今年もよろしくお願いします。
新年、早々の投稿となり、この勢いにのって投稿していきたいです。
活動報告にて次回の話などが書かれていますので、気になる方は活動報告を確認ください。
追記
文曲学園を見落としてしまっており、書いていなかったのを確認しました。文曲学園の編成を追加しました。また、活動報告にも同じように報告いたします。
「あれ? 黒鉄くんは?」
七星剣武祭団体戦前日、爛たちは刀華の部屋に来ていた。
暁学園の襲撃の件もあってか、暁学園に加担していたアリスは辞退。代わりとして、珠雫が抜擢された。
「七星剣王に呼ばれたそうだ。珠雫もそっちの方に行った」
「問題はないだろう。二人なら、対処が出来るしな」
「確かに、そうだけど……」
六花は苦笑を浮かべた。
「それで、作戦会議は団体戦のことですよね?」
リリーが確認を取る。
その確認に、刀華は頷いた。
「……爛だけで良いんじゃないか?」
「いや、そうなると集まった意味がなくなるから止めてくれ……」
颯真が爛だけでもいいという本末転倒なことを言い出す。爛は苦笑を浮かべ、反論をする。
「コホン、とにかく、ちゃんと決めていきますからね?」
刀華は咳払いをしながら、話題を戻した。
「とはいえ、初戦は暁。ステラがいないこの状況で、最高戦力で行かなければ無理だぞ?」
どこから情報を仕入れていたのかは分からないが、颯真は相手と此方の戦力を既に比較していたようだ。ここまで的確だと、何も言えなくなる。
「……となると、爛は確実だね」
「そうですね。この中では、確実にマスターが強いですし」
六花とリリーの判断は肯定をするしかなかった。この中で、最も強いと言えるのは爛だ。
「そう言うのは簡単なんだがな……俺だけ出るにしても相手は三人、荷が重いぞ」
爛の言っていることも間違いでない。暁学園は此方の最高戦力で行くしかないほどなのだ。爛だけで戦うにしても、同じリングに三人も敵がいるとなると、流石に爛でも捌ききるには荷が重い。
「そうだな。あっちに沙耶香もいる。いくらお前でも、沙耶香を斬るってことは出来ないだろ?」
「…………………………………」
颯真は沙耶香を知っている。暁学園の情報を仕入れていたのであれば、沙耶香が暁学園の方にいるという情報は既に彼に渡っているのは当然だ。
「……沙耶香は、やっぱりそっちにいるのか」
爛も薄々だが感じてはいたのだ。巴に操られていたからというのもあるが、七星剣武祭の時は此方に戻ってこれないと。
「爛が団体戦に出ることを想定して、メンバーは組まれているはずだ。となれば、沙耶香も出てくる可能性は残ってる」
「あぁ………」
颯真の考えはあり得ない話ではない。十分にあり得る。相手側も、爛の強さを知っているはずだ。六花やステラも、対策をしなければならない相手ではあるが、最優先で考えるのは爛のはずだ。
ただし、リリーは全く情報がない。情報がない選手には、警戒をしないといけないのは定石。実際の能力を隠す選手も少なからずいるのだ。警戒しないというのは、愚策でもある。
「それでも、俺は爛が出ることに賛成するよ」
「え?」
掌を返すように颯真は、爛が団体戦に出ることに賛成の意を言葉にした。
てっきり、個人戦には必ずでるのだから、奥の手として団体戦には出さない。という手を言ってくると思っていた爛は、素っ気ない声を出す。
颯真の言葉に、ここにいる全員が頷く。
「うん! 爛は強いし、問題はないと思うよ!」
「はい。マスターなら問題なく団体戦、個人戦を突破できるはずです」
「爛くんは頼りになるし、私個人としても、問題はないかな」
「……どうだ? 一輝たちも、賛成してくれると思うけど」
爛は考え込むような仕草をして、何かを決めたような雰囲気を漂わせて頷いた。
「あぁ、団体戦に出ることにするよ。ただ……」
爛は少し躊躇う様子を見せたが、首を横に振って───
「暁学園との団体戦だけには、俺一人で戦わせてほしい」
とんでもないことを言い出した。
颯真を除き、全員が驚く。
「そんな、ダメだよ! さっき颯真が言ってたよね!?」
「マスター。それは、本当なんですか!?」
「音無くん言ってくれた通りなら、爛くん一人でも危ないんだよ!?」
六花、リリー、刀華から、それぞれ反論が返ってくる。
爛も三人は反論をしてくると思っていた。
「ふざけたことを言っているのかもしれない。でも、これは俺一人で決着をつけたい。三対一だろうがどうだっていい。ただ、俺は───」
爛には最初から決めていたことがあった。それは、暁学園が七星剣武祭に参加すると決まったその日から、これだけは自分の手でやると。
