次はD×Dの方を投稿するつもりです。
第二層フロアボス攻略から二ヵ月と一、二週間経った今は一月の中旬。その間にクリスマスとお正月という一年の中でも大きいイベントが二つあった訳だが、俺とカユラの間には何もなかった。というより例年通り過ごした。その際にリズやアスナ達に、
「あんたらいつもこんな感じなのっ⁉」
て驚愕されながら言われたんだが……。別に変った事は無いと思うぞ。
まず、クリスマスは普通にプレゼント交換をして、カユラの手作り料理を(皆で)食べた後部屋で(大みそかには早いものの)今年一年の色々あったことをベットに入って抱き合いながら話していただけなんだが? あ、でも不意打ちで頬にキスされたな。まあ、それも偶にされていたから今更だけど。
次にお正月だが、何故かNPCのお店で売っていたおせち料理(割高)を食べてこれまたなぜか売っていた羽子板や凧で正月らしい遊びをした。あっ……でも、二人羽織の時にカユラが後ろから抱き付いてきた時は驚いた。でも、自分だけされっぱなしというのもなんだか嫌だったので、交代した時にちゃんとやり返したけどな。
そして今はそんな正月気分もすっかり抜け、皆いつも通り攻略に励んでいた。
そんな現在の最前線は二十八層。
第三層でそれぞれがギルドを作ってから、ギルド単位で動くことにより統率や行動が効率化され攻略のペースが上がり、第二十五層を除いた大体の層を一層あたりに付き約三日で攻略してきた。ただ第二十五層だけはクォーターポイントだったので犠牲もこれまでで最悪の数だった。
その犠牲の大半がシンカーという人をギルドリーダーにした“アインクラッド解放軍”だった。因みに副ギルドリーダーはあのキバオウだ。
その他にもリンドはディアベルと考え方の違いにより彼の作った“血盟騎士団”というギルドには入らずに、自分で“聖竜連合”というギルドを立ち上げそこでギルドリーダーとしてアインクラッドの攻略を目指している。
え? 俺達? 俺達は——————
「ちょっと二人とも、アンタ達いつまでそうやってんのよっ! さっさと攻略に行くわよ!」
「そうですよ、お二人が来ないとはじまんないんですからっ!」
「もう……。二人ともギルドリーダーと副リーダーなんだからもっとちゃんとして!」
朝食の満腹感を落ち着かせるためにギルドホーム(と言ってもただの広いログハウス)の近くにある、湖を一望できる草原の丘でカユラとのんびりしていたら、そんな俺達を呼ぶりずとシリカとアスナの声が聞こえてきた。
どうやらこの至福の時ももう終わりらしい。
誠に残念に思いながら俺の膝を枕にして寝ているカユラの頭を撫でる。
あの告白以来彼女は以前より俺に甘えて来るようになった。別にそれが嫌という訳じゃ無い。寧ろ彼女との時間がそれだけ増えたので、俺的にはかなり嬉しい。なので今も俺は素直にカユラにされるがままになっているのだ。
「ほら、そろそろ攻略の時間だから起きろ」
「うにゃ~、後五時間……」
「いや、長すぎだろう……」
こういう時の定番を大きく超える要求をしてきたカユラに思わず呆れた。
だがカユラがそこまで言いたい気持ちも分かる。
季節的には寒いが今日は月に一度の最高の気象設定の日なのだ。風は穏やかで日差しもちょうどいいという絶好の日向ぼっこ日和にのんびりしたくない奴がいるだろうか? いやいない。
だがまあ、そろそろ動くとしよう。後ろから来る三対六つの視線が痛いし。
「カユラ、そろそろマジで起きてくれ」
「は~い。……ん~、良く寝た」
今度は変なボケも無く素直に起きて伸びをしたカユラ。
「うん、じゃあ行こうか…キリ君」
「おう!」
見惚れるほどきれいな笑顔でそう言ってきた彼女に、俺も今できる精一杯の笑顔で答えた。
————まあ、待ってたのは俺なんだけどね。
そして俺達は手を繋いで皆が待っている所に向かって歩き出した。
「オース、キリト」
「ん? よぉクライン。相変わらずの野武士面だな」
「ほっとけ。そういうお前らは相変わらずのリラブラブっぷりだな」
俺とカユラが手を繋いでいるのを見てニヤニヤと気持ちの悪い笑みを見せながらそう言って来る。
恐らく俺とカユラが照れるのを予想して言っているのだろうが生憎とそうはならない。
「勿論。私とキリ君はお互いを隅々まで知り尽くしてるからね」
恥ずかしげもなくそういうカユラ。その発言にウチの女性メンバーは色めき立っていて、あちらの残りのメンバーは俺に殺気を飛ばしてきた。
クラインは第一層で俺と別れた後、ネット仲間を全員見つけ出し“風林火山”を言うギルドを作り第二十六層から最前線に参加している。
何だかんだ言っても、俺はコイツが攻略組に来てくれた時は頼もしさと安心感を感じた。
口に出したら調子に乗るから言った事は無いけどな。
「それにしてもえ~……と、何だっけ? お前んとこのギルド名」
「“モノクローム”だ。それぐらい覚えておけよな……」
この名前になったのは偶々だ。他にいい名前の案が出なかった為、候補の中で一番まともだったこれになったてだけだ。
「そうそうそれそれ。いや~、女性陣が美人ぞろいで羨ましいぜ」
「全く、あの子たちをあんまりジロジロ見ちゃだめよ。そういうのに耐性ないんだから」
「よぉルル、相変わらず世話焼き気質のオカンだな、おめぇ」
「……それは老けてるって言いたいのかしら?」
「ヒィッ⁉ 違う違う違います! だからその槍を下ろしてください!」
槍を突き付けられて土下座している野武士面。うん、漫才にしか見えないな。
何でもあの二人は幼馴染らしいけど、単なる幼馴染じゃなくてもっと複雑な関係らしい。
以前ルルに聞いたら、
「幼馴染で元恋人で永遠に続く腐れ縁よ」
って言われたんだよな。
クラインとルルが一時期付き合っていたってのも気になるけど、永遠に続く腐れ縁ってどういう意味だ?
