魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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この話は第241話 (2) タイムホールの影響⑭ 試練のタイムトラベル(中編)と同時刻の出来事です。


第249話 (2) タイムホールの影響⑫ side 霊夢 試練のタイムトラベル

「……行っちまったな」

「咲夜、今の紫達はどの時代から来たの?」

 

 あの台詞からして、最後に別れた2021年2月21日以降の紫達だと思うんだけど、妖怪って見た目が変わらないから全然分からないわね。

 

「彼女達は歴史βの時刻B*1、魔法の森上空に開いたタイムホールからここに侵入したわ」

「その時刻って、メビウスの輪が始まる時間よね」

「咲夜と輝夜もそこから時間遡航したよな。これは偶然なのか?」

「気になるけど、急がないと魔理沙が……!」

「焦る気持ちも分かるけど、落ち着いて最後まで私の話を聞いてから判断しなさい。少なくとも今すぐに魔理沙を処断するつもりはないわ」

「……いいわ。こうなったら、最後まで付き合ってあげる」

 

 私は突き出した幣を背中に戻す。

 どうせタイムトラベルで決まった時間にいけるなら、ここでの経過時間は関係なくなるだろうし。それなら、少しでも多くの情報を集めておかなきゃ。

 

「ここでは歴史βの八雲紫に焦点を当てて説明しましょう。西暦2021年2月21日に貴女達を見送った後、幻想郷から外の世界にかけてタイムトラベラーの魔理沙を捜索し続けたけれど、何の収穫もないままに、時間だけが過ぎていったわ」

「咲夜も、魔理沙の姿を見ていないって言ってたものね」

「それもその筈、歴史βに変化したことで、彼女が存在した事実は消えてしまったから。今の歴史では、貴女達と約束を交わした西暦215X年9月22日にも、魔理沙は現れないのよ」

「なあ、おかしくないか? 私も霊夢も〝未来のもう1人の私”の事をしっかり覚えているし、なんなら215X年9月21日にもタイムトラベルしたぜ?」

「それは歴史αの記憶よ。今回の場合、魔理沙と親交が深い人妖に広く影響が出ているわ」

「そうなのか? 確かにあった筈なのに、変な話だな」

 

 歴史が変化した瞬間を悟れなかったのは、私達がタイムトラベラーじゃないからなのかな。

 

「話を戻すわ。彼女に転機が訪れたのは時空B*2だった。歴史αと同様に、歴史βでも同じ場所にタイムホールが開いたのよ」

 

 咲夜が指を弾くと、また枠が透明なテレビが出現する。

 そこでは、青空をくり抜いたかのように開いたタイムホールの真下で、紫と咲夜が真剣な面持ちで話している。二人の遥か下には完全に砂地になった魔法の森が広がっていて、魔理沙(マリサ)やアリスの家は何処にも無い。

 画面の上にはAD215X/10/01 07:40:22と表示されていて、咲夜によると現在時刻を表しているみたい。

 

「疑っていた訳じゃないが、本当に魔法の森が無くなってるんだな……。なんだか違和感が凄いぜ」

「リュンガルトの宇宙船は無いのね?」

「ええ。彼らは歴史αの時空Bに飛ばされたからね。歴史βでは何も起きなかったのよ」

 

 遅れて、画面の中の紫と咲夜の会話が聞こえてきた。

 

『遂に出現したわね』

『そうね』

『行くの?』

『ええ。八雲紫、万が一の為に貴女にも預けるわ』

『! 有難く使わせてもらうわ』

 

 目を丸くする紫に、咲夜は私が持っているのと同じ懐中時計を差し出した。

 

『と言っても、あの三人が未だに帰ってこない時点で、只の気休めでしょうけど』

『咲夜。貴女の幸運を祈ります』

『貴女もね。また再会できる日を楽しみにしているわ』

 

 咲夜が懐中時計の竜頭を押すと、次の瞬間には居なくなっていた。この時に永遠亭に行ったのね。

 続いて黒髪の博麗の巫女と文が博麗神社と人里の方角から飛んでくる。ちなみに、この時代の博麗の巫女の名前は博麗杏子と言うんだって。

 その後文と杏子が言い争いを始めたかと思えば紫が仲裁に入る様子や、文が椛を連れて来てタイムホールを指差したり、空中に出現した扉から隠岐奈が登場して、紫と対応策を話している。

