ソードアート・オンライン~桐ヶ谷和人の幼馴染~   作:隆斗

9 / 15
どうも~、遅くなりました。隆斗です。
今回の話の前半は前回の続きで、後半は第二層フロアボス戦の前編です。
そして実は私、最近新作のアイディアばっかり出てきて今書いてるやつの続編が全く思いつかないんですよ。
具体的には
・ZEROのサーヴァントが”桐ヶ谷和人””兵藤一誠””ネギ・スプリングフィールド””奴良リクオ””司波達也””織斑一夏””エミヤシロウ”だったら(恋愛無しの予定)
・D×Dにヴァーリ以外にも”奇跡の事例”がいたら(女オリ主もの)
・魔改造されたネギ×エヴァ(一途もの)
・原型が残っていない明久(オリ久)×八雲紫(一途もの)
・もしも幻想郷に他の世界の主人公たちが幻想入りしたら(一途もの)
・『魔法科学校の劣等生』の司波達也を幸せにしてみた(一途もの)
等々です。
まあ、かく予定はありませんが。

取り敢えず最新話です。ゆっくりしていってね。


新スキル獲得と将軍

 新スキル獲得と将軍

 

 

 

 

 

 翌日、私は予めセットしていた目覚ましの穏やかなメロディーで起こされた。

 只今の時刻は午前五時。

 かなり早起きな方だとは思うが、現実(リアル)ではいつも早起きして茅桐(ちぎり)流の型の練習や、軽いジョギングをキリ君とほぼ毎日していたので私にとってはこれが普通だ。

 

「さて、そのキリ君はというと……」

 

 腕の中(・・・)にいるキリ君を見下ろしてみる。昨晩(日にち的には今日だが)寝始めた時は、私がキリ君の腕の中に居たけどどうやら寝ている間に立場が逆転したらしい。そして現在は私にとってはそれだけでは済まされない状況だった。それはどういう事かと言うと、キリ君の顔が私の同世代の子たちより成長著しい胸に埋まっていたのだ。

 う~、嬉しいような恥ずかしいようなちょっと複雑な気持ちだ。

 

「や、やっと起きたのか。カユラ」

 

「ちょっき、キリ君⁉ どうしたの⁉」

 

 私がキリ君を抱き締めていた腕が緩むと、キリ君はすぐさま距離を取った。といっても寝袋の中だから未だに結構近いけど。そして顔を上げたキリ君の顔はくまこそない(アバターだから当然ともいえる)ものの、雰囲気がとてもゲッソリとしていて何処かやつれて見えるキリ君だった。

 

「……いや、ちょっと考え事してたら寝れなかっただけだから気にすんな。………言えない。まさか抱き付いていたカユラの身体の柔らかさにドギマギしてたなんて。絶対言えるか」

 

「? そう? でもあんまり無理しないでね」

 

「ああ、分かってる」

 

 後の方はものすごい小さい声だったから聞こえなかったけど、キリ君が顔を赤くしていたから恥ずかしい内容だったのかな? だったら聞かない方がいいね。

 それにしても……キリ君は私に欲情しないのかな? 一緒に寝られるのはもちろんうれしいけど、何もされないとそれはそれで私魅力ないのかな? って思っちゃってちょっと傷つくかも。全く久しぶり———と言うよりSAO(こっち)に来てからは初めての”抱き合いながらの就寝”なんだから少しは何かあってもいいと思うんだけどな~。

 

「型の練習とクエスト……どっちやる?」

 

「クエストだな。これを早く落としたいし」

 

 気持ちを切り替えてキリ君に問いかけると、予想通りの返答が返ってきた。

 

「年上組はどうしたのかな?」

 

 キリ君の方を向いたまま上体を起こす。

 

「もうみんな終わったみたいだぞ。ほら」

 

 そう言ってキリ君が私の後ろを指さすので、つられて其方を向いてみると大の字だったりたくさんある大岩の一つによりかかったりして寝ているみんなが居た。そしてその顔には誰一人として御髭は無かった。

 ちなみにアスナとリズとシリカは相変わらず寝袋の中で夢の中だよ。

 

「じゃあ私達も始めよっか」

 

「おう」

 

 寝て凝り固まった体をストレッチして(バーチャルの中なのでする必要はないが、そこは癖だ)ほぐしながら私とキリ君は自分達の担当の大岩まで歩いて行った。

 

 

 

 

 

「これで、ラストォォ!」

 

 キリ君のそんな叫びと共に彼の右ストレートが彼の目の前の大岩に吸い込まれていった。

 

 ガッ! ドゴォン!

