魔理沙のタイムトラベル   作:MMLL

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第76話 太古の地球

 ――紀元前39億年7月31日――

 

 

 

 渦の中に飛び込んだものの、景色は先程とあまり変わらず、広大な宇宙があるのみだった。

 

(んー? てっきりあの時計だらけの変な場所にいくと思ったのになぁ)

 

 また妙な事に巻き込まれるかもしれない、と身構えていたのが馬鹿みたいだ。

 

「魔理沙、外見てみろ!」

 

 興奮気味の妹紅の声に釣られてコックピットの外を見てみると。

 

「これが……39億年前の地球なのか?」

 

 ガラリと変わってしまった地球の姿が、そこにはあった。

 表面の半分以上が銀色に濁った水で覆われ、私の時代では7つに分かれていた大陸が一か所に固まり、とてつもなく巨大な大陸になっていた。

 さらにその大陸の表面は、西暦200X年の時は緑と茶色が混ざり合った色をしていたけど、この時代は茶一色でなんだかとても寂しい。

 

「緑がないと侘しいなぁ。200X年の地球は凄く美しかったのに」

 

 それに地球の大きさが少し小さくなっているような気もするし、月も私の時代よりも遥かに近い場所に在る。まさに今、私は惑星の創成期に立ち会っているのだろう。

 地球の外観が著しく変化しているので、まず間違いなく時間移動は成功しているが、念のために現在時刻を確認するべく、コックピット内の時計に視線を向ける。

 しかしエラーを叩き出していたので、仕方なく私は自分の脳内時計へと意識を向ける。

 すると『B.C.3,900,000,000/07/31 12:10:09』と表示され、あまりに桁違いな数字に眩暈がしてしまった。

 

(うん、やっぱり時間跳躍は成功してるのか。となると、あの黒い渦は高次元へ侵入する〝門″みたいなものか?)

 

 この辺の謎もいずれ検証しないといけないだろうが、まずは原初の石を探すことから始めよう。

 

「にとり、早速降りてみてくれ」

「オーケイ!」

 

 にとりはレバーを強く引き、地球に向かって再突入していった。

 窓から見える景色がコロコロと変わっていく中、やがて宇宙特有の陰湿な空気でなく、星の中へ入った事を意識させる景色に変化していった。

 外は鳥影一つ見えず、雲一つない晴天。依姫たちが設置した温度計によると、外の気温は80度という猛烈な酷暑になっているが、この機内は適温に保たれているので暑さは感じない。

 眼下にはひたすら銀色に輝く大洋が広がり、四方を見渡しても水平線が見えるだけの、寂しい景色。

 

「海ばっかだな。大昔にはまだ日本列島は存在していないのか」

「陸地はどこにあるんだろう?」

「地図もないし、地道に探すしかないね」

 

 注意深く周囲を観察しながら海上をひたすら飛び続けていると、やがて陸地が見えて来た。

 

「見えた!」

 

 空から見下ろす限り、その大地は果てなく続き、月の表面のように沢山のクレーターが空いて凸凹としていた。

 遠くには、雲を突き抜け、空の天辺まで届きそうな巨大な岩山――山脈というべきか? 大地を取り囲むように聳え立ち、さながらお伽話に出てくる魔女が住んでそうな、おどろおどろしい雰囲気があった。

 あんな山があるなんて話は聞いたことがないし、きっと現代に至る過程で崩れ去ってしまったのだろう。

 宇宙飛行機は海岸を乗り越え、ある程度内陸まで機体を走らせた後、着地出来そうな比較的なだらかな地形に速度を落としながら、ストンと綺麗に着地した。

 

「よーし完璧!」

「んじゃ早速着替えて外に出るか」

 

 私と妹紅は立ち上がってキッチンルームに向かい、宇宙服を取り出した。

 いつもの洋服と違って重いので着るのは少し大変だったけど、お互いに協力しながら何とか着用することが出来た。

 宇宙服は例えるなら着ぐるみを着ているような感覚で、少し暑苦しく感じたが、宇宙服の正面に付いた緑のボタンを押した途端、服の内側に心地よい風が吹き抜けた。

 

「私はここでサポートするからさ。頑張って!」

「おう、任せてくれ」

 

 宇宙服内部から聞こえて来たスピーカーに肯定し、私は依姫の箱を抱えつつ妹紅と共に外へと出た。

 

