は確認できない。
そしてこのレーザー光線は、宇宙船の翼下にズラリとくっついた細長い円筒形の部位から照射されており、その数は八本。
「な、何が起こってるの!?」
「れ、霊夢……!」
つい先程『この星では霊力や仙術の類は殆ど使えない』と話していたので心配になったが、当の霊夢は涼し気な表情で攻撃を受け止めていた。
「ここは私が抑えるわ。妹紅、お願い!」
「任せろ!」
妹紅はベランダの手すり壁を蹴って空中に飛び出すと、炎の翼を生やして加速しながら宇宙船に突撃していく。
「はぁぁぁっっ!!!」
勢いそのままに炎を纏った拳でコックピット部分を殴りつける。
噴き上がる爆炎、辺り一帯に響き渡る轟音。同時にレーザー光線の照射も収まった。
「やったか!?」
「……いいえ、まだみたいね」
結界を維持したまま険しい表情で霊夢が呟く。
炎が晴れたそこには無傷の宇宙船が浮かんでいて、表面には薄らと膜のようなものが張られていた。
「ちっ、効いてないのか」
「あれは無人宇宙戦闘機です! 太陽の表面や絶対零度下の惑星でも稼働できるように設計されてますし、恐らく対爆エネルギーシールドが表面に展開されてます! 生身の人間が適う相手ではありません!」
「対爆エネルギーシールドって、爆発の衝撃を防ぐバリアみたいな感じ?」
「そうですね。私も全てを知るわけではありませんが、高性能の対爆エネルギーシールドはミサイルの直撃にも耐えるそうです」
「やっぱり私達を狙っているのかな」
「だろうな。これも十中八九リュンガルトの仕業だろう」
宇宙戦闘機は高速旋回して妹紅を振り払い、かなりの距離を取ると、今度は機体の底部のパネルが開き、細長い円錐形の物体を落とす。
そのまま地上に落ちていくのかと思いきや、円錐形の物体の後部から炎が噴出し、飛翔体となって彼女目掛けて飛んでいく。
その光景を見てにとりは仰天する。
「えっ! まさかあれってミサイル!?」
「こんな住宅街で飛ばすなんて……!」
「――!」
妹紅は一瞬だけ真後ろの超高層マンションを振り返ると、意を決したようにミサイルに向かって特攻していき、空中で大爆発を起こす。
「妹紅さあああん!」
「大丈夫だ。アイツは死なないからな」
アンナが叫んだすぐ後、爆発の中心地に不死鳥の形をした炎が燃え上がる。
その中心にいるのはリザレクションした妹紅。宇宙戦闘機を忌々しげに睨みつけながら呟く。
「ちいっ、なりふり構わずってことかよ」
「す、すごい。ミサイルを受けても無事なんて……」
「普通の人間なら間違いなく即死です。――いえ、正確には復活したと表現するべきなのでしょうか。なるほど、これが不死身の人間なのですね……!」
アンナとフィーネが驚嘆していると、宇宙戦闘機が方向転換し、今度は此方に向かってミサイルを撃ってきた。
「うわあああぁぁっ! 今度はこっちに飛んできたー!?」
「いやああああぁぁ!」
絶叫するにとりとフィーネ。
「このおっ!」
妹紅がすぐさま炎弾を飛ばすが、ミサイルの飛行速度の方が速く届かない。
「ふっ!」
時同じくして、霊夢は霊力で巨大化した一本の封魔針をミサイルに向かって投擲。空中で衝突した瞬間大爆発を起こす。
割と近い距離で起きた爆発だったけど、付近の建物に被害はなく、霊夢の結界によりこちらにも衝撃は伝わらなかった。
「た、助かりましたぁ」
「もう生きた心地がしないよ」
「ま、まさかミサイルを相殺するなんて、信じられません……!」
「だがこの状況はまずいぜ」
遠くの空では、レーザー光線を乱射する宇宙戦闘機相手に、妹紅が様々なスペルカードを使って応戦しているが、表面を覆うエネルギーシールドを破る事ができずジリ貧状態に陥っていた。
「なんとかあのエネルギーシールドを壊せればいいんだけどねぇ」
「妹紅は炎系の技が多いからな。相性が悪すぎるぜ」
「せめて魔法さえ使えたらなぁ……」
ネガティブな意見が続く中、真剣に戦況を観察していた霊夢が口を開く。
「ねえフィーネ、あの乗り物のこと確か無人って言ってたわよね?」
「え? はい、そうですね」
「なら遠慮はいらないわね。ちょっとその銃借りるわよ」
「あ!」
霊夢はフィーネの銃をひったくるようにして奪い取ると、ポケットから博麗の札を取り出してその銃身に貼り付けた。