「暁学園を、完膚なきまでに叩き潰す!」
爛の鋭利な視線が、冷徹な剣気が、怒りの感情を含んだ言葉と共に周囲に放たれる。
「それほど……俺は、奴等が許せない……」
暁学園に、沙耶香を操っていた巴がいる。沢山の人々を不幸へと陥らせた、
それに、暁学園はほとんどテロリストといっても過言ではない。
「沙耶香が出る可能性があるのにか?」
颯真が単純な疑問を爛にぶつける。爛は沙耶香を傷つけることを望まない。傷つけようともしない。だからこそ、手を出さない妹が、団体戦に出る可能性がある以上、初戦を爛だけというのは、無理なのだ。
「出た場合のことも考えてないとか言うなよ? そんなこと言ったなら、俺も出るぞ」
颯真は爛が沙耶香を傷つけることはできないということを知っている。何も考えてないというのであれば、沙耶香を倒すことができる誰かを、タッグとして出すしかないと考えていたのだ。
「大丈夫だ、そこも考えてある。沙耶香にだけ、
「結局は、斬るということに変わりはないんだぞ?」
「分かってる。でも、本当に傷つけるよりはいいさ」
颯真の質問に、爛は冷静に答える。
爛の答えを聞いた颯真は、そこまで答えられるのであれば、問題はないと判断した。
「そこまで言えるのなら、俺はもう口出しはしない。良いだろう。初戦は、爛だけで良い」
「でも、ルールには触れないのかな」
「そこは大丈夫。三対三とはなっているが、必ず三人にしろとは言われていない。そこは、黒乃にも確認を取っている」
団体戦はある意味、挑戦という意味もあるのだ。今まで個人戦だった七星剣武祭が、団体戦を採り入れたことで、団体戦と個人戦の戦いが、どのように変わっていくのかも確認する目的で組み込まれている。
前代未聞の挑戦だ。学生騎士の祭典と言われている七星剣武祭で、団体戦を採り入れることは、情報上での戦いが発生すると考えたのだろう。
より多くの情報を手に入れたものが、個人戦を突破できる。ある意味、弱者が一方的に強者を狩ることができる可能性がある。油断が命取りとなるはずだ。
ただ、今回の団体戦はちゃんとしたルールが確立されていない。だから、爛が言った通り、三対一が可能なのだ。
「ちゃんと確認を取ってるのなら良いんだけど……やっぱり、爛が一人で戦うのは心配だよ?」
「だからといって、六花と二人で戦うのは、爛に負担が増えるだけだぞ?」
「む~……そう言われたら、言い返せないのが辛い……」
颯真の言っていることは正しいため、六花は頬を膨らませて唸る。
「まぁまぁ、心配してくれるのは分かるが、俺一人でやらせてくれ、な?」
爛は優しい笑顔を浮かべ、六花の頭を撫でる。
「……分かった。正直に言って、不安なんだからね!」
六花は爛に抱きついて離そうとはしない。
そんなのを堂々とされては、爛に好意を抱いているリリーも黙ってみているわけにはいかない。
「リッカばっかりズルいです! マスター、私にも構ってください……!」
リリーは背中から爛に抱きつき、爛の背中に顔をグリグリさせる。
「……対応に困るな……」
颯真は溜め息をつきながら呟く。
「……颯真、刀華、編成は任せる。俺は、この二人の甘えん坊の相手をしてるよ」
「「……うぅ~……」」
爛は苦笑を浮かべる。
六花とリリーは言い返せないのか、唸っていた。
「別にいいが、条件はあるのか?」
「できればでいいんだ。六花とリリーが出る試合には、俺かお前のどちらかがいればいい。それさえ守ってくれれば、文句は言わない」
「……心配性だな」
言わないでくれ。自分でも分かってるんだから。
そう言いながら、爛は六花とリリーの二人を抱えて部屋から出ていく。
「二人きりになっちゃいましたね」
「そこで何で敬語になるかなぁ……生徒会長さんや」
爛がいなくなったからか。急に口調が変わってしまった刀華に颯真は頭を抑えた。
「ま、さっさと決めよう。時間もあまりかけたくないだろう。七星剣武祭のこともあるし、コンディションを整えておきたい」
「そうですね。早く決めましょう」
颯真の提案に、刀華は頷いた。
ステラは団体戦には参加しない。ある意味、破軍学園の奥の手でもある。そして、技の引き出しが少ない一輝も、出すべきではない。という判断をした二人は、颯真が集めた選手の資料を元に、編成を考える。
そして、決まった───
暁学園、編成:爛。
武曲学園、編成:颯真、六花、刀華。
貪狼学園、編成:爛、リリー、珠雫。
廉貞学園、編成:颯真、一輝、リリー。
禄存学園、編成:爛、六花、刀華。
巨門学園、編成:爛、一輝、珠雫。
文曲学園、編成:颯真、リリー、珠雫。
後は準備を整えて、万全にするだけだ。
ーーー第83話へーーー