 

 そんな音と共にキリ君の目の前の大岩は砕ける。

 

「それじゃあ私……もっ!」

 

 何となくキリ君と一緒の終わり方だと味気ないと思った私は、右足で上段蹴り(といっても高さは私の肩くらい)を目の前の大岩に叩き込んだ。

 

 ガン! ガラガラガラッ!

 

 結構大きな音を立てて目の前の大岩話崩れ落ちた。

 

「ふむ、これでキリト君とカユラ君もクリアだな」

 

「後残って、いるのは、アスナとリズ、そしてシリカだけ」

 

「やぁ~い、ノロマぁ~」

 

「うっさいわよジョニー! 少し黙っていなさい!」

 

 からかうジョニーをリズが怒鳴っているが、彼は尚もからかい続ける。リズを集中攻撃で。

 

「よくやった。汝はもう免許皆伝だ。私から教える事は何もない」

 

 二人のやり取りに気を取られていると、いつの間にかあのオッサンNPCがキリ君の前に立っていた。

 

「それでは”証”を消すとしよう」

 

 オッサンのそのセリフにキリ君が、安堵のため息を吐いた。恐らくクエストをクリアしても御髭が取れなかったらどうしよう、という要らぬ心配をしていたのだろう。

 

 ガシッ! ガシッ!

 

「……え?」

 

 そんなキリ君の両肩を左からはエギルが、右からはPoHがガッシリと拘束してキリ君が動けないようにする。

 

「ちょ、おい! 離せよお前らっ!」

 

「まあまあそう暴れんなって、キリト」

 

「Don'tworry。直ぐに終わる」

 

 二人はそう言いながら”いい笑顔”でキリ君を抑えつずける。

 そしてそれらを気にせずにオッサンは懐からボロボロの布きれを取り出した。そしてそれをキリ君の顔に近づけていく。

 

「えっ、ちょっ、まっ……」

 

 ギャァァァァァァァ‼

 

 この日アインクラットに一人の少年剣士の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 私とキリ君がクエストをクリアした翌日にリズとシリカもクリアした。因みに女性陣が顔の御髭を取る時は、綺麗なハンカチが渡されて自分で取った。

 そしてその日中に圏内に戻ることをリズとシリカの二人が嫌がったので、その翌日である今日圏内に戻って来た。

 その間のリズとシリカ以外の面々は直ぐに戻ってこれる範囲内のモンスターを狩っていたり、ソードスキルの熟練度上げ(とストレス発散)の為にNPCから買った消耗品の装備に切り替えてひたすら大岩にソードスキルを叩き込んだりしていた。

 

「あとちょっとでお昼か……。どうする? 先にお昼にするか? それともちょっと攻略してから昼にするか?」

 

 ウィンドウを出して時間を確認していたキリ君がみんなに問いかける。

 

「アタシはお昼食べてからにするわ。もうここまで来るのでヘトヘトだし……」

 

「私もリズさんと一緒で……」

 

「じゃあ私はちょっと用事があるから午後は別行動で」

 

「俺も午後は店の準備をしなきゃならんから別行動だ」

 

「じゃあオレとザザとジョニーはgirlsと一緒にlunchにするか」

 

「腹が、減った」

 

「ヨッシャァ、お昼だぜぇ~」

 

「アルゴはどうする?」

 

 そう言ってキリ君は先程までアルゴがいた所を見るが、そこにはもう彼女の姿は無かった。

 

「アルゴならさっき私に『オレっちは三日間サボっていた情報収集に言って来るから、今日一日は完全別行動ダ』って言って行っちゃったよ」

 

