「ちぇ~ん~、もう朝だぞ? 起きる時間だぞ?」
「ひ、ひぃ!」
いつもの朝。マヨヒガに住む……いや、閉じ込められている
「ん? なんか目が赤いな?」
「あ、赤くないです! 大丈夫です!」
涙目で、必死に、自らは元気だとアピールする橙。
「そうかそうか。ほら、朝御飯は作っておいたぞ」
「ひぃっ!?」
「おいおい、『ひぃっ』は無いだろう?」
「ご、ごめんなさい!」
「まぁいいか。早く着替えなさい」
「はいぃ!」
橙は自らの手で洗った服に着替える。
洗ったと言えど、水に触れると式が外れてしまう橙にとって、洗濯はほぼ不可能な仕事。一着しかない服はまるでボロの服。
「着替えました!」
「おぉ、速くなったな。……でも、まだ目標の十秒には届かないな」
「っ!」
橙にはこの先の展開を予想できた。
「はぁ、ちぇん。お前は
藍は右手の人差し指で橙のおでこを小突く。
人の姿とはいえ藍は九尾の狐、例えデコピンでも岩を破壊しかねない威力になる。
だが、橙に出来ることは、ただ身をすくめて耐えることだけ。
「それだと式失格じゃないか? ん?」
「……
「声が小さい」
デコピン。
「~~っ!」
「食べ物にありつけず飢え死にしそうだったお前を拾ったのは誰だ?」
「ら、藍様です!」
「お前に強くなれる式を付けたのは誰だ?」
「藍様です!」
「……良いだろう。ちぇん、朝御飯が冷める。さっさと食べろ」
「はい!」
いつもよりは暴力が少なかった。その事に自らの成長と主人の優しさをほんの少し感じた橙は、ほんの少し元気に食卓につき――
「ほら、ご飯が冷めてしまうだろう。速く食べるんだ」
熱々のスープだけが乗っている食卓を、死んだ目で見るしかなかった。
~○~○~○~○~○~
「……と、こうなってるんだけど……どうしよう、どうしたらいいの?」
「そうねぇ。自業自得としか言えないけれど、とりあえず私のよーむを調教しないで欲しいかしらね」
場所は飛んで、ついでに時間軸も飛んで、白玉楼。
恐るべき大妖怪と不機嫌な亡霊姫が話し合っていた。
「えぇー。酷いわよ! 色々と!」
「ぐっ、はあっ!」
「だから、まずはよーむを解放しなさい。私の目の前よ」
「んー?」
大妖怪は半人前を叩く手を止める。
「それは、幽々子の目の前じゃなければ調教していいの?」
「駄目よ」
「幽々子……様……!」
半人前は希望と尊敬の眼差しを幽々子に注ぐ。
「よーむは私が調教するんだから」
「……
半人前は、所詮半人前だったのか。
「ん? 幽々子
「そ。紫が最近遊んでくれないから、よーむを、ね」
「ふぅん? ……じゃあ、遊ぶ? 今日」
「良いわね」
Sな大妖怪とMな亡霊姫は、お互いに恍惚の笑みを浮かべた。
ここは、こんなでも平和な世界。未だ博霊 霊夢は存在しない時代。