魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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この話の時系列は『第231話 (2) タイムホールの影響⑩ 変化した世界』の後の話となっています

2021年4月28日追記。 幽々子の文章追加


第237話 (2) タイムホールの影響⑬ 紫の困惑

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――西暦215X年10月1日午前8時55分――

 

 

 

――幻想郷、魔法の森跡地上空―― 

 

 

 

――今の情景は……!

 

 身に覚えのない149年間の断片的な記憶が走馬灯のように駆け巡り、紫は戸惑いを隠せない。

 

――私ではない〝私″の記憶……なのかしら。だとすると〝私″の意識はどこへ行ったの? いえ、そもそも『私』は誰? 『私』とは何? 『(わたし)』、『(ワタシ)』……。

 

 自己同一性に疑念を抱き、自我が揺らぎ始めた紫は、

 

――どうやら(わたし)という存在を含めて、状況を整理する必要がありそうね。

 

 自らの能力を自分自身に用い、彼女の意識は内側に向かっていった。

 

 

 

 

 天も地も無く、遥か彼方まで無色透明。清水のような心象世界に、二人の紫が向かい合っていた。

 片方は魔法の森跡地上空で能力を使用した紫。もう片方は甦った記憶の中に登場する紫。自らの境界を弄り、明鏡止水の心境を創り上げた後、彼女にとって未知の記憶と意識を一時的に切り離すことで、文字通りの意味で自分自身と向き合っている。

 

「さあ、始めましょう。まず貴女は何者なのかしら?」

「愚問ね。(ワタシ)は八雲紫。(ワタシ)は貴女で、貴女は(わたし)なのよ」

「私……」

 

 同じ顔、同じ声で自信満々に発せられた言葉は、妙に心に染み入った。

 

貴女()にとって特に印象深い出来事を幾つか挙げましょうか」

 

 記憶の中の紫はエピソードを語る。

 自身の生年月日と出自。幼少期に魔理沙と過ごした思い出。平安時代中期に出会った生前の幽々子。平安時代末期、安倍晴明に封印されかけた藍との出会い。室町時代末期の幻想郷の成立。平成時代中期に出会った霊夢と、彼女によって制定されたスペルカードルールによる新時代の幕開け。

 そのどれもが彼女達にとって感慨深く、印象に残る記憶だった。

 

「ああ、懐かしいわね……。ウフフ、貴女は紛れもなく(わたし)なのでしょう」

 

 最早紫に疑念の余地はなかった。

 

(ワタシ)貴女()の記憶の齟齬が発生した原因も既に判明しているわ」

「時間の境界ね」

「ええ。魔理沙によって引き起こされた事象は、過去に影響を及ぼし、私達の軌跡は分岐した」

「異なる歴史、異なる(貴女)。とはいえ、(わたし)を構成するイデアに変化は無いわね」

(ワタシ)の歴史に直接関わる変化ではないし、当然よ」

「果たして魔理沙の狙いは何かしら?」

「互いの記憶の相違点を時系列に沿って照らし合わせましょう。自ずと答えは見えてくるわ」

「そうね」

 

 二人の紫は頷いた。




次話は遅くとも4月第4週までに投稿します。

5月1日追記 投稿遅くなってすみません
続き書いてますのでもうしばらくお待ちください。

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