申し訳ありません
追記 西暦が間違っていたので修正
申し訳ないです
西暦250X年5月28日――
再びこの時代に戻って来た私は、神社の鳥居をくぐって敷地内に入り、社の中に上がり込む。
「驚いたな、本当に5分で帰って来たのか」
「私にとって遅刻という概念はもう存在しないのさ」
「はは、なんだよそれ」
そんな軽口を叩きながら、私は妹紅の正面に座った。
「それで、どうだったんだ?」
「準備万端だ。これを飲めば外の世界でもバッチリ魔法が使えるようになるぜ」
私はマナカプセルを見せながら自信満々に言った。
「へぇ、じゃあ今夜がかなり待ち遠しいな。早く約束の時間にならないかな」
と呟いたところで、妹紅は私の顔を見た。
「そうじゃん! なあ、すぐに深夜に行こうよ! その時間だと私眠くなっちゃうし、こうして待ってるのも暇だしさ!」
「別にいいけどさ、麗華に相談してからにしようぜ。留守番を頼まれていることだし」
「それもそうね。ちょっと気がはやり過ぎたわ」
その後妹紅と適当に雑談を交わしながら時間を潰していると、しばらくした頃に大きな紙袋を抱えた麗華が買い物から帰って来た。
「ただいま~! あっ」
「おっと危ない」
縁側と畳部屋を仕切る襖のレールに躓き、崩れ落ちそうになった荷物を私は咄嗟に支えた。
「す、すみません」
「随分沢山買ったんだな。手伝うよ」
「はい。お願いします」
それから麗華と共に台所に向かい、野菜と果物を適切に仕分けながら冷蔵庫に仕舞っていった。
やがてそれがすべて終わった頃、麗華は軽く頭を下げた。
「ありがとうございました。わざわざ手伝ってもらっちゃって」
「麗華にはここの所、色々とお世話になってるからさ、これくらい気にしなくていいよ。それよりさ、話したいことがあるんだ」
「はい! なんでしょう?」
「私さ、これから妹紅と一緒に紫との約束の時間に跳ぼうと思うんだ」
「え、そうなんですか?」
「さっき妹紅と話し合って決めた事なんだ。だからごめんな」
妹紅の言葉もそうだし、私自身も改善したタイムジャンプの出来栄えを確認したいという狙いがある。
「そうですか~、分かりました! でもこの埋め合わせはいつかきちんと払ってもらいますよ?」
「うん分かったよ」
それから妹紅と共に境内に出た後、麗華が見守る中私は妹紅に密着し、魔法の詠唱に入る。
いつものように歯車の形をした魔法陣が現れ、ギアが回って行く。
「タイムジャンプ!」
魔法陣から光が溢れ出て、私は目を閉じた。
やがて魔法が終了した気配を感じ、目を開ける。
春の朗らかな日差しは影を潜め夜の冷たい空気が空を支配し、月明りが神社を照らし出していた。
私は妹紅から離れて、一人心の中で喜んだ。
(よし、成功した。今のところ体に何も不具合は生じてないし、これはもう成功と言ってもいいだろう)
「ほぉ~一瞬で夜になっちまったな。今何時だ?」
感心しながら空を見上げる妹紅に、私は「約束の時間の5分前に設定したから、23時55分だな」と答える。
「ふわぁ~ぁ……、魔理沙さん、妹紅さん。こんばんはです」
「!」
舌たらずな甘い声が聞こえ、咄嗟に振り向くと、そこには麗華の姿があった。
「れ、麗華!?」
彼女はいつもの脇が開いた巫女服でなく、リボンを外して白装束に着替えており、周りの雰囲気とその衣装から一瞬幽霊に見えてしまい心臓が跳ね上がったのは内緒だ。
「な、なんでここに?」
「午前0時に跳ぶと聞いたので……少し前から待っていたのですが…………」
彼女は昼間のような快活さはなく、目を擦りながらフラフラとしていて、とても眠そうにしていた。
「…………」
「おっと危ない」
地面に倒れ込みそうになった麗華を、私はとっさに支える。
「す……みません。もう……限界な、ので、神社に………戻ります……ね。頑張っ……て…………ぐう」
途切れ途切れの言葉はついに完全に途絶え、腕に抱える麗華からは寝息が聞こえてきた。
どうやら本当に眠気の限界だったのだろう。
「う~ん、何だか悪いことをしちゃったな。とりあえず中に入れないと」
「手伝うよ」
「おう、サンキュ」
妹紅と二人で麗華を抱えて社の中に入って行き、予め敷いてあった布団に寝かせた。
「おやすみ」
そして社を出た頃何もない空間にスキマが浮かび上がり、紫と藍が現れた。
西暦250X年5月29日――
「ふふ、時間通りね。いえ、時間にぴったりと合わせたのかしら?」
どうやら紫は私達が時間移動したことを察知していたようだ。
「まあな」
「藍、その荷物はなんだ?」
妹紅の質問で八雲藍に目を向けてみれば、紺色のリュックを背負っているのに今更ながらに気付く。
「この中には研究所で使う工作道具が入っている。精密機器が入ってるから触らないでくれ」
「ふ~ん」
「それで段取りはどうするんだ?」
「まずこれを見て頂戴」
紫がスキマの中から取り出したリモコンのようなものを空中に向け、ボタンを押す。
すると、私達の前に透明な画面が浮かび上がり、そこには立体的な地図が映しだされた。
「これが柳研究所の全体図よ。敷地面積二千平米の土地に3階建ての鉄筋コンクリート製の建造物があってね、研究所の周りは鉄製のフェンスで囲まれ、柵の上部には有刺鉄線が張り巡らされているわ。さらに敷地内には外敵の侵入を感知する赤外線センサーと、銃を持った十二人の警備員が交代で巡回しているの」
「ただの研究所にしては随分と警備が物々しいな。骨が折れそうだぜ」
それが私の思い浮かんだ感想だった。
「でも安心なさい。私のスキマならこれらの警備をすっ飛ばして、目的の部屋に直結出来るから」
「つくづく思うが、境界を操る程度の能力って便利だな。セキュリティなんてあってないようなものじゃないか」
万能なこの能力があるからこそ、八雲紫は大妖怪になれたのかもしれない。
「そして私達は3階の中央にあるサーバールームに乗り込むわ。そこのサーバーから藍がハッキングを仕掛けてメインコンピューターに侵入し、社内ネットワークとクラウド上から目的のデータを消去する」
八雲藍の方をちらりと見ると、彼女は私の視線に気づき頷いた。
「藍の掴んだ情報では室内を巡回する警備員は2人。あなた達には藍がハッキングしてる間、見張りをお願いするわ。それが終わったら破壊活動に励んでちょうだい」
「任せてくれ。全てを燃やし尽くしてやるよ!」
「分かった」
妹紅は右手の拳に炎を纏い、意気揚々としており、かく言う私も、少しワクワクした気持ちになっていた。
「さて、それでは行きましょうか」
紫が右腕を振るうと同時に目の前の空間が裂け、人が通れるくらいの大きめのスキマが出現する。
「私の後についてきなさいね。さもないと、命の保証は出来ないわよ」
「おいおい、おっかないこと言うなよな」
「冗談よ」
「どうだか」
私は肩を竦めつつ、紫の後に続いてスキマをくぐっていった。