「じゃあアルゴはそれで良いか……。それで、カユラとヒースクリフはどうする?」

 

 キリ君が今度は私とヒースクリフに聞いて来た。

 

「私は別に腹も減っていないので攻略でも構わないが」

 

「私も今は空腹感はないから別にいいけど………キリ君はどうするの?」

 

「俺も攻略の方だ。試したいこともあるしな」

 

 全員の意見が出ると自然とそれぞれ一緒に行動をする者達で固まる。エギルとルルは一人だけど。

 

「おいキリト、今ディアベルからメッセージが届いたんだが、どうやらついさっきフィールドボスを倒したらしいぞ」

 

「……お前、いつの間にディアベルとフレンド登録してたんだよ」

 

 呆れたように呟いているキリ君だが、その裏には若干尊敬の念が含まれている。恐らく自然と人とそうやって関係を持つことに対してのだろう。

 

「第一層フロアボス攻略会議の時にだ。此処には名刺が無いからな」

 

 そう言いながら私達を意味あり気にチラッと見るエギル。

 ねえ、何に今のは? もしかしてあれ? 名刺位作っとけよって言いたいの? いや普通作んないからね。別に作らなかった私達が変ってわけじゃないから。

 

「それじゃあ俺とカユラとヒースクリフが攻略で、PoHとおジョニーとザザとシリカとリズが昼飯、エギルとルル後今はもういないけどアルゴが私用って事だな」

 

「うんそれで合ってるよ。じゃあ終わったら宿に集合ね」

 

 アスナがそう締めくくって私達は別れた。

 完璧に余談だけど、私達三人はこの日お昼を取らなかった。

 

 

 

 

 

 

 二日後の午後、私達はフロアボスの扉の前にフロアボス攻略レイドの一員としていた。

 この後全員の装備の確認が済み次第フロアボスの攻略に入る……のだが、

 

「何かみんなの装備のレベルが低くない?」

 

 まあ別に全員が第一層のフロアボス攻略レイドのメンバーと一緒という訳では無いので、一概に全員の装備が低いとは言えないが。だが確実に装備のレベルは低いと私は思う。みんなここに居るという事はそれなりにレベルも高く、そこそこ前線での戦闘も経験しているはずだ。それなのに明らかに装備のレベルが低い。まるで今まで使っていた装備が突然使えなくなったので、ありあわせの装備をしかたなく使っているかのようだ。

 

「確かに低いな」

 

 私の呟きが隣に居たキリ君にも聞こえていたようで、私の呟きに同意の意を示していた。

 

「ああ、どうやら皆武器や防具の強化に失敗したらしいよ」

 

 私とキリ君の呟きに後ろからそう返された。二人してビックリして振り返ってみると、第一層フロアボス戦の時よりも装備が少しばかり良いものになっているディアベルがいた。

 

「どういいう事?」

 

「何でも、ウルバス東広場にいる鍛冶屋に強化をしに言ったらことごとく失敗してあのざまらしいよ」

 

 ? それは鍛冶屋の鍛冶屋スキルが低いの?

 

「その鍛冶屋はまだ鍛冶屋スキルが低かったのか?」

 

 私の言いたかったことをキリ君が代わりに言ってくれた。

 

「いや、俺の見た限りだと”アイアン・ハンマー”を使っていたから、NPCの鍛冶屋よりは高い筈だよ」

 

「じゃあ皆強化素材を持っていかなかったの?」

 

 それなら納得する。

 前線に出る人たちは皆元々性能が良い武器や防具を使うか、強化して性能を上げたものを使う。今はまだ第二層だから余程のレアアイテムでない限り武器や防具の性能はNPCの所で売っているものとドロップ品とではそれほど大きな差はない……ハズだ。だから皆今はまだ武器や防具を強化して性能を上げて使っている可能性が高い。そして強化はすればするほど成功率が低くなる。強化素材を使えば話は別だが、強化素材を使っていなかったら成功率は当然低いままだ。その状態でみんなが強化しに行ったら納得できる。

 

「いや、俺の確認した限りでも四、五人は強化素材を持ち込んでいたよ。上限ギリギリまでかは分からないけどね」

 

 これで強化素材を使っていないという線も消えた。

 だったらなぜ?