 一通り見聞きした限りでは、紫と隠岐奈はタイムホールの対処にあぐねているのと、博麗の巫女は妖怪をかなり毛嫌いしていて、あまり協力的じゃないのが分かるわね。

 

「彼女達は八雲紫の指示のもとに、静観を続けていた。ところが時刻E――JST西暦215X年10月1日午前8時45分になった時、彼女の身に異変が起きるわ」

 

『そんな……これは一体……?』

『どうしましたか?』

『貴女達気づかないの? 魔法の森が一瞬で消えてしまったわ……!』

『消えた……? この土地はずっと昔からこんな感じだったじゃないですか』

『――え?』

『おいおい、とうとう耄碌したか?』

『こんな時につまらない冗談はよしなさい! ほんのついさっきまで森があったでしょ!?』

『紫さん。私の記憶では、この土地が魔法の森と呼ばれていたのは149年も前の話ですよ?』

『紫、彼女の話は事実だ。時間の境界の影響でマナが枯渇して森が消滅したんじゃないか。今更そんな昔の出来事を掘り返すなんて、本当にどうしたんだ?』

 

 映像では、今まで平然としていた紫が突然取り乱し、砂地になった魔法の森を指差しながら文と隠岐奈に主張している。その豹変具合に、皆困惑の色を浮かべているけれど、私は彼女の主張に強い既視感を覚えた。

 

「ねえ、紫の言ってることって、歴史αの話じゃない?」

「ええ。彼女はタイムホールを経由して、歴史αの記憶を取り戻したのよ」

「どういうことだ?」

「少し難しい話になるけどいいかしら?」

「ああ」

「まず前提として、今の世界はメビウスの輪が成立した事で、歴史αからβに改変されたわ」

「うん」

 

 さっき散々説明を聞いたし。

 

「メビウスの輪の成立。即ち、メビウスの輪現象が第二段階から第三段階に移行する時間は時刻Bなのだけれど、〝メビウスの輪の成立という歴史が確定する瞬間”は時刻Eなのよ」

「時間差があるんだな」

「それって、未来の出来事が過去に干渉しているってこと?」

「可能性が完全に閉ざされたのよ。歴史はあらゆる選択の積み重ねで成り立っているでしょう? 今回の場合は、時刻A*3の魔理沙が適正な選択を取れなかったことが、時刻E*4に歴史βへの歴史改変という結果として現れて、時刻B*5にメビウスの輪という結末になったのよ」

「ふーん?」

「つまり元に戻すなら、時刻Eが実質的な制限時間ってことなのか」

 

 大雑把に39億年もの時間があれば、解決できそうな気がするけど、魔理沙はどうして失敗したのかしら? 

 ……そういえば肝心な事を聞きそびれていたわね。咲夜の話が一段落したら聞いておかないと。

 

「時の回廊には、これまで魔理沙が行使した歴史改変を含めた全ての時空の情報が記録されているわ。本来は私と魔理沙しか触れることができないのだけれど、タイムホールが開いた事で、歴史改変が発生した時刻Eに情報の一部が外に洩れてしまったのよ」

「じゃあ紫はその時に?」

「ええ。彼女は時空Bのタイムホールの一番近くで監視していた事に加えて、彼女の能力が無意識のうちに高次元の情報を掴んだことで、世界の内側に居ながら歴史αの想起に成功したわ」

「へぇ、興味深いな」

 

 なんかさらっととんでもない事を言ってる気がする。

 

「それってもしかして、紫以外にも起きているの?」

「今回の方法に限って言えば、彼女と幻想郷の〝私”だけね」

「咲夜もなんだ?」

「元は同じ〝私”ですもの」

 

 なんとなくだけど、咲夜の考えてる事が分かった気がする。

 画面に視線を戻すと、藍が紫の前にスキマを開いて、幻想郷内に発生したタイムホールの状況を報告している。話を聞く限り、歴史αのように幻想郷の各地に建物が落ちてくる事態にはなっていないみたいね。

