それと活動報告で言った通り、バカテスの最新話を削除して今新しいのを書いています。
これからもよろしくお願いします。
それと今回初めて本文の文字数が一万字を超えました(嬉)!
何気に最高記録も更新です。
告白
次の改装に続く扉に向かって歩くキリト達を、第一層フロアボス攻略レイドの面々は呆然と見つめていた。そしてその中でも、一番入り口に近いプレイヤーは一人ポツリと周囲の誰にも聞こえない程の声音で呟いた。
「さあ、ここからが始まりよ。頑張ってね
そう呟くと、そのプレイヤーは空気に融けるようにして人知れず消えた。
第二層の転移門のアクティベートを済ませたキリト達は、人数分より一つ少ない部屋数がある宿を貸切にして、その宿の一階にある食堂でささやかな第一層突破記念パーティーをしていた。
「それじゃあ全員無事に第一層を攻略できたという事で……カンパーイ!」
『カンパーイ!』
慣れない事をしている自覚があるキリトは、顔を赤くしながらも持ているコップを掲げた。そして全員で囲んでいるテーブルの中心辺りで、それぞれのコップがぶつかり合いカチャンをいう音が鳴る。そしてそれぞれが思い思いにテーブルの上に並べられた料理を食べて行く。
まだ第二層である為、料理はお世辞にもおいしいとも不味いともいえない微妙な味ではあったが、彼らはそんな事は気にせずに食べていく。
「この後はどうすんだ」
酒(らしきもの)を呑みながらキリトに尋ねたエギル。
「さっきちょっとアルゴとカユラと話したんだが、少し休憩して満腹感が薄れたら、東の端に一際高くそびえる岩山の頂上近くで習得できるっていう”体術”スキルを取りに行こうって思ってるんだけど……お前らはどうする?」
キリトはさり気なーく自分達の会話を聞いていたアスナ達にも声を掛ける。
「え、えーと私も行きたいかな?」
「あ、アタシもアタシも」
気まずそうにアスナが、その気まずさを紛らわすようにリズが行く意思を告げ、それに続いてPoh達も参加する意思を見せたので結局みんなで行くことになった。
「ね、ねぇちょっと休まない?」
「そうだな。じゃあそこの安全地帯で一休みするか」
二桁を超える戦闘と永遠に続くかと思うほどの長い洞窟を、圏内から休みなしで進んで来た事により疲れがたまっていたリズが休憩を提案すると、ちょうど近くに安全地帯あったこともありキリト達男性陣もその提案に賛成したので、安全地帯で一休みすることになった。その際男性陣は男性陣、女性陣は女性陣といった感じに分かれて世間話が始まった。
「ねえ、カユラ。あんたとキリトとの関係ってさ、実際の所はどうなの?」
「あ、それは私も気になります」
「実はもう付き合ってたりして」
「ええっ⁉ そうなんですか⁉」
……どうしよう私まだ何も答えてないのに話が勝手に進んでしまっている。
それにしても和君との関係かぁ~………やっぱり幼馴染が今の所一番適切かなぁ。本当はこ、恋人同士になれたらなぁ~と思うけど、男子の精神面の成長は一般的には女子より遅いから、恐らく和君もその例に漏れていないから今こ、告白しても和君が困っちゃうだろうし……う~ん、前途多難だ。
「で、結局のところはどうなのかしら?」
いつまでも私が黙っていたのでじれったくなった皆を代表してルルが改めて聴いて来た。
そういえばルルは、自己紹介の時の様な丁寧な感じの敬語から親しみやすいタメ口にいつの間にか口調が変わっていた。それが彼女との距離が少し近づいた気がしてちょっぴりうれしくなった。
「う~ん? 幼馴染、で会ってると思う」
『ええっ⁉』
……正直に言ったのに驚かれた。しかもみんなの声が大きかったから男性陣が何事かといった風にこっち見てるし。
「ちょっとカユラ、嘘はいけないわよ嘘はっ‼」
「そうですよカユラさん。毎晩一緒に寝てるのに恋人じゃないってことはないじゃないですか」
「ええっ⁉ 二人って毎晩一緒に寝てるの⁉」
「いや違うからね。一緒の部屋って意味だから。決してアスナが考えている様に一緒のベットって意味じゃないから」
はい、嘘つきました私。実は数日に一度はキリ君と一緒のベットで寝ています。いや、別に深い意味なんてありませんよ?
