落第騎士の英雄譚~世界最強の剣士の弟子~   作:火神零次

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今回のあらすじ・・・
第十一回戦目の相手が決まってしまった爛。彼は絢瀬と戦うべきなのか迷っていた。そんな絢瀬とギクシャクした関係になってしまう。一度も特訓に顔を見せなくなった絢瀬。もう来ないのかと思ったとき、爛の生徒手帳に絢瀬からのメールが届いていた。




第31話~届かない言葉~

 倉敷蔵人と出会い、絢瀬が爛達の前から姿を消して三日が経つ。結局、あれから一度も顔を出さなかった絢瀬だった。

 

「結局、あれから来なかったわねセンパイ・・・。」

「仕方ないさ。倉敷と会ってから来なくなったもんだしな。それに、絢瀬はどんな手を打ってきても、七星剣武祭に出なければならない。彼女は三年生だ。これを逃せば、彼女は倉敷に復讐の機会を失うことになる。それに、復讐なんてさせたくない。だから俺は、絶対に次の試合では勝たなければならない。」

 

 爛はそう言いながら、自分の生徒手帳のメールを見る。そこには、絢瀬からのメールが届いていた。

 

『宮坂君にしか話せないことがある。午前三時、本校舎の屋上で待ってる。』

 

 と言うメールの内容だった。爛は分かっていた。それが、絢瀬の仕組んだ罠であり、何よりも、試合で反則を使ってくると。

 

「それ、明らかに罠よね。」

「アリス・・・。」

 

 爛の後ろから、アリスが歩きながらそう言ってくる。確かにそうだ。こんなときに限って、メールが届くのは何かあると言うことだ。

 

「知ってるよ。罠だってな。でも、俺は会いに行く。」

「断言するわね。」

「だって、彼女を思うと、絢瀬の笑顔が浮かんでくるんだよ。それを見るたびに、この笑顔を守ってやりたいって思うんだ。」

 

 爛はそう言った。アリスは彼の目を見て悟っていた。彼は、彼女を救うために戦うと。爛の瞳がそう言っていたのだ。アリスは爛に忠告した。

 

「警戒だけはしておきなさいよ。」

 

 その事に、爛は夕日をバックにアリスに微笑みながら───、

 

「わかっているさ。」

 

 その一言だけを言った。

 そして、爛はアリスから忠告を受け、午前三時、本校舎の屋上に来ていた。爛が屋上の扉を抜けると、フェンスを後ろに立っている絢瀬がいた。

 

「・・・あの時以来か、絢瀬。」

「うん・・・こっちから誘ったのにごめんね。」

(・・・やっぱり、その目になってるか。)

 

 爛が気になったのは絢瀬の目。彼女は食事の時もそうなのだが、やはり時々目をそらす。しかし、今回ばかりは違った。爛のことをまっすぐに見つめていた。それだけではない。絢瀬の目が乾いているように見えるのだ。それも、何の輝きを持たないガラス玉のように。だからこそ、爛は追求などはしなかった。今は、そんな話をしに来たのではないからだ。

 

「別に大丈夫だ。流石に相手が決まった状態で仲良く接するのは難しいよ。これくらいは当然さ。」

「そう言ってもらえると助かるよ。・・・・・・それに、一人で来てくれたんだね。ありがとう。だけど、彼女もちとしては褒められる行動じゃないよね?」

「まぁ、そうだな。六花には内緒にしてくれよ?何しでかすか分からないからな。」

 

 爛は肩をすくめながら話している。普通に見れば、いつも通りの光景にしか見えない。爛は少しだけ絢瀬に近づき、本題に入る。

 

「・・・それで、俺にしか話せないことはなんだ?・・・あれか?俺と六花の関係か?」

 

 爛は冗談めかしながら話している。普通に、しかし彼女を問い詰めるためにも。この時間に呼び出したのには、絶対に何かがあるとしか考えられないからだ。

 

「まぁ俺と六花のことについては冗談だ。・・・で?本題は?」

「・・・・・・」

 

 絢瀬は爛の問いに押し黙る。言うことができないのか。それとも別の意味なのか。爛は何も考えていない。今ある状況は、自分と絢瀬。そして夜。屋上。何よりも爛が不信感を持っているのは、

