「リュンガルトが消えた……!」
「はぁ~良かった。一時はどうなることかと思ったよ」
「生きてるって素晴らしいことですね!」
「確かに、あの状況から生還できたのは奇跡としか言いようがありません」
「本当にな。これも妹のおかげだぜ」
「マリサ、もう立ち上がっても平気なの?」
「ああ、もう大丈夫だ霊夢。皆にも心配かけたな」
安堵の微笑をもらす霊夢達。
巨大なタイムホールによってリュンガルトの脅威は去り、私とマリサの体調もすっかり回復したが、これで一件落着とはいかない。目下重大な問題が起こってしまっている。
それは今も空きっぱなしのタイムホールだ。
リュンガルトの旗艦を呑み込んだところで、時空の歪みは一旦落ち着いたものの、いつまた不安定な状態になるか分からない。
完全に手遅れになってしまう前に早く手を打たないと、口に出すのも恐ろしい事態になりかねない。
「ねえ魔理沙、そろそろ説明してくれない? タイムホールって何? 彼の言ってた話はどういう意味?」
「タイムジャンプはどうなったの?」
「タイムホールに吸い込まれたリュンガルトはどうなったのでしょうか?」
「妹よ。私達はタイムホールに吸い込まれたりしないのか?」
「マリー、お身体は大丈夫ですか? 見たところ、肌に浮かび上がっていた模様は消えてるみたいですけど……」
「タイムホールはいつ消えるんだ?」
霊夢達から怒涛の質問攻めに合い、分かってる部分から順番に答えようとしたその時だった。
「キャアアアアアア!」
甲高い悲鳴が耳に入る。
「悲鳴!?」
「皆さん、上です!」
フィーネがタイムホール付近の空を指差すと、青いワンピースを着た金髪の少女が背中から落下する姿が見える。このままでは別の超高層マンションに激突しそうだ。
……ってあれ? あの後ろ姿はもしかして――
「私に任せろ!」
妹紅は炎の翼を生やして飛び立ち、空中で金髪の少女を受け止めると、優しく抱きかかえながらゆっくりと屋上へ降りてくる。
そして地に足ついたところで、妹紅は腕を放した。
「ありがとう。助かったわ、妹紅」
「ん? あんたは確か魔法の森の――」
落ち着き払った態度でお礼を述べる金髪の少女の顔を見て、妹紅は思い当たる節があるように呟いていたが、私は彼女の事をよく知っている。
「アリス!」
空から落ちてきた少女は、紛うことなき私の親友、アリス・マーガトロイドだった。
「魔理沙……!」
「お、お前。なんでここに!?」
私の顔を見て胸をなでおろすアリスに質問を投げかけたその時、「おやおや~? タイムホールを通って来てみれば、やっぱり魔理沙さんではないですか!」と聞き覚えのある声が背後の空から響く。
すぐさま其方を見上げると、黒い翼をはためかせながら、興味津々の表情でデジタルカメラを構える文がいた。
「文!?」
「姉の魔理沙さんに霊夢さん、にとりや別時間の妹紅さんを連れて時間旅行ですか~? あっ! もしかして、そちらのお二人はこの街の方でしょうか?」
「霊夢様~!」
シャッターを切りながら捲し立てる文に続いて、タイムホールから陰陽玉とお祓い棒を手に持った今代の博麗の巫女――博麗杏子が此方にすっ飛んできた。
「杏子? あんたなんでこんなところにいるのよ?」
「異変ですよ、異変! 幻想郷は今、大変なことになっております!」
「なんですって!?」
彼女らの登場に驚く間もなく、私の目と鼻の先に小さな空間の裂け目が生じ、中からは無数の目がこちらを睨みつける。
(これはまさか――)
「魔~理~沙~!?」
小さな空間の裂け目――スキマの中から姿を現したのは、眉をひそめ、不機嫌そうに私を睨む紫だった。