因みに一緒に寝ている理由としては、あっちの世界からの習慣とでも言っておきましょうか。私とキリ君が小さい時に今の私とキリ君との関係になるきっかけの事件がありまして、その事件の後しばらく私は情緒不安になっていました。そしてその間はなかなか寝付けなかったので、キリ君を抱き枕代わりに抱き着いて寝ていたんですが、抱き心地は良いし温かいしですっかり私はキリ君の魅力にハマってしまいまして、それ以降も余程のことが無い限りはほぼ毎晩キリ君に抱き着いて寝ていた私です。まあ流石に小学校高学年になった頃からはキリ君にも羞恥心というものが出て来たようで、「ちょっと遠慮してくれ」と言われたので数日に一回まで回数を減らしましたが。
仮想世界の中では温もりとかは再現されませんが、小さい頃からの習慣という事で今でも数日に一回は一緒に寝ているという訳です。
「ふ~ん、本当にそうなのかしら?」
ルルが含みのある顔で私のことを見ながら聞いてきますが無視です。こういう顔の人には関わるとろくな事がありません。
「あ、じゃあさあキリトにも聞いてみようよ」
「ちょっ」
リズの言葉の意味を素早く理解し止めに入ろうとするが、
「まあまあ、別に減るもんじゃないしいいじゃない」
「そうよ。こういう時女はドッシリと構えているものよ」
両側からアスナとルルに抑えられてリズを止める事が出来ませんでした。まあ抑えられなかったとしてもタイミング的に間に合ったのか微妙ですけど。
「おいおい何やってるんだよ」
そんな事を思っている間にキリ君が来てしまいました。
クソッ、どうする?
一、キリ君に色仕掛けして言わせないようにする
二、悪あがきをする
三、諦める
これしか選択肢が無い……だと⁉
取り敢えず一は却下。そんな事をすればレイドパーティーにレアアイテムを放り込むようなもの。たちまち場が盛り上がってしまう上に、これから先私(と多分キリ君)はその事でみんなにからかい続けられるでしょう。
という事で、
「リズベットさん? 後生ですからキリ」
「ズバリ、あんたとカユラの関係ってどうなのよ」
選択肢二……失敗。クソぅ、こうなったらキリ君頼みです。
「……!」
私達の状況を一瞥した後何かを思いついたような顔をした後彼は口を開きました。
「俺は何があっても
『………』
「あ、あれ?」
まさかの答えに私以外の女性陣は驚愕した。恐らく兄妹とかそんな関係が出て来ると思ったのだろう。
かくいう私の頭は、
どうしようもないほど冷静になっていた。
先程のキリ君の言葉は普通の男子が女子に言ったならロマンチックな言葉だっただろう。場合によってはプロポーズになっていたかもしれない。
だが、キリ君の場合は過去への執着や後悔、自分への戒めといった意味を含んでいる。もしかしたら別な意味も含んでいるかもしれないけど、あの事件があった後キリ君が私に初めてその言葉を言った後は今言ったような意味が含まれていた。
そして私はその言葉をキリ君の口から聞くたびに後悔と不甲斐無さが心の中で渦巻き、そしてもう二度とあんな出来事は起こさないという誓いを再認識させられる。
「……え……っと、それは本当なの? キリト君」
「ああ、この想いだけはいつまでたっても変わらないさ」
はかなげな顔をして私の方を見ながら言ってきたキリ君の顔を見た瞬間、私はどうして彼に告白しないのかその本当の理由が分かったような気がした。
結局怖いのだ私は。あの時のようなことが起こるのが。
あの事件は私の所為で起きたものだった。そしてキリ君はそれに巻き込まれて、未だに消えない傷をその背中に負っている。SAOは妙な所でリアリティがあるから、恐らく”全武装解除”のボタンを押して、裸になったキリ君の背中を見たら今でもある筈だ。その時の傷が。
もし私がキリ君に告白をしてキリ君がそれを受け入れたら、キリ君と私の距離はあの時以上に近くなる。あの時でさえキリ君はシャレにならない怪我を負ったのに、その時以上にキリ君と私の距離が縮まったら今度は命さえも危ないかもしれない。そうなるのが怖いから私は告白しないのだと思う。多分、いやきっとキリ君は私の事を受け入れてくれると思うから。
