2021年4月28日追記。 幽々子の文章追加
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――西暦215X年10月1日午前8時55分――
――幻想郷、魔法の森跡地上空――
――今の情景は……!
身に覚えのない149年間の断片的な記憶が走馬灯のように駆け巡り、紫は戸惑いを隠せない。
――私ではない〝私″の記憶……なのかしら。だとすると〝私″の意識はどこへ行ったの? いえ、そもそも『私』は誰? 『私』とは何? 『
自己同一性に疑念を抱き、自我が揺らぎ始めた紫は、
――どうやら
自らの能力を自分自身に用い、彼女の意識は内側に向かっていった。
天も地も無く、遥か彼方まで無色透明。清水のような心象世界に、二人の紫が向かい合っていた。
片方は魔法の森跡地上空で能力を使用した紫。もう片方は甦った記憶の中に登場する紫。自らの境界を弄り、明鏡止水の心境を創り上げた後、彼女にとって未知の記憶と意識を一時的に切り離すことで、文字通りの意味で自分自身と向き合っている。
「さあ、始めましょう。まず貴女は何者なのかしら?」
「愚問ね。
「私……」
同じ顔、同じ声で自信満々に発せられた言葉は、妙に心に染み入った。
「
記憶の中の紫はエピソードを語る。
自身の生年月日と出自。幼少期に魔理沙と過ごした思い出。平安時代中期に出会った生前の幽々子。平安時代末期、安倍晴明に封印されかけた藍との出会い。室町時代末期の幻想郷の成立。平成時代中期に出会った霊夢と、彼女によって制定されたスペルカードルールによる新時代の幕開け。
そのどれもが彼女達にとって感慨深く、印象に残る記憶だった。
「ああ、懐かしいわね……。ウフフ、貴女は紛れもなく
最早紫に疑念の余地はなかった。
「
「時間の境界ね」
「ええ。魔理沙によって引き起こされた事象は、過去に影響を及ぼし、私達の軌跡は分岐した」
「異なる歴史、異なる
「
「果たして魔理沙の狙いは何かしら?」
「互いの記憶の相違点を時系列に沿って照らし合わせましょう。自ずと答えは見えてくるわ」
「そうね」
二人の紫は頷いた。
次話は遅くとも4月第4週までに投稿します。
5月1日追記 投稿遅くなってすみません
続き書いてますのでもうしばらくお待ちください。