 

「………」

 

 私の隣ではキリ君も同じくこの疑問について考えていた。

 

「あっ、でも成功している人たちもいたよ」

 

「……そいつ等は今居るか?」

 

「いるよ。ほらあそこ」

 

 そう言ってディアベルが視線を向ける方に私とキリ君も視線を向ける。するとそこには、周りが若干装備のレベルが下がっているのに対して明らかに(現段階では)高レベルの装備を付けている五人組がいた。

 

「あそこの奴らか……」

 

「うん。バシネット被った彼がオルランド、そしてその隣にいる小柄な両手剣使いがベオウルフ、そしてベオウルフと反対側に居るのがクフーリン、それであの革装備の彼がエルキドゥ、最後の盾持ちハンマー使いがギルガメッシュだよ」

 

「全員英雄の名前で統一か……。何か意味でもあるのか?」

 

 キリ君が最後に呟いた一言と私も全く同じことを思った。

 

「何でも彼らは第三層に上がったら”レジェンド・ブレイブス”ってギルドを作るらしいよ」

 

「なるほど、伝説の勇者たち……か。確かにそれをここに来る前に決めていたのなら全員の名前が英雄の名前で統一されているのも納得だ」

 

 本とこういう時のキリ君には感服する。普段はご飯の事や寝る事について考えてばっかりで、自分の興味のない事にはほんとに無関心なのに一度興味を持つとそれに対しての頭の回転がとてつもなく早くなる。あと、何でか私の事についても頭の回転が速かったり、勘が鋭かったり、洞察力が普段よりも高くなったりする……何で?

 

「……それで、あいつらはボス戦(ここ)でやっていけるのか?」

 

「レベルやスキル熟練度はやや低いけど装備がしっかりしているから、取り巻きの相手位なら勤まると思う。……そして今回も君たちには取り巻きの相手をしてもらう」

 

「えぇ~、また~⁉」

 

 ディアベルの最後の言葉に私は不満気な声を上げる。だが、それは建前の様なものだ。その証拠にキリ君は隣で私の事を咎めるようなことはせずに苦笑しているだけである。

 恐らく私達の事はキバオウとその取り巻き達が強引に押し切ったのだろう。その証拠に私達にそれを告げたディアベルの顔は申し訳なさそうだ。

 

「……すまない。俺は棒の方を担当してもらいたかったんだけど、キバオウ君達がね………」

 

 ほら、私の予想通り、と言った感じでキリ君の方を向くと苦笑しながらも私の頭を大人が子供にするような感じで撫でてくれた。

 むぅ、その扱いは納得いかない。

 頭撫でてくれたのは素直にうれしいけど……。

 

「……君達、大事なボス戦の前なんだからイチャイチャするのはやめてくれないかい」

 

『?』

 

 ディアベルに言われた意味が分からずに私とキリ君は首を傾げる。

 はて? 今の私とキリ君とのやり取りの何処にイチャイチャの要素があったのだろう?

 確認の為にキリ君を見ても彼も私と同じような顔をしていた。

 

「なんであれで付き合ってないのよ……」

 

「全くです」

 

「ア、アハハ~」

 

「気付かぬ、ばかりは、本人たちばかり」

 

「全くだぁ~」

 

「正式なcoupleになったらどうなるんだろうな~」

 

「あら、意外と今まで通りかもよ」

 

「そうなったら壁がなくなるな」

 

「私としては、早くそうなってほしいものだがね」

 

 なんかアスナが苦労人みたいな雰囲気だしてるんだけど、大丈夫かな?

 そしてヒースクリフ、アンタは私が暗に奥手だと言ってるの?

 

「クソッ! 見せつけやがってっ!」

 

「おい、そこに壁があるぞ」

 

『よし殴ろう』

 

 ドン! ドン! ドン!