「そ、そんな事よりそろそろ移動を再開しよう」
先程までの言葉を思い返して、恥ずかしくなったのか彼は私達から顔を背けるようにしながら言い放った。
「そうですね。そうしましょっか」
「そうね」
私がルルとアスナに捕まったあたりから、ずっとオロオロしていたシリカちゃんがキリ君の意見に同意し立ち上がる。
そしてそれに続くようにしてルルも立ち上がった。向こうでは男性陣はもう既に移動する準備が整いつつあった。
「それじゃあ行くか」
キリ君はそう言って男性陣がいる前衛へと戻っていった。そしてどうやらそこで先程の事についてからかわれているようだ。
「それでどうだったの?」
「そうそうどうだったんダ?」
「何が?」
アスナとリズとシリカちゃんの数歩後ろに居た私の横に、アルゴとルルが来てそう問いかけて来た。
「またまた~、恍けちゃって~」
「さっきキー坊にあの騎士が御姫様に言うような言葉を言われた時、どう思ったかに決まってるだロ」
ああ、その事か。
「再認識させられたよ。キリ君と私はこのままの関係と距離がちょうどいいって」
そうこのままの関係と距離なら、キリ君も酷い事には合わないだろうし私もキリ君の傍に、幼馴染としてだけど居られる。この関係がちょうどいいのだ。
それに私は、その”騎士とお姫様の関係”が嫌いだ。別に他の人達がその関係ならばなんら問題はない。寧ろ素敵な関係だね、と言ったような言葉を贈るかもしれない。
だがその関係が私とキリ君の関係を表すものとして使われるのは酷く嫌だった。
お伽噺や物語などではパッピーエンドを迎える騎士とお姫様の関係だが、現実はそう甘くなくどれも悲惨な最後を送っている。かの円卓の騎士の一人である湖の騎士ランスロットとアーサー王の王妃ギネヴィア叱り、愛の黒子ディルムッド・オディナとエリンの王女グラニア叱り。
だから私は、”守られるだけのお姫様”から”隣で一緒に戦う
「ふ~ん」
「まあ、カユラっちがそう言うならいいんダ」
私の言葉に納得がいかないような二人だけど、それ以降は深く追求せず攻略の事等ありきたりな話しかしなかった。
「や、やっと着いた~」
「疲れました~」
”体術スキル”を獲得できるクエストを、受ける事が出来る小屋の前に着いた瞬間リズとシリカちゃん。
あんまり戦闘に参加しておらず、もっぱらサポートがメインの二人だったけどずっとあたりを警戒しながら進んできたから疲れたみたい。
そして私達は小屋の前にある大きな岩がゴロゴロ転がっている場所で、ちょっと休憩した後小屋に皆で足を踏み入れた。
「入門希望者か?」
「……ああ」
代表して、と言うよりこの手のクエストは一人ずつしか受けられないので、まず一番最初に事前に決めていた順番に従ってキリ君がオッサンの問いに答えた。
「修行の道は長く険しいぞ?」
「受けて立つ」
短い問答を終えた後オッサンの頭の上にあった!マークが?マークに変わった。そして小屋を出て行くオッサンの後に皆で付いて行った。
オッサンが向かったのは先程まで私達が休んでいた場所にあった大岩の一つ。
「汝にはこの岩を両の拳だけで割ってもらう」
「………」
オッサンにそう言われると、無言でその大岩をノックするように叩いて何かを確かめるキリ君。その後一度頷いた彼はオッサンに向き直って、
「うん。無理」
「それでは汝には弟子である証を立ててもらうぞ」
しかしオッサンはキリ君の言葉を無視して、着ていた道着の胸元から小型のツボと太くて立派な筆を取り出した。
「え、ちょっ⁉ ま」
これからオッサンがやる事が安易に予想できた私達。勿論キリ君もその一人で、彼は制止の声を上げようとしたけどオッサンンはその言葉の途中で、見事な筆さばきを私達に見せてくれた。
「のわっ⁉」
髭書きが終わった瞬間にちょうど此方を向いたキリ君。
『………』
そのまま無言で見つめ合う私達とキリ君。
『プッ……ククッ……アッハハハハ‼』
「わ、笑うなよっ! てか、皆も早くクエストを受けろよっ!」