 やがて紫が落ち着きを取り戻すと、表面が真っ暗だったタイムホールがひかりはじめる。そこには、ラフターマンションの屋上からタイムホールを見上げる歴史αの〝私達”がいた。

 

「時刻Bに近づいたことで、次の時間――時空A*6が見えるようになってるのよ」

「メビウスの輪か」

「ええ。幻想郷の私の予言が的中したことで、八雲紫はタイムトラベラーの魔理沙を捜索する為に、タイムホールに飛び込む決意を固めたわ」

 

 そして時刻Bになった時、幻想郷の空はタイムホールに覆い尽くされ、紫達は吸い込まれていく。時刻はAD215X/10/01 09:00:00のまま動かない。

 

「この時、メビウスの輪によって全宇宙の時間が巻き戻るのだけれど、彼女達はタイムホールに近い場所を飛んでいた為、時空の相転移現象に巻き込まれたわ」

「ふむ」

「以上の説明を踏まえて、彼女達のその後を見てちょうだい」

 

 画面が時の回廊に切り替わると、石畳の道路の上を風を切るような速さで飛び続ける文、杏子、隠岐奈、紫がいた。

 彼女達の左隣にはAD1999/01/22 06:44:32と表示されていて、こうして見ている間にも凄い早さで数字が減っている。

 

「彼女達は時空Aに向かっているわ。条件は貴女達と同じよ」

「この時間は何?」

「彼女達の現在位置から三次元世界に出た場合の時刻よ。貴女達にも分かりやすいように可視化しているわ」

「ふーん……」

 

 確かこの年って、まだスペルカードルールが無くて、お母さんがまだ博麗の巫女をやってた時代ね。私がマリサと出会ったのも、この頃だっけ。

 

「特に異常はなさそうだが」

「見てなさい」

 

『い、今、霊夢さんとマリサさんがいらっしゃいましたよね!?』

『霊夢って、まさか136年前に行方不明になった博麗の巫女か?』

『間違いありませんよ! しかし変ですね? 私が見た時とはかなり状況が変化しているような?』

『なあ紫、ひょっとして今のが“改変前の歴史”の霊夢とマリサなのか?』

『いいえ、あれは2021年2月21日に時間の境界の調査に向かった改変後の歴史の霊夢とマリサよ。時間の境界に映っていた霊夢と魔理沙とは一致しないわ』

『……ふむ、興味深いな』

『あの、お二方は一体何の話を――うっ! くっ、うううっ』

『ああああぁぁぁぁ!』

 

 時刻が1800年代に突入した時、今まで普通に話していた文と杏子が突然うめき声を上げて、苦痛に顔を歪める。

 

『ど、どうしたの!?』

『急に頭痛が……! あ、あぁっ、頭に何かが流れ込んできて……。割れて、しまいそうです……!』

『えぇ!?』

『これは……。私と……霊夢様……? 私は、私は……? うう、痛いよぉ……』

 

「彼女達は時の回廊に留まり続けた事で、莫大な情報の奔流の影響を受け、歴史αの記録を強制的に思い出しているわ」

「…………」

 

 更に二人の見た目にも変化が起きる。

 なんと文の身体はあっという間に縮んで子供になってしまい、逆に杏子は身長も髪も伸びて、巫女服がはち切れそうなくらいに成長してしまった。

 

「お、おい。文が小さくなっちまったぜ!?」

 

『この姿……、私が鴉天狗になったばかりの頃ですね』

『な、なに、これ……!? 巫女服が、きついわ』

 

 画面には、今の自分の姿に困惑している文と杏子が映っていた。

 

「ねえ咲夜。あの二人に何が起きているの?」

「結論から答えると、彼女達は肉体の時間がずれてしまっているのよ」

「肉体の時間?」

「貴女達の世界では時間は常に未来方向に進んでいるけれど、ここは非常に不確かで曖昧なの。時の流れが固定された世界に存在する生命や物質は、この世界の時間の影響を顕著に受けるわ」

「それってつまり、ここに留まると若返ったり成長したりするのか?」

「そんな認識で構わないわ」

「なるほど。ってことは今の文は子供になっているのか。クク、あのふてぶてしい文屋にもあんな時代があったんだな」

「もしカメラがあればからかうネタが出来たのに、残念だわ」

「はは、違いない」

 