 

 

 大地は荒野のように寂れ、周囲が海に囲まれているのに草木一本、苔一塊すら生えない異様な光景が広がっている。

 空は昼間にも関わらず夕焼けのように赤く染まり、一回り、いや二回り程度大きな太陽がギラギラと大地を照らしつけ、同時に夜のように綺麗な星々が光っていた。

 これも現在の地球と大気中の成分が大きく違うからだろう。

 

「ここが原初の地球かぁ」

「私達が人類で初めて地上に降り立った人間ってことになるのかな」

「豊姫の話だとこの時代の生物は皆海にいるらしいし、そういうことになるな」

「フフ、何だかワクワクしてきちゃったよ。まるで世界を独占したような気分だ」

「私達は原初の石を拾いに来たんだ。当初の目的を忘れるなよ?」

「はいはい、分かってるよ」

 

 とはいえ周囲を見渡してみても、手ごろな石の塊は落ちていなさそうだったので、少し歩いて探すことにする。

 重力が小さい影響なのか、体が軽く宇宙服の重さは感じないので、少し服が擦れて鬱陶しいことを除けばいつもと変わらない。

 だが時々、小さな、本当に小さな隕石が海に落ちては波しぶきを上げているので、頭上にも気を配り、直撃しないように気を付けないといけない。

 

「全然石なんか見当たらないなぁ」

「こんなことならつるはしでも持ってくるべきだったか」

「魔理沙は時間移動できるんだろー? 今ちょっと未来に跳んで取ってきなよ」

「ここが現在の何処かも分からないのに気軽に跳べないって」

 

 今の私達は、現在の日本列島がある位置から西へ地球半周分くらいの距離を移動した場所に降り立っているので、ここから未来に跳べば、まあ間違いなく異国に辿り着いてしまうだろう。

 無暗に騒ぎを起こしたくないので、ここは気長に探すことにする。

 

「まあこうして歩いて探すのも良いだろ。どうせ石ころなんだからすぐに見つかるって」

 

 そんなこんなでキョロキョロとしながら歩いていると。

 

「おっ、あれなんかいいんじゃないか?」

 

 ちょうど進行方向上に、私の腰くらいまである大きな丸石を発見した。

 近づいて触ってみると、表面は卵のようにひんやりスベスベとしていて、光に反射して眩い輝きを持っていた。

 さらに触れた部分から、力強さを感じさせるオーラのようなものを感じ、何となく気持ちが癒されていく気がする。

 

「これが原初の石なのかな」

「多分そうじゃないか? 不思議な力を感じるしさ」

「んじゃーこれを月に持っていけばいいのかな」

「そうだな。ちょうど箱に入りそうなサイズだし」

 

 私は持って来た箱を床に下ろし、蓋を開いて立て掛けた。

 

「よし、箱に入れるぞ。妹紅はそっち側持ってくれ」

「あいよ」

 

 お互いに向かいあうように立ち、腰を屈めて石の下側を掴んだ。

 

「せーので持ち上げるぞ。せーの!」

「ふっ!」

 

 大地を強く踏みしめ、腰と腕に力を込めた瞬間、ゴムのようにひょいっと持ち上がり、手を離れて50㎝程度空中に浮かび上がってしまった。

 

「うわっ! ととと、ふう」

 

 すぐに落ちて来た石を妹紅と受け止め、息を吐く。見た目の割に軽いんだなこの石は。

 

「運ぶぞ。いいか?」

「ああ」

 

 カニのように横へ二歩歩き、箱の中にゆっくり落として蓋を閉めた。

 

「オーケーオーケー」

「戻ろうか」

 

 帰り道は、妹紅と一緒に箱の淵をもって転ばないように慎重に横歩きで移動していき、やがて宇宙飛行機の元に辿り着くとハッチが自動的に開いた。

 そしてそのまま中へ入り、キッチンルームに箱を慎重に下ろした。

 

「よっし、ミッション完了だな」

「元の時代に戻ろうか――」

 

 ヘルメットを脱ごうとしたその時、にとりから通信が入ってきた。




この話以降プロット的に非常にややこしい展開となり、現在これまでの話と整合性が取れるかどうかチェックしています。
更新速度が落ちるかもしれませんが、完結に向けて尽力していますのでご了承ください。
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