「そいつでどうする気だ?」
「あの乗り物を撃ち落すわ」
きっぱりと言い切った霊夢は続けて。
「この星でスペルカードを再現できない以上、至近距離から封魔針を撃ち込むのが一番手っ取り早いんだけど、それだとここの守りが疎かになるからね。気が進まないけど、外の世界の武器を使うことにするわ」
「無理ですよ博麗さん! あの宇宙戦闘機は戦闘用パワードスーツなんかとは比較にならないくらいに硬い装甲です! そんな小さな銃では到底太刀打ちできません!」
しかし霊夢は喚くフィーネを無視し、拳銃を右手に持ったまま左手で銃身を掴み、深呼吸を繰り返す。
すると無機質な銃身に霊力が集まっていき、どんどんと大きくなっていく。
「お?」
「霊力が……!」
私と同じ事を感じ取り目を見張るにとりとマリサだったが、フィーネとアンナは訝し気に眺めるだけだった。
その後空気が詰まった風船のように霊力が溜まった所で、霊夢は手すり壁から身を乗り出しながら両手で拳銃を構え、宇宙戦闘機に照準を定める。
「妹紅、離れなさい!」
「!」
その声で妹紅が宇宙戦闘機から離れた直後、霊夢はトリガーを引く。
耳をつんざく銃声。発射された弾丸は目標に向かって一直線に突き進み、機体の側面に着弾。
ガラスが割れるような音の後、一瞬遅れて小規模な爆発が発生。
機体は真っ二つに折れて爆煙をあげながら墜落していき、途中で大爆発を起こして木端微塵になった。
「ええええええっ!?」
「おおっ!」
「やった!」
「さすが霊夢だな」
「これでよしと。――アンタたちもまだやるつもりなのかしら?」
霊夢が後ろを振り返りながら呼びかけると、そこには46階の非常扉を半開きにしたまま、中から様子を伺っていたリュンガルト兵達の姿があった。
「T-14戦闘機が墜とされるとは、な、なんてことだ!」
「あの女化物だ! 俺達が敵う相手じゃねえ!」
「撤退! 撤退だ!」
リュンガルト兵達は非常扉をピシャリと閉め、マンションの中へと逃げ込んでいき、それを確認した霊夢は再びこちらに視線を戻す。
それから銃に貼り付けていた博麗の札を剥がし、フィーネに差し出した。
「これ返すわ。さ、行きましょうか」
霊夢は何事も無かったかのように平然と階段を上っていった。
一方銃を受け取ったフィーネは、霊夢の後ろ姿を見ながら愕然とした面持ちで呟く。
「目の前で起こった現実が信じられません。アンチエネルギーシールド装置や重火器も使わず、40口径の拳銃で宇宙戦闘機を撃ち落すなんて……!」
「凄いものを見せて貰いましたよ」
「弱体化してもなおこの力か。流石、歴代最強の博麗の巫女と謳われるだけのことはあるな」踊り場に降り立った妹紅は感心していた。
「妹紅の時代でもそう言われてるのか。霊夢の背中は遠いぜ」
(やっぱり凄いんだな霊夢は)
改めて彼女のことを誇りに思う私だった。
それからは宇宙戦闘機を撃墜したことが効いたのか、特に妨害もなく屋上へと辿り着いた。
澄み渡る青い空と太陽の下、開けた空間が広がっていて、人影はどこにもない。
「今宇宙飛行機を出すから、皆ここで待って!」
にとりがアンナの端末を操作して掲げると、カメラのレンズ部分から虹色の光が放射され、その光が形を成して宇宙飛行機になった。
「よしすぐに――!?」
彼女が言いかけたその時、天から一筋の光の柱が宇宙飛行機に降り注ぐ。
機体がほんの一瞬光に包まれたか思えば、次の瞬間には砂のように消えて無くなった。
「なっ!?」
「ああああああっ!? 私の宇宙飛行機がぁぁぁぁぁぁぁ……」
にとりが受けた衝撃はあまりにも大きかったようで、その場に崩れ落ちて嘆いていた。
「だ、大丈夫かにとり?」
「うううう……」
堪らず声を掛けたが、にとりは蹲ったまま動かない。
「一体何が起こったんだ!?」
「ねえ、あれを見て!」
何かに気づいたように霊夢が空を指差す。
見上げると空の一部分が不自然に浮き上がっていて、このマンションよりも遥かに大きく、巨大な形をしていた。
「まさかあれは――」
フィーネが思い当たる節があるような反応を示したその時。
「クククッ、待っていたぞタイムトラベラー」
屋上の中心から声が聞こえたと思えば、誰も居ない筈の場所から不敵な笑みを浮かべたレオンが姿を現した。
次回投稿日は5月12日午後7時です