私達に笑われて恥ずかしくなったキリ君は、オッサンが消えていった小屋を刺しながらそう言う。
「や、やっぱり私遠慮しようかな~」
「そ、そうですね。私もそうしときます」
「あら、でももしもの時の為には取っておいて損はないんじゃない?」
キリ君と同じ目に遭うのは避けたかったリズとシリカちゃんは、辞退しようとしたけどルルにそう言われたのと二人以外の皆が受けることを決めたので、仕方なく二人もクエストを受けることにした。
クエストを始めてから六時間以上たった現在、皆は一人の例外もなく地面に横たわっているかしゃがんでいた。此処に来た時はお昼前だったのだが今ではすっかり日も落ちかけている。途中でお昼休憩を取ったものの、やはり皆永遠と大岩を殴るだけの作業は退屈で疲れたようだ。
「あ~、お腹減った~」
「私もです~」
外見など気にも留めずに地面に倒れているリズとシリカちゃんがそう言った。
「はいはい、今準備するから待ってて」
そう言いながら私はウィンドウを操作して、今朝作っておいたおにぎりの入ったバスケットを取り出す。視界の端ではアスナもおんなじ様な大きさのバスケットを取り出していた。
「せーの」
『いっただっきまーす』
皆で声をそろえてそう言った後、キリ君とリズが素早く手を伸ばしておにぎりを取り勢いよく食べ始めた。そしてそれに続くようにして他の皆もおにぎりを食べ始める。
「おっ、これは鮭モドキね」
「あうぅ、すっぱいですぅ」
「Oh、これは肉団子モドキか? 中々uniqueな中身じゃねえか」
「明太子こそ、おにぎりの、定番」
「はぁ~? 何言ってんだよぅザザ。シーチキンこそざ最強だぜぇ」
「へえ、これは中々斬新な味だな。向こうに戻ったらおにぎりもメニューに入れてみるか」
「むぅ、何故ラーメンが無いのだ」
「いや、普通はこういう場面ではラーメンは出ないと思うけど」
「あ、これ物は試しにってやった奴だけど意外とイケるね。次はどんなのにしよっか?」
「う~ん? 意外と木の実系もイケるんじゃない?」
そんな会話を私達はしながら私達は楽しい時間を過ごした。
そして楽しい時間が終わり、皆でこの場所で野宿することになったのでアイテムストレージからそれぞれ寝袋を出していたのだが問題が起きた。
「一、二、三、…………。ふむ、一個足りないな」
そう寝袋が一個足りなかったのだ。
「そして寝袋のうち一つは、図ったかのように二人用の寝袋だしね」
「じゃあカユラっちとキー坊が一緒に寝ればいいんじゃねえカ?」
「あ、それは良いわね」
「ちょ、ちょっと二人とも⁉ そんなの絶対だめよ‼」
「リズの言うとうりですよ。そんなの絶対ダメです!」
アルゴとルルの意見にアスナとリズが猛反対している。
「いや……私は別にキリ君とで大丈夫なんだけど」
「そうだな。俺も別に問題ない」
「全然大丈夫じゃないよカユラ⁉ 男は皆狼なんだよ? 一緒に寝てて襲われたらどうすんの?」
「いや襲う訳無いだろ。……襲いたい襲いたくないで言ったら襲いたいが」
? 最後に何言ってたのかは聞こえなかったけど、……そっかぁキリ君は私を襲わないのかぁ。ちょっとショックだなぁ~。
「別に大丈夫だよアスナ。それに私キリ君になら襲われてもいいし」
『なっ⁉』
「えっ⁉」
「AHAHAHAHA~」
「羨ましい」
「だよなぁ~」
「ニャハハハハ」
「ほう」
「程々にな」
「フフ、じゃあカユラちゃんとキリト君は一緒の寝袋で寝るってことで」
ルルがそう〆て私達は眠りのついた。
ところでキリ君が私の発言の後に、何やら葛藤してたけど、どうしたんだろう?
「?」
意識が半分以上覚醒していなくて目も開いていない私は、外部からの突然の外部からの刺激にその閉じていた目を開けた。そして目ぼけ
明けた瞳に最初に入って来たのは綺麗な星空。普通なら次の層の底が見えるはずだが、『夜にダイブした人が夜空を見れないのはおかしい』という私の意見により、各階層の何処から見上げても昼には空と太陽が、夜には月と星が見える仕様にしてある。
ドッ! ガッ!