 続いて私は、大人になった杏子に視線を送る。

 

「あっちの子は中々スタイルがいいわね。私も大人になったらあれくらい成長するかしら?」

 

 何となく自分の身体を見下ろすと、マリサが意味ありげにこっちを見ているのに気付いて。

 

「……って、なによその目は」

「何でもないぜ~♪」

 

 なんかムカつくけど、まあいいわ。

 映像を見ると、紫が文と杏子に気遣いの言葉を掛けていた。

 

『他に異常はない?』

『ええと、原因不明の頭痛は収まったのですが、まだちょっと混乱しています。紫さんは何ともないんですか?』

『今のところはね。ねえ隠岐奈、貴女はどう?』

『隠岐奈?』

 

 紫が話しかけてもうんともすんとも言わなくて、目を開いたまま直立不動の姿勢で飛んでいる。まるで人形みたいね。

 

「ところで隠岐奈はさっきから全く動かないわね。瞬きすらしていないなんて」

「まさか時間が止まっているのか?」

「ええ、そうよ。そして時の浸食はまだ終わらないわ。見ていなさい」

 

 時刻が1700年代に差し掛かったところで、咲夜が予告した通り、文と杏子の身に更なる異変が起きはじめる。

 文は身体が更に小さくなって鴉の姿になり、ペタンコになった洋服の衿から頭だけが出ている。逆に杏子はどんどんと老化が進んで、みるみるうちに〝お姉さん”から〝お婆ちゃん”になってしまった。

 

『カァカァ、カーカーカカッカー! カーカーカカカーカーカーカー……。カーカーカー……』

 

 文はとうとう人間の言葉を喋れなくなってしまったみたいで、哀愁漂う声で懸命に鳴いている。

 

『こ、これは……! そんな……』

 

 一方杏子は、老いさらばえた自分の姿に大粒の涙を流しながら震えていた。

 

「おいおい、とうとう文がカラスにまで戻っちまったぜ!?」

「それにあの子もお婆ちゃんに……なんてことなの……」

「全ての生命と物質には始まりと終わりがあるわ。回春と老化の行きつく先は存在の消失よ』

「そんな……!」

「なんとかならないのかよ!?」

「残念ながら蓬莱人という例外を除いて、時間から逃れる術はないわ。貴女達も覚えておきなさい。あれが軽率な時間移動の代償よ」

「……随分と冷たいんだな。見損なったぜ咲夜」

「先程も話したけれど、全ての元凶は魔理沙なのよ? 私はあくまで観測者。責めるのはお門違いですわ」

「もしかして、私達もいずれ文やあの子みたいになってしまうのかしら?」

「ご明察。“私”の懐中時計が完全に壊れた時が貴女達の最期よ」

「……」

 

 咲夜が紫の左手を拡大すると、針が完全に止まった懐中時計が握られていた。これって時空Bで咲夜から譲り受けた懐中時計よね? ……なるほど、だから〝同じ条件”なのね。

 首元の懐中時計に視線を落とすと、こっちも時計の針が止まっていることに気付く。ということは、私達も……。

 

「悪い事は言わないわ。貴女達は元の時間に帰りなさい。時の理に至っていない人間は時に呑み込まれてしまうわよ」

 

 咲夜のすぐ傍にはいつの間にかタイムホールが開いていて、表面には満開の桜に囲まれた博麗神社が映っている。私達が今立っているこの時間軸は、2008年4月5日に繋がっているのね。

 

「……どうする霊夢?」

 

 マリサは不安げにこっちを見ているけど、私は咲夜の目を見ながら宣言する。

 

「私は絶対に諦めないわ!」

 

 今の歴史は完全に袋小路に入っているし、このままでは魔理沙と紫達が死んでしまう。そんなの絶対駄目! なんとかして助けないと!

 

「きっと、きっと何か方法がある筈よ」

 

 自然法則を操る紫と隠岐奈でさえも時間の影響を受けているわけだし、生半可な方法では駄目ね。

 

「そうだ! 霊夢、お前の夢想天生なら時間の干渉を防げるんじゃないか?」

「それは……どうなのかしら」

 

 考えた事も無かったわね。さっきの弾幕ごっこで使った時はいつもと変わらなかったし、タイムトラベルにも応用できるのかな? 