「———字。おい、キリの字!」
「え? あ、ああ悪ぃ聞いてなかった」
「だから、人数がちょっと多くなっちまうが、この後一緒に行動しないかって聞いてんだよ」
「ああ、別に構わないぞ。皆もいいか?」
俺の問いに皆頷いた。それを見ていた風林火山のクライン以外のメンバーがオーバーリアクションで喜んでいた。
「喜ぶのはいいがお前ら、カユラに手を出したら……ワカッテイルナ?」
『サ、サー! イエッサーッ!』
俺の質問に一糸乱れぬ綺麗な敬礼で答えてくれた。うん分かればいいんだ。分かれば。
え? 当の本人はどうしてるかって? 幸せいっぱいって顔で俺の腕に抱き付いてるよ。
俺はそんな彼女の頭を優しく撫でる。すると彼女はますます笑みを深めた。
カユラマジ天使。
……ゴホン、失礼余りのカユラの可愛さに少々取り乱していたようだ。
「おいルル、あいつ等マジで付き合ってねぇの?」
「ええマジよ。……まぁ誰かさんたちの様に焦って付き合った結果、幼馴染同士の方が良かったって後悔しながら別れるよりはマシなんじゃない?」
「……そうだな。確かにお前の言う通りだ」
? クラインの奴いきなり雰囲気が暗くなったがどうしたんだ? ルルとの話でなんか動揺する事でも言われたのか?
「ねぇ、キリ君」
「ん? どうした?」
「うんん、何でもない。ただ……呼んでみただけ」
微笑みながらそう言ってきた彼女は、そのまま俺に体重を預けてきた。
ああ、君のその行動一つ一つが愛おしい。
「……カユラ」
だから俺はそれらの感情をこめて彼女の名前を呼んでみた。
「何?」
「呼んでみただけだ」
「フフッ、私と一緒だね」
「ああ、一緒だな」
俺達はお互いに微笑みながらさらに身を寄せ合う。お互いの存在を相手がちゃんと認識できるように。
『リア充が、いなくなるまで、俺達は、殴るのを、やめない!』
「おい、ルル。あいつらあれで本当に————」
「ええ、付き合ってないわ。不思議な事にね」
「アスナ君、すまないが醤油ラーメン(の様なモノ)はあるかね?」
「いや、口の中が甘いならコーヒー(の様なモノ)を呑めばいいじゃないですか。まあ、ありますけど」
「あっ、じゃあアタシにも一杯頂戴。コーヒーモドキだけじゃ飽きちゃってさ」
「あのアスナさん、塩味はありますか?」
「大丈夫ちゃんとあるよ。ちょっと待っててねシリカちゃん」
「おーいPoH達、お前らもコーヒーだけじゃあ飽きただろう。ジンジャエールモドキでも飲むか?」
「nicetiming。ちょうどコーヒー以外の味が欲しかったところだ。遠慮なく頂こう」
「エギル、コーラは、あるか?」
「オレサイダー~」
「残念だが最近やっとこれが完成したばっかでな。他の奴はまだ試作段階にも至ってない」
「仕方ないな。じゃあ、ジンジャエールで、いい」
「サイダーに期待しとくぜぇ~」
「おうよ! 任せときな」
後ろがなんか騒がしかったがそんな事は気にせずに、俺達は身を寄せ合っていた。
「————え~と……これはどういう状況なのかな?」
そして
あの後自身のギルドメンバー兼パーティーメンバーを引き連れて現れたディアベルに、私とキリ君は安全地帯で説教を受けていた。内容を要約すると時と場所を考えた上に節度を持ってイチャイチャしろ、というもの。私はこの言い分を彼女が出来な奴がキリ君に僻んでる、と捉えている。
いや、これでもキリ君とイチャイチャするの押さえてる方なんだけど。本当は今すぐにでもキスしたい気分。勿論唇に。
だが、そういったのはちゃんとした恋人同士になってからな、と他でもないキリ君自身に言われてしまったので今の状態になっているのだ。
十年以上も待ったんだから後数日或いは数週間位は待てるだろう、と思う人もいるかもしれないがキリ君に対するこの気持ちを自覚してからは、以前にも増して歯止めが利かなくなってきているので、キリ君には出来れば早めに決めてほしいと思っている。寧ろあの第三層の時から今日までの二ヵ月弱もったのが奇跡に近い。
「—————って訳で……て、聞いてるのかい二人とも?」
『アアウン、チャントキイテルヨ』
「………君達は俺をバカにしているのかい?」