 

『絢瀬の後ろの空気が、止まっているように見える。』

 

 その事だった。何かの斬り込みがつけられているような感覚がしているのだ。だが、黙っているだけでは始まらない。あれが絢瀬の罠のためなのかもしれない。爛はそれにも迫るべく、自分から話を切り出した。

 

「なぁ、前の話。覚えているか?」

「・・・・・・」

 

 絢瀬は何も言わない。爛は答えなくても良いと思って話している。だから、絢瀬の沈黙を肯定と見なし、話を続ける。

 

「倉敷は、絢瀬。お前から道場と何を奪った?」

 

 そう、爛が元々知りたいのはこっち。何故二人が関係があるかだ。倉敷は様々な道場を練り歩いては潰して回っている。絢瀬の家は、綾辻一刀流を教えるための道場がある。そうなると、倉敷は絢瀬から道場と別のなにかを奪われたことになる。爛はそう考えていた。

 

「・・・どうしてそう思うの?」

「倉敷の行動と、絢瀬の家から考えた俺の答えだ。倉敷は様々な道場を練り歩いては潰して回っている。絢瀬の家は、綾辻一刀流を教えるための道場がある。そうなると、絢瀬は道場と他にも失ったものがあるんじゃないのか?って考えたんだよ。」

 

 絢瀬は爛の言葉に黙りながら聞き続けている。さらに爛は続ける。

 

「それに、絢瀬の憎悪を倉敷と会ったときに感じたからだ。ただそれだけだ。」

 

 爛はそれで話を切る。これで、彼女の方から切り出してくれればよいのだ。爛からすれば、他にも理由があるのかもしれない。だが、剣士として感じられるものは、これで当たっていると感じたのだ。

 

「正解だよ。流石だね。新聞部の人から宮坂君は勘が鋭いって聞いたからね。こうなると、隠す気も無くなるや。」

 

 すべて、当たっていた。すると、絢瀬から話を切り出した。

 

「今日、この時間に宮坂君を呼び出したのには聞きたいことがあるからなんだ。」

「聞きたいことか?答えられる範囲であれば答えるぞ?」

「ありがとう宮坂君。やっぱり、君は優しいよ。───僕が聞きたいのは君の家族についてだよ。」

 

 それを聞いたとき、爛は驚いた。絢瀬が自分の家族について知っているのは、門下生ぐらいしかいない。爛の脳裏にあることが通りすぎていった。しかし、その時間だけで爛は十分だった。

 

「・・・もしかして、一輝から聞いたのか?」

「そうだよ。そこで、君は妹を失ったんだよね。」

 

 爛の頭の中でビデオのように繰り返される悪夢。何より、爛が向き合わなければならないことだ。

 

「あぁ。」

「僕は思うんだ。宮坂君はそこまでの力を手にしているのにそれを何で復讐に使わないのか、分からないんだ。」

 

 爛は復讐のためにこの力を持っているわけではない。守ることのために振るうと決めたのだ。この剣はそのためにあると、そう思っていた。綾辻一刀流の道場でも同じはずだ。綾辻流はこう言う剣だった。

 

『人を守るための剣。』

 

 爛はそれを知っていたからこそ、絢瀬の本心が気になった。何故にそこまで復讐に拘るのか。何が、彼女を変えてしまったのか。答えは道場の中にあるはずだ。

 

「絢瀬、綾辻流の心構えはなんたるかを知っているはずだ。何故、そこまでして復讐に拘る。」

 

 爛は自分の本音で絢瀬に問い詰めた。何を言っても意味がないからだ。すると、絢瀬は爛の予想を覆すことを言う。

 

「そんな心構え、とっくに捨てたよ。そんなのは戯れ言でしかない。僕は勝つために、手段を問わない。だから、この選抜戦。宮坂君の七星剣武祭はここで終了させる。」

 

 絢瀬は自身の固有霊装(デバイス)である緋爪(ひづめ)を顕現した。その瞬間、太刀音が二つ聞こえた。

 

「ッ。」

 

 爛は周りを警戒する。明らかに太刀音が聞こえ、どう言うことかと警戒するのだが、その答えはすぐにわかった。それは、絢瀬の後ろの空気が吸い込まれていき、かまいたちを生んだと悟ったのだ。すると、フェンスは壊れ、絢瀬は校舎から飛び降りる。すると、

