――紀元前38億9999万9999年8月19日午前0時(協定世界時)――
「な、なによあれ……!」
雲一つない晴天の空に、突如として空いた大穴。例えるなら、青空という絵に黒のインクを垂らしたかのような光景。
その穴はこの区画すらすっぽり入るほど大きく、果てすら見通せない深淵が広がっていて、霊夢を苦しませていたサテライトレーザーも呑み込んでしまうものだった。
「なにかの穴のようにも見えますし、裂け目のようにも見えますね?」
「ふむ、ワープの際に生じる空間の歪みや、ブラックホールとも違うようですが……」
「う~ん、どっかで見た事があるような気がするんだよね。どこだっけなぁ」
アンナ達が頭上に広がる異質な光景について推測する一方で、あれの正体を一目で看破した私は、自分のしでかした事に青ざめていた。
(時空断裂――タイムホールか!? しかもこの規模は……! ああ、なんてことだ――!)
想像を上回る最悪の事態に、私はすぐに叫ぶ。
「皆、私の身体に掴まってくれ!」
「え?」
「いいから早く! 別の時空に飛ばされるぞ!」
「!」
私の気迫が伝わったようで、霊夢達は私の肩から腕にかけて手を伸ばす。
それと同時に、深淵の穴――タイムホールから強い時空の歪みが生じ、滞空している無数の宇宙船が引き寄せられていく。
異常を察し、リュンガルトの宇宙船団はロケットエンジンを吹かせて脱出を試みたが、蜘蛛の糸に捕まった虫のように逃れられず、次々とタイムホールの中へ呑み込まれていく。
彼らの旗艦だけは強力な推進力を生かしてその場に踏みとどまっているが、それでもじりじりとタイムホールへ引き寄せられていて、この時空から飛ばされるのも時間の問題だ。
「リュンガルトの宇宙船が吸い寄せられていく……!」
「一体何が起きてるの!?」
更に霊夢の結界の外で私達を取り囲んでいたリュンガルト兵も、次々と身体が浮かび上がり、タイムホールに吸い寄せられていく。
「うわぁぁぁぁ!」
「吸い込まれるぅぅぅ!」
「クソッ、退避だ!」
レーザー銃を投げ捨て、空中でじたばたと取り乱していたリュンガルト兵達は、眩い光の後に続々と姿を消していく。
多分
「おのれ霧雨魔理沙っ! まさか巨大なタイムホールによる時空連続体の破壊とは、とんでもないことをしてくれたな!」
憤怒の表情で怒鳴りつけるレオンも屋上から足が離れ、タイムホールに徐々に引き寄せられていく。
対照的に未来のレオンは何の反応も示さず、無表情のまま自然に身を任せるように宙に浮いていた。
「この借りは必ず返す! 覚えていろ!」
この時代のレオンは捨て台詞を吐き捨て、無言の未来レオンと共に
そして頭上に滞空していたリュンガルトの旗艦はゆっくりと方向転換を行い、自らタイムホールの中へ飛び込んでいった。
次の話は明日投稿します