なにやら音が聞こえたので其方を向いてみる。
「何やってるの? キリ君」
そこには何時ものコートだけを脱いだ姿のキリ君がいた。一度自分の隣を確認してみると、そこにはキリ君の姿は無かった。普通なら起きた段階で気付くと思うが、私は意識が覚醒しなさすぎて気付けなかったようだ。もしくは、確認するまでもなくキリ君がそこに居ると思っていたのか。
「ん? ああカユラか。悪い起こしちゃったか?」
「うんん、大丈夫。それより何やってるの?」
「早くこれを落としたかったからな。岩殴ってた」
そう言いながら自身の頬を指さすキリ君。暗くて良く分からないがそこには昼間にあのオッサンNPCから書かれた髭があるだろう。結構似合ってて可愛いと思うけどなぁ~。
「そう言ってくれるのはカユラだけだよ」
「えっ、今の声に出してた?」
「いや。でもなんとなくカユラの考えている事は分かるよ」
「……ぅぁ」
そう言われて、私の顔は朱に染まった。起きて数分の私でさえすでに夜目が聞いて来てるので、それより前に起きていたキリ君に確実に私の顔が見えていて、それが朱に染まっている事に気づいているだろう。
……考えたら余計恥ずかしくなってきた。
「おい、boy&girl。イチャイチャするのはいいが俺達もいる事を忘れるなよ」
声のした方を向いてみると、アスナ、リズ、シリカ以外のみんなが居た。
「皆もキリ君と同じ?」
「ああ、我々も早くこれを取りたいからね」
「何で?」
「………」
私がそう問いかけると、ヒースクリフは黙ってしまった。
「嬢ちゃんたちやキリトみたいな歳の子や、女性であるルルなんかは付けていてもまだ大丈夫だろうが、俺達は精神的にも見た目的にもきついものがあるからなぁ。だから早く取りてんだ」
黙ってしまったヒースクリフの代わりにエギルが答えてくれた。
まあ、確かにその理由ならば納得出きる。二十歳超えた成人男子が御髭付けてるとか、何の罰ゲームだよって思うし。
「じゃあなんでキリ君とルルは急いでるの? 別に二人ならビジュアル的にも大丈夫でしょ」
「……恥ずかしいからだよ」
「私はただ目が覚めちゃってやることが無いからやっていただけよ」
「だがそろそろ休むとしよう」
ヒースクリフの言葉で立っていた皆が、アスナやリズやシリカがいる所からは少し離れた場所に円になって座った。彼女達を起こすと悪いという事で、火は焚かないでおいてある。
「なあ、Mr.茅場」
「は?」
「え?」
「ん?」
「はぁ?」
『………』
突然のPoHの問いかけに私とキリ君とヒースクリフ以外の面々が驚く。
「参考までに何でそう思ったのか聞いてもいいかね?」
いや兄さん、それはもう認めちゃってるようなもんだと思うんですけど。
「なにとってもeasyなことだ。お前はβテスターじゃないってフロイラインルルに言ったんだろう?」
「確かに言ったが……」
「なのにあんたはテスターであったアルゴやキリトたちの話に何の不自由も無くついていってやがる。もしお前の『テスターでない』という発言を信じるならば、テスターでもないのに話についていけるお前は運営側の人間ってことになる」
「だがそれだけでは私が茅場晶彦というにはちょっとばかり弱いんじゃないのかね?」
確かに兄さんの言う通りだ。
「いやそれだけあればsufficient。ある雑誌に因れば茅場晶彦はquestやmonsterの強さの設定、更にはitemの設定を全部自分一人でやったらしい。そしてお前は情報屋であるアルゴよりもquestやitemに詳しかった」
「………」
PoHの証明に兄さんは只々黙って聞いている。
「運営側の人間でquestやitemに詳しい人物となると茅場晶彦唯一人だ。よってお前は茅場晶彦となるが、どうだ? 俺の推理は間違っているか?」
……すごい。只々そう思った。
日々の細やかな情報を見逃さず、冷静に情報を分析するという意外と簡単にはできない事が平然と出来ている。
「……ふむ、中々いい推理力だ」
「てことは認めるのか? 自分が茅場晶彦だってことを」
「ああ、認めよう。ここまで立派な推理をされても足掻くほど、私は往生際が悪くはないよ」
遂に兄さんが認めた!