 疑問に答えたのは咲夜だった。

 

「確かに霊夢の夢想天生は、その気になれば時の法則からも浮くことができるわ」

「本当か!? なら――」

「でも、言い換えればそれだけよ。その時間から動けなくなるし、術を止めた瞬間に時間の浸食を受けることになるわ」

「つまり、その場しのぎにしかならないってことね」

「ええ」

 

 そうなると、一体どうしたらいいんだろう。幻想郷の咲夜からまた新しい懐中時計を借りればいいのかな? 

 けど紫の例を見るに400年くらいが時間遡航の限界っぽいし、そもそもこっちの咲夜の雰囲気的に、一度でも出ちゃったら同じ時間からはもうここには来れなくなるだろうし……。

 いっそのこと、時刻Bまで待って咲夜を連れて来ればいいのかしら? うーん、それだとあまりにも時間が掛かりすぎて現実的じゃないわね。

 マリサも難しい顔で考え込んでいて、いい案が思いつかないまま時間だけが過ぎていったその時だった。

 突然身体がムズムズするような感覚がしたかと思えば、巫女服が少しきつくなって目線が高くなり、隣のマリサが小さくなったように感じる。

 

「れ、霊夢、お前……!」

 

 マリサは信じられないものを見たって感じで私を見上げてくる。一体何が起きているの?

 

「霊夢。これを」

 

 咲夜の声がした次の瞬間には、私の前に全身鏡が置かれていて、そこには知らない妙齢の女性が映っていた。

 背丈はマリサよりもちょっと高くて、肩口で切り揃えられた黒髪に赤色の蝶リボンを付けている。サイズが小さく、ボディーラインが浮き出た巫女服は、大人が子供服を着ているようなアンバランスさを印象付ける。

 その服装と面影は私によく似ていて――って、あれ!?

 

「もしかして……私なの?」

 

 試しに右腕を上げてみたら、鏡の中の女性も同じ動きをした。……マジですか。

 

「今の霊夢の肉体年齢は20歳ね」

「5年後の私……!」

「ほ~、これが大人になった霊夢なのか。すっごい美人だな」

 

 なんだか私が幼い頃のお母さんにどことなく似ている気がする。どうせならもっと胸が大きくなって欲しかったなぁ。

 

「懐中時計に残された幻想郷の〝私”の時間保護が消えた今、貴女達にあまり猶予は残されていないわ。資格無き者達の結末を見たでしょう?」

 

 私の脳裏には、若返っていく文と老いていく杏子の変化が思い浮かんでいた。

 

「肉体と精神の時間のずれは、時の回廊から出れば回復するけれど、命の時間が切れてしまえば二度と戻らなくなるわ。手遅れになってしまう前に、本来の時空に帰りなさい」

「くっ……」

「これまで多くの知的生命体が時間移動に挑み、悉く失敗したわ。貴女達が考えている程、生易しくないのよ」

 

 どうしよう。このままだとまずい事になるのは分かっているんだけど、本当に策が思い浮かばない。

 ムズムズした感覚も相まって、焦りが焦りを生み、私の思考はかき乱されてぐちゃぐちゃになる。なんでこんな時に限って勘が働かないのよ!

 こうなったら、一か八か飛び込んでみるべきなのかな。果てしなく続く道路を見ながらそんなことを思っていると、マリサが私の前に立ち塞がる。

 

「諦めるのはまだ早いぜ、霊夢!」

「マリサ?」

 

 マリサは得意げに笑っていて、金色の瞳は自信に満ち溢れていた。

*1
JST西暦215X年10月1日午前9時。

*2
JST西暦215X年10月1日午前7時40分、幻想郷魔法の森。

*3
UTC紀元前38億9999万9999年8月19日午前0時。

*4
JST西暦215X年10月1日午前8時45分。

*5
JST西暦215X年10月1日午前9時。

*6
UTC紀元前38億9999万9999年8月19日午前0時、プロッツェン銀河ネロン星系アプト星ゴルン、ハイメノエス地区ラフターマンション。

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