 

 今度はレイドの大半の人達が、ボス部屋に続く扉側の壁を殴ってるんだけど……。そんなに殴りたいなら体術クエストを受けることをお勧めするよ。

 

 パンパン

 

「は~い皆、そろそろ全員の最終確認が済んだみたいだから今からボス攻略を始めるぞ。ほらそこ! もう壁を殴るのをやめる!」

 

 私達の隣からいつの間にか消えて、レイドパーティー全員から見える一のボス部屋の扉の前に居たディアベルがそう声を掛ける。

 

「よし、じゃあ最終確認だ。第二層のフロアボスは”バラン・ザ・ジェネラルトーラス”、そして取り巻きが”ナト・ザ・カーネルトーラス”のそれぞれ一匹ずつだ。だが第一層の時と同じように、これはβテスト時代の情報だ。だから情報と違う事があるかもしれない。皆その事は絶対に忘れないでいてくれ。ほかには———」

 

 扉の前に居てレイドパーティー全体に向かっての最終確認と注意事項を話しているディアベル。だが私——―いや、私とキリ君とヒースクリフの事情を知っているメンバー全員が、別の感情で心が埋まっていた。つまり、

 

 ——————めんどくさい、だ。

 

 実は、もう隠す事でもないだろう、と思って私達の事を知る六人にはこれからの”情報”についてもある程度は話している。その中にはもちろんフロアボスの情報も含まれている。

 そして問題のそのボスなのだが……将軍バランではない(・・・・)のだ。

 βテストが終わった後、この第二層フロアボスに不満を持った和君がヒースクリフにボスの強化を進言。それを兄さんがあっさりと受け入れた上に悪乗りした結果が、将軍バランも取り巻きにしてしまって新たなフロアボスを作る、という事だ。……まあ、私も和君のその意見に賛成してたんだけど。

 とまあそんな訳で、将軍バランはフロアボスをクビになり、新たに”アステリオス・ザ・トーラスキング”通称アステリオス王がフロアボスに就職した。やったね、アステリオス王!

 

「———という訳だ。皆準備はいいかっ」

 

『おう!』

 

 全体的に野太い応答。まあ、私達がそれに加わっていたとしても野太いのは変わんないと思うけど。

 

「それじゃあ皆……勝つぞっ!」

 

 ディアベルの短いながらも気合の入った叫びと共に、ボス部屋の扉がゆっくりと開かれた。

 

 このキリ君とのやり取りで浮かれている時の私はまだ知らない。この後私達———正確に言うなら私とキリ君に起こる、とても辛い出来事を。

 

 

 

 

 第二層のフロアボス攻略は比較的順調に進んでいる。今のところは、という枕詞が比較的にの前に付くが。

 

「皆、それなりに強くなってきたね」

 

「まあ、そのお蔭で俺達は今暇だけどな」

 

 俺の隣にいるカユラがボヤく。ちなみに彼女が言っている”皆”とはブレイブズのF隊と俺達のG、H隊を除いたレイドパーティーだ。

 因みに、ナト大佐は開始した後少しして早々に退場してもらった。別にナト大佐は弱くはない。寧ろ一体だけの分、センチネルより圧倒的に強い。だが、流石にレベルのアベレージが二十一ある俺たちの敵ではなかった。ついでに言うと、LAを取ったのはルルでアイテムは”トーラス・ザ・ヘッドガード”というスタンに少しばかりの耐性が付く兜だった。

 

「ねぇ、エギル。この兜私達の誰も使わないんだし、あなたの店で売ってそのお金で皆の消耗品とか買う足しにしない?」

 

「おっ、そりゃあいいな。よし、任せとけ! ドーンと高く売りさばいてやる」

 

「ええ、期待してるわ」

 

 どうやら大佐がくれた(寧ろ奪った?)兜は俺達の資金の足しにされるようだ。

 憐れ大佐、君の事は忘れない……五分ほど。いや、もしかするとすぐに忘れるかも。

 

「しっかし随分とleisureだな」

 

 leisure? ああ、暇って意味か。

 

「なぁ~、俺達もあれに参加しよ~ぜ~」

 

「ダメよ我慢しなさい。アタシだって我慢してるんだから」

 

