魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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第277話 (2) 魔理沙が忘れた記憶 魔理沙の軌跡⑧ 初代博麗の巫女②

 まずはこのまま元の時間に帰った場合の未来を視てみるか。

 

 

 

 ――――選択肢B(捕まる前に元の時間に帰る)――――

 

 

 

『悪いが正体を明かすつもりはないぜ。じゃあな!』

 

 捨て台詞を吐きながらタイムジャンプを発動。十層の魔法陣が瞬時に展開され、私の肉体と精神がこの時間から離脱していく。

 

『待ちなさい!』

 

 千絵はすぐさま幣を振り下ろそうとするが、その前に私はこの時間から逃走。難なく西暦215X年10月3日午後2時15分の博麗神社の境内に帰還する。

 この時空を指定した理由は、姉さんと霊夢が博麗神社にいるからだ。

 

『おっ、噂をすればだな』

『帰って来たのね』

『魔理沙さん、お帰りなさい』

『あぁ』

 

 私は博麗神社の和室に上がり込む。ついでに時間遡行先で買ってきた饅頭箱を風呂敷から出しておく。

 

『西暦1885年の人里で買ってきた饅頭だ。良かったら食べてくれ』

『わぁ! 美味しそうですね!』

『へぇ、このお店ってこんなに昔からあったのね』

『博麗千絵に会ってきたんだろ? どうだったんだ?』

 

 饅頭を頬張りながら訊ねてきた姉さんに私は答える。

 

『お土産も用意してお礼を伝えてきたんだが、全然話にならなかったぜ。退治されそうになったから、慌てて帰って来たんだ』

『ほらやっぱりな。あの博麗の巫女は妖怪に風当たりが強いんだ』

 

 姉さんは言わんこっちゃないとばかりに呆れていると、私が現れてからずっと考え込んでいた紫が急に声を上げた。

 

『――思い出したわ!』

『うわっ、なんだよ紫。急に大声を出しやがって』

『千絵に霧雨理沙にそっくりな妖怪に出会った事を相談されていたのよ! それでしばらくの間霧雨家を監視していたわ』

『霧雨家って、まさか私の家か!?』

『ええ。1885年の貴女のご先祖様よ』

『マジかよ! てか、名前まで似てるのか』

『それって、間違いなく魔理沙の時間遡行の影響よね。大丈夫なの?』

『この程度の歴史改変は誤差の範囲内だ。どうせなんも成果は出なかっただろ?』

「えぇ、そうね。千絵は躍起になって捜していたみたいだけど、足取りも掴めず、霧雨家にも不審な点も無かったから1年くらいで捜索を打ち切っていたわ。怪しくても実害の無い妖怪よりも、もっと危険な多くの妖怪がいたものね』

『まあそうだろうな。何も問題は無かっただろ?』

『魔理沙。今度からは、きちんと事前に伝えて欲しいわ。ちょうどいいわ、この機会に貴女に話しておくことがあります』

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 まあこんなところか。大きな山場も無ければ、深いオチも無い。平凡な日常会話の後に、紫に時の賢者になるように提案される展開に収束するだけだ。

 次に今回の時間遡行を無かった事にした場合はどうなるだろうか?

 

 

 

 ――――選択肢C(時間遡行そのものを無かった事にする)――――

 

 

 

 千絵に追い詰められた私は、瞬時に自身の過去に干渉し今回の時間遡行そのものを無かった事にする。説明が難しいが、例えるならタイムリープのようなものだ。その時点での意識の私に未来を見せて、行動を変える事で未来を再構築する。

 現在時刻は西暦215X年10月3日午後1時00分の自宅のリビング。風呂敷包み片手に今まさに家を出ようとしている瞬間だった。

 

『あれ? 何処に行くんだ?』

 

 繰り返される姉さんの言葉。しかし今回の私の回答は異なる。

 

『いや、何でもない。やっぱり止めた』

『? そうか。私は人里に出かけてくるぜ』

 

 姉さんは不思議そうに思いながらも、外出して行った。この歴史の場合だと、時間がずれて霊夢と偶然遭遇することも無くなるので、真っすぐ人里に到着するだろう。

 暇になった私は、時の賢者になる件も含めて、これからの事を話しあう為に紫の元へ行くことにした。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 時間遡行そのものを無かった事にした場合だとまあこんな感じになるな。時間が空いた事で予定が前倒しになって、自分から時の賢者になる提案をしにいく感じになるか。

 ではここから挽回する未来を視たらどうなるか? 私は未来視を実行する。

 

 

 

 ――選択肢A(正体を明かして千絵を元の時間に連れていく)――

 

 

 

 ――――

 

 

 

(――へぇ、なるほど)

 

 先程の2つの歴史よりも興味深い未来が視えた私は、この未来を選択する事にした。

 随分と長考しているように思えるが、この決断を下すのに要した時間は1秒にも満たない。時間の超越者は、時間の使い方も大きく異なるからだ。 

 

「分かった、正直に話すよ。私の名前は霧雨魔理沙。霧雨理沙の来孫で、西暦1993年〇月△日生まれのタイムトラベラーだ。西暦215X年10月3日の魔法の森から時間を遡って来たんだ」

「……なるほど。気が触れた相手に真面目に応対した私が愚かだったわ。さっさと退治されなさい!」

 

 並の妖怪なら一撃で瀕死になる霊力弾を至近距離から放ってきたが、予めその弾道が視えていた私は難なく避ける。まあこの反応も分かっていた事だ。逆の立場なら私も同じことをしていたし、そもそも今年はH・G・ウェルズの著書『タイムマシン』が発刊される10年前で、タイムトラベラーという言葉や時間移動の概念も人々に広く知られていないからな。

 ちょうど良い。元の時間の博麗神社に関係者が集まっている事だし、彼女を連れて行こう。

 

「信じられない気持ちもわかる。論より証拠だ。まずはこの光景を見てくれ」

「!?」

 

 2秒後の未来に時間移動して千絵の背後に回り込むと、彼女の肩に手を置いてタイムジャンプを発動。西暦215X年10月3日の午後2時15分の博麗神社の境内に転移していった。




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