「ちぇん、朝だぞ。起きろ」
「ウニャア~~」
いつもの朝。マヨヒガへ行った藍は
昨日の昼と夜は魚しか食べていない事を確認してから野菜炒めを作り始める。
「藍さま、今日も野菜炒めですかぁ?」
「ちぇんが魚以外を食べないからな。キャットフードにするか?」
「まさか! だったら藍さまの尻尾でも食べます」
「いや、私の尻尾は食べられないから」
「分かんないですよ? そんなにふわふわしてるし、しゃぶればなんか甘い汁が……あ」
「ほほう、『しゃぶれば』か」
藍の尻尾はとてもデリケートだ。故に滅多な事では触らせない。ましてや、しゃぶるなど言語道断。
「今日はマタタビホットレモンティーにあうご飯にしようか」
「ウニャァ!? マタタビVSホットレモンティー!?」
言うまでもなく勿論の事、猫舌で酸っぱいものが嫌いな橙への罰である。
「ひ、ひ、酷いです! 何が酷いってマタタビ入れて自分で飲ませるように仕向けてるところです!」
「甘いな。もう少し酸っぱくするか」
「フシャーー!!」
なかなかに騒がしいが、これでも白玉楼や博霊神社に比べれば静かなものである。
「ははは、冗談だ。ほら、朝御飯だぞ」
「なーんだ、冗談ですか……その右手に持っているカップの中身はなんなんですかぁ?」
「ん? これか。これはだな…」
「マタタビホットレモンティー」
マヨヒガに猫の悲鳴が響き渡った。
~○~○~○~○~○~
「とまぁ、これが普通な訳よ」
「それが羨ましい訳ね」
場所は飛んで、ついでに時間軸も飛んで、白玉楼。
とある大妖怪とちょっとした亡霊姫が話し合っていた。
というより、大妖怪の愚痴を亡霊姫が聞く形になっている。
「別に、そういう訳じゃ無いのよ? ただ、たまには私の家にも帰ってきて欲しいのよ」
「人はそれを嫉妬というのだけど」
「私は大妖怪よ? そういう感情は無いわ」
「ふふ。ま、紫がそう言うならそうかもね」
「なによぉ」
見目麗しい美女たちがいちゃつくその光景は、それを見た男どもを興奮のあまり失神させられる程だった。
とはいえ、幸か不幸か、それを見ていた者はたった一人の半人前(女)だけだった。
「よぅむはどう思う?」
「私は半人前故、分かりませぬ」
「あらあら、よーむったら堅苦しいわよ?」
「……紫殿が幽々子様の親友なのは存じ上げておりますが、だからと言って幽々子様に害を及ぼさないとは分からない故。無礼は承知の上で御座います」
「……はぁ、全く。妖忌はどんな修行させてるのかしら」
ここは、そんな平和な世界。未だ博霊 霊夢は存在しない時代。