「でも、何で私達は待機でブレイブズの皆さんは参加なのでしょうか?」

 

「う~ん……。多分もしもの時に備えてじゃないかな」

 

 ジョニーのあれはただ単に我慢が出来ないだけだからまあいいとして、アスナとリズとシリカの三人には詳しい事情を説明していないから罪悪感が沸く。

 

 パリン

 

 いつかきっと話そう。そう思っていた俺の耳に、ガラスの割れるような甲高い音が聞こえた。

 

「なっ⁉」

 

 慌てて音の聞こえた方を見てみると、そこには盾しか持っていないキバオウがいた。

 

「な、なんでや………。なんでなんやっ!」

 

 訳が分からなそうにそう叫んでいるキバオウ。そして戦闘の中で一人だけ違う動きをしている彼に目を付けたバラン将軍。この事に指揮官であるディアベルを含めたA~F隊のメンバー誰一人として気付いていなかった。

 そう言えば彼も強化が失敗して有り合わせで集めた装備を付けていた一人だった、と今更ながらに思う。

 恐らく折れた理由は、キバオウがあの剣を使う前によくチャックしていなかった事だろう。でなければいくら質で劣っているとはいえ、ここに来るまでの戦闘と将軍バランとの戦闘だけで折れるわけがない。だが今はもう過ぎたことであるそれを言っても仕方がない。

 

「ヴゥオオオオヴァァルァアアアアアア———ッ‼」

 

 迫力のある咆哮を迸らせながら、将軍バランは目の前の獲物(キバオウ)へと自身の獲物であるバトルハンマーを振り被る。

 そうなることを予め予測出来ていて、尚且つキバオウの元へと向かっていた俺達だがキバオウはこの広いボス部屋の中の最奥部のその中でも一番奥の次の層へと続く扉付近に居て、俺達はボス部屋の中心と彼らと将軍バランが戦っている最奥部を隔てるように半円に陣取っていた。もちろん俺達がこの場所に居たのは意味がある。実はこの部屋の中心こそが真のフロアボスであるアステリオス王のPoP位置なのだ。だから俺達はアステリオス王がPoPした時に、レイドの盾となる為にこの位置に居た。だが、今回はそれが裏目に出てしまった。

 間に合え! と強く思いながら俺達は疾走する。

 だが、現実はそんなに甘くない。

 

「ヴゥオオオオ———ッ‼」

 

「グハッ⁉」

 

「しまっ⁉」

 

「! みんな直ぐに飛べっ!」

 

 俺の警告はカユラ達には間に合ったが、レイド本体には間に合わなかった。

 将軍バランはまず、キバオウをアッパースイングで打ち部屋の壁まで吹き飛ばすと、頭上まで振り上げられたバトルハンマーをそのまま振り下ろした。それによりキバオウのHPがグリーンから一気にレッドまで落ちる。

 無論それには黄色いスパークを帯びている。将軍バランのユニーク技、《ナミング・トワイス》だ。そして残念ながらこれにも行動不能(スタン)効果がある。

 

「ヴルルルル——」

 

 ソードスキル後の硬直の間も目を光らせ、次の獲物を探している将軍バラン。

 

「ヴルル、ヴァアアアア———ッ!」

 

「ヒィッ⁉」

 

 そして将軍バランが次に目を付けたのは、ディアベルに憧れ自身も髪を青色に染めた人物————リンドだった。

 そして自身が狙われたことを悟ったリンドだが、既にスタンから回復しているはずの彼は尻もちをついて体を恐怖に振るわせるだけでその場から動かない、いや動けないのだ。

 彼の今のHPはイエローゾーンだ。普段ならいつでも回復できるように準備位はしておくが、別に一撃を受けて即死っていうくらいではないので、そこまで”死”の恐怖に震えはしない。だが今は自身の最高レベルの装備を強化の失敗によって失っており、現在つけているのもはそれよりも一、二ランク程下がった装備だ。これではリンドがそうなるのも仕方ないと言えるだろう。

 

「………」

 

「い、いやだ……」

 

