「い、今の炎何!?」
「あの女の子生きてたみたいだぞ!」
「噓ー! マジで? 信じられない!」
「お、俺は確かに潰れる瞬間をこの目で見たぞっ!」
「つーかあの銀髪の子めっちゃ可愛くない?」
「モデルさんなのかな?」
「もしかして映画の撮影なのか?」
「撮影? カメラどこー?」
妹紅が完全に姿を現し、言葉を話したことでギャラリー達が騒いでいた頃。
「ま、まさかあの状態で生きていたというのか……? 馬鹿な……有り得ない……!」
ついさっきまで妹紅の遺体を拾い集めていた救急救命士の男性は、愕然とした様子で呟いていた。
まあ妹紅の
私も初めて見た時は度肝を抜かれたものだ。
「あー?」
その周囲のどよめきを知り、妹紅は辺りを軽く見まわすと「……あー、これは手品さ。どうだ驚いたろ?」と肩をすくめる。
「手品だって?」
「あれが?」
「あんなの初めて見たぞ」
「CGじゃないのか?」
「嘘だろ?」
「どんな種があるっていうんだ?」
しかし野次馬たちは妹紅の弁明を聞かず、半信半疑の眼差しを向けていた。
そして警察官達はいつの間にか私から離れ、妹紅を取り囲んでいた。
「……この状況について詳しい説明を求める。署までご同行願おうか」
「悪いけどそんなつもりはないわ。私に近づくと火傷するよ!」
直後、妹紅の体から炎が噴出して火だるま状態になり、警察官達はおののきながら一歩下がった。
「な、なんだあいつ……! 化物か!?」
炎の中で平然としてる妹紅に対し、野次馬のうちの一人がそう呟くと、彼女は悲しい笑みを浮かべながら振り向いた。
「……ああ、そうさ! 私は化物さ! さあ、早く退散しないと焼き尽くしてやるぞ!」
そう言って火の玉を作り出すと、野次馬達のいる方角に向けて思いっきり投げつけた。
着弾と同時に爆発と火柱が上がり、一面パニックになった。
「うわあああああ!」
「キャアアア!!」
「に、逃げろおおお!」
「焼き殺される!」
「ひえええええ!」
着弾した場所や妹紅の性格を考えると、明らかに当てるつもりのない火の玉ではあったが、野次馬と救急救命士の人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
残されたのは私と警察官達だけとなり、老年の警察官が部下らしき警察官達に指示を出す。
「クッ、なんてことだっ! 市民を守れ! 発砲を許可する!」
「「「「はっ!」」」」
警察官達は秩序だった動きで腰に下げたベルトから機械チックな細長い筒状の物を取り出し、それを一斉に妹紅に向ける。
あれは確か本で読んだ事がある……〝銃″とかいう外の世界で使われている武器だっけか。
しかしそれにしては、私が見た時よりも随分と洗練されたデザインみたいだが……。
「ふっ、これじゃまるで私が悪者みたいじゃないか。ひどい話だな」
銃口を向けられている妹紅は自嘲するように笑っていたが、警察官達は警戒態勢を崩さない。
「これが最後通牒だ。大人しく投降しろ! さもなければ撃つぞ!」
「ふん、嫌だね。やれるもんならやってみな」
それを妹紅は拒否すると、老年の警察官は大きくため息を吐いた後、部下に向かって指示を出した。
「撃てぇぇぇぇ!!」
刹那、警察官の手元から風船が破裂するような音と同時に光線が発射されて、妹紅は全身をそれに貫かれる。
「ぐはぁっ……!! ぐぅぅっ!」
血液が噴出し、体に細い風穴が空いたその姿は明らかに致命傷であり、普通の人間なら絶命してもおかしくないものだった。
だが妹紅は頭や全身の至る所から血を流しつつも倒れておらず、血気迫る表情で啖呵を切る。
「ほらほらどうした! この程度か!? 化物の私を殺してみろ!」
「う、うわああああああ!」
「馬鹿な……!」
「な、なんだよこいつ!」
「ひいっ……」
警察官達は皆銃を下げながら後ずさり、恐怖の表情を貼り付けて、すっかりと怯んでしまっているようだった。
そしてその隙を付き、妹紅は警察官達の間を縫うように通り抜け、私の元に来た。
「今の内に逃げるよ! ついてきて!」
「お、おう!」
私は妹紅の手を取り、彼女と一緒に駆けていく。
「――はっ! お、追えー! 絶対に逃がすな! 取り押さえろ!」
「我々の手では負えない! 本部から応援を要請しろ!」
「「はっ!」」
背中から一拍遅れて聞こえてきたそんな声と共に。