『⁉』
それにより私とキリ君以外の皆が驚愕する。
「………」
「………」
私達はどうしよう、といった思いでキリ君を見ると彼は大丈夫と言いたげな笑みを向けて来た。それだけで私の中に在った不安が軽減された気がした。
「……それで、ヒースクリフの正体が茅場晶彦だと分かっても、ショックを受けなかった二人はもうsubgroundquestをclearしてるってことでいいのか?」
PoHの話しの矛先が今度は私とキリ君に向いた。
私は思わず隣に居たキリ君の手を強く握る。それにキリ君はただ黙って痛くない位の強さで強く握り返してくれた。
だから私はキリ君に任せることにする。キリ君が選択したことなら私は文句を言わない。
私はキリ君に付いて行くと決めているから。
「……俺は、いや俺達は確かにサブグラウンドクエストをクリアした」
キリ君はそこで一旦言葉を切った。多分その先を言うかどうか迷っているのだろう。
「そして俺とカユラは……運営側の人間だ」
『⁉』
遂に言った。
「いや、いくらなんでもそれは無いだろ」
「そうよキリト君。いくら何でも君たちが運営側の人間ってのはあり得ないわ」
すぐさまエギルとルルが否定してきた。まあそう言いたくなるのも無理もないと思う。
私とキリ君は見た目が中学生———良くて高校生にしか見えない。そんな子供が『私がフルダイブゲームの開発に協力しました』と言っても誰も相手にしないだろう。
「キリト君の言っている事は本当だ。そして改めて自己紹介をしよう。私が茅場晶彦だ。そしてこっちの二人は”ソードアート・オンライン”を開発するにあたって私の助手をしていた、桐ヶ谷和人君と私の妹でもある茅場優良君だ」
『⁉』
兄さんの改めての自己紹介にまた皆に衝撃が走った。それは恐らく私達が助手だったという事と、私と兄さんが兄妹だったという事に対してだろう。
「んじゃ俺も改めまして。キリトこと桐ヶ谷和人だ」
「カユラこと茅場優良です」
「へぇ、Mr.は本物のシスコンだったってわけか」
「私としてはそんな自覚は無いのだがね」
PoHの冷やかしに兄さんは苦笑しながら答える。
「待て。カユラが茅場晶彦の、妹という事は分かった。だが、何故茅場晶彦と、全く関係なさそうな、キリトまで開発に、参加していた?」
「私達の家は元々隣同士でね。そして和人君は元々コンピューター関係の才能があった。だからそれに目を付けた私が彼をスカウトしたという訳だ」
その後も皆の質問には基本的には兄さんが答えた。私と和君は偶に兄さんの答えを補足していただけ。
そして私達三人が
「改めまして。ザザこと、新川昌一だ」
「ジョニー・ブラックこと金本敦だよぉ~」
「エギルことアンドリュー・ギルバート・ミルズだ。改めてよろしくな」
「アルゴこと八夏香夜
「ルルこと
「PoHこと藤原北斗だ」
「お前日本人だったのか。てっきり在日外国人だと思ってたんだが……」
まさかのPoHの自己紹介に和君がそう漏らした。かくいう私も驚いていた。堀の深い顔立ちに霞がかった金髪というPoHの外見はどっからどう見ても外国人のそれだ。というよりそんな外見で日本人って……詐欺じゃない?
「祖母がイギリス人でな。俺のこの外見は隔世遺伝によるものだ」
へぇ~、隔世遺伝ってそんな風にも遺伝するんだ~。
「それより俺へのquestionはそこまでにして、これからの事をどうするか離さなくていいのか?」
PoHの提案も尤もだと思った私達は、まだまだ現実でに事で話したいことはそれぞれあったものの、それらを中断してこれからの事について話し始める。
「アスナとリズとシリカには話すの?」
何をが抜けているがそれを言わなくても問いかけた相手には何ら問題はないだろう。
「よっぽどのことが無い限り話さなくていいだろう。彼女達は恐らく中学生くらいだ。そのくらいの子供は秘密をうっかりと話してしまう事が多い。それにリズベット君はおしゃべり好きの様だしね」
ヒースクリフの最後の一言に皆が苦笑いする。
「俺とカユラは?」
「君たちは明らかに同世代の中では異質だし、二人とも特にキリト君は他人とコミュニケーションを積極的に取りたがらないから問題ないだろう」
あ、ヒースクリフがナチュラルにキリ君をディスった。
「おい、俺をナチュラルにディスるのやめろ」
「だが事実だろう?」
「………」
その後さっき決めたこと以外にも色々と決めた後、私とキリ君は流石にもう遅いのと明日に響くという事で寝ることをみんなに勧められた。他の皆はまだ大岩を割るって言ってたけど。
そして私は隣に居るキリ君と向い合せになって一つの寝袋で寝た。うん、これなら幸せな夢が見れそう。
そして私の意識は闇に沈んでいった。
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