「ヴゥオオオオヴァァルァアアアアアア———ッ‼」

 

「いやだァァ—————ッ‼」

 

 リンド目掛けて振り下ろされる死神の鎌(バトルハンマー)

 リンドはそれをしっかりと見ながらも死にたくない、生きたいと叫ぶ。

 そして、その叫びは————

 

 ザザッ

 

「……⁉」

 

「背筋伸ばして、その場を動くなっ!」

 

「は、はいっ」

 

 ————届いた。モノクロの女神に。

 

 ハンマーとリンドの間に割って入ったカユラは、ハンマーに対して両手に持った片手用直剣の腹(・・・・・・・・・・・・・)を垂直に掲げる。

 

「彼女は、何をする気なんだ……?」

 

 俺がディアベルの横を通り抜けた時に聞こえた彼の呟きは、俺とヒースクリフとカユラ以外の皆の気持ちを代弁していた。

 そして、振り下ろされたバトルハンマーがカユラの持っている片手用直剣に当たる。

 

『⁉』

 

 その場に居た殆どの者たちがカユラのとった行動に驚いた。

 何と彼女は、バトルハンマーと片手用直剣がぶつかった瞬間に片足を軸にしてその場で一回転しだしたのだ。まるで風の流れに身を任せる風見鶏の様に。これぞ茅桐流”力流(ちからながし)”。その名の通り自分に向かって来る(ベクトル)を自分の体をその力と同じ方向に回転させてばねーじを受け流す技だ。

 

 そして位置的な関係でバトルハンマーよりも先にリンドの元へ向かう片手用直剣。

 え? まさか……、とレイドパーティーのほぼ全員が思った時、その予想はいい意味で裏切られた。

 

「おぉ……りゃぁっ!」

 

「へ? おわぁっ」

 

 場に似合わない二つの叫び声が響いた。

 カユラがしたことは至極単純。二本の剣をリンドの体育座りの形になっている膝の下と肩の後ろで引っ掛けて、そのまま遠心力とバトルハンマーの威力を使ってリンドを俺達の方へ放り投げただけ。リンドの悲鳴はその時の物だ。

 そしてそれに続き彼女も此方へ跳躍しようと身を屈めた。しかしやはり現実は非情だった。

 カユラが此方へ飛ぶ前に将軍バランのバトルハンマーが地面に直撃。そこを中心に波の様に黄色い波紋が広がる。そしてカユラはそれをモロに喰らいその場に崩れ落ちる。

 

「! しまった!」

 

 後ろの方で今更ながらにディアベルが叫んだ。

 

「ヴオオォ、ヴオオオオ———ッ‼」

 

 折角のトドメを邪魔されて怒っている(様に見える)将軍バランは、カユラがスタンから回復するよりも早くソードスキル後の技後硬直から回復する。

 そしてバトルハンマーを構えカユラに向かって振り下ろした。

 

「ハアアアァァッ!」

 

「ふんっ」

 

「ウオオオオオォォッ‼」

 

 だがそれは俺の飛び蹴りと、ヒースクリフのシールドバッシュ、リズのメイスの一撃により軌道を逸らされ、カユラのわずか数センチ横の地面に直撃した。

 

「おらぁっ」

 

「it’s a chance」

 

「ヒャッハー、くらえー」

 

「……」

 

「セイッ」

 

「やあっ」

 

「……」

 

「ハアァッ!」

 

 そしてその隙に残りのメンバーが将軍バランに向けて一誠攻撃をした。それにより将軍のHPが最後の一段目に突入する。そしてそれと同時に第二層フロアボス戦も終わりに近づいて行く。

 だが俺とカユラは知らない。俺とカユラにとってつらい選択をしないといけなくなるのは、むしろその後だという事を。

 




という訳で、第二層フロアボス戦の前半戦はこれで終わりです。
次はできるだけ早く投稿したいと思います。具体的には年内には。
それと前書きで言った小説のやつでもしも、読みたいやつがあったら言って下さい。余裕がある時に短編で出します。

感想・評価・誤字脱字の報告などを待っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。