 

「ッ!?」

 

 絢瀬が空を飛んだのだ。いや、実際には空気が吸い込まれていき、かまいたちが生まれることの勢いで空を飛んでいるのだ。爛が校舎ギリギリのところに居ると、絢瀬は急に落下し始めた。

 

「ッ!?絢瀬!」

 

 このままいけば、尖ったコンクリートに頭から一直線だ。そんなことは絶対にさせない。爛はすぐに行動に出た。

 

(こればっかりは距離がありすぎる。体力を使うぞ!)

「《雷足(らいそく)》!」

 

 爛は雷の力を足にため、筋肉の運動を一気にフル稼働させる。そして、爛が踏み込み、絢瀬を助けに行こうとした瞬間、爛の姿が消え、一瞬にして絢瀬を助けてコンクリートのところに当たらずに絢瀬を抱えたまま、爛は膝をつく。

 

「くっ・・・。」

「体力、使っちゃったね。」

「お、お前・・・、まさか、これのためだけに、仕組んだのか!?」

 

 絢瀬は爛から離れ、校舎の方に歩いていく。何も言わずに。爛はそれでも絢瀬を説得しようとしていた。

 

「絢瀬!お前は、お前はいいのか!誇りを捨ててまで、そこまで復讐に拘りたいのか!お前の中で何が残る!何を得られる!」

 

 爛は動こうとするのたが、《雷足》の反動により、歩くことすらできなかった。絢瀬は何も言わずに、爛の前から去っていった。

 

「く・・・そ・・・。」

(仕方ない・・・。魔力を回復するためには、あれしかないか・・・。)

 

 爛は自らの力を高めていく。すると、爛の周りには赤いオーラが見えていた。

 

(《第一段階・鬼神解放(きしんかいほう)》・・・。久しぶりに使ってみたけど、意外と効果的だ。)

 

 爛は自分の魔力を十分に回復すると、爛も校舎の方に歩いていった。そして、爛の中で何かの警鐘が鳴らされていた。何もわからない警鐘。しかし、爛の熟達した第六感と本能は叫んだ。───避けろ!

 

「ッ!?」

 

 爛は後ろを向き、一気に後退する。そして、爛が顔を上げたすぐそばに黒い影が目の前に居た。

 

刻雨(こくさめ)!」

 

 爛はすぐに刻雨を顕現し、襲いかかってきた黒い影と打ち合う。しかし、黒い影の剣術はほぼ一輝並みの実力だった。

 

「チッ!」

 

 爛はすぐさま後退。爛は感じ取っていた。黒い影、黒い羽織ものをしている者は伐刀者(ブレイザー)なのが、すぐにわかった。しかも、指折りの力を持っていると見ていいだろう。爛は出し惜しみなんてしてられないと考え、一気に攻めに出た。

 

「ハアアァァァァ!」

 

 爛は襲いかかってきた伐刀者の素顔を見るべく、フードの部分を狙い、剣を振るう。相手もその攻撃に対応するようにし、剣同士の打ち合いになる。

 

「ッ!せい!」

「ッ!」

 

 フードの一部分が斬れていった。すると、フードのところから見覚えのある髪が見えていた。

 

(ま、まさか・・・!いや、そんなはずはない!)

 

 爛はある可能性が浮かんだがそれはないと振り払い、伐刀者と戦う。そして、数十分。

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

 爛は真上から刻雨を降り下ろし、伐刀者は一歩後退する。すると、伐刀者は霊装を解除し、破軍学園から出ていってしまった。爛はあの髪を見たときに一つだけ、可能性を感じてしまったのだ。死者の復活を目論む伐刀者が居ると。そして、襲いかかってきた伐刀者は死んだはずの伐刀者と感じた。

 

(お前は、これを否定するのか?)

 

 爛はそんなことを考えながら、今度こそ校舎の方に歩いていった。

 

 ーーー第32話へーーー

 

 




爛に襲いかかってきた伐刀者は一体誰でしょうか?因みに、爛に関係があり、この後に正体が明かせれたりします。まぁ、先の話になるのですがね。

次回を待っててくださいね!

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