何故だろう、素直に答えたのにディアベルのこめかみがピクピクと痙攣している。解せぬ。
だが私はそんな事よりも、キリ君とハモれたことに小さな嬉しさを感じる。
「まま、もうそれ位にしてやってはくれないかなディアベル君」
「大体あなたが二人にキツく注意しないからこうして俺が代わりに注意をしているんじゃないですかっ! あなたがちゃんと注意すれば俺がこうして注意する事は無くなるんです!」
「それを言われると痛いが、私としては今までのもどかしい関係を近くでずっと見て来たからな。そういう訳で二人がやっとお互いの気持ちを理解して、いい方向に向かおうとしているのをキツく注意はできないのだよ」
紅い騎士と青の騎士が目の前で言い合いをしている隙に私とキリ君はその場を逃げ出した。
「それでどうするの? もう休憩終わりにする?」
「いや、この状況じゃ無理だろう……」
そう言いながら周りを見渡すキリ君につられて私も周りに目を向けてみた。
「いや~、エギルはんもなかなかお目が高いですわ~」
「いやいやそういうお前さんも、これに目を付けるとは中々いい鑑識眼をもってるじゃねえか」
「フムフム、しかしPoH殿それではパワーでゴリ押された時にどうしようもないぞ。此処はやはりこちらもパワーで———」
「あーOKOkお前の言いたいことは良く分かる。だが俺達はお前ほどmuscle-brainじゃねえんだ。そこのところをもっとよく考えてから言え」
「……ゴ、ゴドフリーゴドフリー、まだ攻略に行かないのか?」
「団長様があの様子だからまだだろうな。それよりお前も私の後ろに隠れていないで“モノクローム”や“風林火山”の人達と話さないか」
「い、い、い、い、いい! 俺はいい! 俺は“血盟騎士団”のメンバーとだけ話せればそれで良い!」
「どうやら、コミュ障と、いうより、対人恐怖症の、ようだな」
「だなぁ~。あれはウチの坊ちゃんより酷いぜぇ~」
キリ君は基本というより全く皆から“団長”や“リーダー”的な呼ばれ方をしない。本人もその方がいい、って言ってるし私も変にキリ君が祭り上げられるのは好きじゃない。
それにしてもあの髭もじゃゴリラの後ろに隠れている前髪を一房垂らした顔の痩せこけた人、彼は粘着気質のストーカーかと思ったけどまさか対人恐怖症だったとは……。人は見かけによらないね~。
「……あいつら、好き勝手言いやがって……」
「まあまあ。それよりも事態が収束するまでそこに座って休んでない?」
アスナ達女性陣も女性陣で、集まって女子会の如く話しているし、他の血盟騎士団のメンバーもクラインを除いた風林火山のメンバーと一緒に一心不乱に地面を殴っているんだけど……何をやってるの?
そして私とキリ君は、ちょうど背中を預けられるところに座りお互いに寄りかかった。
「……な、なあカユラ。あ、あのさ……」
「ん? 何?」
珍しくし私相手に挙動不審になっているキリ君。そんな彼の姿も可愛いと思ってしまう私はもう末期なんだろうか。
コテン
そんな効果音が似合いそうな感じで、キリ君の頭が私の伸ばした足の上に落ちて来た。
「終わったら起こしてくれ」
「それはいいけど、この体勢はちょっとキツイから一旦頭退けて」
「ん」
四十五度くらいまでキリ君の頭が上がっている隙に、私は足を伸ばした状態から折り畳み正座する。
「はい、どうぞ」
「ん。じゃあお休み(うっ、カユラの胸が当たる……。……平常心平常心)」
「お休み」
体勢を入れ替えた私の足の上に再び頭を置いたキリ君は、そのまますぐに寝息を立て始めた。
私はそんな愛おしい彼の頭を、起こさない様に静かにゆっくり愛おしげに撫でる。
あ~、幸せ。もうずっとこうして居たいくらい。
『(リア充爆発しろっ‼)』
『(お前らは早く
? みんなからなんか電波が来た気がする。まあ、気のせいだろう。
そして私は皆の事態の収拾がつくまで、キリ君を膝枕してその頭を撫で続けた。
これが最近の私達の日常。
という訳で彼らの日常的な話でした。次回もオリジナル回です。
この回から原作一巻に入るまでは全てオリジナル回となる予定です。
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